【浦和レッズ】FIFAクラブワールドカップ準決勝直前!!【マンチェスター・シティFC】チーム情報・勝利へのポイント

浦和レッドダイヤモンズ
チーム・協会

【©URAWA REDS】

FIFAクラブワールドカップ(FCWC)の準々決勝でクラブ・レオンに勝利した浦和。次なる相手は欧州王者のマンチェスター・シティFCだ。大会に臨むにあたり、まずはクラブ・レオンに集中したいと選手たちは語っていたが、そこで勝てばマンチェスター・シティに挑めるということは当然ながら念頭にあること。
しかし、この対戦は思い出作りではない。本気で倒しに行った先にどういう結果が待っているのか。岩尾憲は「(スタジアに訪れた)多くの人たちはマンチェスター・シティが勝つことを観に来ていると思うんですけど、そういった状況をひっくり返せるほど気持ち良いものもない」と語っていた。
これまで筆者は日本代表など、多くの試合を中東で取材しているが、ファンの多くは試合展開で肩入れするチームが変わったりもする。マンチェスター・シティを観に来ていると言っても、おそらく熱狂的なファン・サポーターというのはごく一部であり、観客の多くは試合の流れ次第で、浦和に引き込んでいくことができるはず。浦和の心強いサポーターはいるが、スタジアムの雰囲気も変えていくような戦いぶりに期待したい。
周りが煽らなくても、浦和の選手たちは体中にアドレナリンが満ち溢れるようになるはず。だからこそ出せるパワーというものもあるが、試合は90分、同点なら30分の延長戦がある中で、熱い中にも冷静さが求められてくる。スタートから出し惜しみをする必要はないが、いつ出るべきか、いつ耐えるべきかという判断をチームで共有して、どんなに苦しくても意識がバラバラにならないように、ゲームを運んでもらいたい。

マンチェスター・シティ概要

【©MANCHESTER CITY FC】

今さら説明する必要はないかもしれないが、世界最高峰のFAプレミアリーグを過去6シーズンで5度優勝しており、2020―21シーズンから三連覇中。しかも、昨シーズンはFAカップの優勝と、UEFAチャンピオンズリーグで悲願の欧州制覇を初めて果たした。
マンチェスター・シティにとってFCWCは初めてだが、大手ブックメーカーのオッズが示す通り、優勝の大本命とみなされていることは間違いない。ただ、11月12日にチェルシーと引き分けてから、リーグ戦は6試合で1勝4分1敗と下降気味。サウジアラビアに移動する直前に行われたクリスタル・パレスFC戦では2−0から終盤に追いつかれて、勝ち点3を逃してしまった。
しかも、リーグ戦で14得点のノルウェー代表FWアーリング ハーランドがここ数試合を欠場しており、サウジ入りはしているものの、浦和戦に出てくるかは微妙な状況だ。また本来の司令塔であるベルギー代表MFケヴィン デ ブライネもプレミアリーグ開幕戦で負傷してからピッチに戻れていない。また開幕後にフランスのスタッド・レンヌから加入して、2得点5アシストを記録していたベルギー代表のジェレミー・ドクも、怪我で黄色信号となっている。
そうは言っても欧州王者のマンチェスター・シティである。後からのビルドアップ、チャンスメイク、フィニッシュと全て高レベルで、相手ディフェンスに引かれても、そこを崩し切ってゴールに結び付ける力がある。60%、多い時は70%を超えるボール支配率で全体を押し上げて、その流れでセントラルMF、サイドバック、時にはセンターバックもアタッキングサードに入り込んでくる。
システムは4ー1ー4ー1をベースに4ー2ー3ー1、試合によっては3バックも使うが、どんなスタートポジションであれ、ボールを握りながら自在に可変して、押し込めば6人、7人とゴール前に顔を出していくスタイルに変わりはない。グアルディオラ監督はウイングが左右の幅を取りながら、インサイドに空くスペースを突くという戦術の先駆け的な存在だが、最近は守備を固めてスペースを与えない”シティ対策”が普及してきている。
それでもボールを動かしながら、小さなギャップも逃さない意識が選手間で共有されているのはマンチェスター・シティの強みだ。ボールを持って前を向けば、相手の守備が完全に崩れてなくても、ドリブルでペナルティエリア内に潜り込んだり、ミドルシュートでゴールを狙う能力も備えている。流れによっては右サイドバックのカイル ウォーカーやセンターバックのルーベン ディアスなども、直接ゴールを狙ってくる。
ただ、マンチェスター・シティにとっても異なる環境で、普段通りのサッカーを100%やることは難しいだろう。クリスタル・パレスFC戦から飛行機移動を含む中2日で、サウジアラビアの気候やピッチコンディションにも慣れていない状況を考えても、浦和に勝機は十分あると予想できる。

対戦相手情報

【URAWA REDS】

注目選手及びその特徴

エデルソン
ハイラインのディフェンスを背後から支えるワールドクラスの守護神。攻撃ではフィールドプレーヤーのように味方からパスを引き出して、長短のボールを広角に振り分ける。ボールを握って相手陣内まで攻め込むスタイルがメインのチームにあって、一発のフィードで相手の背後を取れるエデルソンのキックは明確なアクセントであり、相手のディフェンスが勇気を持って押し上げることを許さない。浦和のGK西川周作も走り出す味方に通すロングパスを得意としており、真剣勝負の中でもタイプの似た二人の競演は見どころの1つだ。
グヴァルディオル
古代ローマの剣闘士”グラディエーター”を連想させる屈強な肉体を誇るが、攻撃ではテクニカルにボールを捌き、左足のキックで決定的なシーンを演出する。クロアチア代表としては酒井宏樹も出場した、カタールW杯ラウンド16の日本戦を記憶している浦和のファン・サポーターも多いはず。あの大会では対人能力の高いセンターバックとして評価を高めたが、現在マンチェスター・シティでは左サイドバックが板に付いてきており、同エリアでの守備やビルドアップはもちろん、高い位置まで攻め上がるシーンが目を引く。クラブ・レオン戦で衝撃的な復帰を果たした酒井との迫力ある攻守のマッチアップも見られるかもしれない。
リコ ルイス
イングランド代表の新鋭は”サッカーIQ”が高く、中盤とサイドバックをハイレベルにこなすことができる。そのプレーぶりから、ドイツ代表で長く活躍したフィリップ ラームに例える声もあるほど。右サイドのベルナルド シウバがボールを持てば、中盤から素早く駆け上がってパスを引き出すか、ディフェンスを引き付けて、周りの選手に効果的なプレースペースをもたらす。クリスタル・パレスFC戦ではグリーリッシュの左からのカットインに連動して、背後に抜ける動きから初ゴールを記録。82という大きな背番号を付けているが、同じアカデミー育ちのノルウェー代表MFオスカー ボブとともに、目が離せないヤングタレントの一人だ。
グリーリッシュ
チーム状態が下降線気味のマンチェスター・シティで、今最も乗っている選手の一人だ。ジェレミー ドクの加入により、左サイドアタッカーのセカンドチョイスになっていたが、12月3日のトッテナム戦で途中出場から今シーズンの初得点を挙げると、ドクを欠いた最近の2試合で連続ゴール。波に乗ると手が付けられないタイプだけに、浦和にとっても一番警戒するべき選手かもしれない。独特のリズムを持つ緩急自在のドリブルが持ち味で、プレーの参考にしているJリーガーも多い。ホームスタジアムでは中央分けの前髪をヘアバンドで上げたヘアスタイルを真似したファンがよく目に付く。
フリアン アルバレス
カタールW杯で世界王者になったアルゼンチン代表の俊英。”メッシの相棒”としても知られる通り、とにかく前線でよく動き、効果的に味方からのパスを引き出す。言わば”汗をかけるテクニシャン”だ。4得点6アシストというリーグ戦の結果が示す通り、ゴールを決めることも、決めさせることもできる。170cmと大柄ではないが、クリスタル・パレスFC戦で見られたように、クロスにヘディングで合わせる形も。ハーランドと同時に出る時はセカンドトップ的なポジションだが、ここ数試合は1トップでプレー。相手ディフェンスを掻き回す役割を担いながら、抜け目なくゴールを狙う。

浦和レッズ勝利のためのポイント、試合の見どころ

そこからブロック内に入ってきたボールホルダーを捕まえたり、蹴り込まれたボールをアレクサンダー ショルツやマリウス ホイブラーテンが力強く跳ね返して、セカンドボールを拾ったところから、素早く攻守を切り替えてカウンターを狙う。そこでリトリートされたら、ボールを握って後ろから組み立てるという基本的な優先順位がある。相手がマンチェスター・シティだからと言って、急にやり方を変える必要がないのは強みだ。
ただし、あまりにも下がって構えてしまうと、どんどん人数をかけられて、ディフェンスはいても一瞬の入れ替わりで危険なフィニッシュへ持ち込まれたり、セカンドボールから二次攻撃を受けることになるだろう。そうなるとボックス内のファウルやハンドによるP Kやカードのリスクも高くなる。ある程度、ボールを持たれる側になるのは想定内にしても、ミドルゾーンに近いところで耐えること、攻撃もなるべく高い位置までボールを運ぶことで、ハーフコートゲームのような状態にならないようにしたい。
基本はカウンターやリスタートから少ないチャンスを狙うことになるが、カタールW杯のスペイン戦で日本代表がそうだったように、90分の中で浦和が攻め込める時間帯は必ずあるはず。特に中東の慣れない環境での初戦ということもあり、マンチェスター・シティもずっとボールを動かしながら可変して、ハイプレスで即時奪回を狙える訳ではないことが想定できるからだ。
その時間が10分、20分であっても、浦和が恐れることなく攻勢をかけることがマンチェスター・シティの守備の動揺を生むことになるだろう。正直、ゴール前での彼らの守備はあまり強くない。そうした状況でホセ カンテのシュート力は頼りになるが、一度エデルソンに防がれたこぼれ球を押し込むような形が決勝点になる可能性もある。また相手陣内でファウルをもらえれば、岩尾 憲のクイックリスタートなど、相手に知られていない強みを生かさない手はない。
もちろんマンチェスター・シティに勝利した先にはファイナルが待っているが、今はそこを考えずに、持っているエネルギーを全て出し尽くして、欧州王者を倒すことに集中してもらいたい。ただし、勝利しても”記念撮影”には注意が必要だ。最終目標はマンチェスター・シティに勝つことではなく、ファイナルで世界一になることなのだから。

文:河治良幸(サッカージャーナリスト)
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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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