「スポーツ界に溢れる情熱やアイデアをかたちにしたい!」SPORTS TECH TOKYOとCAMPFIREが想い描く“チャレンジの民主化”とは(前編)

SPORTS TECH TOKYO
チーム・協会

【SPORTS TECH TOKYO】

先日、SPORTS TECH TOKYOと株式会社CAMPFIRE(以下CAMPFIRE)は連携を発表。その第一弾として、INNOVATION LEAGUE コンテストの応募者を対象としたクラウドファンディング特別サポートプログラムを開始した。アプローチこそ違うが、アイデアやテクノロジーを持つ企業や団体、個人を数多く支援してきた両者がタッグを組んだ背景にはどのような思いがあるのだろうか。SPORTS TECH TOKYO 薬師寺肇氏と、CAMPFIRE 北山憲太郎氏との対談を通じ、スポーツ界を拡張する切口が見えてきた。

アイデアを形にするきっかけを作りたい

まずはじめにSPORTS TECH TOKYOとCAMPFIREとの連携の経緯について教えてください。

薬師寺 秋頃にCAMPFIREさんからご連絡をいただき、何かしらお互いの強みを発揮し合える連携方法がないかと模索していきました。ありがたいことに、SPORTS TECH TOKYOには様々なアイデアやテクノロジー、またニーズやネットワークが集まってきますが、同時にプロジェクトを具体化・具現化させる実証実験など、アクションの数をもっと増やしていかなければならないという課題を抱えていました。クラウドファンディングの活用は、そうした実証実験の推進にもつなげられるのではないかと考え、検討を行ってきました。

CAMPFIREさんの「想いを形にする」というビジョンやサービスの提供価値と、SPORTS TECH TOKYOで行っている活動を見渡したとき、まずスポーツ庁と共同で開催しているINNOVATION LEAGUE コンテストとの連携が最適ではないかと思いました。コンテストにご応募いただいたプロジェクトの中で、活動を広げていったり、次の段階のトライアルをしたいと思われている方の構想を、クラウドファンディングでひとつでも多く形にできたらと思っています。

北山 出来上がった製品を先行発売するためにCAMPFIREをご活用いただくケースが増えてきているのですが、完成したプロダクトがなかったとしても「これから何かに挑戦したい」「アイデアを形にしてみたい」という想いベースでチャレンジすることもできるのがクラウドファンディングの良さだと考えています。そのような経緯で、アイデアが集まっているインキュベーションプログラムやアクセラレーションプログラムを探している中で、SPORTS TECH TOKYOさんにお声掛けしたところ共感いただき、話が始まりました。

CAMPFIREとしてもSPORTS TECH TOKYOさんとの連携はチャレンジだと捉えていて、企画の入口からお客様にお届けする出口までご一緒して、数多くのアイデアを形にしていくための最善策を探していきたいと考えています。

CAMPFIRE 北山憲太郎氏(写真左)とSPORTS TECH TOKYO 薬師寺肇氏(写真右) 【SPORTS TECH TOKYO】

SPORTS TECH TOKYO、及びINNOVATION LEAGUEとしては、今回のCAMPFIREとの連携でどのようなことを目指したいのでしょうか?

薬師寺 良いアイデアや良い人材が集まったとしても、やってみない限り、どこまでいっても絵に描いた餅です。また、やってみなければ成功することはないので、その意味で試行回数を増やすことが重要なのですが、そのためにはどうしてもある程度の資金が必要になります。今回のクラウドファンディングは投資とは異なりますが、アイデアをまずやってみる際に壁となる資金的問題を解決することができれば、プロジェクトが形になるための一歩を踏み出すきっかけになると考えています。

今回CAMPFIREさんがINNOVATION LEAGUE コンテストの応募者に対して提供する特別サポート の内容についてご説明いただけますでしょうか。

北山 SPORTS TECH TOKYOさんとの連携の第1弾として、CAMPFIREではINNOVATION LEAGUE コンテストの応募者でクラウドファンディングを希望する方に対し、CAMPFIREの専任担当がメンターとして参画しクラウドファンディングの実質的支援を行います。また、本連携を通じてクラウドファンディングを実施される事業者の方には、CAMPFIREの手数料率を優遇させていただきます。

これらの現状決まっているサポート以外にも、CAMPFIREのオプションメニューを無償もしくは優遇して提供するなど、資金調達の次のステージに気持ちよく進んでいただけるお手伝いができないかと考えています。クラウドファンディングを希望される方と話し合いながら、どういうサポートが効果的なのか、検討を繰り返しながら進めていきたいと考えています。

薬師寺 CAMPFIREさんはクラウドファンディング実施後についても、必要な情報やネットワークを提供されるなどサポートをされているのですが、SPORTS TECH TOKYOも同様に、SPORTS TECH TOKYOのネットワークをはじめとする各種リソースを活用したお手伝いができればと思っています。

また、クラウドファンディングを検討する際に「プロダクトなど具体的リターンがないと挑戦できないのではないか」と考えてしまう方も多いかと思うのですが、実際はそんなことはなくて、海外ではビジョンやアイデアの段階でもクラウドファンディングを成功させている事例はたくさんあります。むしろそういうフェーズこそ支援が必要であるため、理にかなっているとも言えます。

今回のCAMPFIREさんとの連携では、クラウドファンディングを行う方の想い、ビジョンを記事コンテンツ化し、リターンに設定することができる「ブックレットリターン」の制作支援もCAMPFIREさんにしていただきます。スポーツ関連の取り組みをされている方は溢れんばかりの熱量をお持ちの方が多く、またINNOVATION LEAGUE コンテストにご応募いただいた方ならなおさらです。そうした想いをブックレットの形でお伝えすることで、より多くの仲間や支援を集め、また次のチャレンジへと進んでいく。熱量をきちんと推進力にしていくお手伝いができたらと思います。

【SPORTS TECH TOKYO】

企業、個人問わずチャレンジの数を増やしたい

先日、SPORTS TECH TOKYOとCAMPFIREの連携を発表するプレスリリースを配信されていましたが、反響はありましたか?

薬師寺 まだコンテスト応募の受付締切前だったのですが、早速ご希望いただきました。INNOVATION LEAGUEコンテストへの応募と、今回の特別サポートを利用したクラウドファンディングを共にご検討されている方でした。それ以外にも、興味を示されている方から3件ほど問い合わせをいただきました。

コンテストに応募いただいた方のほとんどは、締切直前に応募シートを作成されたと思うので、今まさに応募が終わって一段落着かれているところかと思います。これから改めてこの特別サポートについてもお伝えしていけたらと思っています。

どのような人・団体・企業に、このCAMPFIREとSPORTS TECH TOKYOの連携プログラムを活用して欲しいとお考えでしょうか?

北山 CAMPFIREは「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。」というミッションを掲げていて、INNOVATION LEAGUE コンテストの応募者の皆さんにも是非ご活用いただきたいと考えています。企業で働いている方でも、自分の想いやアイデアを形にしたいという情熱がある方はCAMPFIREのプラットフォームと非常に相性が良いので、新しいチャレンジの場としてこのプログラムを使って欲しいなと思います。

【SPORTS TECH TOKYO】

薬師寺 まず、テクノロジーを持っていて実証実験を行いたいという方は、このサポートプログラムを是非活用していただきたいと思います。

また、INNOVATION LEAGUE コンテストには個人の応募も多いです。個人で応募される方は非常に熱量が高く、ミッションを背負って自ら行動している方。クラウドファンディングは資金を集めるだけでなくて、仲間や支援者を集めるための仕組みでもあるので、そういった個人の方にもご検討いただきたいです。

そして、最近は大企業の中で、社員が中心になってスモールプロジェクトを立ち上げるケースが増えてきています。企業がプロジェクトベースでクラウドファンディングを活用する、というのもフィットすると思います。いわゆるスポーツ団体やスポーツドメインの企業でなくとも(むしろない方が)、自社事業を拡張する触媒としてスポーツがありえるのか検討するために、クラウドファンディングを活用されると良いのではないでしょうか。

クラウドファンディングを通して、当事者を増やす

CAMPFIRE社内ではスポーツの領域はどのような扱い、印象なのでしょうか?

北山 そうですね。CAMPFIREはスポーツとかなり近しい要素を持っているなと思っていますし、CAMPFIREとしても強化したい領域ではありました。クラウドファンディングを実施する時のポイントは情熱を伝えて共感を広げ、支援を集めることですが、スポーツに携わる皆さんは非常に熱量が高い。またスポーツには、プレイヤー、サポーター、ただ観るのが好きな人など様々な関わり方があります。スポーツチームはファンの方がいて初めて成り立つと思うのですが、試合や選手きっかけではなく、クラウドファンディングをきっかけにチームを好きになってくれる新規ファンの開拓にも貢献できるのではないかと思います。

コロナ禍においては、スポーツチームの存続危機やスポーツ実施の場所を確保のために助けを求めるようなプロジェクトが多かったのですが、これからは前向きなアイデアを形にするプロジェクトが増えていくと思うので、私たちの知見やネットワークを活かして貢献できたらと考えています。

スポーツ関連のクラウドファンディングで良い事例があれば教えてください。

北山 過去に担当したプロジェクトになるのですが、藤枝東高校のグラウンドの人口芝を修繕するプロジェクトを実施し、1,000万円以上を集めることができました。数多くの日本代表選手やJリーガーを輩出している超名門校なので静岡県内のみならず日本全国にファンがいて、OB選手や関係者を中心に「藤枝東の伝統を存続させたい」との想いで、支援の輪が広がっていった事例です。

クラウドファンディングをせずに人口芝の修繕は学校と関係者で解決できるのではないか、と思われる方もいるかもしれませんが、クラウドファンディングを通して支援者になった方は、藤枝東のサッカー部を支える当事者になります。プロジェクトが話題になり、藤枝東高校の関係者以外にも支援の輪が広がっていく様子は非常に印象的でした。

【SPORTS TECH TOKYO】

〈対談記事の後編では、CAMPFIREとSPORTS TECH TOKYOが抱える課題や、その先に見据える未来についてお話いただきます。〉
インタビュー・執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
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著者プロフィール

スポーツテックをテーマにした世界規模のアクセラレーション・プログラム。2019年に実施した第1回には世界33カ国からスタートアップ約300社が応募。スタートアップ以外にも国内企業、スポーツチーム・競技団体、スポーツビジネス関連組織、メディアなど約200の個人・団体が参画している。事業開発のためのオープンイノベーション・プラットフォームでもある。現在、スポーツ庁と共同で「INNOVATION LEAGUE」も開催している。

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