【雑感】浦和の2023年前半戦振り返りと後半戦への期待
【【雑感】浦和の2023年前半戦振り返りと後半戦への期待】
◆前半戦の大まかな流れとその感想
フットボール本部体制の発足に合わせて、その時の監督によって選手選びの基準やチームスタイルが変わることをやめる、クラブとして一貫したコンセプトをもってチームを作る、そうしたことを標榜しました。
2020年にチームを「更地にする」という意味も込めて大槻さんが非保持の陣形を4-4-2にしました。そして、「守備は最終ラインを高く設定し、前線から最終ラインまでをコンパクトに保ち、ボールの位置、味方の距離を設定し、奪う、攻撃、ボールをできるだけスピーディーに展開する」というクラブとしてのコンセプトの表現を目指しました。2021年と2022年はリカルドが、そして、今年はマチェイさんがこの方向性を踏襲してきました。
その成果が、個人の身体能力やボール扱いの技術では上回るアルヒラルに対して、先ほど図にもしましたが、チームとして4-4-2のブロックを保ち、相手に攻め筋を作らせないことでした。
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FP10人が繋がりながら守備をするというのはFWやSHの貢献が欠かせません。前線のプレーヤーである大久保、関根、小泉(安居)が中盤ラインに穴を作らなかったことで、自分たちの内側にボールを通させる場面はほとんどありませんでした。それによって相手の攻撃は同サイドのままになるので明本、ホイブラーテン、ショルツ、酒井という技術、強度に長けたDFがしっかりゴール前でボールを弾き返せるという好循環になったと思います。
【ゆうき(y2aa21)】
試合を壊さないための構造整備や選手起用を就任したばかりのタイミングからきちんと実行できているのは監督を含めたチームスコルジャの手腕なのだろうと思います。
ACL決勝の後はメンバーを緩和してチーム変化を付けたいという言葉がありました。ただ、負傷した選手は別として序列が入れ替わったのはトップ下の小泉と安居だけだったように思います。リンセンや髙橋をSHで起用して前線の攻撃力アップを目論んだりもしましたが、ここまではなかなかそれも奏功していません。
これはACL決勝に向けたメンバー固定の弊害の1つだろうと思います。シーズン序盤から非保持の構造維持があったから勝ち点を積み上げることが出来ました。10試合を消化してから一旦作り上げてきたものを意図的に作り変えていくというのは難しいと思います。
他チームは開幕からそういった形を作り上げてブラッシュアップしていく段階へ入っていく中で、自分たちだけ自ら一段手前の作業をすることになります。リーグ戦の半分を消化する頃にはそのシーズンでどれくらいの位置を狙えるのかという立ち位置がある程度決まっていくので、開幕からの10試合よりも11試合目からの10試合の方がより勝ち負けの重みは増していきます。
結果が出なくても選手のメンタルを考慮してメンバーを簡単には代えないということを開幕2戦の段階でスコルジャさんは話していました。ただ、求める結果のラインは開幕当初とある程度時間が経ってからでは変わっているのが自然だと思います。
なのにACL決勝に向けたメンバー固定からあふれてしまった選手とすれば試合での経験値は開幕当初から変わっていないというディスアドバンテージを背負うことになって、試合で結果を出すことの難易度は高くなってしまったのだろうと想像します。勿論、それでも結果を出すのがプロとして求められる姿ですし、そこで結果を出せる選手が生き残っていくものではありますが。
なかなかゴールが増えないという課題はあるものの、その中でどうやって順位表の立ち位置を維持するかとなれば非保持の構造維持は簡単には捨てられません。
ゾーンディフェンスと言っても結局は個人に強度の高さや技術ミスの少なさは求められます。相手に対してきちんとした角度で寄せられていても、切っているはずのコースへボールを通されてしまったり、いるべき場所にいるのにボールを上手く拾えなかったりという場面はゼロに近づけないといけません。
これはポジショナルプレーと呼ばれる保持での枠組みで選手に求めることとも似ています。いるべき場所にいても結局ボールをしっかりコントロールできない、前を向けないという選手は使いにくいよねという話ですね。
そういう部分を求めるとなると、結局はシーズン序盤から固定してきた選手たちの方に分があるので試合に出る選手とそうでない選手のギャップが埋まらないままになってしまったのかなと思います。
今季ここまでの全コンペティションでの出場試合/時間/得点まとめ 【ゆうき(y2aa21)】
ただ、今季に向けての加入選手はレンタルバックとユースからの昇格がメインだったので、監督のリクエストがどれだけ反映されたのかは分かりません。ホイブラーテンについては左利きのCBのリクエストがあったという話があったり、カンテについても元々ポーランドリーグでプレーしていたので知らない選手ではないということで監督の意向があったかもしれませんが。
それでも、前半戦を最も勝ち取りたかったACL優勝はもちろんのこと、リーグ4位(首位との勝ち点差7)、ルヴァン杯グループステージ突破、天皇杯4回戦進出という成績は優秀だと思います。多くの方が言っていますが、23/24のACLも含めて全てのコンペティションでタイトルを獲る可能性を残せている訳ですから。
◆ピッチ上の解消したい課題
というのも、今季出場時間数が多いSBには、酒井と明本については前へのアクションと空中戦での強さ、荻原についてはキックの鋭さという攻撃的な特徴があります。逆に今季出場時間数が多い2列目の選手たちはライン間でボールを受けてターンする、ドリブルで仕掛ける、パスの出し手になれるなどの中央での細かいアクションやポジショニングは上手いものの、こうした馬力というか火力のような部分で物足りなさがあります。
スコルジャさんは攻撃の回数を増やしていきたい、そのためにアクションを何度も起こしたいという志向があって、そうなるとボールを失う回数も増えるのでネガトラの強度や連続性が必要になってきます。それをメンタリティも含めて今のチームでより高いレベルで表現できるのは明本、酒井、荻原になってくるように思います。そうなると保持で彼らをより高い位置でプレーさせたくなるのは自然なことなのかなと思います。
つまり、「2列目のアクションや得点力の不足」が物足りないから「SBのポジショニング」がより高くなるという関係性になります。
【ゆうき(y2aa21)】
こうして、SBがスタートから高い位置にいるとビルドアップの時にはCBの脇のスペースには誰もいなくなります。前に人がいるということを抑止力という捉え方もありますが、J1はそれでも人数を合わせてボールが奪えればOKという志向のチームがいくつもあります。
また、CBがペナルティエリアの幅かそれ以上に開いてビルドアップしようとすると、FW1枚を間に立たせて左右分断して前進経路を限定してしまうという対応を取られることもあります。
そうなると、SBが高い位置にいるということを前提事項とするのであれば、CBがボールを持った時に運ぼうとしても失った時に後ろに人がいなくなってしまうので、何もしなければCBはパスを出すことだけを選択しがちになります。
なので、後列のカバーリングも含めて誰かが列を落としてサポートすることでCBがパス以外の選択肢を取りやすくしてあげられます。(全ての相手、場面がそうでは無いですが、一般論として)
この時の列落ちの方法が岩尾がCB間に落ちて一旦人数を確保することがほとんどでした。この「サリーダラボルピアーナ」は相手が2トップの時に数的優位を確保し、3枚の左右どちらかが2トップ脇から前進して1列目を越える常套手段ではあります。
【ゆうき(y2aa21)】
「SBのポジショニング」によって「CHの列落ち」が助長されて、その結果「2列目のアクションや得点力の不足」を解消するためのプレーがさらにやりにくくなっていると言えそうです。
また、浦和のコンセプトとして「攻守に切れ目のない」というプレーを目指していますが、これは攻守+トランジションの4局面を境目なく循環させるということであり、攻めながら守備のタスクを遂行し、守りながら攻撃のタスクを遂行するということでもあります。
ボールを失えばそのままボールを奪い返すアクションが必要で、それを実現しようとしたときに選手がいる場所がその選手にとって不得意であったり、タスクとして無理が生じるものになってしまう可能性があります。
結局餅は餅屋で、ゴール前でクロスを弾き返すのはCHの選手よりCBの選手の方が上手いし、サイドで相手にクロスを上げさせない、抜かれないための対応はSHの選手よりSBの選手の方が上手いです。なので、攻守に切れ目のないプレーをするためには選手の非保持での位置関係と保持での位置関係の変化幅が小さいことが理想だと思います。
となると、やはり2列目が前にアクションを起こせるように改善して、それによってSBのスタート位置を低くしてあげて、CHが列落ちしなくてもビルドアップ隊に人数を確保し前に出ていけるという関係性を作れた方が良いのだろうと思います。SBのスタート位置を起点に考えるのであれば、後ろから押し上げることで、前線の選手を裏のスペースへ押し出してあげるというイメージです。横浜FC戦の雑感で作った「こうなったら良かったな」の図がそれに近いです。
【ゆうき(y2aa21)】
後列の選手がオープンだからこそ前にボールが出てくると信じてアクションが起こせる訳で、アクションを起こせと言いながら後列でオープンな選手が作れなければ動き出すタイミングが掴めないし、出し手も苦し紛れだから精度が低いし、相手は上手くはめられている状態なのでボールの移動先で準備が出来た状態で対応されてしまいます。
2列目についてはリンセンや髙橋といったストライカータイプの選手を試しているのは、何度も書いている通り浦和の2列目の選手にライン間でプレーすることが多いタイプが集中していることの解消を図っているのだろうと思います。今いる選手で何とかするのであれば彼ら2人、あるいは明本をSHで起用するということがあっても良さそうです。
ただ、酒井がいない時には明本や荻原が右SBになりますが、この時にはボールの前進経路が左からになりやすく、ホームの川崎戦のようにクロスのターゲットにしたいはずの髙橋がクロスを上げる側になってしまうという本末転倒な事態になっていました。
最後尾で逆足でボールを持とうとするとどうしても相手ゴール方向に体を向けることが難しくなります。2列目の改善だけでなく、酒井がいない時に右手前で誰がビルドアップ隊に加わるのかということも改善が必要ですよね。馬渡がこれだけ試合に起用されない理由は外からは分かりませんが、コンディション以外の理由なのであればベルギーから帰ってきた宮本に期待するか、右利きの右SBを補強することになるのだろうと思います。
結局、2列目と右SBをなんとかしてくれというありきたりな結論に着地してしまいました。でも、今季上手くいった試合とそうでない試合の違いはどこかと言えばその部分だったのではないかと思います。
個人的には安居にCHで定着してもらって関根がトップ下、明本、髙橋、あるいは新加入の選手が左SHに入るというのが良いバランスなのかなと想像します。また、平野もここ最近は途中交代で入った時に前へ飛び出していくアクションがあったり、元々五分五分ならゴールに近い方へパスを出すという好戦的な姿勢があるので彼をトップ下に入れても面白いかもしれません。後半戦のカギを握るのは国士舘トリオだったりして。
◆後半戦、俺たちはどこを目指しますか?
そのためにはACL連覇、天皇杯優勝、リーグ3位以内のどれかなので、そこに対して力を注ぐ必要があります。しかし、8/22のプレーオフで勝利してACL本戦に出場できれば前半戦以上にタフな日程が待ち受けることになります。23/24のACLグループステージは従来のホーム&アウェー方式に戻るので、週末はリーグ戦、週中に海外遠征という日程も生じます。
しかも、ACLはルヴァン杯や天皇杯と違ってメンバーを落として戦うわけにはいきません。週末も週中も試用ではなく結果を求める試合が続きます。そうなるとここまでの試合のようにスタメン組とサブ組が明確に分かれたままでは選手のコンディションを維持することは難しいので、スタメンでもある程度やれると計算が経つ選手が20人弱は欲しいところです。
DFやCHについては今季あまり出場機会を増やせていないくてもこれまでの実績がある選手たちがいます。ただ、前線についてはその部分が物足りないと思っています。そこについて、既に安部の獲得は発表されていたり、国外から獲得の噂が出ていたりしますが、ここについては今後どうなるでしょうか。
シーズン前にスコルジャという優勝を複数回したことがある実績の指導者を呼んできたということは、今まで以上に結果にもフォーカスする、勝ちにこだわるということなのではないかという話をしたことがありました。
リカルドは自分の志向するフットボール観とかなり合致している指導者だったので、昨季までは結果が出なくても良い方向へ進んでいるのだからこれで良いという思いを持ちながら見ていました。優勝を本気で狙えるところまで行けた時に「目標は優勝」と言えるのではないか、それまでに結果が出ても単に上振れを引いているだけだから変に目標を上方修正しなくても良いのではないか、そういった思いを持っていました。
ただ、正しくプロセスを踏んでいく"だけ"ではそこまでの結果は得られないのだなというのを昨季痛感しました。「優勝を狙う」という言葉にリアリティが出てきてから優勝を狙おうと思うとして、ではその言葉にリアリティが出るのってどうなった時なのでしょうか。
それって多分、本気で優勝に手が届きそうな位置で戦う状況を経験できた時、優勝を狙える位置でプレーをした経験が出来た時だと思うのです。現状の4位は得点数や試合内容を考えれば上振れしている状態だと思います。ACLでの対アルヒラルの決勝も10回やったらそのうち何回勝てたのだろうか、本当に実力を伴って今回優勝できたと言えるのかというとそんなことはないのだろうと思います。
それでも僕らはACL決勝進出4回、優勝3回という結果で自信をつけたからこそ今があります。2017年だって優勝できるほどのチームだったのかというと分かりませんし、2019年の決勝進出は完全に上振れでした。上振れでも、良い意味で勘違いをして調子に乗ってでも結果を掴もうとする姿勢は必要なのだと思います。
論理的なスタンスになると、現実を見すぎてリスクを冒すことに対して臆病になることがあります。少なくとも僕はその傾向が強いです。その場の勢いで一歩踏み出す、勢いで結果を出してしまったことで「意外とやれるかも」と自信をつけて、結果に実力を引き上げてもらうこともあると思います。これは岩尾憲の言葉に大きく影響を受けていますが。
つまり、これまでの自分の理論、理想、哲学にはなかったやり方で勝て、と言われているわけです。それに対して『いや、プロセスを辿ってないんだから勝てないよね』って言い訳をしていていいのか。ビビって、弱気になっているだけじゃないのか。プロセスをしっかり辿って結果を出すことしかできないなら、自分は弱いなって思ったんです。
そこでバチッと整理できたというか。両方のプレーをして勝って、自分の存在価値を示す。両方を使い分けるのは一番難しい。でも、それこそが、逃げずに正面から向き合うことで得られた答えで、今すごく自分のエネルギーになっています
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今のクラブ、フットボール本部は地に足がついています。目先の結果だけに踊ってしまうような体制ではないはずです。そこについて僕は信用しています。それはACL優勝の後の土田SD、西野TDの会見からも伺えます。
西野TD
「ACLを3度優勝したということはもちろん誇らしいことですし、記録としては唯一のクラブと言えるものの、国内でのリーグという観点で言うと、1度しか優勝していないという事実に何ら変わりはありません。ですので、そこが一番必要ですし、積み重ねていかなくてはいけないことだとも思っています。今回の結果は結果で素晴らしいし、喜ぶし、でももう終わったことで、決勝翌日からは、また始まるJ1リーグと残されたタイトル全てに向かって満足せずに貪欲に闘うチームになってもらいたいということがクラブからのチームに対するおもいです。そういった環境をつくっていかなければいけないということも我々の仕事として思いますし、そう考えています」
西野TD
「世界と対等に闘うためにはどんなことが必要かということですが、今回のACL決勝でアルヒラルと闘った経験から考えていることは、チーム人件費は数倍違うと思っています。2倍や3倍ではなく、数倍の違いがあると思っています。(以下省略)」
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なので、たとえ上振れを引いたとしても、現場(チームやサポーター)としては、それならそれで今狙えるものは本気で獲りに行ったって良いじゃないかと思っています。浦和レッズはこれまで2度、3度と実力的にはリーグ優勝を勝ち取っても良かったシーズンに他チームが上振れを引いて取り逃がしたこともあります。
勿論、結果が出なかった時に過度な批判はいけないですが、目の前で掴めるものがあった時にがっついて獲りに行こうとする姿勢をたしなめることはいらないのかなと思います。本気でリーグ優勝の可能性を信じて闘っても良いと思います。
なんだか最後はポエムみたいになってしまいました。まあ、サポートするスタンスは人それぞれで全然良いと思いますが、少なくとも僕は優勝を信じて、優勝したら本気で喜びたいし、出来なかったら本気で悔しがりたいと思います。
今回はこの辺で。お付き合いいただきありがとうございました。
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