「チームへ貢献することに専念」スピアーズのアニキ、デーヴィッド・ ブルブリングの献身力

チーム・協会

どの試合でも力強いプレーを見せてくれるデーヴィッド選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(以下スピアーズ)の特徴の一つとしてFW(フォワード)の層の厚さがある。どのBK(バックス)の選手のインタビューや試合後のプレスカンファレンスを聞いても「うちはFWが本当にハードワークをしてくれるから…」という言葉が出てくるのもその証。多国籍の選手が一丸となって作る厚い壁。
中でも大きな体でパワーのあるプレーだけでなく、激闘の中でもどこか優しさが感じられるプレーで目を引く選手がいる。それがデーヴィッド・ブルブリング選手だ。
チームやファンの間では“DB”の愛称で呼ばれるデーヴィッド選手の素顔を垣間見ようと、今回インタビューさせてもらった。

日本でプレーするという決断

コンニチハ、調子はどう?とこちらの緊張をほどいてくれる優しい笑顔と挨拶でインタビューはスタート。
なんと予定開始時刻の5分前からスタンバイしてくれていたそう。

――今まで南アフリカとウェールズでプレーされてきたかと思います。様々な選択があったかと思いますが日本のリーグでプレーしようと思ったきっかけはなんでしたか?
南アフリカではゴールデン・ライオンズでキャリアをスタートし、その後はスーパーラグビーのチーム且つ自分のホームタウンであるエリザベスに拠点を持つキングスでプレーしました。その後ウェールズのスカーレットで4年ほどプレーしました。良い思い出もたくさんあります。
その後、幸運なことに日本でプレーするチャンスをもらえたのですが、多くの南アフリカ人が日本でプレーしているのでさまざまなフィードバックをもらいました。特に日本は生活や文化を楽しめる国であること、人々がとても親切なことですね。実は日本へはジュニアワールドカップの時に来たことがあったので、また戻ってくることができてとても嬉しいです。

――今はご家族と離れて生活をしているかと思いますが、日本での生活はいかがでしょうか。
スピアーズに入団した時は家族も一緒に日本に住んで、子供たちも日本でインターナショナルスクールに通っていました。コロナが始まって妻と子供は南アフリカに戻って生活をしてますが、出来るだけ日本に来てくれたり、今年の1月も学校の休暇を使って日本に来てくれてました。本当に家族はとても協力的です。
ありがたいことに同じ境遇の選手もいるので、休みの日には一緒に過ごすこともできるので楽しめています。チームの環境や船橋、住んでいる場所もとても楽しめています。

――環境的にも文化的にも日本はかなり違うので大きなインパクトがあったかと思います。
確かに最初は大変なこともありましたね。ただ先ほども言った通り人々は親切ですし、素敵な文化にも敬意を持っていますね。食べ物も素晴らしいです。ただ南アフリカの文化とはかなり違いますし、言葉の壁も大きかったので最初はそういったところを乗り越えるのは大変でした。

船橋グラウンドで練習に励む左:デーヴィッド選手、右:同じ南アフリカ出身のリカス選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

家族のようなチームカルチャー、「アニキ」としての存在

――入団から今年で4シーズン目だと思います。入団当時からチームの雰囲気で変わったことはありますか。
そうですね、チームの雰囲気は常にいいと思います。チームカルチャーが(変わらず)素晴らしいのは、お互いをよく知るため、そして家族のような関係を作るためにもとても良いことだと思います。クラブハウスに家族を連れてくる選手もいますが、みんな(その状況を)楽しめていると思います。チームにはトンガ人や南アフリカ人も多くいますが、みんなが心地よく過ごせることを軸に、チーム全体のカルチャーが構築されていると思います。

――昨シーズン、岩爪さんが書いていた記事でデーヴィッド選手はスピアーズ内で「アニキ」のような存在であると書かれていました。ご自身ではどのように感じていますか?
(はにかみながら)そんな風に呼ばれてるなんて知らないけど、それは光栄ですね!チームは家族のようなカルチャーがあるので、「アニキ」と思ってもらえているのは嬉しいし光栄だと感じます。年齢が上のプレーヤーの1人ということもありますし、僕としてはただみんなに心地よく、彼ららしくいてもらいたいと思っていますね。

――SNSでもよく見るのですが、若い選手達ともいい関係を築いていらっしゃいますね
そうですね、同じLO(ロック)のポジションで言えば玉置選手や松井選手など若い選手が増えてきているので助けたいと思っています。

――コミュニケーションはどのように取っていますか?
ええと…本当のところ、僕はあまり日本語が上手くないので…(笑)でもありがたいことに素晴らしい通訳が2人います。日本人選手も英語を頑張って学んでくれていますし、僕らも日本語を頑張っているのでいい文化交流だと思います。

――英語と言えば以前、八千代松陰高等学校でも英語の授業をされたこともありましたよね?
はい、コロナ禍だったのでオンラインで日本の生徒たちと交流する機会がありました。みんないい質問を投げかけてくれましたし、また機会があればやってみたいですね!
コロナの規制もだいぶ緩和されてきたので、またファンの人達と触れ合ったり、オレンジアーミーを盛り上げていければいいなと思っています。

※オレンジアーミー:クボタスピアーズ船橋・東京ベイを支える選手・スタッフ・ファンの愛称

松波選手を引き上げるデーヴィッド選手、試合中でもチームメイトへのケアを怠らない 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

――他の国のチームに比べても、スピアーズのチームメイトは多国籍かと思います。特に刺激をもらっているなと思う人は誰ですか?
そうですね、間違いなくコーチのフランHC(ヘッドコーチ)には影響を受けたと思います。彼はとても礼儀ただしいだけでなく素晴らしいメンタルの持ち主だと思います。
選手でいえばライアン・クロッティ、バーナード・フォーリー、マルコム・マークス、ルアン・ボタ、ハルミチ(立川選手)などインターナショナルレベルの選手たちには、フィールド内外で刺激をもらっていると思います。特にハルミチは非常に優れたリーダーだと思います。ライアン・クロッティ やバーナード・フォーリーにはラグビーに対する考えだけでなく、体のリカバリーについても刺激をもらいますね。
田邉コーチにもかなり助けられています。彼はミーティングでも(通訳を介さず)日英両方で話してくれます。サンウルブズなど他の日本のチームでのコーチング経験もあるので、ラグビーのプレー面でも本当にチームに大きな影響力がある人です。同じチームにいることができてとても嬉しいです。
対戦相手のチームにもインターナショナルレベルの選手はたくさんいますし、そういった人達とプレーができるというのは本当にいい経験だと感じています。
日本は特に国籍様々な選手がプレーしていると思いますが、やはりこれもいい経験だと思いますし楽しんでいます。

――4シーズン目になりますが、印象に残っているゲームはありますか?
自分が入団した年の準決勝で東芝(現:東芝ブレイブルーパス東京)戦で勝ったことが印象に残ってます。そのあとの決勝で神戸に負けてしまったのですが、それもいい経験だったと思います。ですがやはり2シーズン前の準々決勝で戦った神戸(現:コベルコ神戸スティーラーズ)戦ですかね。かなりハードではありましたがチームが一体となって本当にいいプレーができた思いますし、素晴らしい思い出ですね。
――そうですね、ファンにとっても特に2シーズン前の神戸戦は記憶に残る試合だと思います。

最後のトップリーグとなったトップリーグ2021プレーオフトーナメント準々決勝でのノーサイドの瞬間、写真中央がデーヴィッド選手 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

「チームを助ける」一貫した想い

――デーヴィッド選手は本当にチームへの貢献度が高く、毎回プレーに惹きつけられています。ラグビーをプレーまたは続けるうえで大切にしていることや大切にしているマインドは何ですか?
そうですね、一番重視していることは学ぶこと、学び取ることです。それに年も重ねてきているので、体のケアにも力を入れています。チームにもできるだけ貢献したいと思っていますし、自分が持っている知識などは若い選手達に教えてあげるようにしています。

――今シーズンも後半に入ってきましたが、個人的な目標はありますか?
個人としてもチームとしてもやはり優勝したいです。
個人的にはできるだけチームに貢献、助けることに専念したいと思っています。フィールド内外でそういったことをすることによってチームのパフォーマンスやベストなチームでいることに繋がってくると考えています。

――ラグビーファンやオレンジアーミーにメッセージがあったら聞かせてください!
オレンジアーミーの皆さん、いつもサポートしてくださってありがとうございます!いつも試合会場でお会いできるのはとても嬉しいです。ぜひこれからも会場に試合を観に来てください、そして引き続き応援もよろしくお願いします。まずは楽しんでください!私達は本当に皆さんが会場に足を運んでくださることに感謝してますし、皆さんの応援が必要なんです。
またすぐに皆さんにお会いできることを楽しみにしています!

試合中負傷してしまったボタ選手を優しく迎え入れる 【クボタスピアーズ船橋・東京ベイ】

取材後記

この取材をさせてもらったのはハードデイとも呼ばれる1日フルで練習がある日のお昼休み。そんな忙しい、またかなりの疲労があっただろうにも関わらず1つ1つの質問に丁寧且つ笑顔で答えてくれたデーヴィッド選手。
フィールド内での献身的プレーなだけでなく、フィールド外でも困っている人がいれば側に来て手を差し伸べる、その場を和ませる。短時間話しただけでも分かるどこか見守ってくれているような、思いやりのある「温厚篤実」な人柄がプレーにも滲み出ているように感じた。そんな背中を見て学ぶチームメイトも多いだろう。

NTTリーグワン2022-23も後半戦に突入。勝利を掴むために、チームが強くなるために、デーヴィッド選手の力強さと優しさの詰まったプレーに多くの人が魅了されるだろう。


文/訳:クボタスピアーズ船橋・東京ベイ オレンジリポーターAmi
写真:チームフォトグラファー 福島宏治
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著者プロフィール

〈クボタスピアーズ船橋・東京ベイについて〉 1978年創部。1990年、クボタ創業100周年を機にカンパニースポーツと定め、千葉県船橋市のクボタ京葉工場内にグランドとクラブハウスを整備。2003年、ジャパンラグビートップリーグ発足時からトップリーグの常連として戦ってきた。 「Proud Billboard」のビジョンの元、強く、愛されるチームを目指し、ステークホルダーの「誇りの広告塔」となるべくチーム強化を図っている。NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23では、創部以来初の決勝に進出。激戦の末に勝利し、優勝という結果でシーズンを終えた。 また、チーム強化だけでなく、SDGsの推進やラグビーを通じた普及・育成活動などといった社会貢献活動を積極的に推進している。スピアーズではファンのことを「共にオレンジを着て戦う仲間」という意図から「オレンジアーミー」と呼んでいる。

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