レアードの原点。2022年こそヤンキース魂が息づく男がマリーンズを頂点へと導く。

千葉ロッテマリーンズ
チーム・協会

【ブランドン・レアード内野手】

 幕張のスシボーイとの2022年契約が合意に達した。千葉ロッテマリーンズのブランドン・レアード内野手は11月22日に来季契約に関する発表を行うと、次のようなコメントを口にした。

 「私は千葉ロッテマリーンズ、球団に携わる方々、そしてホームタウン千葉市に本当に愛着があります。来年もマリーンズに戻り、皆さんと一緒に優勝争いができること今から興奮しています。そしてこのような機会をいただき感謝の気持ちでいっぱいです。ファンの皆様、また来シーズンZOZOマリンでお会いしましょう。そして一緒にリーグ優勝の喜びを分かち合いましょう。来年は今年以上にチームに貢献し、皆さんのために沢山スシを握りたいと思っています。幕張スシ!サイGO!(『最高』と『さあ、行こう』が合体したレアードオリジナルの言葉)」。

 来日8年目。マリーンズ入りして4年目のシーズンに突入する。今やすっかりスシボーイとして日本で人気者になったレアード。そんな男にとって忘れられない原点はメジャーデビューをした2011年の事になる。

 「あれはメジャーデビューした初日だね。遅刻ではないのだけど、チームで一番遅く球場入りをしてしまったんだよ」

 懐かしそうにレアードが振り返ってくれた。ニューヨーク・ヤンキースの一員として7月のタンパベイ遠征でメジャー昇格を果たした。宿泊ホテルから球場行きのバスは3便に分かれており、レアードは一番遅いバスに乗り込んだ。

 乗った瞬間に異変に気が付いた。中にいたのはストッパーのマリアノ・リベラ投手ただ一人。車内はガランと静まり返っていた。球場入りしてロッカーに行くとすでにもう全員がそろっていた。デレク・ジーター内野手、アレックス・ロドリゲス内野手というそうそうたるメンバーはすでに準備を整え、いつでもグラウンドに出られる状態。合流したばかりの新入りだけが私服で立ちすくんだ。

 「やってしまったことはすぐにわかったよ。もうみんないるから挨拶しようにも誰から挨拶していいかもわからない。混乱したよ」(レアード)

 オドオドしていた若者はすぐにマネージャー室に呼ばれた。これには先輩たちも面白がり、みんな後からついてきた。

 「もちろんマネージャーからは『みんなのように、もっと早い時間に球場入りして準備をしないとダメだよ』と小言を言われたよ。それをみんな楽しそうにクスクスと笑いながら見守っていた。そういう雰囲気になってくれたから逆に助かったけどね」とレアードは笑う。

 ヤンキースではナイトゲームでも昼過ぎには球場に入りし、身体を動かすなど試合の準備をするのが当たり前となっていた。メジャー昇格初日。準備をする大切さを痛感させられた。だから2日目はバスに乗らず、タクシーで誰よりも早く球場入りし一人、ロッカーで準備をして先輩たちが球場入りをするのを待った。

 そんなレアードのデビュー戦は本拠地ヤンキースタジアムに戻ってのアスレチックス戦だった。ヤンキースが大差でリードする試合展開。点差が開いた場面、ベンチで声を出しているとジータがニヤリと笑って、レアードに目を向けた。最初はその意味が分からなかったがすぐに理解した。ジータに代わっての代打を告げられたのだ。スーパースターの代打。今でも忘れられないデビューだ。その打席は四球だったがその後、クレイグ・ブレスロウ投手から中前適時打。これがプロ初ヒット、初打点となった。

 ただ一番忘れられない思い出となるとデビュー戦の翌日に行われた試合。デーゲームだった。この日は家族10人ほどをカリフォルニアから招待。そのことを知ったジータが普段は自分の招待者に観戦してもらうために使用しているVIPルームを「家族が来ているんだろ?今日、オレは使わないから使っていいよ」と申し出てくれた。スーパースターの優しさが身に染みた。

 「わざわざそのエリアのスタッフにも、今日は彼の家族が使うからよろしくねと言ってくれた。そして部屋の飲み物や食べ物もすべて無料だった。その試合、自分がヒットを打ったかどうかはハッキリと覚えていないけど、その優しさだけは今でも鮮明に覚えている。本当に嬉しかった」

 レアードは10年前の思い出を嬉しそうに懐かしそうに話をしてくれた。あれから月日は流れた。メジャーでは53試合に出場し25安打、16打点、6打点に終わったが2015年に来日すると16年に本塁打王、日本シリーズMVPに輝くなど野球ファンなら誰もが知る存在となった。そして2021年もマリーンズの主砲として29本塁打、95打点の活躍を見せ、優勝争いを行うチームの中で勝負強い打撃で貢献した。ホームランを打った際にベンチ前で行うスシのパフォーマンスはお馴染みだ。

 来日後、生きているのはメジャーデビューの時に思い知らされた準備の大切さだ。球場に早めに来て、身体を整え、試合に向けてデータを見て練習に備える。それはヤンキース時代に身をもって覚えたことで来日後、日本野球にいち早く順応するうえで大いに役にたった。そして人を想う心。若い選手が悩んでいると冗談を言って、声をかける。困っている選手へのアドバイスも率先して行っている。時には「美味しいからみんな食べて」と果物などの差し入れを食堂に持ってくる。ジータに優しく接してもらった体験が今も忘れられないレアードは、今、手を差し伸べる立場として様々な事に気を配り、行動をしている。

 2021年は惜しくもシーズン2位に終わったマリーンズ。しかし、来年こそは。ヤンキースの魂が息づく男がマリーンズを頂点へと導く。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
 


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