【物語りVol.41】 WTB 濵田 将暉「一年、一年、思いは深くなっていきます」
【東芝ブレイブルーパス東京】
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【物語りVol.41】 WTB 濵田 将暉
持ち前のスピードとステップワークを駆使して、インゴールへ飛び込んでいく。濵田がパスを受けると、ブレイバーたちはトライを期待するだろう。ラグビー界屈指のイケメンとも言われるが、高い決定力こそが彼ならではの魅力である。
幼稚園の年少からラグビーを始めた。
「洛西ラグビースクールでコーチをしている方が、近所に住んでいたのでウチの母と知り合いだったんです。それで誘ってもらったのがきっかけでした」
小学校卒業まで同スクールに通い、地元の中学でもラグビーを続けた。快速を生かせる他のスポーツに興味を抱くことはなく、思春期特有の様々な誘惑に負けることもなく、濵田は楕円球を追いかけていった。
高校は京都成章へ進学する。2000年代から花園の常連となり、上位進出も果たす強豪校の一員となった。
「中学ではまったくの無名でしたが、バックスコーチの安田さんが目をつけてくれて、入学してすぐの春季大会からメンバーに入れてくれはったんです。始めはうまくいかないこともたくさんありましたが、それでも使い続けてくれて。僕の成長を待ってくれたのが、結果的にターニングポイントになったかなと思います」
受け身の姿勢で過ごしていたわけではない。ラグビー選手としての可能性を拡げるために、食生活を改善した。
「高校までガリガリだったので、めちゃ食べました。朝、昼、晩のご飯だけでなく、1時間目が終わったらおにぎり、2時間目が終わったらパンとか、とにかく食べてました」
持ち味とするスピードを生かすためのスキルも磨いた。
「ステップを練習していくんですが、コーチの安田さんに自分の良さを引き出してもらったな、と思います。ただ走るだけでは他の選手と差別化できないので、自分なりの工夫もしていました。アジリティを取り入れた練習では、一瞬のスピードで相手を振り切ることを意識していました」
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卒業後は京都産業大学へ入学する。日本代表を数多く輩出している名門で、濵田は1年時から試合に出場していく。
高校時代と同じように、身体作りのために食事の量を増やした。スピードとアジリティも引き続き磨きながら、タックルされてもすぐに倒れない力強さを意識していく。
3年時の関西大学リーグでは、ランキング2位の8トライをあげた。関西学生代表の肩書も得た濵田は、トップリーグの複数チームがリクルートに乗り出す存在となった。
「いくつかのチームから声をかけていただきまして、大学の大西先生から『東芝がいいんじゃないか』と勧められました。僕自身もそうしたいと思っていました。高校も大学もどちらかと言えばFWのチームで、東芝はFWが強い。スムーズに馴染めるんじゃないかな、という印象がありました」
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現在開催中の22-23シーズンでは、開幕からコンスタントに出場している。ジョネ・ナイカブラとともに、フィニッシャーの役割をしっかりと果たしている。
「FWが強いイメージを持ってブレイブルーパスに入りましたが、バックスも強化されてきて、チーム全体で勝てるようになってきているのかな、と思っています。今年はケガをしないでシーズンを終えることを目標にしているので、スタメンで出続けられるような選手になっていきたいですね。チームとしてはもちろん、優勝したいと強く思っています」
素顔の濵田は「感情表現が苦手」で、プレー中も「淡々とやるタイプ」と話す。だからといって、心が無色なわけではない。ピッチに立つ彼の心は、感謝の色に染まっている。
「ラグビースクールでこの競技の楽しさを教えてくれた山本コーチ、中学の近藤先生、高校の湯浅先生、安田コーチ、大学の大西先生、元木コーチ。いままで関わってくれはった人には、ホントに感謝しています。いまこうしてブレイブルーパスでプレーしていて、自分は出会いに恵まれてここまでやってこられたと、改めて感じています」
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「去年のシーズンが終わったあとに、同期の平田快笙と巴山凌輔が勇退して、シオネ・ラベマイが移籍したんです。勇退する選手とスタッフはスピーチをするんですが、巴山が泣きながら『もっともっとみんなとラグビーをしたかった』と話した時に、うるっときまして。巴山は自分の思いを表に出さない性格なので、そんなふうに思っていたことを初めて知ったので。巴山だけでなくチームを離れるみんなが『このチームがめっちゃ好きだ』と話すのを聞いて、ホントにいいチームだなと再確認しました」
濵田自身の思いも、ぜひ言葉にしてもらおう。「いやっ、言葉にするのは難しいんですが……」と申し訳なさそうに頭を下げ、少しの間をおいて沈黙を破る。
「一年、一年、思いは深くなっていきます」
魂のほとばしりは、トライで表現する。
(文中敬称略)
(ライター:戸塚啓)
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