【浦和レッズスペシャルインタビュー】「僕は性格が悪いし、面倒くさい」 松尾佑介がFWとして浦和のために闘い、タイトル獲得へ向かう

浦和レッドダイヤモンズ
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25日、浦和レッズは埼玉スタジアムで行われるJリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準決勝 第2戦 セレッソ大阪戦【MATCH PARTNER キリン一番搾り】に臨む。

アウェイでの第1戦を1-1で引き分け、勝利はもちろんのこと、0-0で決勝進出を決められる一戦。しかし「0-0狙いではいけない」と言ったリカルド ロドリゲス監督をはじめ、チームはホームで勝利して決勝進出を決めようとしている。

失点をしないことが重要だが、勝利するならばゴールが必須。ゴールを取る上でのキーマンの1人、松尾佑介に話を聞いた。

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「僕は性格が悪いし、面倒くさいんですよ。ずるいというか、『ちくしょう』って感じです」

松尾が放った言葉が一瞬、理解できなかった。

確かにクールでどこかあまのじゃく。一筋縄ではいかない性格であり、世間一般から見れば変わり者ぞろいかもしれないプロサッカー選手の中でも独特の雰囲気を醸し出す。

だが、それまでしていたのは人間性の話ではなくサッカーの話。「流れを見ながらプレーを選択します」と言った直後の発言にしては、唐突に感じられた。

小泉佳穂から「賢い」と言われる松尾は、こちらの表情を読み取ったのだろうか。聞き直される間もなく、言い方を変えた。

「相手のプレーの基準として面倒くさいプレーを選択したいです。相手にとって面倒くさい選手、ずるい、『ちくしょう』と思われる選手がいい選手と思っています。流れをこちらに持ってくるためにも、なるべく相手目線で面倒くさいと思われるプレーを選択しているつもりです」

小泉が言う「賢い」は松尾が言う「面倒くさい」でもある。小泉は松尾について問われると「一緒にプレーしやすい」と即答した。その後、理由についてはしばらく考えた後に出た表現は、「賢い」だった。

「ポジショニングがいいんです、攻撃も守備も。周りを見てくれていますし、無駄に走り過ぎることも、極端に下がったりすることもありません。動くところと動かないところのバランスを取るのがうまいので、こちらが動きやすいんです」

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小泉と同様、松尾と「プレーしやすい」と言ったのは大久保智明だった。松尾も以前、大久保について「お互いにドリブラーなので感覚が合う」と言っていたが、大久保も同じ気持ちだ。

「松尾選手がここにいるならここには行かなくていいとか、この辺で待っておけばいいというイメージは合います。関根(貴大)選手も同じような感じです。同じドリブラーだと来てほしいスペースや、逆に入らないでほしい場所も分かります」

その感覚が合ったのが、9月10日に4-1で勝利した明治安田生命J1リーグ 第29節 柏レイソル戦の1点目だった。

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相手の裏に抜け出す松尾が見えた大久保は、ボールを受けた瞬間に考えたシュートの意識を捨て去って松尾へのスルーパスを選択した。

「松尾選手が走っているのは見えましたし、スルーパスのコースが空いていました。流し込むというか、優しくパスを送るという感覚でした。松尾選手のおかげでパスを通すこと自体が簡単でした」

開幕前の負傷もあり、加入後、いや育成組織から仙台大学、横浜FCを経て浦和レッズへ『復帰』して以降、トップチームでデビューするまでに開幕から約2ヵ月を要した。それ以降もしばらくは定位置をつかむことに時間がかかった。

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それが今や、リカルド監督や仲間たちの信頼を得て、レッズに欠かせない選手になりつつある。しかも、松尾自身も想像していなかった形で。

「レッズに加入してFWになるなんて思ってもいませんでした。でも、ゴールに近いのはうれしいです。サイドでプレーしているときに『もっとゴールに近い方がいい』と思うこともありました。一番前から選手全員を見渡すことができますし、その景色は壮観ではあります」

公式戦11得点はダヴィド モーベルグに続き、チームで2番目に多い。特にシーズン後半では重要なゴールを決めてきた。

3-1で勝利したJ1リーグ 第23節 川崎フロンターレ戦では決勝点となった2点目、1-1で引き分けたJリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 第1戦 名古屋グランパス戦のアウェイゴールを決めた。

PK戦の末に決勝進出を決めたAFCチャンピオンズリーグ 2022ノックアウトステージ 準々決勝 全北現代戦の先制ゴール、2-2で引き分けたJ1リーグ 第28節 鹿島アントラーズ戦の2点ビハインドからの1点目、4-1で勝利した 第29節 柏レイソル戦の先制点。いずれも結果を左右するようなゴールだった。

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もちろん、FWでプレーする責任は感じている。ゴールに最も近いということは、ゴールを最も取らなければならないということ。

ゴールや勝利への飢え。ゴールから遠ざかればすぐに評価を落とすという焦燥感。そしてポジションを失うという危機感。それらが松尾から消えることはない。

「だからゴールだけを意識していたいです。できれば僕もやりたくないですし、そんなことをせずに流れを持ってこられたら最高ですけど」

そう笑って言ったのは、圧倒的なスピードで相手の守備を切り裂くドリブルやゴールといった攻撃と同様、松尾の役割として重要な前線からの守備だ。特にレッズにおいてはサイドハーフよりも自分に合っていると感じるFWでの守備について、松尾はこう説明した。

「相手のタイプや流れにもよりますが、チームの陣形を確認しながらプレッシャーをかけています。セレッソとの第1戦もそうでしたが、立ち上がりがあまりよくなかったので、ひとつプレッシャーのスイッチを入れて流れを引き戻すような作業をしました。守備をやる必要がない方がいいですが、僕が少し無理をして頑張ることでチームの流れが良くなるのであれば、僕にとってもいいことですし、僕自身のチャンスの数も増えます。だから、その労力は惜しんではいけないんです」

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守備で奮闘しながらアウェイゴールを奪って引き分けに貢献する少し前。ウオームアップ中に松尾はゴール裏のファン・サポーターを見つめていた。

「すぐに分かりましたし、長い間歌ってくれていましたから」

21日のC大阪戦は国内での浦和レッズの試合に声出し応援が戻って7試合目。過去6試合、松尾の個人チャントが歌われることはなかった。

レッズは加入しただけで個人チャントができるわけではないことは知っていた。加えて、岩波拓也からからかわれていた。

「チャントを聞きながら、『お前はまだ認められてないなあ』って岩波選手にからかわれたことを思い出しました。でも、そういうことじゃないんですよ。僕にはまだ伸びしろがあるっていうことだったんですよ」

岩波の関西弁のイントネーションと声色を真似しながら、松尾はそう言って笑った。

「個人チャントがないからと言って、プレーに影響があるわけではありませんし、誰にあって誰にないのかを選ぶのは僕たちではありません。でも、あるということは少なからず結果を出せているという実感にもなりますし、素直にうれしいです。作ってもらったから満足する選手はいないと思いますが、僕のモチベーションにも影響してきます」

そして顔を上げ、表情を崩さずに一点を見つめたまま続けた。

「浦和のために闘うことにチャントの有無は関係ありませんが、さらに浦和のために闘わなければいけないという気持ちにさせてくれます」

言葉通り素直に、淀みなく喜びを語っていた。他の選手よりも幾分長かったチャントが終わった際、ゴール裏に向かって拍手したのも松尾の素直な喜びの表現だった。

浦和のために闘う。結果が全てではないが、タイトルは「浦和のため」に闘った大きな賜物のひとつになる。

タイトルの価値について問われると、松尾は首を振りながらややぶっきらぼうに即答した。

「獲ったことがないから分からないです」

ただ、タイトルは欲しい。YBCルヴァンカップで優勝する自信もある。タイトルを獲れば今まで知らなかったその価値が分かると予感もしている。

「タイトルを目指すと言いますが、本当につかめる選手はあまりいないと思います。勝ちたいと言いますが、本当に勝つために努力している選手は多くありません。口だけじゃなくて本当に闘えるのか。その強い信念はタイトルを獲る上で必要です。だから伝統があるのだと思います。強いチームって、結局勝つ。結局強いチームが優勝する。そういうチームは最後の最後の大事な何かを知っているんだと思います」

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タイトルを獲るために、まずは25日に埼玉スタジアムで決勝進出を決める。

「埼スタで0-0はつまらないゲームです。勝つしかありません」

勝利のため、決勝進出のため、チームのため、浦和のため。松尾はC大阪にとって「面倒くさい」プレーで貢献する。

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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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