【柏レイソル】勝利に導く「新たな風」は俺たちだ!2年目のFW山本桜大が追う細谷真大の背中

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「柏レイソル」と聞いて、多くのサッカーファンがイメージするのは、やはり「細谷真大」だろう。中学1年生からレイソルの育成組織で育ったストライカー。プロ4年目の昨シーズンはキャリアハイのリーグ戦14得点を挙げ、年始のアジアカップでは日本代表にも選ばれた。ただ、昨年のレイソルはリーグ17位と沈み、最終節で辛くもJ1残留に辿りつくほどの低迷だった。得点数はリーグワースト2位。細谷ばかりに頼っていては昨年の二の舞だ。ここで細谷に続く新星が出てくるのか。

 そこに名乗りを挙げたいのが、プロ2年目のFW山本桜大(やまもと おうた)。2004年生まれの19歳だ。これまでリーグ戦7試合に出場、カップ戦では合計5試合に出場。天皇杯2回戦では、プロ初ゴールもマークしている。ただ、山本は新シーズンに向けて「何試合か出るというのではなく、スタメンで出続けて、監督やサポーターの皆さんの信頼を得ることが今年の目標です」ときっぱり言い切った。

 ルーキーイヤーの2023年。当時チームを率いていたネルシーニョ監督は、1月のキャンプからいち早く山本に注目していた。「彼の良さは、スピードやクリエイティブなプレー。そして攻撃から守備への切り替えや献身的な守備だ」。過去には酒井宏樹(現浦和レッズ)、細谷ら、経験は乏しくとも才能の一端を見せる若手を迷いなく抜擢してきたその目に、山本のプレーも明るく映った。トレーニングマッチやプレシーズンマッチ「ちばぎんカップ」でプレータイムを与えられ、デビューの日が近いことを予感させた。事実、リーグ開幕戦のガンバ大阪戦では、75分から途中出場。レイソルでの高卒ルーキーの開幕戦出場は、1996年の明神智和、2003年の大谷秀和、矢野貴章、2008年の大津祐樹、2010年の茨田陽生以来、6人目の快挙だった。

昨年のリーグ開幕戦で高卒ルーキーデビューを果たした 【©️KASHIWA REYSOL】

 その後もリーグ戦で3試合連続の出場、またルヴァンカップで先発を果たすなど、順調にキャリアのスタートを切ったかに見えた。しかしチームの成績が上がらず、若手に与えられるチャンスは減っていった。7月のガンバ大阪戦で4ヶ月ぶりにリーグ戦出場のチャンスを得たものの、直後に腕を骨折。全治3〜4ヶ月の重傷で、上昇気運はあえなく止まってしまった。

 それでも若さゆえの回復力や懸命のリハビリが実り、シーズン終盤に戦列復帰。監督を引き継いだ井原正巳にも前線の戦力のひとりとして期待を寄せられた。そんな山本に人生最大の舞台が訪れる。12月9日、第103回天皇杯決勝戦。川崎フロンターレとの激闘は後半になっても0-0のまま、拮抗していた。そんな状況を打開しようと、井原監督が最初に切ったカードが山本だった。「全然緊張しませんでした」と、恐れを知らない19歳がピッチで躍動した。持ち味のドリブルで歴戦の川崎ディフェンダーを相手に仕掛け続け、果敢にゴールに迫った。最後のPK戦では絶対に外せない7人目のキッカーとして、ペナルティスポットに歩み寄る。右足のシュートはGKにコースを読まれたものの、体の下を際どくすり抜けてのゴール。強心臓と強運は、ストライカーになくてはならないもの。残念ながらPK戦に敗れ優勝という最高の栄誉は得られなかったものの、それにも匹敵する貴重な経験を得られたルーキーイヤーだった。

天皇杯決勝戦では重圧を感じさせない堂々のプレーぶりだった 【©️KASHIWA REYSOL】

 このオフシーズン、前線の一角を務めていた山田康太がガンバ大阪へ移籍した。1月のチーム始動から、ひとつ空いたポジションを巡る熾烈な競争が続いている。山田が担っていた役割は攻守に渡って欠かせないものだった。守備時には細谷との2トップ気味の隊列で相手のセンターバックにプレスをかけ、パスを受けに来る中盤のボランチを背中で消した。攻撃では、バックラインと前線の間を効果的に繋ぎ、守備から攻撃への滑らかなトランジションを作り出していた。そして何より、チームのために走る献身性が際立っていた。

 山本は「自分も走れる方ですし、守備は当然求められます。そこは完璧にこなさないといけない。康太くんはすごくうまいテクニック系の選手で、自分とはタイプが違うと思いますが、試合にも使ってもらうためには、守備にプラスしてゴールに絡むという結果を残していく必要があります。練習から意識しているのは、自分の力でゴールを決めること。味方からのパスやクロスで決めることも良いことですが、ここから先のことを考えたら個人でゴールを取れる力を磨かないといけないと思っています」

小学4年からレイソル一筋。成長痛での苦しみを乗り越え成長した 【©️KASHIWA REYSOL】

 山本が、こう話すのには理由がある。アカデミーの3年先輩、細谷真大の存在にほかならない。高校3年時にトップチームデビューを果たし、公式戦のゴール数は、1→1→3→8→17と右肩上がり。紛れもない柏のエースに成長し、日本代表では世界を相手に戦っている。「真大くんは裏抜けがうまくて、身長は自分とあまり変わらないけど、ポストプレーや競り合いのタイミングも上手いので、そういうところを見て学ばせてもらっています」

 もちろん、憧ればかりでは追いつけないことも分かっている。「真大くんは今、日本代表に選ばれていて、すごく高い壁だと思うんですけど、自分がその上を行くためには越えなきゃいけない。すごく高い壁ですけど敵わないと思いすぎず、自分らしくめざしていきたいです」

 一方で、細谷と山本は、トレーニング後にリフティング競争に興じるなど、仲の良い兄弟のような雰囲気も醸し出している。細谷は「桜大は1年目から試合に絡めているので、率直にすごいと感じましたし、実際に天皇杯決勝で堂々とプレーしていたのは、やっぱり彼の良さだと思います。ドリブルは自分よりうまいなって感じますし、なんて言うのか、独特のタイミングを持っているんで、相手からしたらすごく嫌な選手なのかなと。本当にいいものを持っていると思います」。互いを認め合う先輩と後輩の関係ができあがっている。

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 細谷は、パリオリンピックをめざすU-23日本代表の中心でもある。アジア最終予選などの代表活動で最大7試合、レイソルの公式戦を欠場する可能性がある。ここをどう乗り越えるかが、今年のレイソルの浮沈に関わってくる。「去年はチームに助けてもらった部分が多かったけど、今年は自分がチームを救うというか、ゴールを決めてチームを勝たせたい」。いつも笑顔を絶やさないマイペースの山本から、内なる闘志と強い責任感が垣間見えた決意の言葉だった。

 その思いをプレーで表現する最初の舞台は、2月18日(日)、伝統の千葉ダービー「ちばぎんカップ」(三協フロンテア柏スタジアム、14時キックオフ)。そして翌週25日(日)には明治安田J1リーグの開幕戦、京都サンガF.C.戦(三協F柏、14時キックオフ)だ。山本桜大の2年目、さらなるブレイクを期する。

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著者プロフィール

1940年に母体となる日立製作所サッカー部が創部、1995年にJリーグに参戦。1999年ナビスコカップでクラブ史上初タイトルを獲得。ネルシーニョ監督のもと、2010~2011年には史上初となるJ2優勝→J1昇格即優勝を成し遂げる。さらに2012年に天皇杯、2013年に2度目のナビスコカップ制覇。ホームタウンエリアは、柏市、野田市、流山市、我孫子市、松戸市、鎌ケ谷市、印西市、白井市の東葛8市。ホームスタジアムは、柏市日立台の「三協フロンテア柏スタジアム」。主な輩出選手は、明神智和、酒井宏樹、中山雄太。

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