【MIL】元ソフトバンクのコリン・レイがブルワーズの救世主になっている話

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チーム・協会
【これはnoteに投稿されたa.na.n.さんによる記事です。】
ブルワーズ担当のあなんです。

日本時間5/29、レイはジャイアンツ戦に先発登板し6回まで1失点、7回に3ランを打たれ降板しましたが、試合は7-5で勝利。レイは自身2勝目を挙げ、ブルワーズは連敗を3で止めました。



前回登板では、8連勝中だったアストロズを6回途中無失点に抑え、7年ぶりにMLBで勝利を挙げました。



レイは開幕こそマイナーで迎えましたが、今ではブルワーズのローテを救う貴重な存在です。昨年までソフトバンクに在籍したレイは、オフにブルワーズとマイナー契約を締結。その後二枚看板のひとりWoodruffの怪我離脱に伴い4/14にメジャーへ昇格すると、初登板となったパドレス戦で6回途中1失点の好投を見せました。そして以降安定した投球でローテに定着しています。



今回は、そんなコリン・レイ(Colin Rea)に焦点を当てます。


○ 光る安定性

はじめにここまでの成績ですが、正直パッとしません。
9試合(先発8試合) 42.1イニング 
 2勝3敗 ERA 4.89 FIP 5.37
 K/9:7.44 BB/9:3.19 HR/9:1.70  
 fWAR:0.1
fangraphs(https://www.fangraphs.com/players/colin-rea/12317/stats?position=P)より

しかし、ゲームログを見ると印象が変わります。
4/13  vs パドレス (W, 4-3)  
5回2/3 1失点 被安打2 6奪三振 1四球

4/18  vs マリナーズ (W, 6-5)  
5回 4失点 被安打5 2奪三振 2四球

4/24  vs タイガース (L, 2-4)
5回 4失点 被安打4 1奪三振 4四球

4/30  vs エンゼルス (L, 0-3)
5回 2失点 被安打3 9奪三振 1四球

5/06  vs ジャイアンツ (L, 1-4) 
6回 3失点 被安打4 4奪三振 1四球

5/14  vs ロイヤルズ (W, 9-6)
3回2/3 4失点 被安打5 2奪三振 2四球

5/23  vs アストロズ (W, 6-0)
5回1/3 無失点 被安打4 4奪三振 2四球

5/28  vs ジャイアンツ (W, 7-5)
6回0/3 4失点 被安打5 6奪三振 2四球

先発した8試合のうち7試合で5イニング以上投げています。さらにその7試合はいずれも4失点以下。被安打と四球も5被安打・2四球以下に留めており、バックエンドスターター(4, 5番手)としての役割を十分果たしているといえます。


""5回3〜4失点""というのは一見褒められる結果ではありません。防御率に換算すると5.40~7.20です。しかしこれはギリ試合を壊していないラインともいえます。4点なら打線の援護を望めます。実際、レイの先発登板試合の平均援護点は4.38点です。



半ば無理やりかもしれませんが、このように擁護する理由は、他の先発陣の不安定さにありますWoodruffMileyが怪我で離脱し、復帰はいずれも7月以降。BurnesPeraltaは直近5試合のうち2試合で5失点以上許しています。Lauerは球速が著しく低下し、5イニング以上投げた試合は直近5試合のうちわずか1試合(5/22にIL入り)。現状最も高い位置で安定している先発は5月頭に復帰したばかりのHouserという、下馬評と比べて非常にもろいローテとなっているのです。



彼らと比べてレイは毎試合イニングを喰い、試合を壊さずリリーフへつなげているという点でレイは優れており、ブルワーズローテの救世主となっているのです。



○ 安定している要因

さてここまでレイがいかに救世主となっているか話してきましたが、ここからはその要因について考察していきます。


◇ 投げているボールは平凡

レイの球種は計6つと非常に多彩。ムービングファストボール(カッター、シンカー)を軸に、フォーシーム、カーブ、スプリット、スイーパーを投げ分けます。



一方で、球速はいずれも平均以下で、フォーシームが93mph(150km/h)、カッターは87mph(139km/h)。打者を制圧するようなボールはなく、空振りを奪う力もありません。また変化量やスピン量に際立ったものはありません。


◇ 非常に高いゴロ率

レイの投球スタイルは打たせてとるピッチング。外角低め中心の投球でゴロを量産しています。レイのGB率は51.9%で、これは150打席以上投げている投手124人中17番目に高い数字です。また、ライナー性の打球割合は2番目に低い15.1%。奪三振は少ないものの、動くボールでバットの芯を外し、ヒットになりづらい打球を生み出しているという点が安定している要因のひとつでしょう。

【a.na.n.】

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◇ 堅いセンターライン

先ほどのように打たせてとるスタイルのレイは、フィールドに打球が飛ぶことの多い投手です。それでも安定している秘訣はブルワーズの守備にあります。

【a.na.n.】

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上の写真は打球が飛んだ位置のヒートマップです(右が対左打者、左が対右打者)。一二塁間から三遊間にかけてボールが多く飛んでいますが、ブルワーズはこれらを捌く内野陣、特に二遊間が堅いのです。



セカンドはルーキーのTurang、ショートはAdamesが主に守っていますが、彼らの守備指標は大変優秀。TurangのDRS+3 / UZR0.9はMLBの2Bで4位。AdamesのDRS+3 / UZR1.3はMLBのSSで7位の数字です。また、センターを守るWiemer(彼もルーキー)も優秀で、UZRはMLBの外野手でトップ。OAA+5はMLB3位、DRS+4はMLB9位です。

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レイはゴロ割合の高さから伺えるように、打球角度の管理は優れています。その一方で、打球速度はMLB平均程度の水準でハードヒットも少なくありません。

打球角度推移 【a.na.n.】

打球速度推移 【a.na.n.】

シフト制限がかかった今シーズン、ゴロを打たせても速い打球を飛ばされると昨年よりもヒットになる可能性が高くなりました。しかし、Adames・Turang・Wiemerの強固なセンターラインがそうした打球をアウトにしているため、安定したピッチングが続けられると考えられます。


◇ 捕手のバックアップ

制圧力も優れた制球力もないレイが5イニング以上を投げられる要因は捕手にもあると考えられます。

【a.na.n.】

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上のグラフはレイの投球で見逃しストライクと判定されたボールのピッチチャートです。ストライクゾーンから外れたボールを何度もストライクと判定されています。特に右打者の外角に注目すると、ボール1個以上離れたボールでもストライクを奪っており、それだけ主審の目を欺いているといえます。


しかし、主審の目を欺いている真犯人は捕手のContrerasとCaratini。ここまで8試合に先発しているレイはContrerasと5試合、Caratiniと3試合バッテリーを組んでいますが、2人ともフレーミング能力に優れている捕手なのです。特にContrerasは非常に高く(!!!!)、MLB全体で5位(執筆時点)。Caratiniも16位と平均以上です。


元々Contrerasは打撃面で非常に優れていた一方、フレーミングをはじめとした守備力が非常に低い選手でした。これは昨年ブレーブスがブルワーズに放出した理由のひとつでもあります。しかし、ブルワーズは捕手の守備トレーニングドリルが確立されており、これまで何人もの捕手の守備を改善してきました。Contrerasはその指導に基づいて訓練を重ね、見事MLBトップクラスの守備力に成長したのです。


ちなみにContrerasの守備がどれほど改善したかはこの記事で特集されています。

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コントロールが特別優れているわけではないレイは、彼らのフレーミングスキルの恩恵をうけてストライクを稼いでカウントを有利にもっていき、アウトを積み重ねていると考えられます。


○ おわりに

ここまで安定した投球を続けているレイですが、やはり不安要素は残ります。バットの芯を外す投球は紙一重であり、炎上リスクはつきまとっています。また、味方の守備や運に恵まれている要素が多く、いつ不調に陥ってもおかしくありません。



とはいえ、ここまでの活躍は非常に素晴らしいです。開幕前はBurnesやWoodruffをはじめとした優れた先発が揃っており、レイの入る隙はないとみられていました。それが、今では確実に5イニングを消化するスターターとして重宝しています。NL中地区の首位をキープしている陰の立役者といっても過言ではありません。これからもレイのピッチングに要注目です。




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参考文献

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