廣瀬俊朗さん×大野均アンバサダー 東芝ブレイブルーパス東京レジェンド対談(2)

東芝ブレイブルーパス東京
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【東芝ブレイブルーパス東京】

東芝ブレイブルーパス東京OB廣瀬俊朗さんが5月1日(日)vs東京サンゴリアス「府中ダービー」に来場【特別企画】

府中ダービーまでの1週間、OBでありキャプテンとして数々のタイトルを獲得した廣瀬俊朗さんのインタビュー企画を紹介しています。第1弾の大野均アンバサダーとの対談は今回が第2回です。

第2回トークテーマ:ラグビーの魅力と2人が戦った「府中ダービー」そして今週末の展望
ラグビーの魅力的な部分として言語化ができる選手が多いように感じますが、その理由は何だと思われますか

大野:ラグビー選手にコメントを求めると、自分のことではなくて、周りに対する気遣いや感謝が出てくるのは、ラグビーならではだと思いますね。グラウンドで普段痛みを伴うことをやっていて、自分がタックルしたら痛いですし、相手も痛いことはわかっています。そのようなお互いの痛みを分かち合えるのも、ラグビーだからこそです。そこから作られるメンタリティがあるから、コメントなどの言語化ができるのではないかと思いますね。

廣瀬:選手がゲーム中に主体的に意思決定しなければいけない場面が多々あるので、その時にどんな過程を経て、どんなことをやるのかということを考える機会が多いのが、ラグビーの一つの特徴だと思っています。スポーツによっては、トップダウンが主になり、監督の言うことをやり抜くことが大事とされる場合もありますが、ラグビーはどうやって適応していこうかというところで、みんなで頭を高速回転させてプレーをしています。だからこそ、言語化ができる選手は多いのかなと思いますね。もちろんそれは10番という選手だけではなくて、ラインアウトにはラインアウトのリーダーがいて、その人が考えてミーティングでみんなに伝えるという流れがあります。そのような意味ではたくさんのリーダーが生まれやすいことが、一つの特性かもしれませんね。

大野:エディ(エディ・ジョーンズ元日本代表監督)ジャパンの時は完全にトップダウンでやっていたけど(笑)。でも、それをやり切った先にW杯に勝つという経験をさせてもらって、それを経験したリーチ(リーチ・マイケル選手)やフミ(GR東葛、田中史朗選手)、優(横浜E、田村優選手)が、そこからの4年間自分たちが自主的にハードワークをして、2019年のW杯でベスト8という結果になりました。そこはつながっているのかなと思いますね。

廣瀬:みんなが自分の言葉を持っているのは良いですよね。伝え方は人それぞれですけど、自分が大事にしていることを言えるのは、ラグビー選手の良いところだと思います。世界のすばらしい選手が日本に来てくれて、いろいろなことを教えてくれました。もちろんエディさんのようなコーチもその1人です。そのような人たちと日常的に触れ合うことで、磨かれていったものはあるのかなと。昔の日本人の選手たちは、コーチの言ったことに「イエス」しか言わず、ミーティングが終わった後でボソボソ不満を言うというような風潮があったのですが、そこは教えられたことかなと思いますね。前より対話できるようになりましたし、議論できるようになりました。
大野:それこそ、トシがキャプテンやっていた時は、若手に意見を求めてくれていたよね。トシがキャプテンとして若手が意見を言いやすい雰囲気をつくってくれたし、それを見た若手が、実際にジャパンの中核になっているし。そこの礎を作ってくれていたのかなと思います。
廣瀬:均ちゃんが下で支えてくれていたからだよ(笑)。「まあ、頑張ろうよ」って言ってくれていたもんね。そういう役割分担は良かったかなと思いますね。

今年からリーグがリーグワンとして新しくなりましたが、どのような感想を抱かれていますか
廣瀬:海外からすばらしい選手が来てくれていますし、2023年の代表で活躍しそうな日本人選手もいます。また、大学生も卒業してすぐ試合に出ていますし、本当にいろいろな人が活躍できるリーグになっているのは、面白いなと思いますね。また、事業サイドもビジネスをしていこうということで、これまでにないホストゲームの演出などにも力を入れていると思います。各チーム試行錯誤の段階で、大変だとは思いますが、これから楽しみだなと思いますね。僕も今リーグワン関係のお仕事をやらせてもらっていますけど、そのようなことは今までできなかったので、いろいろな人にチャンスが訪れるのは楽しみだなと思います。というか楽しんでいますね、僕は!

大野:リーグワンが始まって、選手の露出が増えました。選手たちもただラグビーをやっているのではなく、自分のプレーを応援してくれている声が生で届くというのは、本当にやりがいがありますし、新しい力になるのではないかなと思います。そして、運営側もプロになって、各チームがそれぞれのチームの色を出して、試合前からお客さんを楽しませているのを見られるというところで、ラグビー以外の楽しみがありますね。それがリーグワンの特徴で、魅力だとも思います。コロナウイルスの影響で、思うようなことができない場面もあったと思いますが、ここから2年目、3年目と大きな盛り上がり見せていってほしいです。2023年にW杯があって、それが終わった後にまた世界のビックネームが入ってきてくれると思うので、1人のファンとしてはそれも楽しみにしています。

今年のBL東京はどのような印象ですか
廣瀬:ボールがすごく動いていて、スペースにボールを運ぶのはすごくおもしろいと思います。また、FWの両ロックがすごく大きくて、セットピースからもトライが生まれている印象です。特にアタックにはいろいろなオプションがあると思っているので、そこはすごく良いなと思いますね。
大野:機動力があるよね。1、2、3番もよく動くし。見ていて楽しいし。そして、やっぱりディフェンスがしっかり前に出られているのは、見ている方もおもしろいんじゃないかなと思います。スペースにボールを回して、「そこにパスを出すんだ!」と思うシーンもあって、実際にプレーをしていた身としても、そのような意外性のあるラグビーが良いなと思いますね。
廣瀬:ね、すごいですよね。
大野:昔は「突っ込め!」とか言っていたけど…(笑)。
廣瀬:パスをして、「余計なことはするんじゃない」って怒られていたよね。それに比べて今は、FWの一列の選手もみんなパスが上手だし、FWの選手も後ろの選手も放るし、あとは外国人の選手もね。今はすごいインパクトプレーヤーがいますよね。ものすごいじゃないの、セタ(セタ・タマニバル選手)とかね。もうどうなっているの?あの人(笑)。オールブラックスだった時もすごかったけど、ちょっと近年またすごく上がってきたよね。
大野:ちょっと見えているところが違うよね、セタは。
廣瀬:ものすごいものを持っているし。ジョネ(ジョネ・ナイカブラ選手)もね。まだ荒削りかなとは思いますけど、加速したら「どこまで行っちゃうんだろう」と思うし。
大野:ボール持ったらワクワクさせられる選手が増えたよね。
廣瀬:選手がとても楽しそうにワクワクしながらラグビーに取り組んでいるのは、すごく印象的で、それが何よりも良かったなと。そういうのがお客さんにも伝わっていって、輪が広がっていくのかなと思います。そのお手伝いをやっていけたら良いなと思いますけどね。

大野:練習前のミーティングから、トッド・ブラックアダーHCがとても良い雰囲気をつくってくれるらしいよ。最初から真面目な話をするのではなくて、ちょっと冗談を言ってから和ませるだとか、負けた後の試合の次の週の最初のミーティングなんかは、みんな暗い気持ちでくるけど、ブラックアダーHCは「負けたけれども、活躍した選手をみんなで讃えましょう」と言って、おもしろい映像を流したりしてから始めているらしい。そこは場のつくり方がすごいなと思いますね。
廣瀬:言うことなしですね、ブラックアダーHCは。あんなにかっこよくて、おもしろかったら、ね(笑)。
大野:やっぱりそれに応えたいというのは選手たちも思っているらしい。そこらへんが3年目でやっと実を結んできたなと。
廣瀬:ようやくですもんね。プレーオフに絡めるのも。でもこの緊張感の中で試合ができるとすごく良い経験になっていくんじゃないかなと思います。今年も優勝ということはあるかもしれませんけど、来年以降にもね、つながっているんじゃないかと。若い選手が活躍しているのも、僕らとしては勇気をもらえますね。彼らが活躍できているのは、将来がとても楽しみだなと思いますね。

【東芝ブレイブルーパス東京】

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府中ダービーについての思い出はありますか
廣瀬:府中で1年間威張れるかということは、この試合にかかっていますからね(笑)。ここだけは勝ちたいということはありました。それこそ、エディさんが監督の時とか、清宮(清宮克幸)さんが監督の時とか、割とビックネームの方がサントリーは監督になる中で、僕らは負けられないぞと思っていました。それはすごく印象深いですね。

大野:昔から本当に両チーム日本一を争う存在で、そのようなチームが一つの街にあるというのは、なかなかないと思います。でも、街で会ったらけっこう仲は良くて、日本代表でもサントリーと東芝の選手は招集されることが多いので、日本代表を解散した後もみんなで会うことはありますね。だからこそ、試合になったら負けたくないという気持ちが強いです。それこそ、真壁(元東京SG、真壁伸弥選手)なんてすごく優しいけど、試合になったら鼻フックしてくるもんね(笑)。そういうやりあいみたいなものがあっても、ノーサイドになったら「また飲みに行こう」という流れになります。特に府中ダービーはそのような流れが色濃くあるのかなと思いますね。
廣瀬:懐かしいなあ(笑)。サントリーは上手なラグビーをするイメージがあって、スキルフルなラグビーでした。対する東芝は、泥くさく戦う工場育ちのラグビーで、そういう対決が続いていたかなと思いますね。
大野:普通に気合が入るしね。順位がどうこうじゃなくて。サントリー側は東芝を警戒しているし、たとえ東芝の順位が低くても、向こうは必ずなめてかかってくることはないしね。こっちもサントリーには、そういう気持ちを持って戦っているし。

廣瀬:均ちゃんは府中ダービーでめちゃくちゃ走っていたイメージがあるけどな。
大野;府中ダービーはたくさんトライしているんだよね。一回トシがキャプテンをしていた時に、味の素スタジアムでサントリーと対戦したことがあります。その時、僕は筋断裂していたけど、痛み止め打ちまくって、テーピングぐるぐる巻きにしたら、意外と痛くなくて(笑)。その試合で自分は2トライできました。あの時、相手のメンバーには畠山(現愛知S、畠山健介選手)がいて、彼はリザーブで、前半かなり東芝にやられていて「俺が出て流れ変えてやる」って言って出てきたけど、濁流に飲み込まれるように(畠山が)やられたっていうエピソードがありますね。うちの選手がそれだけ気持ちを持ってやっていたからなのかなと思いますけど。
廣瀬:(笑)。あの試合はすごかったよね、味スタ。

東京SGはどのような存在なのですか
廣瀬:ライバルですね。でも、街で会ったら仲が良いです。だからこそ負けたくないということはあります。ラグビーなので、良い試合ができたら良いという面はありますが、とはいえ、勝敗に関してうれしいとか悲しいとかの感情もありますね。

BL東京で期待している選手はいらっしゃいますか
大野:誰を言おう(笑)。僕はFWなので、ついこの間20歳になったワーナー・ディアンズ選手ですかね。やはり日本のトップチームに対して20歳のディアンズがどれだけ良いパフォーマンスを発揮できるのか。そこを見たいです。彼は間違いなく今後の日本代表を支えてくれる選手になるので、東京SG戦でまた良い経験を積んで、今後につなげてほしいと思います。
廣瀬:僕は今年調子の良い中尾隼太選手ですかね。彼はBKの中でもうまく周りの選手を使えるので、キーマンだなと思いますね。応援しています。

東京SGで警戒している選手はいらっしゃいますか
大野:やっぱりマッケンジー選手ですかね。ベタだけど(笑)。
一同:(笑)。
大野:彼を好きなように走らせたら厳しいなと思いますね。あとは、サンゴリアスのテンポでボールを回されたら、こっちのディフェンスも後手に回ってしまうので、しっかりブレイクダウンというところでプレッシャーかけたいです。バックローを務めるテビタ・タタフ選手は怖いですね。

廣瀬;サンゴリアスはマッケンジー選手もそうですけど、田村熙選手はもともと我々の仲間でもあるので、彼にはプレッシャーを僕らがかけたいですね。あとはマクマーン(ショーン・マクマーン)選手や、タタフ選手ら三列目も強烈なので、そこを警戒したいです。また、慶應大学の後輩である辻(辻雄康選手)や小澤(小澤直輝選手)。BKで挙げるならサム・ケレビ選手とセタのマッチアップですかね。これはめちゃくちゃ楽しみです。この2人のやりあいはすごく楽しみにしています。


府中ダービー勝利のためには何が重要でしょうか
大野:やることは変わらないと思います。サンゴリアスが相手だからブレイブルーパスが戦い方を変えるということはなくて、今シーズンやってきたことを80分間やり切るだけかなと思います。向こうはプレーオフ進出が決まっているからといって、気を抜いてくるということはないと思うので。いつも通りの準備をして臨むだけです。
廣瀬:前回負けているので、チャレンジャーとして戦えるというのは良いかなと思います。こちらはプレーオフ進出もかかってくるので、必死になって、そこを楽しんで、逆境を楽しむではないですけど、そこをうまくモチベーションにして、戦ってくれるとすごく良いのかなと思います。開幕戦とは全く違う状況やコンディションではあると思うので、ブレイブルーパスはどんどんチャレンジしてもらえたら良いと思います。

前回対戦時は前半リードで折り返しながら、逆転負けを喫しました。勝ち切るためには何が必要だとお考えですか
大野:80分間通して、ペナルティを少なくするということですかね。初戦はペナルティが多くて、自分たちでリズムを崩して、後半崩れたというゲームでした。あれはやられたというよりかは、自分たちで崩れたというイメージでしたね。シーズン後半になってだいぶ改善されてきたペナルティの部分を、もう一度サンゴリアス戦に向けて意識して取り組んでほしいと思っています。
廣瀬:チャレンジャーというところがこの試合の大事な観点だと思うので、それを80分間やり続けられるかというところですかね。今若い選手もたくさん出てきていますが、後半のインパクトプレーヤーとして、リザーブの選手も含めての戦いになると思います。そこらへんがハマれば良いのではないかと思いますね。

もしプレーオフ進出となれば、3度目の府中ダービーの可能性も出てきます。このことについてどのように感じられますか
大野:プレーオフにいけば、負けたら終わりの戦いになるので、あとは本当に両チームの意地と意地のぶつかりあいになると思います。「どちらが勝ちたいと思うか」ですね。3回目の対戦になれば、そのような気持ちの部分を見たいなと思います。
廣瀬;均ちゃんも言ってくれましたけど、トーナメントは負けたら終わりなので、よりプレッシャーのかかる試合になるのではないかと思います。その中で、規律の面が大事になってくると感じますね。そこで自らのペースを崩さないことが大事です。サントリーは優勝して当たり前というか、優勝を狙っていると思いますけど、東芝はあくまでチャレンジャーとして、久々にプレーオフに行くことができたという立場から、どれだけ成長していけるのかというマインドで、試合に向かえると良いのではないかと思いますね。

(ライター / 内海 日和)
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著者プロフィール

東芝ブレイブルーパス東京はジャパンラグビーリーグワン(Division1)に所属するラグビークラブです。日本代表のリーチマイケル選手や德永祥尭選手が在籍し日本ラグビーの強化に直接つなげることと同時に、東京都、府中市、調布市、三鷹市をホストエリアとして活動し、地域と共に歩み社会へ貢献し、日本ラグビーの更なる発展、価値向上に寄与して参ります。

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