【2023 SEASON PREVIEW】#003 栗山聖 ー ひと回りもふた回りも魅力的なクラブにしていく

鎌倉インターナショナルFC
チーム・協会

【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 昨シーズン、神奈川県リーグ2部を制して劇的な1部昇格を決めた鎌倉インテル。クラブ創設6年目となる今シーズンは、初めて県リーグ1部を舞台に戦う。ここではチームのカギを握る監督、選手に新シーズンへ向けて話を聞いていく。今回は鎌倉インテルのキャプテンを務めるGK栗山聖。

(文・本多辰成/スポーツライター)

守護神&キャプテンとして奮闘、チームを昇格に導く

加入2年目の昨シーズンはキャプテンに立候補、栗山にとってかけがえのないシーズンとなった 【Kazuki Okamoto (ONELIFE)】

 加入2年目の昨シーズン、栗山聖はクラブへの恩返しの気持ちも込めてキャプテンに立候補した。守護神としてゴールマウスを守りながら、シーズンを通して大きな声を飛ばしてチームを鼓舞。その結果として掴んだ県リーグ1部昇格に対する喜びは大きかった。

「僕は2021年からインテルに所属していますが、いろんな期待をして昇格できるものだと思って入ってきました。でも、1年目はリーグの序盤で昇格はほぼ厳しいような状況になってしまった。そこから追い求めてきたものだったので、2年越しの昇格をやっと果たせたという感じで達成感もひとしおでした」

 栗山は中学、高校、大学と最高学年の時にはいずれもキャプテンを務めてきた。だが、社会人サッカーの場合、基本的に最上級生がキャプテンを務める学生サッカーとは役割が異なる部分もあった。

「社会人サッカーの場合はいろんな年齢の選手がいて、僕はベテランというわけでもないので、学生サッカーでのキャプテンとはまた全然違った経験でした。もちろんキャプテンとしてチームの中で誰よりも昇格のために行動するということは意識していましたが、みんなでひとつになって戦えたというか。協力しながらいいチームを作れたと思います」

 和歌山・初芝橋本高時代には主将として全国高校サッカー選手権大会に出場するなど大舞台も経験しているが、「昇格」の瞬間をピッチの上で迎えたのは初めての経験。鎌倉インテルでの2年目のシーズンは「自分のサッカー人生にとってもすごくプラスだった」と、栗山にとってかけがえのないものとなった。

シーズンを通してやってきたことが結実した「昇格決定戦」

やり続けてきたことが最後に形になり昇格を決める 【DAN IMAI】

 キャプテンという立場で臨んだ昨シーズンは、スタートから順調に勝ち点3を重ねて開幕5連勝。順調な滑り出しではあったが、開幕当初はまだ昇格へ向けた確かな自信は得られていなかったと振り返る。

「プレシーズンから昇格はノルマで、絶対に昇格をしなければいけないということを言い続けていました。なので、開幕5連勝という結果はうれしかったですが、当然達成しないといけない結果だと思っていました。ただ、まだあの頃はなぜ勝てているのかという理由は確固たるものがなくて、先は長かったので正直、全然どうなるかわからないというのが本音でした」

 確かな手応えはなかったと栗山も言うように、中盤戦以降はブロック優勝へ向けて厳しい戦いが続いた。6戦目の南FC戦はスコアレスドローとなり開幕からの連勝がストップ。その後は再び勝ち点3をなんとか重ねてはいたものの、3対2のスコアで勝利した9月のFC ASAHI戦あたりから何かしっくりこないものを感じ始めていたという。

「夏のリーグ戦中断期間も練習試合で勝てていなかったので、なんとなく手応えがないなという感じで進んでいました。リーグ戦再開後も勝ってはいましたが、FC ASAHI戦から試合内容的にしっくりこないものを感じて。その次の六浦FC戦に負けてしまって、そこから最終節まではずっとつらかったという感じです」

 精神的につらい状況が続いたというブロックリーグ終盤は、数字の上でも厳しい展開となっていく。六浦FCに敗れたことでブロック2位に転落すると、首位を争っていたFCSCとの直接対決に引き分けたことで自力でのブロック優勝の目が消滅。その後、FCSCが勝ち点を落としたことで自力優勝の可能性が復活したが、今度はもうひとつのライバルであった六浦FCが得失点差で首位に浮上。昇格への絶対条件であるブロック優勝を果たすには、ホームでの最終戦で3点差以上での勝利が求められる状況だった。

 最終戦を前にしての心境を栗山は「正直、自信満々ではなかった」と振り返るが、結果は5対0の快勝で逆転でのブロック優勝が決定。苦しみながらも、ブロックBを制したエブリサ藤沢ユナイテッドとの「昇格決定戦」に駒を進めた。昇格をかけた運命の一戦も前半を1点ビハインドで折り返す苦しい展開となったが、後半で見せた逆転劇はシーズンを通してやってきたことが形になった結果だったと振り返る。

「後半の2得点は本当にシーズンを通してずっと練習してきた形で、お手本のようなゴールでした。自分たちできちんとつくり上げて取った点だったと思うので、本当にうれしかったです。苦しい時期にも『この状況でも昇格しなければいけないんだ』ということを話しながら、やり続けてきたことが最後に形になったと思います」

ひと回りもふた回りも魅力的なクラブにしていく

最後尾からチームを鼓舞するキャプテンの大きな声が、今シーズンも「鳩スタ」に響き渡る 【DAN IMAI】

 栗山は大学を卒業後、スクールのコーチをしながら社会人サッカーでプレーを続けていたが、そこでは思うようにサッカーを楽しむことができなかったという。もっとチームメイトやクラブ全体で喜んだり、サポーターを喜ばせたりできる環境でサッカーがしたい。それが鎌倉インテルを選択した理由だったが、昨シーズンの戦いにはまさに求めていたものが詰まっていた。

「正直、昇格決定戦はホームの試合ではなかったので、あれほど多くの人たちが見に来てくれるとは思っていませんでした。あれだけ多くの人たちが応援してくれるのは自分たちがサッカーをする目的とか喜びみたいなものの大半を担ってくれていると思いますし、応援してくれる人がいなければ苦しい時期にそのまま負け続けてしまったかもしれません。去年の結果は本当に選手、フロントスタッフを含めたクラブ全員と、会場に来てくれたり来られなくても応援してくださる人たちみんなで掴んだ結果だと思っています」

 苦しい戦いの末に昇格を掴み取り、間もなく幕を開ける新シーズンはクラブとして新たなステージでの挑戦となる。クラブに加入して3度目のシーズンを迎える栗山にとっても、また新たな戦いの始まりだ。

「県リーグ1部での戦いとなりますが、初年度での昇格を本気で掴みに行きたいです。去年の昇格はノルマのようなところがありましたが、今年はそれとはまた違って自分たちから志して『達成するんだ』という気持ち。それを成し遂げるには去年以上に結束した組織になって戦うことが条件になると思います。スタッフも含めてクラブに所属するみんなにとって、ある意味で何か人生の岐路になるようなシーズンにしたい。今もいいクラブだと思いますが、さらに殻を破ってひと回りもふた回りも魅力的なクラブになっていくことを誓ってシーズンに入っているので、楽しみにしていただければと思います」

 最後尾からチームを鼓舞するキャプテンの大きな声が、クラブ初の県リーグ1部を戦う今シーズンも「鳩スタ」に響き渡る。

開幕戦はみんなの鳩サブレースタジアムで4月2日(日)午前11時45分キックオフ!

【4月2日(日)の試合情報は下記の関連リンクをご確認ください。】

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著者プロフィール

鎌倉インターナショナルFC(通称:鎌倉インテル)は、世界で最もグローバルなスポーツであるサッカーを通じて未来の日本を国際化していくため、2018年に設立された新しいサッカークラブです。現在は神奈川県社会人リーグに所属していますが、プロサッカークラブ(Jリーグ参入)、そして世界を目指して活動をしています。『CLUB WITHOUT BORDERS』をビジョンに掲げ、日本と世界を隔てる国境をはじめ、性別、年齢、分野、そして限界、あらゆる“BORDER”(境界線)をもたないサッカークラブを目指しています。

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