「スタートアップによって日本スポーツをドライブせよ」 SPORTS CONNÉCT powered by HiVE イベントレポート後編!

SPORTS TECH TOKYO
チーム・協会

【SPORTS CONNÉCT powered by HiVE】

スポーツテックをテーマにした世界規模のアクセラレーション・プログラム「SPORTS TECH TOKYO」は、日本スポーツアナリスト協会(JSAA)とVenture Café Tokyoが主催するネットワーキングイベント「SPORTS CONNÉCT powered by HiVE」に参加。

「SPORTS CONNÉCT powered by HiVE」は、“スポーツの価値をUNLEASH(開放)する”をテーマに、世界全体が持続可能な地球環境と人間社会づくりに向かう中、スポーツが果たせる役割とは一体なにか?を議論の軸に据え、6つのプレゼンテーションとネットワーキングを行った。
SPORTS TECH TOKYOは、イベントの中で、パラスポーツの視点から現代社会とスポーツの関係性を考える「PARA-SPORTS DRIVE AN INCLUSIVE SOCIETY [HYBRID]」と、スポーツを軸にビジネスを推進する企業5社によるピッチ「START - UP PITCH BY SPORTS TECH TOKYO[HYBRID]」の2つのプログラムをプロデュース。後編の本記事では、スポーツ領域を軸に多様な切り口でビジネスを推進する、5社のピッチの様子とピッチを視聴した著者の気づきをお届けする。

日本スポーツxスタートアップの最前線

START - UP PITCH BY SPORTS TECH TOKYO[HYBRID]のプログラムでは、テクノロジー×スポーツを軸にビジネスを推進する、バラエティに富んだ5社が各社8分間のピッチを行った。国内スポーツテックの最前線ではどのような取り組みがなされているのか、その一部をお届けする。


株式会社Pioneereork 代表取締役 後藤 陽一氏

【SPORTS CONNÉCT powered by HiVE】

大学院でスポーツビジネスを勉強した後、株式会社電通に入社。当時からスキーに没頭していたこともあり、社会人4年目からはアクションスポーツ専門家を名乗り、ウィンタースポーツ世界選手権の日本誘致プロジェクトを担当しました。このプロジェクトをきっかけに、アウトドアスポーツが持つ価値を模索する取り組みを続けています。

【SPORTS TECH TOKYO】

自然をフィールドとして遊ぶスポーツには、観光や環境の要素も含まれており、弊社ではアーススポーツという概念を採用しています。コロナ禍の影響でアウトドア業界は右肩上がりですが、すでに海外ではユニコーン企業をはじめ、約200億円を調達する企業も出ています。日本には、ものすごくユニークな自然のフィールドと、100年以上前から山や海で遊んできた歴史があります。加えて、漫画や日本食という世界的に注目されるカルチャーも存在することから、アジアを代表するコンテンツになり得るポテンシャルがあると考えています。

【SPORTS TECH TOKYO】

我々が提供するサービスのひとつに、全国共通で使用できるスポーツ施設の年間パスポートの販売があります。この事業はユーザー数と売上、どちらも順調に伸びています。

また、世界中の企業がCO2排出を減らすことにトライしているわけですが、それに付随する形で生じるカーボン・オフセットの市場も近年注目されています。

【SPORTS TECH TOKYO】

カーボン・オフセットとは、日常生活や経済活動においてどうしても排出される温室効果ガスに対して、排出量に見合う温室効果ガスの削減活動への取り組み・投資を通じて、排出される温室効果ガスの埋め合わせを行うという考え方のことです。

現在、具体的な取り組みとして、北海道上川町マウンテンバイクとカーボンクレジットを組み合わせたサステナブルツーリズムコンテンツや、林野庁のアクセラレーションプログラム、東京証券取引所のカーボンクレジット市場の実証実験に参加しています。

アーススポーツは、スポーツビジネスを拡張し得る可能性を秘めています。皆さんの参画をお待ちしています。

株式会社Pioneereorkの情報はこちらから
https://www.pioneerwork.co/
株式会社フィナンシェ 執行役員 スポーツ事業責任者 神野 嘉一氏

【SPORTS TECH TOKYO】

私たちが提供するFiNANCiE(フィナンシェ)は、スポーツ団体やアスリート、アーティストなどがブロックチェーン技術を活用してトークンを発行できるWeb3サービスです。発行主はそのトークンを販売することで資金調達が可能になります。また、トークンを購入した方々はプロジェクトの一員としてコミュニティに参加いただくことが可能です。現在、スポーツ領域だけで15競技・80以上プロジェクトが立ち上がっており、引き続き数多くのお問い合わせをいただいています。

【SPORTS TECH TOKYO】

最近は新しいファンコミュニティ形成を主目的にFiNANCiEを導入するケースが増えています。FiNANCiEのファンコミュニティの特徴は主に3つです。

1つ目は、先立ってお金とファンを集めることができること。スポーツ団体や選手の方々はFiNANCiEを利用して気軽にトークンを発行することができます。その際、発行主のビジョンに共感したファンの方々がトークンを購入してコミュニティに参加するため、プロジェクト開始前に資金を獲得し、さらに熱量の高いファンが集まるコミュニティを形成することが可能になります。

2つ目は、プロジェクトが成功した際にトークンを持っているコミュニティメンバーに還元があること。FiNANCiEではメンバーの貢献度が可視化でき、貢献度の高いメンバーに還元することが可能です。また、プロジェクトが成功することで、メンバーが持つトークンの価値の向上も期待できます。

【SPORTS TECH TOKYO】

3つ目は、トークン発行による資金調達、つまりファンディングが完了した後も、形成されたファンコミュニティは継続すること。
クラウドファンディングのように、当該プロジェクトが完了したら終わりではなく、一度トークンを持ったファンの方々の多くはコミュニティに残るため、プロジェクト毎にファンディングを繰り返すことで、より大きなファンコミュニティに成長していきます。


直近では、形成したファンコミュニティでのファン参加型の取り組みを通じ、ファンクラブやアカデミー、スポンサー営業、あるいはSDGsといった、スポーツ団体の既存事業を拡張させるチャレンジをしています。加えて、今後は我々自身が主体となる独自暗号資産の発行、そしてIEO(Initial Exchange Offering)を行い、FiNANCiEを中心としたエコシステムを拡張していきます。さらにそれらで得た資金とナレッジを活用して、個々のスポーツ団体がWeb3を活用したエコシステムを構築する際の支援も行っていきたいと考えています。興味を持っていただけた方は、是非お声がけいただけると嬉しいです。

【SPORTS TECH TOKYO】

株式会社フィナンシェの情報はこちらから
https://www.corp.financie.jp/

株式会社BiPSEE COO 上木原 広平氏

【SPORTS CONNÉCT powered by HiVE】

当社は「VRで心を支えるソリューションを作り出す」を理念に掲げて活動しています。CEOの松村が心療内科医で、企業の根幹には医療のアイデンティティがあり、うつ病、不安障害、発達障害などの精神疾患や疼痛などに対するソリューション開発を行う研究開発のスタートアップです。

そんな我々が「なぜスポーツなのか?」。アスリートは強いメンタルを持っているイメージですが、一般の方々同様にケアが必要であり、競技パフォーマンスの安定や向上を目指す際にも、心と向き合うアプローチが有効だと考えているためです。

この仮説のもと、ラグビー選手250人に対して行った研究では、一般人と同様にメンタルヘルスに課題があることが分かりました。またメンタルトレーニングを行うことで、競技力向上に繋がったデータも出ています。

【SPORTS TECH TOKYO】

続いて「なぜVRなのか?」です。VRはトレーニングや学習と非常に相性が良いと言われており、PwCコンサルティングが実施した調査では、教室での学習やeラーニングと比べて、学習効率や集中の度合いが高まることが分かっています。

【SPORTS TECH TOKYO】

VRは元々医療機器として開発されてきた背景があり、アメリカでは既にリハビリや慢性疼痛に対する医療機器として、医療現場で活用されています。

【SPORTS TECH TOKYO】

BiPSEEは心を整えるためのコンテンツを複数開発しています。コンセプトとして、体験者が自ら学び、スキルを会得していくことを目指しており、中でもマインドフルネスや注意集中、客観視のスキルを身につけるコンテンツはスポーツ選手が競技に集中するためのパフォーマンス向上にも役立つのではないかと考えております。

【SPORTS TECH TOKYO】

これらのコンテンツは、医師として長年メンタルヘルスと関わってきたCEOの松村、学部生時代から現在所属している東京大学博士課程にわたりVR研究に携わり、Webサービスやデザインにも精通するCPOの小松を中心に開発されてきたことが特徴的です。また、様々な研究機関や企業と共同研究・実証実験を行っており、直近ではまだ非公開ですが、あるメーカとスポーツ選手のパフォーマンス向上に関しての共同研究を開始しています。

【SPORTS TECH TOKYO】

VR×スポーツ×メンタルという分野で、新しいソリューションを開発したい方や、単純に「面白そう!」という理由でも構いません。是非、お声掛けいただけたら嬉しいです。
株式会社BiPSEEの情報はこちらから
https://bipsee.co.jp/

株式会社PASU 代表取締役 谷口 友星氏

【SPORTS TECH TOKYO】

私自身、東京ヴェルディというJリーグの下部組織で9年間プレーし、世代別日本代表に選んでもらうなど、少年時代から順風満帆なサッカーライフを送ってきました。しかし、志半ばにして心臓病を患い、10代にして強い絶望を味わうことになります。そんな時、当時の下部組織の監督が東京ヴェルディのプロ選手を私の元に連れてきてくれて、選手たちの言葉に励まされ、救われた経験があります。私はサッカー選手になることは叶いませんでしたが、この経験を広く届けていきたいという想いで創業した会社がPASUです。

前置きが長くなってしまいましたが、当社では3つのサービスを展開しています。1つ目が、応援しているアスリートから、自分だけに向けたオリジナルのビデオメッセージが貰えるサービスです。

【SPORTS TECH TOKYO】

そして2つ目が選手個人のファンコミュニティサービスの運営、3つ目が汎用的なビデオメッセージとグッズ販売を掛け合わせたサービスとなっています。

ビデオメッセージは至ってシンプルで、アスリートからお子さんへの応援メッセージや結婚式のお祝いメッセージなどが届く形で、「お祝い」や「激励」のシーンで利用いただくことが多くなっています。またスポーツチームの皆様におきましても、コロナ禍において希薄化せざるを得なかったファン・サポーターとの接点作りの場および新たな収益源として活用いただいております。

次にファンコミュニティサービスについてですが、ファンと選手が直接的に交流できるマイクロファンクラブのイメージで運営しております。選手自らがファンベースを作ることによって、セカンドキャリアという課題に対しても、現役時代から主体的にアプローチしてほしいという思いで運営しています。

【SPORTS TECH TOKYO】

3つ目の汎用的なビデオメッセージとグッズ販売を掛け合わせたサービスは、カレンダーを中心としてグッズ展開にビデオメッセージを掛け合わせた展開を行っています。購入後もグッズに更新性を持たせることを意識しており、カレンダーを例にあげると、7月には選手が七夕や夏休みの思い出のメッセージが届いたり、試合前に意気込みメッセージが届くようなサービスです。スポーツチームの皆様からは、売ったら終わりではなく、グッズを売った後にキャッシュポイントを継続的に作れる点も好評いただいています。

【SPORTS TECH TOKYO】

当社はアスリートのファンアクティベーションを軸に、多角的なサービス展開を進めて参ります。球団やクラブ、選手のマネジメントを担当されている方がいらっしゃいましたら、ぜひお声掛けください。また、資金調達も少し先に予定していますので、投資家の皆様ともご挨拶できたら嬉しいです。

株式会社PASUの情報はこちらから
https://pasu.jp/

株式会社マイネット 取締役専務執行役員 事業開発管掌 岩城 農氏

【SPORTS TECH TOKYO】

株式会社マイネットでは、スポーツの権利やコンテンツのデータを利活用する事業を通して、プロスポーツ産業が力強く成長させる取り組みを、この2年ほど取り組んでいます。また、現在はファンタジースポーツにも注力しております。

私たちが見据える市場課題は、顧客接点×マネタイズの部分です。私自身、ゲーム事業に15年ほど携わってきていますが、ゲーム市場においても接触機会が多いモバイルゲームのような存在が重厚で長大なコンテンツだけでは、埋める事の出来ない隙間時間を埋め、ライトかつ無料のコンテンツが市場を広げていく流れを体験していますし、こういった流れは今の時代において不可避だと考えています。

【SPORTS TECH TOKYO】

しかし、リッチなコンテンツを否定したいわけではありません。解決の方向性は、コンテンツが生み出す価値の向上を信じた上で、接点をどのように増やしていくのかということです。もう少し踏み込むと、接触頻度の高さで勝負しているコンテンツは、コンテンツの質で勝負をすると部が悪いです。なので、スポーツは接触頻度で勝ち負けに持ち込めたら、勝てる可能性が高いわけです。

スポーツのコンテンツに魅力があることは間違いないので、どのように隙間時間消費型のスマホ文化に適応していくのかが鍵になります。今は魅力的なコミュニティを検索したり、人と話す中でそのコンテンツを好きになっていく傾向があったり、会話の種が欲しいといったニーズが多いのではないでしょうか。このニーズに対する答えを見つけることができれば、スポーツ市場の成長性は極めて高いと考えています。その中で、最初に事業として選んだのがファンタジースポーツです。

【SPORTS TECH TOKYO】

プロ野球のサービスはすでに展開していて、Bリーグも9月末からローンチになります。我々が展開するファンタジースポーツのサービスには2つの遊び方があります。デイリーファンタジーは対人戦で賞金が得られる遊び方、シーズンログは友達間でシーズンを通して順位を競う遊び方です。

ながらでプレイできる遊びで、映像視聴や試合観戦の必要がありませんし、特別な操作もありません。上手くなる方法は一つで、プロスポーツに興味を持つことです。そんな中で現実の試合結果から別のドラマが生まれるんですね。自分が応援しているチームが負けても、ファンタジーの結果がよければ少し溜飲が下がる、私自身もこんなスポーツライフを既に10年以上楽しんでいます。

【SPORTS TECH TOKYO】

アメリカでは、一足先にファンタジースポーツが大きな伸びを見せており、十分すぎるほど大きい市場のポテンシャルを見せています。我々はそこに目をつけ、先に市場を掘っていき、コミュニティ形成とユーザープール構築に先行投資をしている段階です。

【SPORTS TECH TOKYO】

スポーツ市場の開拓を推進するという役回りにおいて、例え我々が倒れたとしても、後の世代にバトンを繋いでいって、プロスポーツ産業が大きくなっていくための礎を作りたい。スポーツのデータや肖像権にしっかりお金が循環する仕組みを作り、価値を高めていくことも我々一部上場企業の責務かなと思っています。引き続き、力強く事業を伸ばしていくことを最優先に、挑戦して参ります。皆様と多方面に連携しながら前に進めたら嬉しいです。よろしくお願いします。

株式会社マイネットの情報はこちらから
https://mynet.co.jp/

筆者は5社のピッチを聞いて、スポーツが持つ多様な価値を現代社会に適応化し、価値の拡張と進化を目指すにはテクノロジーの力が不可欠であると実感した。今後、スポーツ領域とテクノロジー領域が互いの特徴を生かし合い、新たなサービスや技術を生みだすことで、各々の業界が発展していく可能性を大いに感じることができたイベントであった。

INNOVATION LEAGUE 2022がスタート!

3年目の開催となる「INNOVATION LEAGUE 2022」が8月4日にローンチ。今年度はコラボレーションパートナーとして「全日本柔道連盟」と「日本アイスホッケー連盟」の2団体が参画。アクセラレーションへの応募は2022年9月30日で締め切りました。コンテストへの応募は2022年12月5日まで。募集要項など詳細は公式ウェブサイトをご確認ください。


執筆協力:清野修平
新卒でJリーグクラブに入社し、広報担当として広報業務のほか、SNSやサイト運営など一部デジタルマーケティング分野を担当。現在はD2Cブランドでマーケティングディレクターを担いながら、個人でもマーケティング支援を手掛けている。株式会社セイカダイにてデジタル・コンテンツ領域を担当
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著者プロフィール

スポーツテックをテーマにした世界規模のアクセラレーション・プログラム。2019年に実施した第1回には世界33カ国からスタートアップ約300社が応募。スタートアップ以外にも国内企業、スポーツチーム・競技団体、スポーツビジネス関連組織、メディアなど約200の個人・団体が参画している。事業開発のためのオープンイノベーション・プラットフォームでもある。現在、スポーツ庁と共同で「INNOVATION LEAGUE」も開催している。

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