川崎の“等身大”ヒーロー・藤井祐眞の長い長い2週間【B MY HERO!】

B MY HERO! 特派員
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川崎の藤井祐眞への思いを記した 【(C)あさみん】

 こんにちは。B MY HERO!特派員のあさみんです。

 川崎ブレイブサンダースを応援しています。

 今回ご縁をいただき、大好きなサンダースについてお話しする機会をいただけたということで、僕のヒーロー、藤井祐眞選手についてお話できればと思います。

藤井祐眞に対する「憧れ、尊敬、あるいは畏怖」

 みなさんは「自分の好きな選手」を指して、どんな言葉を使いますか?

 多くは「推し」という言葉を使うのではないでしょうか。元はと言えばアイドルグループで最も好感を持っている存在に使われているこの言葉、今は単にあるグループの中で一番好きな存在を指して使われることも多いですよね。どこかほっとけなかったり、支えてあげたかったり、全てを肯定してあげたくなったり、そんなアイドルチックなニュアンスを含む言葉だと思っていて。

 ただ、僕にとっての藤井祐眞は「推し」とは少し違います。

 憧れ、尊敬、あるいは畏怖。例えるなら、怖くて近寄れなかった、部活で一番上手いヒーローのような先輩。それが僕の藤井祐眞です。

 前年Bリーグ/天皇杯MVP。3年連続ベストディフェンダー。試合が進めば進むほど輝きを増す4Qモンスター。フロアダイブを恐れない、野生児のようなプレースタイル。脳震盪とインフルエンザ以外で欠場したことのない、鋼の肉体の持ち主。

 事実を書き連ねれば書き連ねるほど、常人離れしたその肖像が浮かび上がります。

 もちろん、コミカルな表情を見せたり、ガキのように遊びにも負けず嫌いな姿を見せたり、ギャンブルが大好きだったり、ファンひとりひとりをよく見ていたり、人間らしい側面も大いに見せてくれる選手ではありますが、自分にとって一番印象的なのはやはりコート上での戦う姿。時折こちらが心配になるくらいの熱量で相手へ挑むその戦い振りについて、同じ藤井祐眞のファンに聞いても、よくこんな言葉が出てきます。

「凄すぎて何も言えない」「味方ながらに恐ろしい」と。

 しかし、2023年1月。そんなヒーローは、苦しんでいました。

苦しみ続けた2週間

 平均3.3得点。14本連続3ポイントシュート失敗。

 最後に3ポイントを成功させた23年1月8日のアルバルク東京戦から、1月21日の琉球ゴールデンキングス戦までの4試合で藤井祐眞が残したスタッツ。

 昨シーズン平均14.1得点、99本もの3ポイントを沈めた男は、もがいていました。

 単に苦しいだけではなく、印象的な、心を切り裂くような場面も多くあった2週間。

 最後に3ポイントを沈めたのは1月8日のアルバルク東京戦1Q。終盤はライバルの底力を見せつけられ、悔しい連敗。

 1月11日のサンロッカーズ渋谷戦は、勝利しながらも無得点に終わり、終盤をベンチで過ごす展開。唇を噛み締める姿は近頃見たことのないものでした。

大事な時間帯でコートに出られないケースも 【(C)あさみん】

 極めつけは1月21日の琉球ゴールデンキングス戦。

 マット・ジャニングの大活躍もあり、試合の大半リードを奪って迎えた終盤戦…。

 連鎖するターンオーバー、マークマンに被弾した劇的な同点シュート、届かぬと知りながらボロボロの身体で立ち向かうオーバータイム。

 苦しみに苦しみ抜く大好きな選手の姿に胸が引き裂かれる思いでした。

 SNSをにぎわすのは失望、落胆の声。

 ここ3試合の不本意なパフォーマンスも相まって、単なる1ファンでしかないのに、眠れないくらい悔しくて。

 ファンですらこうなのに、負けず嫌いの彼自身はどれほど悔しい思いで今を過ごしているのか。考えれば考えるほどこみあげてくるものがあって。

 だからこそこう思いました。

「次の試合、絶対やり返してやるって姿を応援したい」と。

苦しい状況だからこそ「応援したい」 【(C)あさみん】

全てを爆発させたスリーポイント

 迎えた翌日の試合。

 この日も藤井祐眞は苦しんでいました。

 終盤まで4得点に封じられ、スリーポイントは0/2、とうとう連続16本成功がない状態。

 それでもチームは前日の悔しさを胸に長谷川技、鎌田裕也を中心に攻め立て、中盤以降リードを奪います。

 そして72-69で迎えた終盤、4Q残り1分51秒。

 目の前に誰もいない絶好機。普段だったら心配しないけれど、この時ばかりは祈るような思いで放物線を追いかけました。

藤井の放ったシュートを祈る思いで見守った 【(C)あさみん】

 一瞬の静寂、とどろきアリーナを切り裂くスウィッシュ音。

 2週間待って待って待ち続けたその1本は、勝利を大きく手繰り寄せる値千金の一撃。

2週間待っていた3ポイントシュートをついに成功 【(C)あさみん】

 その瞬間に見せた彼の姿を、忘れることはできません。

 もがき、苦しみ、己へ怒り、「それでも打つ」ことを選択したものだけが手にすることのできる喜び。それを全身で表現するかのような表情、力強く握りしめた拳。

 BリーグMVPでさえ、たった1本のシュートを生み出すのにこれだけ苦しんでいるのだ。

 たった1本のシュートが、これほどうれしいものなのだ。

 だからこそ、たった1本のシュートがこんなにも人の心を突き動かすのだ。

 そう思ったら涙が止まらなくなりました。比喩じゃなく本当に涙を流したのはBリーグを見てきて初めてのことでした。

 Bリーグを見始めて6年、ずっと藤井祐眞を応援してきましたが、どのシュートよりも印象に残る1本です。

等身大のヒーローとこれからも

これまで応援してきた中で最も印象深いシュート 【(C)あさみん】

 勝利の瞬間寄り添ってくれたのは、前日勝っていればヒーローだったであろうマット・ジャニング。彼の前で見せた安堵の表情は、嘘偽りも取り繕いもないものだと感じました。

 凄まじい活躍を見せるスーパースターだって同じ人間。苦しい時もうまくいかないときも、仲間に頼ったり甘えたりするときだってある。

 だからこそ好きになるし、だからこそ応援したくなる。
 
 ファンにとっても苦しい2週間、選手本人にとってはどれほど苦しいものだったか計り知れませんが、今まで以上に応援したい気持ちが強くなった出来事でもありました。

 たった1試合に、たった1プレーに、たった1本のシュートに懸けるその想いに、藤井祐眞の魅力を感じずにはいられません。

 3月6日現在、勝利数並びながらもなんとか中地区首位を走る我らがブレイブサンダースですが、例年以上に"苦しい"シーズン。

 気持ちの浮き沈みもあるけれど、苦しんで苦しんで苦しみ抜いた分大きくなった姿を見せてくれるのではという期待もまた持っています。
(YouTubeで見る「3ゆうま」もいいけれど)

 感情を顕に戦う“等身大”のヒーローが、最後にむき出しの笑顔を見せてくれるその時まで。応援します。ついていきます。

あさみん(B MY HERO!特派員)

【(C)あさみん】

バスケットボールと写真とマスコットをこよなく愛するブレサンファミリー。2016-17シーズンのBリーグファイナルを川崎側で観戦したのがBリーグとの出会い。あの時はこんなにハマるとは…。

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著者プロフィール

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