【浦和レッズ】点取り屋として刺激になった元ブラジル代表の存在…ホセ カンテは今日も照れながら挨拶に向かう
【©URAWA REDS】
「日本の夏はギニアよりプレーするのが大変かもしれない」。赤道に近い祖国よりも蒸し暑く、ピッチの体感温度が高いという。
ただ、それよりも最近まで苦悩していたのは、自らの置かれた立場。今年3月、浦和レッズに加入したばかりのストライカーは、ひとり暮らしの自宅のソファーにゆっくり腰を沈めると、考えずにはいられなかった。
「チームにとって、僕は重要な存在なのだろうか……」
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「チャンスは自分でつかみ取らないと。僕は与えられた機会を生かせていない」
頭の中を一度リセットし、昨季、中国スーパーリーグで14ゴールを挙げた映像を見返した。もともとボックス内でプレーするセンターフォワードタイプでもなければ、ゴール前で相手を背負うポストプレーもさほど得意ではない。機動力のあるFWとして、評価されてきた。
少し下がってボールも引き出し、スペースに流れてパスを受ける。相手ゴールに背を向けるよりも、前を向いたときに持ち味が生きる。
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「同じ空間に一緒にいるだけで、心が安らぎました」
そして迎えた8月13日、先発出場したアウェイのサンフレッチェ広島戦で4試合ぶりにゴール。ミドルエリアでパスを呼び込んでドリブルから豪快なミドルシュートを叩き込んだ。
かつての感覚を取り戻すと、5日後の名古屋グランパス戦でもゴールネットを揺らす。ペナルティーアーク付近でパスを受け、反転して右足を振り抜いた瞬間、埼玉スタジアムのスタンドで観戦していた息子も大興奮。いずれの形も、これまでのチームで決めてきたようなゴールである。
「ストライカーとしては、ノーマルなシュートだと思っています。決して特別なものではない。ワイルドなゴールは若い頃から決めてきました。練習でもトライしている形なので」
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スペインの下積み時代は元コートジボワール代表ディディエ・ドログバのパワフルなプレーをお手本としていたが、24歳のときに力技だけでは限界がくることに気づかされた。初めての海外移籍となったキプロスのAEKラルナカでの出会いが、カンテを変えたのだ。
経験豊富なスペイン人の技巧派からサッカーの真髄を学んだという。ラ・リーガのセルタ、ビジャレアルなどでプレーした先輩の助言には含蓄があった。
「それまでの僕はあまり聞く耳を持っていなかったのですが、チームの10番を背負っていたジョアン トマスは丁寧にいろいろ教えてくれました。力を抜いてうまく点を取る術は、その頃から徐々に覚えていきました」
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「当時、36歳という年齢だったので、体の衰えはありましたが、インテリジェンスあふれるプレーで得点を重ねていました。チームのリーダーでもあり、有意義なアドバイスをくれました。彼とともにプレーしたことで、FWとしてさらに成長できたと思っています」
年齢を重ねても一線で活躍しているプレーヤーには、ずっと敬意を払ってきた。
現在、レッズでは、37歳を迎えた興梠慎三の動きを目で追っている。ペナルティーエリア内での駆け引きには一目を置き、舌を巻く。AFCチャンピオンズリーグのプレーオフでのゴールは、その典型だったという。
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チーム最多のリーグ戦6ゴールを挙げ、レッズの新しいエースになりつつあるが、謙虚な気持ちは忘れていない。地に足をつけて、現実だけを見ている。
9月2日のアルビレックス新潟戦に向けて、4試合連続ゴールを期待する言葉を掛けても、控えめに笑っていなすばかり。
「あまり考えないようにしています。2、3試合続けて点を取れることもあれば、ゴールから見放されることもあります。常に得点は狙っていますが、僕はリオネル メッシではないので。
チームを助けること、勝たせること、それが一番の仕事だと思っています。自信を持ってプレーし、数多くのチャンスをつくっていきたい。その中でひとつでもゴールにつながれば、うれしいです」
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「プロフットボーラーを夢見た少年時代には、想像もできなかったことです」
ただ、ヒーローインタビューを受けた後、ひとりでスタンドに向かって挨拶するのは少し苦手なようだ。照れ笑いを浮かべながら、ぽつりとつぶやいた。
「シャイな性格なので、ちょっと恥ずかしくて」
また大きなコールを聞きたいと思いつつも、正直な気持ちを口にする。
「僕がゴールを挙げたから『ホセ カンテ』コールが起きたかもしれないですが、本当は全員の名前を呼んであげてほしい。サッカーはときにアンフェアです。ボランチの(岩尾)憲がどれだけ全体のバランスを取っているか、センターバックのショレ(アレクサンダー ショルツ)がどれだけ体を張って守ってくれているか、ゴールマウスを守る(西川)周作のセービングにどれだけ助けられているか。点を取ったFW以上に勝利に大きく貢献している試合もありますから」
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