【ジェフユナイテッド市原・千葉】勝利に導く「新たな風」は俺たちだ!トップ昇格のDF谷田壮志朗は偉大な主将・鈴木大輔に学び、そして挑む
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2005年生まれの18歳。2023年度のU-18ではキャプテンとしてチームを牽引し、6年ぶりのプリンスリーグ関東2部昇格を置き土産に階段をひとつ上った。
「プリンスリーグに昇格することだけを考えて3年間やってきたので、参入決定戦の2試合は本当に必死でした。ここで身体がボロボロになっても、チームが勝つためのプレーを全力でしようと」
ポジションはセンターバック。高校1年までは中盤の底を主戦場とするMFだったが、“跳ね返す力”と起点となる展開力を評価されてポジションを1つ下げた。180cmとさほどの上背はないものの、身体能力の高さとアグレッシブなメンタリティーを武器に“奪う能力”を特長とする。
昨年12月にはU-18日本代表にも名を連ねた期待のルーキーについて、クラブのレジェンドであり、現在はアカデミーの強化と整備に軸足を置く佐藤勇人氏は「面白いタレント」と評する。
「まず目を引くのはアスリート能力の高さですね。シンプルな身体能力。それを生かした“ボールを奪う能力”に長けていて、空中戦も強い。守備においては一人で何でもできるタイプだし、もともと物怖じしないメンタリティーがあって負けん気が強いんですよ。DFとしてはまだまだ荒削りでミスもあるけれど、そこが素材としての面白さかなと。あのメンタリティーは、レベルが高い環境でこそ生きるかもしれない」
昨季はキャプテンとしてジェフユナイテッド市原・千葉U-18のプリンスリーグ関東2部昇格に貢献 【©JEFUNITED 】
「もともとボランチの選手だったので、中盤に入っても面白いプレーができると思います。ボールを奪う局面で発揮する強度、メンタル的な覚悟の強さは熊谷アンドリューに似ているところがある。右サイドバック? アリですね。3バックの右でもいい。そういう意味では、ユーティリティー性は高いと思います」
高校2年時から2種登録としてトップチームの練習に参加していたから、ルーキーとはいえ環境の変化に対する戸惑いはない。ただし、ピッチで体感する“プロのサッカー”は数か月前に感じたそれとはまったく違うと谷田は言う。
「切り替えの速さや球際の強さは昨年感じたものとはまったく違います。やっぱり、U-18から来て1、2週間体感するのと、チームの一員として体感するのとではぜんぜん違う。沖縄キャンプでそれを感じましたし、ついていくのに必死でした」
となると、公式戦のピッチに立つチャンスはもう少し先ことになるだろうか。
「いや……現時点では差があると思いますけど、チャンスがあったら『一発やってやろう』という気持ちはめちゃくちゃあります。キャンプでは鈴木大輔さんのプレーを見て、話を聞いて、たくさん吸収させてもらいました。ぜんぜんまだまだですけど、自分なりに突き詰めて、大輔さんみたいに自信を持ってプレーできるようになりたい」
チームに加入後 4季連続でキャプテンを務める鈴木大輔 【©JEFUNITED】
「そうですね……自分でも、もちろんチームメートの誰かでもいいんですけど、試合中にゴールが決まるじゃないですか。あの瞬間に感じる喜びって、それこそ子どもの頃に感じていたものとまったく変わらないんですよ。僕にとってはそれが一つのバロメーターと言えるかもしれない。その感情がなくなってしまったら、たぶんサッカーを続けられない。このたとえ話、伝わります?(笑)」
育成年代の国際大会出場、U-23代表としてのオリンピック出場、さらにA代表としての日の丸も経験し、Jリーグでは4つのクラブで、さらにはスペインでも真剣勝負に身を委ねる充実のキャリアを切り開いてきた。そんな鈴木の目から見ても、18歳の谷田は「面白い選手」だ。
「センターバックにとって最も大切なのは、ピッチでプレーする雰囲気、その“立ち姿”みたいなものだと思っているんです。タニはそれを持っている。マインドもいい。もの怖じせずに年上の選手にも積極的に絡めるし、自分からアドバイスを求めようとする。コミュニケーション能力が高いので、まっすぐ成長したら面白い選手になると思いますよ」
2人の先輩が言う「もの怖じしないメンタリティー」については、実は、ジェフ千葉のサポーターがすでに知るところでもある。
17歳になったばかりの2022年夏、当時高校2年の谷田は離脱者が続出したチーム事情から急遽2種登録としてメンバー入りし、第28節ヴァンフォーレ甲府戦のピッチに立った。スコアレスのまま迎えた試合終盤、わずか数分間とはいえ87分から最終ラインの一角を担う緊迫のJリーグデビューだった。
2022年にJリーグデビューを果たす 【© JEFUNITED】
その佇まいとパフォーマンスは、17歳のデビュー戦に似つかわしくないほど落ち着いていた。佐藤が言うとおり「負けん気が強い」。鈴木が言うとおり「立ち姿がいい」。チームにとっては離脱者続出の非常事態だったからこそ、ある種の親心のような心境で見守るサポーターにとっては印象的な数分間だったに違いない。
「自分は逆境が好きというか、相手のほうが上だからこそ『やってやる』という気持ちが強くなるタイプだと思っていて。その勝負に勝てば自分が這い上がれるという状況を楽しめるところはあると思います。ただ、ある意味、あの時はまったくプレッシャーがなかったですから(笑)。今は大輔さんのすごさを感じてばかりです。本当にすごいですよ。常に周りが見えているし、だから常に声を出しているし、的確な指示で周りを動かし続けられる。見習うところしかありません」
キャプテンとして先頭に立つ鈴木は、常にチームのことを最優先に考え、自らの言動を選択してきた。長くキャリアを重ねてきた自分の役割は十分に理解している。もっとも、心の奥底にはそれとは別軸の思いもはっきりと存在する。
鈴木が言う。
「このくらいの年齢になると、若手の成長や活躍が嬉しいと思う人もいると思うんです。もちろん僕も、表面的にはそう思っている。“チーム”に対する感情ですよね。でも、心の底では自分自身に対して、サッカーに対して、ゴールに対してずっと変わらない気持ちを持っている自分がいて、やっぱり誰に対しても『絶対に負けたくない』と本気で思っているんですよ。僕はまだ、サッカーが楽しいという感情をピッチの上で体感したい。もちろん、キャプテンとして『チームのために』と言いますよ。でも、本心では絶対に俺がピッチに立つと思っているし、立たなきゃいけないと思っている。その気持ちがなくなったら、やめるべきだと思ってますから」
どれほど“面白い可能性”を秘めた18歳とはいえ、海千山千の絶対的主将に挑むポジション争いは簡単ではない。もっとも、だからこそ得られる特大のモチベーションがある。来る新シーズンに向けて高揚感を募らせるその表情を、きっと16年前の鈴木大輔も浮かべていたに違いない。
谷田が言う。
「自分よりも格上の選手と対戦して、そういう選手を止めたいし、チームとして圧倒して勝ちたい。みんなに注目してもらって、『谷田がいい』と言ってもらいたい。まずは試合に出るところからですけど、そのために全力で頑張ります」
ジェフユナイテッド市原・千葉にとって「育成」は、今も昔も大切なアイデンティティーであり、地域に根を張るプロスポーツクラブとしての「生き方」である。
その看板を背負ってピッチに送り出されてきた何人もの先輩たちと同じように、谷田もまた、背番号「48」を身にまとって大きな一歩を踏み出そうとしている。
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