長橋監督を悩ませる熾烈なスタメン争い。U-18の選手たちの等々力への想いとは?

川崎フロンターレ
チーム・協会

【©KAWASAKI FRONTALE】

9月23日(土・祝)に今季初の等々力陸上競技場での公式戦を迎える川崎フロンターレU-18。プレミアリーグEAST連覇へ、そしてファイナル制覇へ。普段はトップチームの選手たちが躍動する「聖地」での試合に向けて、長橋康弘監督や選手たちの思いを聞いた。

プレミアリーグEASTは勝負の後半戦へ

「高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023」第14節を終えた時点で、川崎フロンターレU-18は勝点31の3位に付けている。首位の尚志高校は消化試合が1試合多い状態で勝点33、2位の青森山田高校は勝点32。優勝争いはほぼこの3チームに絞られたといってもいい状況だ。今シーズンのU-18の目標は、プレミアリーグEASTを連覇して、昨年成し遂げられなかった国立競技場でのファイナルに勝つこと。その目標を叶えるために一戦も負けられない厳しい戦いが続く。

川崎フロンターレU-18は、第47回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会での優勝を目指したものの、ラウンド16で敗戦。たくさん悔し涙を流した。「この悔しさはプレミアリーグEAST優勝で晴らす!」と夏の間にさらに力をつけ、プレミアリーグEAST後半戦再開から3連勝。その勢いのまま、9月23日(土・祝)、ホーム・等々力陸上競技場に乗り込む。たくさんのファン・サポーターから存分にパワーと勇気をもらい、最終節までの8試合で一気に逆転優勝まで駆け抜けるつもりだ。

ここ最近、良い流れで来ている理由の一つとして、熾烈なチーム内競争が挙げられる。下級生の勢いが上級生を脅かし、「誰が出ても結果を残せる」と自信を持てるような戦力の底上げに成功している。その点について、長橋康弘監督はうれしい悩みを打ち明けてくれた。

「メンバー選考が毎回大変です(苦笑)。今回は特に等々力なので。最終節も等々力で試合がありますが、今シーズンでアカデミーを卒業する3年生たちは、この試合がもしかしたら等々力でプレーできる最後の機会かもしれない。私たちはいろいろなことを考慮してメンバーを選考します。いろいろと思うところがある選手も必ず出てくるはずですが、それはどの試合も一緒です。私たちが苦労するのは紅白戦ですね。『次の試合は当然自分がメンバーに入るだろう』とすばらしいパフォーマンスを見せてくれる選手がたくさんいます。でも、そんな頑張っている選手をメンバーから外さなければいけない。毎試合悔しい思いをさせてしまっている選手がいます。特に等々力というところでは、彼らも思うところはあるでしょう。私は彼らのプレーが見たいのですが、試合に出られる人数は決まっています。9月23日の昌平高校戦のメンバーは頑張って決めたいと思います」

川崎U-18の指揮を執り3年目となる長橋康弘監督 【©KAWASAKI FRONTALE】

等々力でのスタメンは絶対に譲れない

川崎フロンターレでは、年に2~3試合ほど、U-18の試合を等々力陸上競技場で開催している。毎試合Gゾーンと呼ばれるサポーターエリアやメインスタンド1階はフロンターレブルーに染まり、ファン・サポーターからの声援が選手たちの大きな励みになっている。今回、自らが通う高校で告知ポスターを貼り、集客に貢献している選手もいる。家族だけでなく、友達にも自分のプレーを見てもらえる絶好の機会だ。

「絶対に等々力で試合に出る! スタメンは譲らない!」

選手たちは相当な気持ちを持って日々のトレーニングに励んでいる。バチバチの競争を繰り広げる選手たちは、等々力で試合に出ることに対して並々ならぬ想いを話してくれた。

第12節の大宮アルディージャU18戦でプレミアリーグEAST初スタメンに抜擢され2ゴールの大活躍、3試合連続でスタメン出場中の髙橋宗杜は、もちろん等々力でもスタメンで試合に出るつもりだ。

「自分は等々力でプレーしたことがありません。やっぱり特別な舞台ですし、スタメンで試合に出て、点を取って活躍して、また取材を受けたいです。自分の武器であるフィジカルや献身的に走る姿を見てもらって、サポーターのみなさんから愛される選手になりたいです」

髙橋宗杜(たかはし そうど)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

第11節のFC東京U-18戦から4試合連続スタメンで出場し、直近3試合で2ゴールと好調の岡田泰輝も、等々力でのプレー経験はない。

「サポーターのみなさんがいっぱい来た等々力でプレーしたい想いが強いので、頑張りたいです。自分の持ち味であるドリブルでみなさんを沸かせられたらいいなと思っています」

岡田泰輝(おかだ たいき)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

ケガで戦線を離脱している間に髙橋、岡田の活躍を見てきた岡崎寅太郎も、黙ってはいられない。

「自分も良いポジション争いができています。等々力での試合はたくさんの方が来られるでしょうし、観に来てくれた方に自分のプレーを披露できればと思います」

岡崎寅太郎(おかざき とらたろう)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

今シーズン開幕当初は途中出場が多かったものの、リーグ中盤からコンスタントにスタメンで出場している元木湊大も、一度掴んだスタメンの座を後輩に譲る気持ちはない。

「等々力は当然頭の中にありますが、自分は1試合1試合でスタメンを取られないことと、結果を出すことへの意識が強いです。自分と同じポジションの柴田(翔太郎)が日本代表で自分にはない経験を積んでいるので、自分は彼よりも多くのことを学び、より試合で結果が出るように積み上げていかないといけないなとすごく感じています」

元木湊大(もとき みなと)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

そして、長期のケガ、リハビリを乗り越え、第12節の大宮アルディージャU18戦で久々にスタメン出場を果たした岡野一恭平の存在が、チーム内競争にさらに拍車をかけている。等々力に良いイメージを持っている岡野一も、1年ぶりの等々力でのプレーを心待ちにしている。

「自分は等々力で意外と強いんです。昨シーズンは等々力での3試合で2点取っているんですよ。もちろん今年も点を取りたいですね。等々力でプレーできるなんて贅沢なことなので、結果を残したいです」

岡野一恭平(おかのいち きょうへい)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

昨シーズンからプレミアリーグEASTの試合に出場し、等々力でプレーできる喜びを知っている選手たちも、もう一度サポーターからの声援を受け、トップチームの選手になったかのような雰囲気を味わいたいと思っている。だからこそ競争に負けられない。キャプテンの濱﨑知康でさえ、チーム内競争の激しさをひしひしと感じている。

「“自分が一番だ”なんて思ったら、せっかくの上手くなれる期間を短くしてしまいます。常に全力で目の前の1試合1試合で“自分がスタメン取るんだ”という強い気持ちでいます。等々力での試合はプロになった時と同じ光景を見られているのかなと思うんです。サポーターやクラブスタッフのみなさんに尽力していただいているので、感謝の気持ちを持ちながらプレーしたいです」

濱﨑知康(はまさき ともやす)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

サポーターから得られるパワーとは?

右サイドバックの江原叡志は、等々力のサポーターから得られるパワーを昨シーズン、存分に感じたと言う。

「憧れの舞台である等々力でプレーできることは極めてうれしいです。サポーターのみなさんがトップチームと同じような雰囲気を作ってくれることも、とてもありがたいと思っています。後半のきつい時間帯にもう一歩足が動いたり、良いプレーをした時の拍手を聞くとよりパワーが出てきます。この等々力の試合でサポーターのみなさんの前で勝点3を取ることができれば、自分たちの自信にもつながってくると思います。そこから勢いに乗って1位になりたいですね」

江原叡志(えはら えいじ)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

同じく、昨シーズン等々力でプレーした尾川丈は、より一層サポーターへの感謝の気持ちが強まったと言う。

「昨シーズンも試合に出させてもらい、たくさんのサポーターに来ていただきました。クラブスタッフ含めて、いろんな方の尽力でできている試合だと思うと、感謝しかありません。プレーしていてもすごく歓声が聞こえますし、等々力ではなかなかプレーできないので当然気持ちが高ぶります」

尾川丈(おがわ じょう)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

来季トップチーム昇格が内定した由井航太は、「等々力でも他の試合会場でも常に変わらずに平常心で」と話すが、チームのために走っているところ、地道に泥臭いプレーを等々力に集まったサポーターに見せたいと意気込む。

由井航太(ゆい こうた)選手(3年) 【©KAWASAKI FRONTALE】

長橋監督はどんなスタメンで今シーズンのプレミアリーグEASTで唯一の敗戦を喫している昌平高校に挑むのか? みなさんがこの記事を読んでいる頃、相当頭を悩ませているであろう。そんな長橋監督も等々力での大一番に熱い気持ちを持って挑む。

「選手たちはフロンターレのサッカーに対してプライドがあります。対戦相手が昌平高校ということで、技術では絶対に負けられないという意地もあると思います。私たちはもっと内容と結果にこだわる。その内容は何かと言うと、やっぱり“フロンターレらしさ”なんです。そこをサポーターのみなさんの前で出して、結果にこだわっていきたい。等々力まで足を運んでくれたサポーターのみなさんに満足して帰っていただけたらと思うんですよね。感謝の気持ちを伝えるという意味でも、とても大事だと思います」

9月23日(土・祝)、プレミアリーグEAST第15節、昌平高校戦は等々力陸上競技場で15時キックオフ。ファン・サポーターと共に、プレミアリーグ連覇に向けて勝負のラストスパートへ。ひたむきに勝利を目指す選手たちに、ぜひ大きな声援を!

(取材・文:本間勲)

【©KAWASAKI FRONTALE】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

神奈川県川崎市をホームタウンとし、1997年にJリーグ加盟を目指してプロ化。J1での年間2位3回、カップ戦での準優勝5回など、あと一歩のところでタイトルを逃し続けてきたことから「シルバーコレクター」と呼ばれることもあったが、クラブ創設21年目となる2017年に明治安田生命J1リーグ初優勝を果たすと、2023年までに7つのタイトルを獲得。ピッチ外でのホームタウン活動にも力を入れており、Jリーグ観戦者調査では10年連続(2010-2019)で地域貢献度No.1の評価を受けている。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント