【FC町田ゼルビア】勝利に導く「新たな風」は俺たちだ!望月ヘンリー海輝の挑戦

FC町田ゼルビア
チーム・協会

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 FC町田ゼルビアは2023シーズンのJ2を勝ち点87と圧倒的な戦績で制し、初のJ1昇格を決めたクラブだ。主力はほぼそのまま残留し、そこに昌子源、ナ・サンホ、ドレシェヴィッチといった各国の代表経験者を補強している。黒田剛監督のスタイルが浸透した中で、新人選手がポジションをつかむことは決して容易ではない。

 町田の右SBは鈴木準弥が昨季の途中に加入して定位置を確保している。奥山政幸、林幸多郎は左右両方のSBができる選手で、「超えるべき壁」は決して低くない。

望月ヘンリー海輝が持つ圧巻の身体能力

 ただそんな中でも、国士舘大出身の右サイドバック(SB)望月ヘンリー海輝はキャンプで評価を上げた選手だ。192センチの長身で、しかもスプリント力はチームでも最高レベル。彼には町田の……いや日本の他のSBにない強烈な特徴がある。

 酒井宏樹、橋岡大樹といった名前を挙げれば分かるように、最近のサッカー界は「スピードとパワーに恵まれた大型選手」を右SBで起用するトレンドがある。Jリーグの新人選手を見ても、長澤シヴァタファリ(関東学院大→鳥栖)、モヨマルコム強志(法政大→長崎)といった『フィジカル系SB』が複数いた。望月もそんな系譜の一人だ。

 彼にそのストロングポイントを尋ねると「身体能力」というシンプルな答えが返ってくる。高さはもちろんだが、短距離のスピードも三菱養和SCユース、国士舘大と常に1,2を争うレベルだったという。しかも「争っていた相手」は三菱養和なら今野息吹(法政大→ガンバ大阪)、国士舘大なら棚橋尭士(徳島ヴォルティス)と後にプロでプレーしている選手だ。町田にもナ・サンホ、平河悠といったスピード自慢の選手はいるが、彼も負けないレベルにある。

あらゆるポジションを経験して右SBに

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 高校時代、三菱養和時代の望月は「荒削りな原石」という印象で、プレイヤーとしては1学年先輩の中村敬斗(スタッド・ランス)、同期の栗原イブラヒムジュニア(SC相模原)といった年代別代表の影に隠れていた。一方でSBだけでなく左右のサイドハーフ、FW、ボランチと様々なポジションで起用されていた。国士舘大では2年次にセンターバックも経験していて、そういった遍歴は万能性を求められるSBで間違いなく生きるはずだ。

 長距離走も彼の強みだ。名護キャンプの2日目、チームを2グループに分けて行われたYO-YOテスト(20メートルの往復走を10秒の休憩を挟んで繰り返す持久力テスト)ではグループ1位となり、タフさを証明してみせた。

 長距離、短距離の走力があり、対人プレーの強さや高さを持ち、ロングスローも秘めた彼にとって、右SBは天職と言っていい。彼も「スピードを活かせるポジションだと思うので、向いているのかなと思っています」と口にする。

プロ初のキャンプで得たもの

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 キャンプ期間中のトレーニングマッチでもコンサドーレ札幌の元日本代表・菅大輝らと堂々と渡り合い、自信をつけた。

 プレー、フィジカルで強烈なアピールを見せる彼だが、どちらかと言うとシャイで謙虚な性格の持ち主。加入直後の取材でも課題を口にした上で「試合に出られるなら、1試合でも多く出たい」という抑えたコメントをしていた。

 キャンプ中の取材でも謙虚なコメントは変わらなかった。一方でプレッシングへの連動、前の選手を動かすコーチング、前線へのフィードなど「課題感」が具体的になっているところは印象的だった。「どういう方向の努力をすればいいのか」さえ明確になれば、克服に向けた道も拓けるはずだ。

全国制覇の大一番で悔しさを味わう

 じっくり話してみると落ち着き、芯の強さも伝わってくる若者だ。「自分が全力でやっているとき、自分が何か自信のあるもの(で上手く行かなかったとき)はすごく悔しいなと感じます」と口にする負けず嫌いでもある。

 今までのサッカー人生で悔しかった経験を尋ねると、大学3年次の総理大臣杯決勝を挙げてくれた。2022年9月4日、国士舘大が大阪学院大を下して全国制覇を決めた試合で、彼は3年生としてただ一人出場し、フル出場を果たしている。

「チームは勝ったんですけど、本当に、ふがいないプレーをして、チームの足を引っ張ってしまったので悔しかった」

 味の素フィールド西が丘のバックスタンドが満員の観客で埋まった大一番で、彼は浮足立ってしまった。ただその経験をその後のプレーに活かしている。

「あれほどの観客を前にプレーすることに慣れてなかった。メンタルの部分で練習やリーグ戦からそこをイメージすることを心がけている」

開幕戦では仲間と「再会」も?

 2月24日にホーム町田GIONスタジアムで開催される開幕戦は、ガンバ大阪が対戦相手だ。望月がそのピッチに立ったならば、大学サッカーでは経験できないような大観衆と熱気の中でプレーすることになる。1年半前に経験した悔しさを晴らす、自身の成長を証明する最高の場だろう。

 G大阪には高校時代のチームメイトだった今野息吹選手も所属している。右SBの望月と左サイドの今野が同時に試合に出れば、直接マッチアップするはずだ。彼も「やることができたら嬉しいなとは思いながら頑張っている」と口にしていた。

 自己アピールは「自分の高さ、スピードを生かしたプレーに注目していただきたい」と一言。

 町田というチームの魅力についてはこう答えてくれた。

「『1本中の1本』とよく言われます。失点を少なくして1点にこだわるチームの姿を、ファンやサポーターの皆さんには楽しんでもらえたらなと思っています」
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著者プロフィール

1977年、「サッカーの街・町田を代表するサッカークラブをつくる」という考えの下、地域の小学生たちを選抜して結成したFC町田トレーニングセンターを設立。裾野から頂点へと市民の力で自然発生的にクラブの強化のピラミッドを築き上げ、1989年にFC町田トップチームが誕生。クラブ名の「ゼルビア」は、町田市の樹である欅の英語名と、町田市の花であるサルビアを組み合わせて名付けられた。本拠地は町田GIONスタジアム。地域の皆様に愛され、地域の発展に貢献できる町のシンボルになるべく、「天空の城 野津田」というブランディングを行っている。

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