早実バレー部春高特集 綿引監督×新井琉之介 リクルーティングの難しさ 大学最強・早大との連携

チーム・協会

【早大競技スポーツセンター】

高大連携強化企画 早実高男子バレー部 春高予選特集【前編】

早稲田大学で進めている附属・系属校との連携。スポーツにおいて大学と高校はどのような連携をしているのか。今回は早稲田実業学校の男子バレーボール部の監督と現役部員に、高校部活動の目線から語ってもらいました。(早稲田大学競技スポーツセンター)

記事・写真 五十嵐香音(早稲田大学競技スポーツセンター学生スタッフ・政治経済学部2年)

いよいよ、全日本バレーボール高校選手権(春高)の東京都予選が始まる。例年部員数10人前後という少人数にも関わらず、都ベスト4にくい込む強豪・早稲田実業学校高等部(早実)男子バレーボール部。しかし、11人で春高に出場し、大応援団を援護に華々しい舞台へと立ったのはすでに3年前のことだ。

昨年の春高予選では、現在早大バレーボール部に在籍中の赤坂侑哉(教育学部1年)ら春高を経験した最後の世代と、192cmのスコアラー新井琉之介(3年)らが奮闘した。しかし、メンバーが9人でほとんど交代無しの早実は、主将と新井が相次いで足をつってしまい一時離脱。惜しくも都4位となり、3枠ある東京都代表にわずかに手が届かなかった。

平均身長が高くなく、いわゆるスターが揃ったチームではない。6対6のチーム練ができなかったこともある。それでも工夫しながら日々バレーボールに打ち込み、「今年こそは」と春高の舞台を目指す彼らに迫る。

前編では、選手を率いる綿引亮太監督(2010年 早稲田大学院経済学研究科修了)と、選手を代表して東京都代表チームの一員でありチームのスコアラーである新井琉之介(3年)に話を聞き、早実の特殊なスポーツ推薦入試や系属校ならではの高大連携について伺った。

※この取材は9月7日に行われたものです。


自己紹介

対談中の綿引監督(左)、新井 【早大競技スポーツセンター】

――自己紹介をお願いします

綿引  綿引亮太です。大学院に行きながら学芸大と埼玉大に通って、社会科と保健体育の教員免許を取りました。今は中学1年生の担任です。
新井 3年の新井琉之介です。ポジションは早実ではOH(アウトサイドヒッター)、東京都の国体(国民体育大会)ではOP(オポジット)で
す。

――新井選手はなぜ早実を選んだのですか

新井 一つは、小さいときから塾に入れてもらっていて、将来のことを家族で話し合う中でも、スポーツだけやっていれば良いという学校に行くのは、家庭の教育方針としても自分の考えとしても違うよねということがありました。もう一つは自分が早大の試合を見て「早稲田に行きたい、早稲田でバレーをしたい」と思ったからです。

――早実は入試形態(初等部、中等部、高等部一般、高等部推薦)に関わらず、混成のクラス編成ですからかなり特殊な学校ですよね。部活と勉強の両立はいかがですか

綿引 嫌な質問来たなあ(笑)。
新井 (笑)。できているかできていないかで言えば、できてないです。中学生の時は練習が終わるのも遅かったですが、家が近かったのもあってその後に塾に行ってと、勉強をする時間を確保できていました。今は疲れてしまって。進学のために学力試験が2回あるのですが、1回目は結果がよくなかったので2回目は頑張らないとなって。こけたところから起き上がるために必死に勉強しています。

リクルーティングについて

――特徴は

綿引 まず重要なのは、スポーツ推薦で受験しても不合格になってしまうことです。「落ちるかもしれないけど、どうですか」と提案し挑戦してもらう。リクルートって言ってもそれしかないんです。しかし、一般的にはそうなってはいません。他の学校からは「特待ですよ、間違いなく受かりますよ」と言われている中で、保護者の方や中学の先生が早実を受けさせてくれる。不確定な要素でも、挑戦させるよと言ってくれる方々の気持ちを大事にしなければと思いますね。これが早実のリクルーティングというか、スカウティングの非常に難しいところです。

――どのような生徒に来て欲しいですか

綿引 「バレーボールが好きな子」、ひとえにそれです。バレーにどういう情熱を持っているかということが、早実でバレーをやる上では大事なことなので。学内の基準をクリアすれば早稲田大学に行ける学校なので、バレーを頑張ることで進路を決める必要はないわけです。でもその中で勝ちたい、いい思いをしたいと思うには、根本的にバレーが好きじゃないと頑張る源にはならないから。

――未来のバレー部員にメッセージ

新井 いい学校ではあると思います。バレー部も自分的には居心地がいいです。他の人はわからないけれど、自分には合っているなと。バレーが好きな子は頑張れると思います。
綿引 ここを目標にして来る必要はないんですよ。ここで何かを成し遂げて終了ということではなく、通過点にして自分の人生を切り開いていくという学校だし、部活なので。淡白な言い方にはなりますが、そういう場にしようぜと、こんな感じですかね。

高大連携について

練習でスパイクを打つ新井 【早大競技スポーツセンター】

――新井選手は早大でもバレーを続けたいですか

新井 早大に進学を希望しているので、進学できたら所属したいと思います。

――早大で続けている先輩との交流は

新井 大会前になると先輩を綿引先生が呼んでくださったり、大学の練習に参加させていただいたりしています。
綿引 基本的なスタンスとしては、僕は早大バレー部のただのファンなので(笑)。そこにいる子が自分の教えた子というよりも、早大のバレー部に入ったらただ自分は応援するそこらへんの先生という感じです(笑)。まあ卒業生が来て「飯食い行くか」ってなることもありますが、頻繁ではないですね。

――毎年、夏に大学との合同練習があると伺いました。今年はどのような感じでしたか

綿引 自分たちが練習していること、考えてやっていることを整理したり、確認をしたりという感じですね。今年は新井が国体でいない状態で行かせてもらって。ブロックを松井先生(※松井泰二・早大バレーボール部監督)に見て確認してもらって、基本的な考え方、後ろの守り方をアドバイスいただきました。夏に必ず1回そのようにして、チームの状況を見てもらい、春高予選までにブラッシュアップするという感じです。

――どのような収穫を期待していますか

綿引 日本一の取り組みを体験させてもらうということです。日本一になるべくしてなっているチームなので。その人たちの練習のレベルや技量が高いというだけではなく、1人の成人男性としての振る舞いとしても素晴らしいと思いますから、お手本ですね。部室とかすごいですよ、超綺麗。ゴミ一つ落ちていないです。人として成長できる場にしようよという松井先生の考えがやはり、プレーだけではないのだなと。

――早大とさらに連携を強化してやりたいことや、求めていることはありますか

綿引 大学に行ってもバレーを続けている子たちが、大学生として所属学部からもに評価されるようなシステムや連携があると良いと思います。バレーに限らず、早実から体育各部の部活に挑戦する子たちが、どんな子たちなのか学部でも追いかけてもらって、こういう様に人として成長できるよ、早実の選手はこんな風に評価されているよと、もう少し後押ししてくれると、部活を続ける子も増えるだろうと思います。

――ありがとうございました!

【早大競技スポーツセンター】

◆綿引亮太監督(わたびき・りょうた)写真右

早稲田実業学校中等部・高等部男子バレーボール部監督兼顧問。2008年早稲田大学政治経済学部卒業、2010年早稲田大学大学院経済学研究科修了。早稲田実業学校高等部卒業。春高予選に向けてダイエットを開始した監督。ほぼ毎日、片道5キロを走って通勤しているそうです!

◆新井琉之介(あらい・りゅうのすけ)

早稲田実業学校高等部3年。192センチ。埼玉・市熊谷東中出身。東京都の国体メンバーに選ばれた新井選手。国体とチームの練習に加え、進学のための学力試験も近く、大忙しな日常を送っているそうです!

【高大連携強化企画】早実高男子バレー部 春高予選特集 前編・後編・練習編の続きは【関連リンク】から↓

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著者プロフィール

「エンジの誇りよ、加速しろ。」 1897年の「早稲田大学体育部」発足から2022年で125年。スポーツを好み、運動を奨励した創設者・大隈重信が唱えた「人生125歳説」にちなみ、早稲田大学は次の125年を「早稲田スポーツ新世紀」として位置づけ、BEYOND125プロジェクトをスタートさせました。 ステークホルダーの喜び(バリュー)を最大化するため、学内外の一体感を醸成し、「早稲田スポーツ」の基盤を強化して、大学スポーツの新たなモデルを作っていきます。

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