拝啓、シュタルフさんへ

note
チーム・協会
【これはnoteに投稿されたまきまきのボヤきさんによる記事です。】
「今、Jリーグで最もホットな男といえば?」という質問をされたら、コンマ0005秒で「シュタルフ悠紀リヒャルト」と言う自信がある。というか、「今、Jリーグでもtt・・」の時点ですでに「シュタルフ悠紀リヒャルト」と音速を超えたスピードで口からソニックブームを生み出し、質問者ごと周囲の森林を消し飛ばし、長野Uスタジアムの周辺の畑の面積を広げてしまう恐れがある。それくらい、僕はシュタルフ監督のことがとても気になっている。

詳しい経歴は知らないが、僕がシュタルフ監督を知ったのは2019年、台風19号が長野県を襲い、元々予定されていた長野パルセイロ対YSCCの試合が延期になったときのこと。
後日、代替試合が決行されたのだが、その試合後の監督インタビュー、当時YSCCの監督を務めていたシュタルフ監督は【がんばろう長野】のTシャツを着ていたことがきっかけ。だがその時は、「なんかめっちゃいい人じゃん!しかも若いのね」くらいの認識でしかなかった。

その存在がなかなか大きくなったのは2021年のJ3でのパルセイロ対YSCCによる2試合2分けという結果。(当時2021シーズン、YSCCはクラブ順位として最高の8位でフィニッシュしていた。)パルセイロとの2試合はもちろんDAZNで観戦していたが、シュタルフYSCCの自陣からしっかりとした形のあるビルドアップに加えて可変フォーメーションで洗練された守備も見せていて「すげー現代っぽいサッカーする監督だな」って感心したし、当時のパルセイロが横山監督という、特に何か戦術があるわけでもなく何かを整備するわけでもなく、なんとなく選手を色々配置するだけな監督だったので余計にシュタルフ監督の戦術作りが際立って良く見えた。

その後、まさかマイクラブにそのシュタルフさんが就任すると聞いて、正直心が踊ったし、この田舎特有の閉塞感漂う長野の地で、YSCCで結果を残した新進気鋭の監督がパルセイロに新しい風を吹かせてくれると思っていました。

滑り出しは上々だった。

YSCCで見せていたような、意図のあるフォーメーションに戦術、明らかに強度の変わった守備、そして監督自らが最前線に立ってチームを鼓舞する姿に、これまでただパルセイロを応援していただけの僕は"シュタルフさんの"パルセイロを応援するようになっていた。一挙手一投足が絵になる男、インスタの更新頻度も高く、きちんとサポーターとの交流のために活用しているそのSNS運用は、謎の商品のステマか自分のファンサイトの宣伝ばかり投稿しているプロサッカー関係者達にはシュタルフさんの爪の垢を煎じてバケツいっぱいに飲んでほしいです。また長野県の宣伝や良いところも発信してくれたり、楽しんでる様子も見てる側としては長野パルセイロに愛着を持ってくれているようで非常に好感を持てたし、隙あらば桜井甘精堂の栗羊羹を家に持たせて帰らせようとしてくるウチのおばあちゃんが、もしシュタルフさんに会ったら、おそらく桜井甘精堂栗羊羹1年分を持たせてシュタルフさんに渡すと思う。それほどサポーターとの交流を大事にしているシュタルフさん。また関わった人みんながとにかく、人間性に惚れたと口々に言う人たらしで、実際にファン感謝デーなどで話すと本当に熱意があって真面目で誠実でちょっと暑苦しく感じる(褒めてます)のはドイツの血筋のせいもあるんでしょうか。たまにその熱意が炎上につながってしまって、ファンが多いぶん敵を作るのも多いんですけど、シュタルフさんの好青年の一面を見ていると「ああ、またやってんな(笑)」くらいのもので、サポーターとしてはこの人は慕いたいなという気持ちにさせる監督ですね。
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と、2023年の始め頃にここまで書いておいて放置していた2023年8月28日、シュタルフさんが解任されました。
パルセイロサポ以外のためにここまでの経緯を書くと、第10節時点で首位という好成績を残していたシュタルフパルセイロですがその後は第24節までわずかに2勝、2戦連続の0-4大敗やクラブワースト記録となる5失点負けなどとにかく大量失点の悪い流れが止まらず、試合内容としても前からの積極的なプレスと言えば聞こえは良いですが、実際にはポジトラの精度やボールを持たされた時のポゼッションが上手くいかず、相手にボールを支配されたまま、カウンター一辺倒で前線の決定力に期待するしか打開策がないような状況が続き、そのカウンターも数的不利な中ですぐに出足を潰されてしまいボールを回収されてまた自陣でボールを回されるという悪循環。選手の質の問題ももちろんあるのかもしれませんが、どちらかというと攻撃面でのポゼッション不足や縦に急ぐことが強調されすぎて、もう少しボールを大事に握って、選手の立ち位置を整備して、相手全体を押し込んでいく時間を0-0の状況下でも作れたら良かったなと思います。さすがに選手の質で劣るとは思えない奈良クラブとの試合が2戦合計0得点5失点の2敗というのは戦術の差としか思えないので。ということでその負けた第24節奈良クラブ戦の後にクラブからシュタルフさんの解任が発表されたわけなんですけど、このタイミングでの解任はまだ昇格を諦めていないってフロントのメッセージなんでしょうかね。降格がチラついてきたとはいえまだ降格圏とは勝ち点差9、昇格圏との勝ち点差11とどっちに転んでもおかしくはないですが、今年の戦力はかなりシュタルフさん色が濃いのでこれから変わる人はなかなか大変だと思います。今年は吉澤暫定監督で過ごして、来年の新しい監督探しに向けた時間を作るってことかもしれませんが、選手達に与える影響も相当大きいんじゃないでしょうか。シュタルフさんを慕って加入した選手も多くいそうだし、今年はともかく来年の去就にもかなり関わってくる人事になりそうですね。また、1番はサポーターへの影響ですね。これほどパルセイロ人に愛された監督をこのタイミングで解任した影響は計り知れないんじゃないでしょうか。結果が全てのリーグ、このまま降格したらどうするんだと言われたらそれまでですが、主力FW2人の不在やフロントのサポート体制はどうだったのかなどシュタルフさん1人の責任とは絶対言えないハズだし、何より多くのサポーターに支持を得ていて、これまでのパルセイロに無かった価値を提供して、希望を見せてくれたシュタルフさんの人望が良くも悪くもこういうところで影響してくると思うんですよね、ほんとパルセイロにとってどっちに転ぶか分からないリスクの高いギャンブルだと思います。鹿児島さんみたいに昇格に向けて振り切った人事をすることで、ある意味ショック療法でブーストを狙うのも分かりますが、パルセイロの場合はどっちなんでしょうかね。降格が迫る中でのショック療法的な解任か、昇格に向けた最後の切り札的な解任か、シュタルフさんの戦いぶりに未来への光明が見いだせなかったのか。あとサポーター心理としてこういう人格的に慕いたいタイプの監督の成績が伴わない時って気持ちの置きどころが難しいですね。これほどきちんとサポーターと向き合って、交流して、意見を聞いて聞かせてくれた監督も過去にあまり見たことなかったのもありますし、大抵の監督って試合後のインタビューとかでも学校の校長の挨拶テンプレ大全集みたいなコメントに終始して、内部事情なんてほとんど窺い知れませんが、シュタルフさんの場合は言葉の端々に裏読みできそうなニュアンスを含んでいたり、時にはどストレート真っ直ぐに意見や疑問をぶつけてきたり、それがある意味日本サッカー界隈にありがちな"暗黙の了解"みたいなルールを疑問を呈することがネットを騒がす格好の標的になったりしがちだったんですけど、そういうところも含めて人間性は全部好感が持てる反面、そこに成績が伴わないとプロスポーツの中では中々評価されることが少ない場合が多いです。ましてや、シュタルフさんみたいに信念を持って本人なりの確固たる考えを持って行動してるようなリーダータイプは特に結果が伴わないと批判されがち。僕もシュタルフさんのことは人間的に好きだけど、成績やピッチで表現されている戦術やサッカーの事を考えるとこのままでいいのだろうかと思わざるを得ないことも正直ありました。それでもきっと僕は夢を見ていたんだと思います。新進気鋭の若手監督が、これまでずっとJ3で燻り続けていた長野パルセイロに、新しい風を吹かせ、素晴らしいフットボールを披露し、長野のサッカーを更に上のステージに引き上げる、そして長野UスタジアムがOne Teamとなって、悲願の昇格を成し遂げる、そんな夢を夢見ていました。シュタルフさんがきっとそれを長野パルセイロで成し遂げてくれる。多少時間がかかっても、きっと今年こそは。きっと今年こそは。きっと来年こそは。この人ならと。そんな思いを抱いて毎週毎週長野パルセイロを追いかけていました。インスタにもコメントしましたし、きっと忙しいだろうに長文の返事がしっかり帰ってきました。昇格を逃した2022年のファン感謝デーでも、いきなりふらっと登場したシュタルフさんにサインを貰おうと列を作って並んでいたら、僕の前の人で付き添いスタッフさんが「すみません、ここで終了にさせて頂きます」と打ち切ろうとしてるのに、シュタルフさん自らその場に居座って、伸び続ける列の人一人ひとりにサインを書き続けていました。見かねたスタッフがシュタルフさんにもう引き上げるように促してもシュタルフは残ったままずっとサインに写真撮影に対応を続け、ついには呆れたスタッフが「子供さんだけ対応します」と譲歩する始末(笑)。出席イベントの時間が差し迫るギリギリまで誠実に対応を続けているその姿は、プロスポーツチームの選手やスタッフとして鑑とも言うべき姿だと思いました。その後の監督挨拶でも「パルセイロがJ2に昇格するためにはパルセイロがJ2に相応しいクラブにならなくてはなりません、今の段階で唯一僕らがJ2に相応しいと言えるものがあります、それはサポーターの皆さんです。」と、集まったサポーター達の前で言い切る姿を見てしまい、この人に賭けたい、この人と悲願を成し遂げたいと本当に思っていました。それが、本当に志半ばで終わってしまうとは今でも信じられないですし、心にぽっかり穴が空くというのはこの事なんだろうなと思います。素晴らしい人間性と、伴わない結果。この狭間でぐちゃぐちゃになりそうな感情を抱えながらそれでもきっと次こそ勝ってくれる。夢の続きを見せてくれる。そう思って追いかけていました。シュタルフさん、余りにも突然の別れすぎて心の整理がつきません。嘘であってほしい。プロスポーツとはそういうものなんだろうけど、今はまだ離れるタイミングじゃないと思いました。あともう一年はパルセイロにいると勝手に思っていたので、本当に驚きを隠せません。シュタルフさんがこれからどんな人生を歩むのか分かりませんが、いちサッカーファン、いちシュタルフさんファンとしてはこれからもシュタルフさんのことは応援していきたいと思いますし、パルセイロにもたらしてくれたものは絶対に忘れないです。自分の気持ちの整理をつけるために、勢いと直感だけで書いたnoteですのでお目汚しや文脈おかしいところがあったらすみません。不思議な魅力を持ったシュタルフさんのこれからの人生を応援したいと思います。シュタルフさん、ありがとうございました。

【まきまきのボヤき】

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