プロ5年目でついに覚醒か。千葉ロッテ・藤原恭大の“変化”

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藤原恭大選手 【(C)C.L.M.】

前年の高部瑛斗選手に続き、藤原選手も主軸としてブレイクを果たせるか

 千葉ロッテの藤原恭大選手が、チャンスメーカーとして序盤戦のチームをけん引する活躍を見せている。昨季は同僚の高部瑛斗選手がレギュラー定着1年目で盗塁王の座に輝いたという先例もあって、藤原選手にも前年の高部選手のような大ブレイクが期待されるところだ。

 今回は、藤原選手のこれまでの球歴を振り返るとともに、藤原選手の打撃スタイルを各種の指標を交えながら考察する。さらに、月間MVPに輝いた2021年の7・8月と、今季序盤の打撃を具体的なデータをもとに比較し、藤原選手の好調の理由に迫っていきたい。(※成績は5月7日の試合終了時点)

随所で鮮烈な活躍を見せてきたが、調子の波の激しさが大きな課題だった

 藤原選手がこれまでに記録してきた、年度別成績は下記の通り。

藤原恭大選手 年度別成績 【(C)PLM】

 藤原選手は2018年のドラフト1位で千葉ロッテに入団。プロ1年目の2019年は高卒新人ながら「1番・センター」で開幕スタメンを勝ち取る大抜擢を受けたが、6試合で打率.105とプロの壁に跳ね返され、二軍で経験を積むシーズンを送った。

 続く2020年は新型コロナウイルスの影響で主力選手が大量離脱したタイミングで一軍に昇格し、26試合で打率.260、2本の先頭打者本塁打を含む3本塁打を記録。クライマックスシリーズの第2戦では史上最年少で猛打賞を達成するなど、大いに存在感を放った。

 3年目の2021年は7・8月に24試合で打率.348、5本塁打、OPS1.069と圧倒的な活躍を見せ、自身初となる月間MVPを受賞。一気にブレイクを果たすかと思われたが、9月に死球による離脱を経験して以降は調子を落とし、レギュラー定着はならなかった。

 2022年は開幕直後から深刻な打撃不振に陥って一軍での出場機会を減らしたが、今季は開幕から好調な打撃を披露。チーム事情に応じて主に1番や9番を務めながら、開幕からセンターのレギュラーとして出場。4月は22試合で打率.296、出塁率.352と、チャンスメーカーとして優秀な働きを見せている。

積極的な打撃スタイルの持ち主であることは、各種の数字にも示されている

 次に、藤原選手が残してきた年度別の各種指標を見ていこう。

藤原恭大選手 年度別指標 【(C)PLM】

 思い切りのいい積極的な打撃スタイルが、藤原選手の大きな持ち味だ。四球率の低さに対して三振率が高く、選球眼を示す「IsoD」や「BB/K」も総じて高いとは言えない数字となっている点も、そうした打撃スタイルの表れといえよう。

 ただし、2021年の3月は打率.182に対して出塁率.357と、じっくりとボールを見る意識を強めていた時期もあった。しかし、続く4月は打率.156・出塁率.220と結果を残せず。同年7月の一軍再昇格以降は、再び積極的なバッティングスタイルに回帰している。

 また、通算打率.229に対して、通算の得点圏打率は.276。得点圏打率が.300を上回ったシーズンがプロ入り後の5年間で4度に及ぶなど、キャリアを通じて勝負強さを発揮している。今季も得点圏打率.364と優秀な数字を記録しており、チャンスでも積極的に打ちに行く姿勢が奏功していると考えられる。

 今季も28試合で選んだ四球は5個のみと、果敢な打撃スタイルを継続しながら結果を残している。前年にブレイクを果たした高部選手も同じく積極性を武器に台頭を果たしただけに、藤原選手も先達と同様、シーズンを通した活躍をする可能性はありそうだ。

確実性と長打力の向上に加えて、脚力も大きな武器に

 ただし、プロ入りから2年間の三振率はともに.300を超えており、積極性の弊害が数字にも表れていた。しかし、2021年の三振率は.217、2022年は同.183と、過去2年間は徐々に改善傾向にあった。今季の三振率は再び上昇に転じているが、今後はこの部分を改善していけるかが重要になりそうだ。

 また、今季は持ち前の力強いスイングを見せるだけでなく、コンパクトに安打を狙う意識も増している。それでいて、キャリアベストの長打率を記録しているだけでなく、長打率から単打の影響を省いた、打者としての純粋な長打力を示す「ISO」もキャリア最高の数字に。確実性の向上に加えて、長打力も増していることがわかる。

 さらに、キャリアを通じた盗塁成功率の高さも見逃せない要素だ。2022年は企図した9度の盗塁を全て成功させており、キャリア通算の盗塁成功率も.840と非常に優秀な水準にある。今季はまだ1盗塁とやや慎重な姿勢となっているが、足を使ってチャンスを拡大させられるだけの資質を備えた存在といえよう。

月間MVPを獲得した2年前に比べても、打席での対応力は向上

 最後に、藤原選手が月間MVPを受賞した2021年の7・8月と、今季の3・4月の打撃成績を比較していきたい。

藤原恭大選手 21年7・8月と23年3・4月の比較 【(C)PLM】

 2021年の7・8月はまさに出色の打撃を見せており、数字の面では2023年の3・4月を大きく上回っている。しかし、具体的なデータを確認していくと、当時と現在における藤原選手の「変化」が浮かび上がってくる。

 まずは、該当する2つの時期における、安打となった打球のコースを見ていこう。

21年7・8月の安打方向 【(C)PLM】

 2021年の7・8月においては、センターへの安打が全体の47%、ライトへの安打が38%に対し、レフトへの安打は13%にとどまった。5本の本塁打も全てライト方向に記録したものであり、当時はプルヒッターの傾向が強かったことがうかがえる。

23年3・4月の安打方向 【(C)PLM】

 その一方で、2023年の3・4月はセンターへの安打が35%、ライトへの安打が15%、レフト方向への安打が40%、そして内野安打が10%と、逆方向への安打が最も多くなっている。この数字はコンパクトに安打を狙う意識とも合致するだけに、打撃改造が成果として現れていることを示すものでもあるだろう。

 続いて、該当期間で安打になった打球の球種別割合を確認する。

21年7・8月の安打となった球種 【(C)PLM】

 2021年の7・8月に放った安打のうち、56.3%と半数以上が速球を打って記録したものだった。また、フォーク(15.6%)、スライダー(12.5%)を加えた3球種で全体の85%近くを占めるなど、安打にしている球種に少なからず偏りが見られた。

23年3・4月の安打となった球種 【(C)PLM】

 それに対して、2023年の3・4月はストレートの割合が44%、スライダーは4%と大きく低下し、チェンジアップ・カーブという遅い変化球の割合がいずれも12%に増加。また、カットボールやシンカーといった速い変化球に対してもそれぞれ5%ほど割合が上昇しており、より幅広い球に対応できるようになったことが示されている。

コンスタントに安打を記録し続け、一気にブレイクを果たすシーズンにできるか

 藤原選手は4月終了時点で打率.296と好調を維持していたが、5月に入ってからは月間打率.174と調子を落としている。調子の波の激しさがレギュラー定着を阻む大きな要素となっていただけに、今季はこれまでと同じ轍を踏まないことが重要となってくる。

 事実、2021年には9月4日の第2打席から9月24日の第5打席まで30打席連続無安打と深刻なスランプに陥り、10月14日からシーズン終了にかけても16打席連続無安打を記録していた。その点、今季の連続無安打は4月20日から22日にかけての11打席が最長であり、数字を落としている5月においても、5試合中4試合で安打を記録している。

 また、5月5日には1試合で5三振を喫したものの、続く5月6日には第1打席で二塁打を記録してみせた。今後も主力の座を維持するためには、状態が悪い時期でも定期的にヒットが生まれる流れを継続していく必要があるだろう。

 守備・走塁では既にハイレベルなプレーを見せているだけに、あとは打撃面で結果を出し続けることができれば、一気にスターダムを駆け上がることも夢ではない。試行錯誤を経て成長を続ける未完の大器の大ブレイクに、今季こそは大きな期待を寄せたいところだ。

文・望月遼太
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