“大金星へ好条件”が揃う今夜のマンチェスター・C戦…マチェイ監督も「世界王者まであと2試合だ!」

浦和レッドダイヤモンズ
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 百戦錬磨の羽生直行通訳が「play against Manchester United, Manchester City……」と言い直した瞬間を、マチェイ スコルジャ監督は逃さなかった。
 ニヤリと笑って「今、このタイミングで戦うなら、マンチェスター・ユナイテッドのほうがいいですねえ」と茶目っ気たっぷりに言う。
 その様子から、指揮官が決戦を前にリラックスしていることが伝わってきた。
「1年前に浦和レッズと契約したとき、1年後に(FIFA)クラブワールドカップ(サウジアラビア2023)に出場する、そこでマンチェスター・シティFCと対戦するなんて想像していませんでした。あの頃はACL(AFCチャンピオンズリーグ2022)で優勝することだけにフォーカスしていましたから」

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 想像していなかったのはマチェイ監督だけではないだろう。おそらく選手たちも1年前には思い描くことのなかった大一番が近づいてきた。
 クラブワールドカップ準決勝のマンチェスター・シティ戦が、いよいよ12月19日21時(日本時間20日深夜3時)にジェッダのキング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムでキックオフされる。
 マンチェスター・シティは2019年と23年の夏に来日し、プレシーズンマッチを開催しているが、それはあくまでも国際親善試合。今や「世界最強」と謳われるマンチェスター・シティと“公式戦”で戦えるチームは、ヨーロッパを除いてほとんどない。今回の対戦は「人生で1度あるかないか」(酒井宏樹)の絶好の機会だと言える。
 しかも、浦和レッズにとって“勝てるなら今回しかない”というくらいに好条件が揃っており、大金星をあげる千載一遇のチャンスなのだ。

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 言うまでもなく、マンチェスター・シティはシーズン真っ只中にある。準決勝3日前の12月16日にはクリスタルパレスFCとのプレミアリーグ第17節を戦ったばかり。17日にサウジアラビア入りを果たしたところだ。
 浦和レッズと比べれば移動距離は長くはないが、マンチェスターの気温が10度前後なのに対し、ジェッダは30度。試合が行われる夜は20度前半まで下がるとはいえ、気候の変化に適応するだけの時間はない。
 チームの調子も芳しくない。プレミアリーグではこの1カ月で1勝4分1敗とペースダウンし、現在4位に甘んじている。クラブとしてのターゲットは、あくまでもプレミアリーグ4連覇とUEFAチャンピオンズリーグ連覇。そのため、チームを率いるジョゼップ グアルディオラ監督はクリスタルパレス戦前日にこんなコメントを残している。
「選手たちには、クラブワールドカップで優勝しようと必死にならないでもらいたい。ただ2試合プレーするために行くだけだ。もし勝てなかったとしても、またチャンピオンズリーグで優勝して、この大会に戻ってくればいい」

前日会見に臨むマンチェスター・シティのジョゼップ グアルディオラ監督 【©URAWA REDS】

 その自信には驚かされるものの、クラブワールドカップに向けたモチベーションは決して高くはなさそうだ。しかも準決勝はクリスタルパレス戦から中2日で迎えるゲームだから、メンバーを大幅に入れ替える可能性が少なくない。
 おまけに、今季のリーグ開幕戦でハムストリングを痛めて手術したベルギー代表MFケヴィン デ ブライネは復帰しておらず、世界最高のストライカーと名高いノルウェー代表FWアーリング ハーランドも12月6日のアストンビラ戦を最後に欠場が続く。ふたりともクラブワールドカップのメンバーに登録されていたが、準決勝前日に若い選手と入れ替えとなり、大会への欠場が決まった。
 それでも強いのがマンチェスター・シティたるゆえんだが、“いつもの絶対王者”でないことも確かだろう。“シティフリーク”でもある小泉佳穂も対戦が決まってすぐ「これ以上にない好条件だと感じた」と言う。
「相手は11連戦中で、気温差もあって。これで試合時間が17時半(クラブ・レオン戦のキックオフ時間)だったら言うことはないんですけれど、21時でも気温は高い。本当に好条件だと思うので、あとは僕らがどれだけ勝利を信じられるか。相手をリスペクトしすぎず、勝ちに対して貪欲になれるかが大事。断固たる決意が必要だと思います」

小泉佳穂 【©URAWA REDS】

 16日のクリスタルパレス戦では、GKエデルソン(ブラジル代表)、DFカイル ウォーカー(イングランド代表)、ルベン ディアス(ポルトガル代表)、DFナタン アケ(オランダ代表)、DFヨシュコ グバルディオル(クロアチア代表)、MFルイス リコ(イングランド代表)、MFロドリ(スペイン代表)、MFベルナルド シウバ(ポルトガル代表)、MFフィル フォーデン(イングランド代表)、MFジャック グリーリッシュ(イングランド代表)、FWフリアン アルバレス(アルゼンチン代表)がスターティングラインナップに名を連ねた。
 準決勝でターンオーバーをしてくるなら、DFジョン ストーンズ(イングランド代表)、DFマヌエル アカンジ(スイス代表)、MFカルバン フィリップス(イングランド代表)、MFマテオ コヴァチッチ(クロアチア代表)、MFマテウス ヌネス(ポルトガル代表)、FWオスカー ボブ(ノルウェー代表)らが出てくるだろう。いずれにしても各国代表の実力者たちだ。
 マンチェスター・シティの今季の基本フォーメーションは4-2-3-1や3-2-4-1だが、あくまでもそれはスタートの並びを数字で記したにすぎない。試合が始まれば、相手や戦況に応じて彼らの立ち位置は流動的になる。センターバックが中盤に上がることもあれば、サイドバックが中央に入ることもある。

前日会見に臨むマンチェスター・シティのベルナルド シウバ 【©URAWA REDS】

 そうした変化に合わせて必要以上に相手選手に食いつけば、空いたスペースをマンチェスター・シティに次々と使われることになる。彼らはその瞬間を作り出そうとしているのだ。
 だからこそ、浦和レッズとしては特別なことはせず、いつもどおり4-4-2の布陣でミドルゾーンに守備ブロックを敷き、粘り強く戦えばいい。「組織的に守備をして、隙を作らないところが僕らの強み。我慢比べになると思います」と小泉も指摘する。
 浦和レッズの強みは、今季のJ1リーグ最少失点(27失点)を誇る守備力だけではない。ブライアン リンセン、アレックス シャルク、中島翔哉、エカニット パンヤと“攻撃の切り札”と言える存在が揃っている点も大きな強みだ。
 0-0のままゲームを進め、後半に入ってギアを一気にアップさせる――クラブ・レオン戦のような戦い方をマンチェスター・シティ相手にもできれば、理想的だろう。同胞のシャルクが準々決勝で活躍し、燃えているリンセンが意気込む。
「難しい試合になると思います。攻撃よりも守備の時間が多くなるでしょう。しかし、チャンスはある。恐れながら挑む必要はない」

ブライアン リンセン(左)とアレックス シャルク 【©URAWA REDS】

 気になるのは、浦和レッズのスターティングラインナップだ。ベースはクラブ・レオン戦の先発メンバーとなるはずだが、果たして酒井宏樹のスタメン復帰はあるのかどうか。
「コンディションは上がってきていますが、こういうときこそ慎重にやらないといけないと思います」と語ったキャプテンは、その一方で「(オリンピック)マルセイユ時代にシティと対戦したことがありますが、シティと戦うのは全サッカー選手の目標であり、光栄なこと。僕たちは明日の試合に懸けています」とも力強く語っている。スタメン復帰への期待も高まるというものだ。
 その酒井はマンチェスター・シティ戦のポイントとして「失点したあとのリアクション」を挙げた。
「やはりポンポンと取られてしまうと、そのまま試合が壊れてしまう。試合を壊してしまうのか、試合を継続させるのか。それは自分たち次第。例えば(FIFAワールドカップ カタール2022の)ドイツ戦でもスペイン戦でも先制されましたけど、そこでチームとしてどうリアクションしたかが結果に反映されました。僕らが(AFCチャンピオンズリーグ2022決勝第1戦で)アルヒラルと戦ったときもそうでしたよね。僕らはすでにやれることを証明しているので、明日もチーム全員で証明したいと思います」

酒井宏樹(左) 【©URAWA REDS】

 12月15日のクラブワールドカップ準々決勝、1-0でクラブ・レオンを破った直後のロッカールームでマチェイ監督は選手たちを集めて、こんな檄を飛ばした。
「ワールドチャンピオンまであと2試合だ!」
 サッカー選手なら誰もが羨むマンチェスター・シティとの大一番。しかし、マチェイ監督も、選手たちも、誰ひとりとして“思い出作り”“記念マッチ”などとは思ってはいない。浦和レッズは本気でマンチェスター・シティを倒しにいく。
 12月22日のファイナルの舞台に立っているのは、欧州王者ではない。アジア王者の浦和レッズだ。

(取材・文/飯尾篤史)
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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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