千葉ロッテ 2023年総括

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたSyu.さんによる記事です。】
 目の前で胴上げを見せつけられた公式戦。粘りを見せるも覇者の前に屈したCS。2度も大阪の地で2023年の幕は閉じた。

 それでもレギュラーシーズン最終戦で2位を奪い返し、CS 1stを劇的な突破。Finalステージでもプライドは見せてくれた。そんな千葉ロッテの戦いぶりを今年も殴り書きしました。あくまでも個人的感想です。その点、ご了承ください。

☆投手陣

 まずは先発。石川歩や二木康太が故障で出遅れ。出遅れどころか結果的に彼らが今季一軍登板なしに終わったことは最も想定外だった。

 開幕からブルペンデー除き複数先発したのは今季たったの9人のみ(佐々木朗希・種市篤暉・小島和哉・美馬学・西野勇士・メルセデス・森遼大朗・交流戦途中からカスティーヨ・中森俊介)

 持論として先発ローテは最低2週間は別のローテが組めるくらいにしないといけないと考えている。つまり1週間6試合と仮定して12人。

 数年前までは良質な先発投手が揃っていたものの、気づけば駒不足となっていた。昨季まで度々谷間を投げていた本前郁也や佐藤奨真が全く姿を見せてないこともそうだし、下からの突き上げもなかった。前述の森に関しては今季最低でも谷間で2桁先発するくらいには成長して欲しかった。


 後半戦オールスターから中4日で先発した佐々木朗希の脇腹故障が全てだったかもしれない。こればかりは故障云々の前に中4日で投げさせる必要性は感じなかったかな。ただでさえ駒が足らない状況だったが、これを境にさらにやり繰りに苦労を重ねた。
 8月の首位追撃へオリ相手に状態の上がらない美馬学・先発経験の乏しいカスティーヨで対抗せざるを得なかったほど。明らかに大事な時期を任せられない投手が投げているのは見てて辛かった。
 耐久性ある小島を除いて中10日ローテを組んでいたものの全く余裕はなかった。

 2桁勝った小島・種市は頑張った。
 小島は対左の苦手意識が薄れてきた。昨季.280だった対左被打率も.257と改善は出来た。真っ直ぐインコースを使えるようになり、落ち球の幅を使い分けられるようになったことが大きかった。平均奪三振6.7であとは打たせて取る部分はあるが、そこをメンタルで押し切っていくのが彼の長所。最終戦とCS 1stカッコよかったよ。

 種市も初めて10勝に到達。1つ球が悪いとカバー出来るボールがないかつ捕手が柿沼の日が多いため、配球で抑えられるような要素がなく、カウント悪くしてストレート突っ込んでのパターンが多かったかな。2019でも見たような。山本由伸がアメリカ飛び立つであろう来季こそ、最多奪三振行こう。規定投球回で12勝いくぞ。

面白いのはカスティーヨ。日本の球にフィットしてからは小さすぎず手元で切れるスラット・チェンジの対構成でゴロ量産。着実に掴んでいるし、来季も見てみたい。80球で確実に試合を作る要員としてはうってつけかな。

☆守備の徹底

 
 勝てる試合を多く落とした要因として守備の乱れも挙がる。序盤こそ12球団最少失策を誇っていたものの、前半戦31失策から後半戦52失策。終わってみればリーグ5位の多さに沈んだ。
 特に負けが込んだ8月26試合で26個。

 内野守備の乱れ、途中加入したブロッソーの反応の悪さ、ファンブルに何度も頭を悩ませた。もう明らか相手打者も三塁方向目掛けて狙っているような打席も増えていた。
 セカンド・中村奨吾も横のフットワークは低下が顕著になってきた。追いつけた打球もそうだが、少しカバー遅れたり送球ふわついた場面があったりも。

 失策に関わる部分ではないが、捕手では田村龍弘が以前より実戦感覚が落ちて高速化・緻密化した現代野球に対応出来ていない印象を受けた。
5年ほど前からフレーミングに関しては長けている部類ではなかったが、今季はブロッキングも止めて欲しいものまで逸らす場面が増えてしまった。
 小島やメルセデスなど左のクロスファイア系にミットが垂れて最悪のマッチとなったり、多彩な変化球を引き出させるために美馬や森と組むも、球1個分が命取りになりやすい彼ら相手にボールが嵩み崩れる場面も目立った。

 捕手の姿=チームの姿である。今季は2軍で下積みさせていたが、今の千葉ロッテでまともなディフェンス備わっている捕手が松川のみである。ドラフトの指名傾向を見ても来季から本格的に1軍で計算をしなければいけない。


☆首脳陣・采配

◇試合における作戦面

 首脳陣に関しては1年目で今年は仕方ない点もあったが、あまりにも終盤は選手の特徴やデータとか無視した決断が多かった。左右にこだわった采配も多かったから、そこは反省していただきたい。どうしても終盤は1点にこだわるケースも多かったから「この1点を、つかみ取る」方向にシフトしていかなければならないが。

 例えば角中勝也→石川慎吾。対左の角中がさほど良くなかったのだが、「左投手」だから代打・石川慎吾の側面が強かった試合がある。9月24日のソフトバンク戦。2点ビハインドの5回裏。相手が左の嘉弥真に変わったところで、この日4番に入っていた角中に代打で彼が告げられた。
 いくら左投手だからとはいえ、この時期、深刻な得点力不足の中で得点源になれる角中を下げるのは論外だし、この展開で簡単に4番を下げるなんて。控えは石川と藤原だけで残り後半守らせるなら守備のマイナスだって上回る。しかもソフトバンクの継投を見ていれば、そのうち右投手に代わるのは明白だ。案の定代わったし。

 「左が来たから左!」ではなく、こうした展開を予測できるか。駒を一つ無駄にしないようにする。ここは来季に向けた課題だろう。投手出身の吉井監督なら、このあたり試合の流れを読む力は一番予測できるはずだ。

 バントもそう。例えば4月下旬のオリックス戦。結構リスキーだが、3回表に平沢のバント失敗があった。目の前の2点目取りにスコアリングポジションの確率と最も球数稼ぐ見込みある彼に打たせて後先山本由伸を追い詰める確率どちらがよかったかなぁ、みたいな。この辺りは紙一重、この1点か、あとの相対劣化にかけるか的な。

 開幕から交流戦にかけては代走・和田の投入タイミングも早かった。もう一度打席の回る可能性ある山口に対して自ら打力、得点力を低下させる方向に持って行こうとするのは疑問である。同点の場面や勝ち越してたとしてもペルドモ益田に対する不安も時期によって強かったし、1点の中で投げ続けていれば疲労は蓄積していく。その積み重ねが夏場以降のブルペンの不安定さに繋がったかもしれない。

 そのブルペンだが開幕前から状況に応じて勝ちパターンも日替わりで決めるレバレッジ采配を掲げていたものの、序盤からペルドモ・益田に頼る試合が多かった。一時澤村と益田を入れ替えていた試合もあったとはいえ。
 勝てる確率を高める上で勝ちパターンを構築するというのも裏を返せばレバレッジの1つでもあるのだが。
 もう少し準A格に勝ち試合任せてもよかった試合も最初の方はあった気がするし、新戦力の試しも行ってよかったと思う。また今季は彼らを出さなくて済んだ試合というのも少なかった。

 結局3連投を防げても彼らの登板数はどんどん嵩む一方で、交流戦明けの逆転負けも目立つ。特に楽天戦においては上記2人で落とす試合も多く、後のCS争いに発展するほどだった。
 投げさせすぎたペルドモは春先と比べてフォームが崩れてリリースにバラツキがあったし、益田も2年続けて夏以降はサッパリ、質自体のピークは2019だったが、そこから下降線を辿り制圧するクローザーから試合を終わらせるクローザーへと下がっている模様。
 正直、外野前進で頭を越えられる球威に落ちており色々と厳しい部分はある。後ろ投げる投手でそれは致命的である。

◇運用・管理面

 ただ1番残念だったのはコンディション管理が弱かったところかな。
 1軍2軍通じて立て続けに故障者が出る、別の箇所での再発など。大学病院との提携などでメディカルチェック等には入念に行なっていたと思っていたものの、これだけ多発していては医療体制が整っていなかったのか、1軍2軍とも連携が取れていなかったのか。チームのトレーニング・フィジカル部門の問題なのか。疑問が浮かぶ。

 特に投手陣の怪我が目立った。投手出身監督だけに気を遣っていたとは思うが、それゆえこの惨状なのは誤算である。9月の西村とかペルドモなど駒が足らずに突貫工事で昇格させている面もある。ペルドモに関しては再昇格後に右肩痛で結局2軍行き、CSでの登板機会もなしに終わっている。

 最大出力が桁違いの佐々木朗希はともかく腕の引き上げが直角型の種市、岩下、アームの強いカスティーヨ。ここまで投手の怪我が多発するとメカニクスにも問題があるのだろうか。石川歩も先日、右肩の手術を行った。
 髙部の件しかり、もしかすると関節系の医療とか専門性に弱いのか。西野や種市の復活を見ていると、そんなことはないのかもしれないが、それとも担当や専門家が変わっているのか。一般のファンがここまで詮索してはいけないだろうが色々と推測はつく。

 もちろん選手自身の耐久性、フィジカルも今季を見てると明らかに不足しているのも事実である。夏場の失速も頷ける。ここからは野手を軸とした話だが、選手自身の動き・腕の振りやフットワークに疲れが見えるときもあったし、藤原恭大とか和田康士朗と間違えちゃった。

 例年シーズン後半におけるスタミナ切れを体重管理表、ゴロ・フライの捕球タイムや走行距離など、科学的アプローチから運動率とかを算出して、これだけ疲労度が溜まってパフォーマンスが落ちる等のデータがあれば率直に知りたい。
 質重視のメジャー流の調整をしている井口・吉井からすると、それは戦える体にして2月1日を迎えられていなかったってことだよね。彼らは出来てる前提で進めてたが、それ以前の話。

 シーズン終了後のコメントで「どれだけ選手を大事に扱っても怪我や疲れが出てしまった」とおっしゃっていたように、吉井監督も相当苦労されていた様子だ。現代野球でコンディション管理は必要不可欠。可能な体制と選手層の構築が鍵。

☆攻撃面

 次に攻撃面について。得点数505はリーグ4位ながら優勝したオリックスとは3点差。リーグトップのソフトバンクとも30点差に留まっていることから相対的に見れば得点力不足に陥っていたわけではない。昨季最下位だったチームOPSもリーグ4位.665。
 荻野貴司が1/3の試合数、昨季のヒットメーカー髙部瑛斗が今季全休だったこと、昨季まで依存していたマーティン・レアードが退団したことを考えるとなおさらだ。

 打てない打てないとはよく言われるものの、昨季同様決して点を取れないわけではなかった。その日の状態や相手投手のデータをもとに142通りにも及ぶ打線が功を奏し、序盤は茶谷健太・池田来翔など日替わりヒーローも誕生させた。その中で最終盤は打順も固めていった。しかしこの選手はこの打順がテンプレ、ギリギリの中で苦肉の策としてのスタメン組んでいる感も否めなかった。

◇得点源の左打者

 今季の攻撃を支えたのは間違いなくポランコだ。なんとパ・リーグ本塁打王に輝いた。春先の状態からここまで持ち直すとは参りましたの一言である。はじめはパの投手たちに苦戦したが、楽天戦での延長決勝本塁打の5月頭あたりからベースに近づき始めて徐々に打球速度、角度もつき始めた。身体が絞れた夏場からさらに加速。理想的な量産曲線を描いた。

 ただし終盤やCSでは段々と高低を使った攻めや、対左の外角に最悪歩かせていい変化球に我慢出来ず手を出す、スイングが大きくなって遠回りしてきた。本来なら起点よりの2番に置きたい。
 複数年での残留ができたら最高ではある。球団が掲げるvision2025プロジェクト。その狙いは若手野手の大成だったが、まさかポランコの複数年になりつつあるのは想定外だ。

 次に角中勝也。ここ数年の投高化に苦戦していたが、素晴らしい復活だった。
 早いカウントから仕掛けて真っ直ぐに負けない
粘りを犠牲にするシーンも増え、あっさりフォークボールに空振りしてしまうなんてこともしばしあった。それをしてでも真っ直ぐに張って潰していき対応力が向上。

 今年の彼はボールを当てる、捉えるというよりは潰しに行ってる印象を受けた。今季の、いや引退試合での名場面集のハイライトになると過言ではないオスナからのサヨナラ弾はまさに、これしかないと覚悟を決めた一振りだった。
 OPS.861は規定未到達ながらキャリアハイだ。経験と技術でカバーしていく姿勢。層を厚くするうえでの理想的なポジション・成績だ。近年の千葉ロッテにおいて不在であった左のバランサーの立ち位置に収まってくれた。

◇中村奨吾

 反対に、この2年千葉ロッテの得点源となっていたが今季は不振に陥ったのが中村奨吾。万全ならオフェンスの軸とならなければならない選手。
 速球に強く、変化球も万能に対応できる。起点も返しも両立可能なバランサーだが、今季は変化球に対するアプローチが雑で、21.22年みたいに落ち球を抜いた打撃で拾うのではなく手打ちで空振りするシーンも多かった。下半身の踏ん張りが効いてなさそうに思えた。
 近年は待球寄りの打撃だったが、今季は初球からかけていく機会も多かった。

 この4年契約の間でセカンドとしての運動量や守備範囲が確実に落ちる以上、今後の中村奨吾に対するキャリアプランを考えたとき、行き着く答えは長打増やそうになる。その一歩だったかもしれない。井口もその路線にシフトしていった。一昔前ならOPS.850も残せたとは思うが、最低.750は見積もらなければいけない。角中・ポランコの間で統率とる姿を見たかった。

若手野手について

 多くの若手野手を抱え、彼らを中心に夢あるチーム作りを行おうとしたのは理解できるが、プロスペクトたちの隆盛期を待つまでにこれだけ投手のレベルが上がっていったのは想定外だったかもしれない。そういう意味ではあおりを受けていると言っても過言ではない。少し高校生のポテンシャルにかけすぎた側面は強かったかもしれないが。
 他球団のパワーバランスを把握して過渡期を読むまではよかったものの、低反発と化したボールなど外的要因も阻害に拍車をかけている。

 とはいえ選手個々にも問題はある。特に左打者。安田・藤原・佐藤都この辺り揃って天井.650に終わってはならない。打者育成の意味合いも込めたテラス設置の効果がなしてない現状だ。
 左打者は以前よりもライナーの意識で入る、右中間破る打球は増やせる、今季終盤、和田が可能性を感じさせた。
 スカウティングの段階から強く振れても「どう振っているか」が微妙な選手が多いかな。反動つけすぎ、ヘッド倒しすぎ、力の伝え方など欠陥がある。特に右打者はオリックスに預けさせれば矯正出来るのではと思うくらい。

 友杉とかも実は長打バンバン出せる可能性なくはないとか。ケース寄りの打撃が目立つが真っ直ぐ引っ張った打球も今季いくつか出せている。可能性を引き出したい。守備でも二塁のオプションがつくと起用法が広がる。

☆収穫・来季以降に向けて

 吉井監督1年目。来季に向けての収穫も作れた。
 ・藤岡/友杉でSSオプションが増やせた
 ・滞っていた高卒投手育成サイクルで横山・中森が頭角を現した
 ・西村・澤田。移籍組を再生出来るブルペン陣のノウハウも健在
 ・和田康士朗、石川慎吾のポテンシャル解放


 本来理想とする若手の成長が上手くいかないなど納得いかない部分があるとはいえ、各々のポジションで選択肢は増やしつつある。リセットせず来季以降に繋げられるように。

 思っているより得点力はある。それ以上に差がついていたのはディフェンス。オリックスと100失点差以上ついてるわけだ。
 ここも来季・捕手に松川が座ればいくらか失点軽減は可能と踏んでる。理想はオリオールズにいるアドリー・ラッチマン。1人で勝敗をひっくり返せる捕手になって欲しい。

 2020年代に入ってからの4年間で3度の2位。
 最低Aクラスは固いだろうといわれるチームにはなってきたが、もうそれで満足するチームではない。かつて伊東勤監督が率いた2013から2016に同じく4年間で3度Aクラス(3位)に入ったことがあった。きついこと言うが、その3位が2位に上がっただけだと考えている。相対的に2位に押しあがっていたと言われても過言ではない。

 得失点差マイナス・「この戦力でよくやっている」が決まり文句となる野球。佐々木朗希を手にした球団だ、そんなセリフは似合わない。 
 5割ラインで戦うチームではあるが、勝率.550、貯金2桁ラインで戦いきるまでには至ってない。

 2020から2025までの6年間で5度Aクラス、2度優勝(2020から2022の間、2023から2025の間)当初からこのようなプランを描いていた。
 常勝軍団を掲げるのなら今季、最短でAクラス復帰は最低限だった。もう一度、スタートラインに立った。

 本拠地CS 1st初戦。現地ZOZOマリンの熱気はすごかった。昨年よりはかすかに感じた秋の匂い。来年こそ、はっきり感じ取りたい。

 同じこの地で。覇者として、迎え撃つ。

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