【浦和レッズニュース】【天才の証明】離脱期間に磨かれたプレービジョン「だから僕は浦和に…」西大伍の進化は止まらない
【©URAWA REDS】
8月28日に34歳を迎えた浦和レッズの西大伍は、しみじみと話す。
「『50回目のファーストキス(日本版)』、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』で感動して……。人から『泣くことって、たまにはいいんだよ』と聞き、観る前から泣けると思った映画を見たんです。涙を流したせいなのか、いまは調子がいいですね」
冗談半分で話しながらも、満更でもないようだ。
物は試し。固定観念を持たず、思い立ったら即行動に移すのが西のスタイル。8月中旬から一時戦線を離脱した期間には自らを見つめ直し、頭の中で新たなプレービジョンを描いた。
「ボランチをイメージして試合を観ていました。そっちのほうがワクワクするんで」
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「ボールをもらう前の準備の仕方をちょっと変えてみたんですよ。(見ている人は)あまり分からないかもしれないけど、同じポジションでボールを受けても、次のプレーに移行しやすくなりました。僕の力がより発揮しやすくなっていると思います」
走り方も少し修正を加えた。
全体練習の後にランニングをしながら、無駄に力が入らないように意識。些細なことではあるが、不必要に体力を消耗しないための取り組みだ。
休む期間があれば、これまでも大なり小なり変化を加えてきた。
「逆にチャンスだと思っているので」
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「川崎フロンターレの家長(昭博)選手が練習でスパイクを履かないと耳にして、僕も試してみました。すると、これがなかなか良くて。グッと踏ん張れないから、スパイクに頼らない体の動かし方をしないといけないんです。
力を入れないようにするのが大事。止まる動きも、筋肉をうまく使わないといけません。おかげで足の付根が太くなりました。あと、頭の回転も速くなったかな。スパイクを履いている選手よりも動きが遅くなるので、その分、判断を速くしないといけないんです」
以前から体の動かし方には気を使っており、独自の練習を積んできた。
バランスを取るのが難しい一本下駄を履いたトレーニングはその一つ。一歩目の動きを速くするために陸上競技をはじめ、バスケットボール、ボクシングなど他競技のアスリートも以前から使っていることで知られているが、西もどこからか情報を仕入れてすぐに実践した。
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「ポイントは足首の角度。反発をうまく使えるようになりますね。言葉で説明するのは難しいのですが、へその上くらいで体を動かせる感じになります。要は足があまり疲れなくなる。試合中にあまり疲れたくないので。動きの部分でストレスが減れば、サッカーのプレーにより力を使えます」
西は常にアンテナを張り、柔軟にいろいろなものを取り入れているが、自らに合ったものを取捨選択している。
「何事もこれをやればいい、という絶対的なものはないと思います。人それぞれです。何のためにしているのかを自分で考えないといけない。それで効果も変わってきますから」
年齢を重ねても、成長欲求が衰えることはない。
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「レッズには40歳になってもプレーしている人(阿部勇樹)がいますからね。身近で見ていると、僕もまだまだいけるんじゃないかなって。正直、僕はここからもっと成長できると思っています。だから、浦和にも来たんです。
ただ難しいのは、サッカーは個人競技ではないところ。自分だけが上がっていくことはできません。周りの成長を促し、変えていくことも必要です。チームとして勝ち(タイトル)を求めてこそ、本気度が高まる。それがないと、成長はないので。自身が求めているレベルは上がっています」
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9月5日の川崎戦は途中出場で反撃ののろしを上げるキャスパー ユンカーのゴールをお膳立てしたものの、得点に至るまでの過程を思い返しながら苦笑した。
「100点満点中、2点ですよ。あの場面は相手の位置を見ながら、ここ(中央寄り)に入ったら面白いと思って、走り込んだんです。でも、ラッキーな部分が多かったかな。(小泉)佳穂のパスを受けたトラップもダメだし、クロスも本来は回転をかけて巻きたかったので……。良かったとは言えませんね」
満足することはないのだろう。今夏、日本代表の右サイドバックを務める酒井宏樹が新たに加わったことで、持ち場も流動的になるかもしれない。
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「どの場所で試合に出ても、僕はできる。ポジションは関係ないです。左サイドバックでもプレーしたことはあるし、やりやすい部分もあります。
右足でボールを持っていれば、相手は懐に入ってこないし、逆サイドも見られる。ずっと同じことをやっているよりも楽しいですよ」
コンサドーレ札幌でベンチを温めていた18歳の頃から飛躍する自分の将来を信じて疑わず、一歩一歩着実に歩んできた。
西が追い求めるものにゴールはない。むしろ、見えないゴールに向かうことにやりがいを感じている。いまこのときを楽しみながら、さらに進化していくつもりだ。
(取材/文・杉園昌之)
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