Jリーグにおける勝率と集客率の関係
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JリーグはJ1、J2の第1節を終えた後の2月25日にリーグ戦の中断を発表、6月27日から「リモートマッチ(無観客試合)」でリーグ戦が再開されるまで、約4カ月の間シーズンが中断されました。その後7月に再開されたものの、入場者数に関して「超厳戒態勢」、「厳戒態勢」の2段階で制限がかかりました。また、応援スタイルについても、密を回避し声を出す応援をしない「新しい応援スタイル」の理解・協力を求め、2020年シーズンは声援ではなく拍手や手拍子が響くスタジアムの光景が見られました。
このコラムでは、コロナ禍によってもたらされた「入場制限」や「新しい応援スタイルの要請」によって、各クラブのFM面にどのような影響を与えたのかについて分析、考察を行いました。
各クラブのホーム・アウェイ勝率の遷移
図1:J1における各クラブのホーム・アウェイ勝率プロット 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
左側の過去3シーズン平均でのプロットと、右側の2020年シーズンのプロットを比較すると、クラブごとにホームとアウェイのそれぞれの勝率バランスの変化に特色があることが分かります。
例えば、過去3シーズン平均で右上の位置にいる川崎Fは、2020年シーズンではアウェイの勝率を平均以上に保ったまま、ホームでの勝率を大きく伸ばしていることが分かります。その結果、全体の勝率が非常に高い水準になり、2020年シーズンではリーグ優勝を成し遂げています。
またG大阪の場合は、過去3シーズン平均での位置は散布図の中心寄りにあり、ホーム・アウェイともに勝率はリーグ平均に近くなっています。しかし、2020シーズンではアウェイ勝率が大きく伸び、結果的に2020年シーズンをリーグ2位で終えています。
一方で鳥栖に着目すると、過去3シーズン平均ではホーム勝率がリーグ平均よりも高く、逆にアウェイ勝率は低くなっています。これより、鳥栖はホームで高い勝率を維持することによってトータルのシーズン成績を維持してきたと推察できます。しかし、2020年シーズンを見ると、アウェイ勝率はあまり変化がないもののホーム勝率が過去3シーズンと比べて大きく落ちてしまい、結果として全体の勝率も低い水準になっています。
このように、ホーム勝率とアウェイ勝率の2面性で各クラブの動向を見ると、ホーム・アウェイの勝率傾向の変化が各クラブによって異なって表れていることが分かります。そこで、何がその差異に影響しているのかを、次に検証したいと思います。
コロナ禍におけるホーム優位度の変化
図2:J1における各シーズンのホーム優位度の推移 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
しかし、2020年シーズンに着目すると、ホームの優位度は-0.7%と大きく落ち込んでおり、初めてアウェイチームの勝率がホームチームの勝率を上回る結果となっています。実は、この傾向はJリーグに限らずヨーロッパや南米のプロサッカーリーグでも同様の傾向が確認されています(参考:What about the home advantage after the COVID-19 pandemic?|CIES FOOTBALL OBSERVATORY)。
この要因は明確にはなっていませんが、一般的には(1)ホームチームが慣れた環境であること、(2)多くの観客が創り出すスタジアムの雰囲気やホームの観客からのポジティブな声援、などが要因といわれています。このうち、(1)についてはホームグラウンドの変更などがあったわけではないため、要因としては除外することができ、(2)が影響しているのではないかと考えられます。
そこで次は、(2)のスタジアム集客率について検証してみます。
ホーム勝率とスタジアム集客率との関係
図3:J1におけるスタジアム集客率とホーム勝率の関係 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
我々はヒーローインタビューなどで、「満員のスタジアムが勝利の後押しをしてくれました!」という選手の声を何度も耳にしているだけに、衝撃の結果ではありますが、よく見るといくつかのクラブは過去3年と2020年シーズンで大きく勝率に影響が出ているクラブがあることに気付きます。
そこで今度は個別のクラブに着目し、例えば2020年シーズンでホーム勝率が顕著に上がった川崎Fと、逆に下がってしまった鳥栖・仙台について過去7シーズンのスタジアム集客率とホーム勝率との相関関係を確認したところ、川崎は負の相関だった一方で、鳥栖と仙台については一定の正の相関が確認できました。(図4)
図4:個別クラブにおける集客率と勝率の関係 【©2021. For information, contact Deloitte Tohmatsu Group】
サポーターの声援がホームチームの優位度につながっているのかどうかついては、引き続き新しい応援スタイルでの試合開催が続けられている、2021年シーズンに関しても関心を寄せて見ていく必要があると考えられますが、今回の分析から、クラブによっては観客からの声援がパフォーマンスに影響を与えやすいクラブとそうでないクラブが存在する可能性が確認できたといえるでしょう。
そして、結論を出すにはさらなる詳細な分析・検討が必要ですが、サポーターの声援が勝率に何らかの影響を与えている可能性があるとすれば、満員のスタジアムはその声援の大きさを左右する要因でもあるため、世界的にホームゲームでの勝率が下がってしまっている事実の要因の一端を担っている可能性はあり、我々としても引き続き検討していきたいと思います。
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