F・マリノススポーツクラブの企業版ふるさと納税を活用したスポーツ振興施策 

横浜F・マリノス
チーム・協会

【©F.M.S.C.】

人と人をつなぐ「スポーツ×地方創生」の新しい取り組みとは

2023年1月18日。横須賀市立富士見小学校の校庭で、1年生たちの元気の良い笑顔が弾けた。サッカーボールを高く投げたり、二人組になってゲームをしたり。「もっとやりたい!」という楽しそうな声が広がる中、1時間弱の“特別授業”は、あっという間だった。

この特別授業は、「スポーツで身体を動かす楽しさを体験してもらう」ことを目的として、一般社団法人F・マリノススポーツクラブ(以下FMSC)がホームタウンの小学校で大事に続けてきた巡回スポーツ教室だ。そこに、2021年度から新たな取り組みが加わった。ホームタウンの一つである横須賀市とタッグを組み、スポーツ振興施策に企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)の仕組みを活用。寄附金を財源にスポーツ環境の向上に資する用品の寄贈も行う形にパワーアップした。

校庭には元気な笑顔と声が響いた 【©F.M.S.C.】

「巡回スポーツ教室はこれまでも行っていましたが、ふるさと納税の仕組みを活用して、さらなる地域貢献を考えました」とFMSCの宮本功代表理事。

FMSCは「スポーツのチカラで人と人を繋ぎ、地域社会の未来創造のエンジンに」を合言葉に、シャレン!(社会連携活動)や#命つなぐアクション、ホームタウントリコロール化など様々な活動を行っている。今回、企業版ふるさと納税を活用した取り組みもその一環で、スポーツの振興・普及だけではなく、教育現場における課題解決や地域社会が抱える問題解決の一歩にもなるものだ。

「学校よっては、体育の授業や部活動でも欠かせない石灰が不足してしまうという声も聞きます。当初は驚いたのですが、教育には必要なもの。そうしたものを支援していくことで、スポーツを通じた教育現場の充実やスポーツに関わる施設の充実にもつながればうれしい」と宮本代表理事は言葉を続ける。

たとえば、バレーやサッカーのネットは修繕が必要だったり、ボールの数が不足したりしていることもあるそうだ。教育現場に必要不可欠な資源や用品の不足は見えにくい。だが、今回の施策では学校の声を聞いて、本当に必要なものを寄贈することが可能になった。さらに、巡回スポーツ教室によって、スポーツや運動することの楽しさをより身近に、実感してもらうこともできるのだ。

この巡回スポーツ教室+スポーツ環境向上に寄与する用品の寄贈は、2021年度からスタートし、2022年度は株式会社IC、株式会社山一商事からの寄附金を財源に、小学校・24校(49回)、幼稚園・保育園を5園(6回)実施予定(2022年10月〜2023年1月末まで)。

今回、訪れた横須賀市立富士見小学校もあわせて1月はすでに3校で実施しており、より活発なスポーツ振興施策となっているが、そこには「スポーツの中心にした街づくりは一つの夢」(上地克明市長)だと話す横須賀市の思いも重なるからだろう。

実際に巡回スポーツ教室を見ていた上地市長は「子どもたちの元気な様子を目にできましたし、今日のようなスポーツ教室は非常にうれしい」と笑顔を見せた。

巡回スポーツ教室は、運動することの楽しさを実感してもらうことが目的の一つだ 【©F.M.S.C.】

ホームタウンである横須賀市との連係は力強いもので、今年1月、久里浜に横浜F・マリノスの練習場「F・Marinos Sports Park 〜Tricolore Base Kurihama〜」が誕生し、供用の開始が市内におけるスポーツ振興を加速させる契機となった。

訪れた小学校でも「F・マリノスの練習場を知っているよ」「試合を見に行ったことがある!」などの声が聞こえており、「スポーツ×地域創生」という新たな地域の魅力を創出していくきっかけにもなっていた。

上地市長は「コロナ禍で子どもたちの表情が以前よりも暗い中、スポーツに触れることでワクワクする。スポーツは夢や希望。友達や仲間をつくれますし、絆になります。今日のようなスポーツ教室を始め、横浜F・マリノスと力を合わせていけるのは、スポーツを中心にした地域活性の起爆剤になると感じていますし、何より市民のスポーツ熱が高まっていることを実感しています」と話し、「横須賀市活性化の核になる」と連携に手応えと期待を寄せる。

そして、このスポーツ振興施策の実現は企業の力があってこそだ。株式会社IC、株式会社山一商事が横須賀市×FMSCに賛同し、スポーツ振興施策の一翼を担う。18日には、巡回スポーツ教室後にスポーツ用品の贈呈式も行われた。

感染対策に充分に気をつけながら巡回スポーツ教室を間近で見て、子どもたちにボッチャセットを手渡した株式会社ICの三澤昇平代表取締役副社長執行役員は、「子どもたちが楽しんでいる姿を見て、心から今回の施策に参加できて良かった」と口にする。

もともと株式会社ICは、2022年からFMSCとサステナブルDX推進パートナーを締結している企業。これまではITを活用し、アンダーカテゴリーの選手育成などの強化に取り組んできたが、「地域社会に向けた活動をより強く推進していきたいという思いの中で、なにか貢献できることがあればと考えていました。子どもたちの未来への思いも強く持っていますし、スポーツ振興の裾野を広げていきたい」という思いのもとに、横須賀市とFMSCが掲げる「子どもたちがよりサッカー/スポーツに親しめるようスポーツ環境を向上させる」という理念に賛同し、パートナーシップとは違う角度での参画となったのだ。

「市民のスポーツ熱が高まっていることを実感しています」(写真後列右・横須賀市上地克明市長) 【©F.M.S.C.】

このように、今回のスポーツ振興施策は、横須賀市を中心としながら、プロスポーツクラブ、企業、教育機関が、志のもとに手をつないでる。それはまさにFMSCが掲げる「スポーツで繋がる。創る」の実現で、ここから、さらなるスポーツ振興や地域活性化の未来が始まるエンジンになっていく活動と言える。

「ホームタウンである横須賀市の街づくりにスポーツの力で貢献していきたい。地域にプロスポーツクラブがあることは、こういうことなんだと知ってほしいですし、やはり、地域に貢献することは使命。大切なことです。活動を続ける中で横浜F・マリノスを好きになって応援してくれればうれしいですし、皆さんの生活の中にF・マリノスがあるようにがんばっていきたい」(宮本代表理事)

F・マリノスは、2022年シーズンのJ1リーグチャンピオン。地域に根ざすプロサッカーリーグのトップを走るからこそ、FMSCも先陣を切って高みを行く。

横須賀市×FMSCが行う企業版のふるさと納税の仕組みを利用した取り組みは、Jリーグ・クラブの中でも先駆けだ。前例がないだけに「当初はみんな不安だった」そうだが、それでも地域を活性化したい、サッカーを普及していきたいという思いのもとで、施策は順調に広がっている。

このように、スポーツが持つ無限の可能性に挑戦するYMSCが見せる地域貢献の新しい形。社会連携のロールモデルとなりうる取り組みで、人と人をつなぎ、地域に笑顔を生む活動は、これからも力強く進んでいく。

「活動を続ける中で横浜F・マリノスを好きになって応援してくれればうれしいです」(宮本代表理事) 【©F.M.S.C.】

  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

日産自動車サッカー部として1972年に創部。横浜マリノスに改称し、1993年にオリジナルメンバーとしてJリーグ開幕を迎えました。1999年には横浜フリューゲルスと合併し、現在の横浜F・マリノスの名称となりました。マリノスとは、スペイン語で「船乗り」を意味し、世界を目指す姿とホームタウンである国際的港町、横浜のイメージをオーバーラップさせています。勝者のシンボルである月桂樹に囲まれたエンブレムの盾には、錨とカモメが表現されています。こちらでは、チーム、試合やイベントなどさまざまなニュースをお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント