【順天堂大学】パラアスリートにより充実したサポートを ~東京デフリンピックを支えるスポーツドクター~
【JUNTENDO UNIVERSITY】
初めてづくしだったパラスポーツの現場
多くの方は「パラリンピック」を真っ先に想像されると思うのですが、実はパラリンピックのほかにも、障害があるアスリートが活躍するスポーツ大会はたくさんあります。その一つが、「きこえない・きこえにくい選手のためのオリンピック」であるデフリンピックです。
デフリンピックは、ろう者のための国際的なスポーツ大会として4年ごとに開催され、次の東京大会は第1回大会から100年目に当たる記念すべき大会で、日本での開催は初めてとなります。私は、2021年のブラジル大会に日本選手団のドクターとして参加し、現在は東京大会に向けて医療体制の構築などの準備に携わっています。
2021年に開催された東京パラリンピックは、多くの方がパラスポーツを知り、触れるきっかけとなったと感じます。私自身も、初めてパラスポーツと関わったのが東京パラリンピックで、開催前年に『障がい者スポーツ医』の資格を取得しており、陸上競技会場のドクターを務めました。これを機に、デフリンピックブラジル大会、アジアユースパラ競技会、知的障害者の競技会であるスペシャルオリンピックスベルリン大会の日本選手団に帯同する機会をいただきました。
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障害があってもなくても「アスリート」
アスリートを診察する時には、普段病院で診察する時の常識を当てはめることができないさまざまなことが起こります。たとえば、試合の迫っている選手が怪我や病気になった場合、普段であれば絶対にスポーツをさせないような状態でも、スポーツの現場では、「それでもやりたい」と選手から強く求められることが実際にあり、やらせてもいいのか、やらせてはダメなのか非常に悩むことがあります。そして、選手自身と監督やコーチからもミリ単位でのDecisionを求められます。「2〜3週間程度で復帰できますよ」などという曖昧な判断は許されません。
また治療に関しても、1%でも改善の見込みがあるのなら、それにかかるコストや時間に関係なく、治療を行うこともあります。そのような競技にかける選手の強い思いは、障害があってもなくても変わりません。教科書通りの対応ではなく、今ここで何ができるか、何が必要かを瞬時に考え、選手と密にコミュニケーションを取りながら判断し、対処するのがスポーツドクターの仕事です。臨機応変な対応が求められるのは、ラグビーのリーグワンでも、パラリンピックやデフリンピックでも変わりませんし、その点ではこれまでのスポーツドクターとしての経験がとても役に立ちました。
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経験と知識をパラアスリートに還元
障害の有無に関係ない医療をチーム『順天堂』でサポートする 【JUNTENDO UNIVERSITY】
東京デフリンピックの「その先」に向けて
今はまだ、パラリンピックは知っていてもデフリンピックは知らないという人がほとんどですが、ただ知らないだけで、知ってもらえたら関わりたいと思ってくれる人はたくさんいると思っています。私がパラスポーツに関わり始めたのは本当にたまたまで、「障害者のために何かしたい」という強い思いを持って始めたわけではありません。ただ、たとえきっかけが「たまたま」でも、ご縁があって関わり始めると、今までできなかった経験ができ、知らなかったことを知ることで、一生懸命競技に取り組む選手たちの力になりたいと感じました。こういったことが今の活動に繋がっていると思います。あまり堅苦しくならずに、まずは私たちが楽しくパラスポーツと関わっている姿を発信して、少しでも多くの方に興味を持っていただくことが大切だと思っています。
第24回夏季デフリンピック競技大会(ブラジル:カシアス・ドスル)サポートメンバー 【JUNTENDO UNIVERSITY】
パラスポーツと関わりその楽しさを知っていただくことは、障害があってもなくても誰もが暮らしやすい社会の在り方と、それをどのようにつくっていくのかを考えるきっかけになると思います。今後も医学的なサポートはもちろん、さまざまな側面からパラスポーツと関わり、たくさんの人を巻き込みながら、すべての人が支え合って共生するインクルーシブ社会の実現に少しでも貢献していきたいと考えています。
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プロフィール
順天堂大学スポーツ健康科学部 准教授
2004年 長崎大学医学部卒業。医学博士(順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学)。2022年4月より現職。専門は整形外科(肩関節)、スポーツ医学。肩関節疾患の診断・治療、肉ばなれの原因解明・治療、障害者スポーツなどの研究に従事。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医。
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