村田諒太が語る、人生を豊かにする考え方。 目標ではなく「目的」が大切
【HEROsLAB】
村田諒太氏 【HEROsLAB】
本イベントは、「HEROs LAB」の一環として開催。現役・引退アスリートが母校の生徒に直接メッセージを伝える、次世代応援企画となっています。
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少年院訪問・更生支援活動など自身の活動を伝えた村田さんですが、学生との合流を通じて「予想外の気づきをもらうことができた」とのこと。果たして今回のイベントを通じて、どのような気づきを得たのでしょうか。これからの教育に対して抱く思い、アスリートの社会貢献活動についても迫ります。
高校生との対話で気づかされた「自分の弱点」
そういう背景もあって、今回のHEROsLABは、お話をいただいてからすぐに参加することを決めました。
ただ、僕は自分のこういった活動を “社会貢献” とは言いません。なぜなら、これまでのご縁のなかで必要とされている中で、それに応えているだけだからです。最初から社会貢献をしようと思って取り組んでいるわけではありません。周りからどのように見られても構いませんが、活動について自分の口から “社会貢献”というのは性に合わないというか……僕は僕なりの考え方でやらせてもらっています。
村田諒太氏 【HEROsLAB】
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今日、対話をした高校生たちの発想は、自分とまったく違うものでした。実際、年齢を重ねるごとにフレキシブルさが薄れてきていて、自分の狭い視野にとらわれてしまっているんだなと感じています。それでは何も生まれないし、世の中を変えることもできないと高校生に気づかされました。
村田諒太氏 【HEROsLAB】
他者との対話から新たな気づきが生まれる
社会のさまざまな課題に対して僕が明確な答えを持っているわけではありません。だからこそ、一緒に考えて言葉にしていくことが大切です。他者との対話を通じて新たな気づきがありますし、これからも今回のような機会をつくっていきたいと思います。
少年院の元受刑者を雇用をしている企業さんともお話する機会があるのですが、「みんなに応援される形でやっていきませんか?」と伝えていきたいですね。新たな動きが生まれるかもしれませんし、それによってほかの企業もそういった人を雇用しやすくなると思います。みんなが納得したうえで、活動を進めていけるようにしていきたいです。
求められる教育の変化…「与える」から「引き出す」へ
よく考えるのは、時代の変化に合わせて教育も変えていくべきだということ。何十年も同じ教科・内容を、変わらないやり方で教えているのは違和感があります。スマートフォンが普及して、現在はChatGPTが話題になっていますよね。これまでの教育が進めてきたインプットの学習は、必要が無くなっているのではないかと感じます。それよりも、人間にしかできない関係性を構築したり思いを引き出したりする、クリエイティブな対話による学習が大切だと思うんです。
村田諒太氏 【HEROsLAB】
僕が高校3年生のとき、体重60キロくらいの体格の小さい後輩が試合をすることになったのですが、相手の新入生は90キロくらいある空手の有段者だったんです。後輩は、体格差のある相手になす術なくやられてしまいました。
それを見て、スパーリングの相手として僕が名乗り出ました。結果、何発か打撃を打ったところで、新入生は脳震盪をおこして病院へ搬送されてしまいました。もちろん次の日、当時顧問だった武元前川(たけもと・まえかわ)先生に呼ばれて……「これは怒られてボコボコにされるな」と覚悟をしていました。ただ、そのときに先生から言われたのは、「村田、昨日殴ったのか?お前の拳は人とは違うんだ。そんなところで使うんじゃない」と。
当時は怒られなくてラッキーくらいにしか思わなかったんですけど、今となっては、「ボクシング部としてのプライドを守りたい」という僕の気持ちを、先生が汲んでくれたんだなと。僕のプライドを引き出してくれた、先生とのいちばん印象的なエピソードです。
本当の教育者というのは、先生みたいな人なんだろうなと思います。僕も、ただ言葉を与えるだけではなくて、自分の経験を伝えることで子どもたちの持っている可能性を引き出してあげたいですね。
目標ではなく「目的」が、人生を豊かにする
子どもたちは、特別になりたくて勉強やスポーツを頑張ります。ときには期待をされることもあります。そんな中、思い通りにいかなかったとき、安易な悪い方法で特別になろうとするんですよね。悪い方向で一番になろう、と。僕もそう思った経験があるので、すごく気持ちは分かります。
人間という生き物は本能的に競争を止めることはできません。ではどうするべきか。僕は、競争の先にある幸せを伝えることが大切だと思っています。アスリートはそういった点で力になれると考えています。
僕たちは競技を通じて自分と向き合ってきました。良いときもあれば悪いときもあるアスリート人生は、数年の間ですが、さまざまな経験が濃縮されています。そこから伝えられることがあると思っているんです。とくに何かを成し遂げたアスリートの言葉には説得力があるし、発信力もある。十分に活用していくべきかなと。
僕が競技を通じて感じたことは、人生を豊かにするためには『目標』ではなく『目的』が大切であるということです。どうしても大会の成績などの目標にとらわれてしまい、それを達成した者が勝者というイメージがありますよね。でも、本当に大事なのは何のためにそれをやるのか、なぜそれをするのか、という部分。
僕自身、自分の掲げた目標を達成した人間ではありますが、それで満足できたかといえばそうではありません。目標を達成したあとも続く長い人生において、過去の栄光はただ虚しいものであると感じました。
本当に自分のためにその目標を達成してきたのか?と思うと決してそうではありませんでした。だからこそ今は、誰かのためになることをすることに力を注いでいます。
行動を自分のためから 『人のため』に昇華させていく、とも言えるかもしれません。そして、これこそが『社会貢献』と言えるのではないでしょうか。
村田諒太氏 【HEROsLAB】
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