連載企画!ワーナー・ディアンズ2023ワールドカップへの挑戦(5)
【東芝ブレイブルーパス東京】
今回は東芝ブレイブルーパス東京に入ってからの日々について、インタビューします。
ワーナー・ディアンズ選手(LO)インタビュー「一気に成長しているのではなく、1試合1試合、階段を登っているようなイメージ」
【東芝ブレイブルーパス東京】
A. 本当にそうです。こんなに早く代表になれると思っていなかったですし、シーズン前はあまり試合に出られないとも思っていました。しかし、チームに入ってコーチやトレーナーさんにコーチングをもらって、成長したのかなと思いますね。
Q. 一番のテーマはやはり『フィジカル』ですか?
A. そうですね、高校のレベルとは全く違いました。そこで、高校ラグビーしか経験していない僕はすぐに試合に出られないとは思っていました。しかし、体は大きかったですし、体重も身長もあって、ストレングスも悪くはなかったので、父も母は「いけるんじゃないか」と。その中で今年はメンタルのところで成長したと思いますね、フィジカルではなく。自信をつけられました。
Q. なぜメンタル面で成長できたのでしょうか?
A. NDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)の合宿に行って、またBL東京に帰ってきた頃に、練習試合が2試合ありました。横浜キヤノンイーグルス(横浜E)と釜石シーウェイブス(釜石SW)の試合でした。
横浜Eの試合はリザーブから出場して、あまりプレータイムはなかったのですが、タックルを2回ほどしました。次の釜石SW戦では、最初の5分くらいでキックチャージをしてそのままトライをしたんですね。その後に大きい人が走ってきて、自分がタックルしたというプレーもありました。そこで「いけるな」と感じましたね。その試合の後、代表から電話で再招集がかかり、合宿でトレーニングを積んだこともあって、「いけるな」という感覚をより強く得られました。
Q. その流れがあってからのリーグワン開幕戦でデビューということなのですね?
A. リーグワンの開幕戦の東京サンゴリアス(東京SG)戦は試合に出ないと思っていました。しかし、その週のはじめにコーチに「今週スタートだよ」と言われて、「え!スタート!」と思いました。「まだ早いだろ」とも思っていたのですが(笑)。
試合に出て、最初に言われたのは「とりあえず前半頑張って、残り10分くらいでチェンジする」ということです。前半はトライもできて、まあまあうまくいきました。あまりミスをしなかったですし、タックルもキャリーも良くできていました。
Q. 実際に交代はされたのですか?
A.ハーフタイムに入ってもコーチには何も言われませんでした。みんながかなり良い感じだったので、「今のまま続けろ」ということをチーム全体に向けて言われたんですね。後半に入って、15分ほど経った頃、リーチさん(FLリーチ マイケル)がけがをして、交代しました。もう1人、NO.8がけがをして交代して、リザーブはもういないという状況になりました。だから必然的に「80分頑張ろう」という気持ちになっていましたね。
ジェイコブ(LOジェイコブ・ピアス)がFLに入って、梶川さん(LO梶川喬介)がLOに入ってきました。そこで80分間やり切りました。「え!」という感じだったのですが、これがラグビーの人生で初めての80分でした。練習試合では40分しか出ていなくて、初めての80分がリーグワンの開幕戦で、強い東京SGというチームだったので、「これはいける」と思いましたね(笑)。
【東芝ブレイブルーパス東京】
A. その後も、コンタクトにはまだ少し不安があったのですが、試合の中ではいけるぞという感じでしたね。しかし、試合中のコンタクトのレベルはもっと上げないといけないと思っていたので、フィジカルの部分にフォーカスして試合に出ていました。「この試合は良いタックルをする」とか「この試合では間に強いキャリーにフォーカスする」といったようなことを繰り返して、自信をつけていきましたね。
Q. 毎試合目標を作っていったということですか?
A. 試合に入る前も「キャリーする時はこうする」という小さい目標を作って、それができたら次の試合はそこにフォーカスしなくて良いんです。それはできたことだから。次の試合では他のことにフォーカスして、「低いタックルをする」とか「前に出てタックルをする」とか。そういうことにフォーカスして、それができなかったら次の試合でも同じことにフォーカスして、できたら次へというように、小さいことに毎試合フォーカスしていました。
Q. それはサム・ワードさんに言われてやっていることなのでしょうか?
A. 話し合って、僕の思っていたことを伝えたら、サムが「じゃあ次どうする?」と。そこで僕が「こうする」と目標を決めます。だから、サムに言われるのではなくて、「自分の試合を見てどんな感じだったのか」、「次はどうするのか」、「目指している世界一のロックはこのシチュエーションだったらどうしている?」ということを、毎週話しています。
Q. 気がついたら成長している感覚は、ご自身の中で持っていますか?
A. そうですね。一気に成長するより、1試合1試合、階段を登っているようなイメージで気づいたら上の方にいるという感じでした。
階段をイメージして、一つ一つにフォーカスしたら前に進めます。後ろを向いたら、落っこちるかもしれないので、前を見るだけ。遠くの一番上も見ずに、目の前のことにフォーカスしています。
Q. そういう考え方はご自身の中でマネジメントしているのですか?
A. お父さんも昔そんな感じで言っていましたし、自分もそれが自分にとって一番成長する方法だと思っています。それが僕も思っていることですし、サムもそう思っていたからこそ、かなり良い感じに話はできていました。
【東芝ブレイブルーパス東京】
A. この前の合宿では、フィジカルに問題はありませんでした。自分はもともとフィットネスも良い方なのですが、ハードワークにはそれだけではなくて、アクションとアクションの間の動きや、何回そのアクションを続けるのかという部分が必要です。だからこそ、そこにフォーカスしていましたね。
ウルグアイ戦で「プレーが良かった」とは言われたのですが、そのハードワーク、アクションとアクションの間がうまくいかず、「アクションが一回で終わってしまった」と言われました。その中で、フランスの2戦目でスタートだったので、「ここが一番大事だな」と思って、アクションとアクションの間を早く動くだとか、タックルしたら早く立ち上がるだとか、次のことにフォーカスすることを意識しました。
少しは成長しましたが、まだまだです。次の合宿でもっと成長しないと、『世界一のロック』にはなれないと思います。それが今の自分の中で一番やらなくちゃいけないことです。
Q. 相手はフランスでしたが、あまり意識はしなかったのですか?
A. そうですね。もともと試合前はあまり緊張しないので、リーグワンの開幕戦も同じような気持ちになったのですが、緊張ではなくて不安がありました。「これ本当にいけるのかな」みたいな。それがウルグアイ戦でもあったのですが、ウルグアイ戦でフィジカルも大丈夫だったので、フランスのフィジカルチームに対して、何回できるかということにフォーカスして試合に入っていました。
フランスのことはあまり考えていませんでしたし、「フランスだからビビる」ということもありませんでした。「相手は相手だから自分のことに集中して、自分が一番良いパフォーマンスが出せるように何かする」ということにフォーカスしていましたね。
Q. ワーナー選手が出ている時間帯は、フランス相手にスコアが上回っていましたが・・・
A. チームはうまくいっているから続けようという感じでした。ハーフタイムでもスコアのことは考えていませんでしたね。勝っていることは知っていたのですが。交代して、椅子に座って、タイムを見て「70分出たな」とスコアを見て「おっ、勝っている」と思ったら、相手がトライしました(笑)。
あまり僕はスコアなどは試合中に考えませんね。
Q. 手応えはありましたか?
A. その試合はハードワークにフォーカスしていて、「ちょっとできたかな」とは思ったのですが、「これからもっと上げていかないといけない」と思いました。
Q. 戦った相手の印象はいかがでしたか?
A. フランスはみんなフィジカルが強いのでタックルを受けた時は重かったのですが、まだ前に出られたので「相手は強いけど、僕も前に出ているから、僕も強い」と思えました。
(ライター / 内海 日和)
<次回に続く>
・ニュージーランドのクラブチームでラグビーを始める
・Primary School、Intermediate Schoolに通う中でクラブチームでプレー
・Secondary Schoolでプレーしたのちに父親の仕事の関係で2016年に来日
・あびこラグビースクールでプレー(2016-2018年)し千葉県選抜にも選出される
・流通経済大学付属柏高等学校(2018.4〜2021.3年)でプレー
第99・100回の2大会連続で全国高校ラグビーベスト8となる
第100回全国高校ラグビーフットボール大会では優秀選手に選出される
・2021年4月〜東芝ブレイブルーパス東京に所属
【東芝ブレイブルーパス東京】
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