地元、小梶が完全V パラグライディング日本選手権

【©JHFパラグライディング競技委員会】

「2022パラグライディング日本選手権 in ASHIO」が茨城県足尾山で開催され、日本全国から選抜された75名の選手が、日本チャンピオンの名を懸け争った。
国内最高峰のシリーズ戦であるジャパンリーグの一戦にも組み込まれる本大会だが、その中でも一年に一度の最大の大会であり、4日間の長丁場で争われる。

大会1日目

初日の競技は、茨城県の足尾山を離陸し筑波山方面のチェックポイントを通過した後、栃木県芳賀郡芳賀町のゴール地点まで、最短距離50.4kmの道のりを誰が最初に飛び切るかを競うものである。
選手は全員GPSを持ち、レース中に必要なチェックポイントの通過やゴールタイム、順位などはすべてコンピュータにより自動判定される。また、選手の現在地はリアルタイムでインターネットサイト上に公開され、一般の人でもレースの戦況を見ることができる。

12時の空中一斉スタートに向け選手は、より高く高度を稼ぐための上昇気流を探す。エンジンなどの動力が無いパラグライダーは、太陽の熱などによって発生する上昇気流を捕らえて高度を稼ぎ、飛行距離を延ばして行く。時には100km以上の距離を飛ぶことも可能だ。

時刻は12時、75名の選手が空中に引かれた仮想のスタートラインを一斉に切る。その姿は地上から見ても壮観だ。

その中でも良いスタートを決めたのは小林と小梶。小林が上昇気流をテンポよく乗り継ぎ後続との差を広げると、ここが地元の小梶は、地の利を活かした独自のコース取りで、両名がレースの序盤を引っ張る。
パラグライダーの競技は、途中のチェックポイントは決められているが、その間に決められた道は無く、進み方は自由である。そこに経験や知識の違いから来る戦略の差が生まれ、難しくも面白いところである。

このまま小林と小梶の一騎打ちになると思われたが、レース中盤、戦況は一変する。ゴール地点の芳賀群方面へ北上を始めると、太陽が雲で遮られ上昇気流が弱くなったのだ。上昇出来なければパラグライダーは着陸するしかなく、レースは途中リタイアとなる。このような状況でゴールの確率を上げるにはスピードを落とさざるを得ず、そこに岩崎、平木、花田を始めとしたスピードある数名の選手が追いつき接戦となる。

レース終盤、ゴールまでたどり着けるかギリギリの状況下でもリタイアのリスクを恐れず先行するのは今大会最年少の花田と、地元の小梶。その後方で確実なゴールを狙う小林、岩崎、平木の日本代表選手3名はゆっくり着実に高度を稼ぐ。

この接戦を制したのは、最後まで攻め続けた地元の小梶。2番手に小林、次に花田、岩崎、平木と続き、最終的に32名の選手がゴールを果たした。

【©JHFパラグライディング競技委員会】

大会2日目

初日よりも上昇気流が弱い予測となった大会2日目は、茨城県の足尾山から栃木県芳賀郡益子町がゴールの29.5kmのレースとなった。

レーススタートの11時30分には、上空1100mから一斉に選手たちがスタートを切るが、序盤にして早くも戦況が大きく動いた。レースを引っ張り先行していた有力選手の多くが上昇気流が弱い為に高度を稼ぐ事が出来ず、先に進めなくなったのだ。この状況を予測してか、昨日トップの小梶は、別の場所で高度を稼ぎ大きなアドバンテージを得ることに成功する。
レース中盤、同じく厳しい場面を上手く切り抜けた大渕、福井らが最初にゴールに向け北上を始め、小梶、山下、橋本、岩谷、宮田らもそこへ続く。

レース終盤、小梶、山下、橋本はハイペースで追い上げると先頭を飛んでいる大渕、福井を追い抜きそのままゴールを目指す。
ゴールへたどり着くための上昇気流をいち早く捕らえたのは昨日トップの小梶。ここでも戦略判断が冴え渡り、そのまま見事トップゴール。両日1位の完全優勝を果たした。

結果

大会全日程は4日間の予定だったが、3日目以降は台風による悪天候で競技続行は不可能となったため、2日間の総合成績により順位が確定となった。

総合 優勝 小梶 渓太 2位 岩谷 勝弘 3位 宮田 清和 4位 小林 大晃 5位 岩崎 拓夫 6位 平木 啓子 【©JHFパラグライディング競技委員会】

女子 優勝 平木 啓子 2位 成山 奈緒 3位 金本 知子 【©JHFパラグライディング競技委員会】

スポーツクラス 優勝 金本 知子 2位 氏田 敏彦 3位 森田 賢 【©JHFパラグライディング競技委員会】

勝利者コメント

【©JHFパラグライディング競技委員会】

総合優勝 小梶 渓太
「今年の日本選手権は、ホームエリアの足尾山nasaエリアでの開催だったので、良い結果を残したいと思って挑みました。レース中に時々トリッキーなコンディションが訪れて、強豪選手たちが苦戦する場面がありましたが、慣れ親しんだホームエリアをひとりマイペースに飛んでいた僕のフライトが奏功することになりました。元々、人と違うコースを選択してうまくいくことに喜びを感じるタイプなので、経験の浅い頃はそれが裏目に出て悔しい思いをすることも多々ありましたが、少しずつ精度も上がってきて、今回はそういう飛び方が結果に繋がったので、素直にとても嬉しいです。」

【©JHFパラグライディング競技委員会】

女子優勝 平木 啓子
「2022年パラグライディング日本選手権で女子優勝することができ、とても嬉しいです。実力で勝ち取ったというよりは、色々なラッキーに恵まれて舞い込んだ勝利と感じています。実力伯仲の日本女子の中で優勝するのは年々難
しくなってきました。でもパラグライダー競技には勝つことの他にも大きな魅力があります。自分はスポンサーを頂いている身なので「勝つ」ということはとても重要なのですが、一旦飛び始めると、そんなプレッシャーなど忘れ去っ
て誰よりも高く早く飛ぶことに夢中になって楽しんでしまいます。上手いパイロットたちと飛べる競技は本当に楽しく辞められません。今回の大会は、思いっきり楽しんで、そして結果も残すことができた、最高の大会となりました。」

【©JHFパラグライディング競技委員会】

スポーツクラス優勝 金本 知子
「スポーツ優勝!本当にびっくりでとっても嬉しいです。スポーツクラスでも軽量の私は他の選手よりもどうしてもスピードが遅く、いつも遅れながらのレース運びなのですが、今回は2日間とも遅れ過ぎず、まわりの選手とゴールで
きました。高く飛ぶことを心がけてたのも功を奏したのだと思います。本当に楽しいフライトでした。ゴールで食べることのできた毎朝受付で頂いたおむすび、とっても美味しかったです。ますます大好きになった足尾エリアです。素敵な大会開催にご協力頂いた皆さま本当にありがとうございました。」
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

公益社団法人日本ハング・パラグライディング連盟は日本国内のハンググライダー及びパラグライダーに関するスポーツの統括代表機関として、ハンググライディング及びパラグライディングによる航空スポーツの発展と普及のための公益目的事業を行っています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント