パラグライダー 廣川が総合V、女子トップは中目 ジャパンリーグ第6戦

【©JHFパラグライディング競技委員会】

パラグライダー競技における国内最高峰のシリーズ戦、ジャパンリーグ。その第6戦目となる「ニセコスカイラリー2022」が9月3日-4日の2日間に渡り北海道虻田郡ニセコ町で開催され、70名の国内トップクラスの選手が凌ぎを削るレースを見せた。

動力を持たないパラグライダーは、太陽の熱から生み出される上昇風や地形によって発生する上昇風を利用して空高く上昇することが出来、時には100kmや200kmという遥か彼方の遠くまで飛んで行く事も出来る。
ジャパンリーグでは、その日の気象条件に合わせて決められた複数のポイントを順番に空中で通過し、数十kmの道のりを誰が一番最初にゴールまで辿り着くかを競う。空中のオリエンテーリングとも呼ばれるこの競技は、パラグライダーの操縦技術はもちろんの事、風を読み気象変化を察する洞察力、上昇風を予想し戦略を組み立てる頭脳などが物を言い、性別、年齢に関係なく同じ土俵で互角に戦えることが魅力の一つだ。

撮影:前島聡夫 【©JHFパラグライディング競技委員会】

今大会は、秋雨前線や台風11号の影響で開催が危ぶまれたが、幸運にも大会期間中は天候に恵まれ、両日とも安全なレースを行うことが出来た。

初日のレースは、上昇気流が弱く選手全員がスタート時間まで空中待機することが難しいとの判断から、各選手の好きなタイミングでスタートを切るタイムアタック形式で順位が争われた。こうなると飛行技術も重要だが、それよりも1日の天候変化の流れを読む力が非常に重要となってくる。
序盤にタイムアタックを開始した岩崎が1時間17分15秒で暫定トップのタイムを刻むと、続く小林が1時間18分48秒で暫定2番をマークする。これを大きく上回るタイムで小梶がゴールに向かうが、攻めすぎた為にゴールまで僅か300メートル届かずリタイアとなる。これがこの競技難しいところでもある。
その直後、荒井が抜群のタイム1時間11分28秒でゴールを決めトップタイムを塗り替える。
天候条件は尻上がりに好転しており、遅い時間にアタックを開始した石井、植田、廣川、岩谷らもトップ荒井に迫る好タイムを記録する。最後に女子、山下が本日ダントツのトップタイム1時間5分台をマークするペースで進むが、なんとゴール200メートル手前で高度が尽き、惜しくもリタイアとなった。
これにて、荒井の初日トップが確定した。
70名中23名のみがゴールまで辿り着けた、難易度高めの初日となった。

【©JHFパラグライディング競技委員会】

競技2日目、朝から気象条件は良好で、空中待機から一斉スタートにて36km先のゴールを争うレース内容が発表された。
良いスタートを決めたのは成山、多賀、前島らが率いる集団。それを2km後方の山寄りから平木、岩崎、小林、廣川、文字らが率いる第2集団が追いかける展開で始まる。スピードが持ち味の成山にこのまま先行を許すかと思われたが、そこは世界を相手に戦ってきたメンバーが集まる第2集団、流石の追い上げを見せ10km地点ではトップの成山へ追い付くことに成功する。
ここからは、共にスピードが持ち味の岩崎と成山の両名が低く先行し、それを冷静に若手小林とベテラン平木が少し高い所から追いかけ虎視眈々とチャンスを伺う。実力急上昇中の前島もそこへ食らい付く。
このままゴールまで進むかと思われたが、終盤、ニセコ町付近では上昇気流が乏しく、先行している選手のペースが大きく落ち、後続から追いあげてきた選手たちがそこへ合流し戦況はほぼ振り出しに戻る。
ゴールまであと僅かだが、上昇気流で高度を稼がないとゴールまでは辿り着けない。この状況の中で選手達は各々の作戦を取る。最短距離を進む者、遠回りでも上昇気流の可能性が高い方に進む者、今の弱い上昇気流でギリギリまで高度を稼ぐもの、低くても速く次へ進む者、沢山の戦略が生まれたが、勝利への女神が微笑んだのは、低く速く進んだ者と最短距離を進んだ者だ。
ギリギリの戦いを制し、一人100m程高く抜け出した文字は、前日の雪辱を果たすトップゴールを決めた。続いて、廣川、多賀、平木、小林が数秒差で雪崩れ込み、すぐ後ろに前島、成山(奈)も続いた。

最終的に70名中17名がゴールを決め、2日間の総合結果は、両日とも安定して上位でゴールした廣川が優勝、同じく2日間とも大きなミス無くまとめた小林が準優勝、3位にグライダーを一新し馴れないながらも確実にゴールを決めた多賀が入った。前島は冷静ながらスピードある飛びで見事4位入賞を果たし、中目、成山(奈)は安定感ある飛びで男子顔負けの5位、6位に食い込み、女子1位、2位も飾った。女子3位は地元の平木が終始攻めの飛びでもぎ取った。スポーツクラスでは1日目にゴール直前まで飛び2日目は見事ゴールを決めた早坂がクラス優勝を勝ち取った。

オープンクラス 左上から時計回りに <2位> 小林 大晃 <優勝> 廣川 靖晃 <3位> 多賀 純一 <6位> 成山 奈緒 <5位> 中目 みどり <4位> 前島 聡夫 【©JHFパラグライディング競技委員会】

女子クラス 左から <2位> 成山 奈緒 <優勝> 中目 みどり <3位> 平木 啓子 【©JHFパラグライディング競技委員会】

スポーツクラス 左上から時計回りに <2位> 長島 信一 <優勝> 早坂 真有美 <3位> 金本 知子 <4位> 花村 泰明 <6位> 川名 美江 <5位> 中村 哲也 【©JHFパラグライディング競技委員会】

優勝者コメント

総合優勝 廣川 靖晃 【©JHFパラグライディング競技委員会】

「初日はテイクオフに上がった時から曇り空で、ゴールまで飛べるのか不安でした。スタート時に上昇風が弱く出遅れましたが、とにかく少しでも沢山飛ぼうと、しっかり上げて慎重に進んで行ったら徐々に晴れてきて、後半はコンディションが好転しゴールすることが出来ました、スタート時間を自由に決められるエラップスレースだった為、スタートが遅れた私は結果的にタイムを縮めることが出来て初日3位に入ることが出来ました。二日目は快晴で絶好のコンディションでした。優勝を狙って堅実に飛ぼうとしすぎて序盤遅れてしまいましたが、落ち着いて追い上げて2番手にゴールして、総合で優勝することが出来ました。終わってみれば二日間ともしっかり飛べて大満足できた大会でした。大会スタッフを始め役員の皆さま素晴らしい大会をありがとう御座いました。」

女子優勝 中目 みどり 【©JHFパラグライディング競技委員会】

「ハイレベルな女性陣の中で入賞するのが難しくなってきている中、女子優勝できてとても嬉しいです。 男女混合の総合成績でも5位入賞できたのは本当に驚きでした。なぜか気分的にネガティブだったのですが、自己暗示をかけて悪いイメージを払拭しました。他の人と比べて特筆して良い飛びだったわけではありませんが、2日間を無難に纏められたが結果的に功を奏しました。7年ぶりのニセコの大会、素晴らしい景色を堪能しながら飛べました。大会開催に尽力してくださった方々に感謝いたします。」

スポーツクラス優勝 早坂 真有美 【©JHFパラグライディング競技委員会】

「初日はゴール直前まで辿り着くのが精一杯だったので、2日目ゴールできた時はやったーと思っていたのですが、スポーツクラス優勝までできて本当に嬉しいです。1日目は最後に上昇風が無くなりめげそうになりましたが、せめて最終ポイントは取ろうと頑張りました。2日目は、スタートを失敗してしまったのですが、中盤にスポーツクラスの集団ができて協力して飛べたのが良かったです。終盤、ニセコ町でも相当厳しい高度になりましたが、スポーツクラス女子3機が一緒になり根性で上げ返すことができました。スポーツクラス女子でワン、ツー、スリーも初めてのことで、本当に楽しかったです。ニセコのエリアは空域も広いし、羊蹄山を含めとても美しい景観で、ぜひまた飛びたいと思います。大会運営の皆さま大変お世話になりありがとうございました。またよろしくお願いします!」
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

公益社団法人日本ハング・パラグライディング連盟は日本国内のハンググライダー及びパラグライダーに関するスポーツの統括代表機関として、ハンググライディング及びパラグライディングによる航空スポーツの発展と普及のための公益目的事業を行っています。

新着記事

編集部ピックアップ

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着コラム

コラム一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント