【浦和レッズスペシャルインタビュー】絶対女王ベレーザとの試合は、いつだって楽しみが待つ。女子プロサッカーリーグの幕開けにふさわしい極上の一戦をレッズレディースらしく“楽しんで”勝つ!

浦和レッドダイヤモンズ
チーム・協会

【©URAWA REDS】

「楽しみだよね」

三菱重工浦和レッズレディースを率いて3シーズン目。今年から総監督となった森栄次は日テレ・東京ヴェルディベレーザ(以下ベレーザ)と対戦する前、この言葉を使うことが多い。
2019年の初対戦前には「今の自分たちがどれくらい通用するか、楽しみ」だと話した。首位を走っていた2020年には「ベレーザに対してどれだけ戦えるか、楽しみ」だと口にした。

迎える2021年9月12日。日本初の女子プロサッカーリーグが開幕する日に、レッズレディースはベレーザと対戦する。この日、どんな“楽しみ”が待っているのだろう。

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2014シーズンのリーグ制覇を最後に、レッズレディースの成績は振るわず、苦しいおもいを抱える時間を過ごしてきた。中でも、日本の女子サッカーを牽引するベレーザに対しては、2015プレナスなでしこリーグエキサイティングシリーズで2-1と勝利を収めて以降、リーグ戦では勝ち星を上げることができない状況が続いた。

それでも“サッカーのまち”に生まれた女子チームだ。たくさんの情熱とおもいに支えられ、再び栄光をつかむために、2019シーズン、新たな監督を招き入れた。それが森栄次、その人である。

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読売クラブでプレーをしていた森栄次は、現役を退いたあと指導者となり、東京ヴェルディのアカデミーやベレーザで手腕を発揮。特にベレーザでは、2015シーズンから続いたリーグ5連覇の最初の優勝監督で、監督を退くまで以降3連覇を手にし、絶対女王の座を確固たるものにした人だった。

女子サッカー界における名将で名伯楽。そんな森栄次が2018シーズンの終わりに大きな決断をする。それがこれまでライバルチームであったレッズレディースへの“移籍”。

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森総監督は後に、自身が打ち立ててきたベレーザでの記録と記憶に対する「自分自身への挑戦」と位置づけながら「自分が監督として、これまでに培ってきたものを新たなチームの選手たちに還元していく。そこでどのような化学反応が起きるか試してみたい」と心に秘めた決意を静かに教えてくれた。

2019年1月。レッズレディースの指導を始めた森総監督は、「技術は裏切らない」と『止める』、『蹴る』という基本技術を徹底して繰り返すことを選手たちに求めた。さらにトレーニングの最後はゲームで終える。技術の習得と実戦の積み重ねを両輪で鍛えながら、人とボールがよく動くポゼッションサッカーを短期間で構築し、「見ていてもプレーをしても楽しい」唯一無二のレッズレディースのサッカーが形を表すようになっていった。

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チーム全体の変化に対する不安は、結果が伴うようになるにつれて、いつしか笑顔に変わり「サッカーが楽しい、面白い」と選手たちの口から聞こえるようになった。

森監督もまた「選手たちも楽しそうにやってくれるし、一生懸命についてきてくれる」と、少しだけ表情を緩ませる。だからこそ、チームの現在地がどこにあるのか。それを確認するためにも女王・ベレーザに対峙する試合は、一つの指針になっていた。

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2019年3月。レッズレディースの監督として、初めて対峙するベレーザ戦を前に、「今のレッズレディースがベレーザに対してどれくらい通用するか、楽しみにしている」と森総監督は言っていた。1-0でリードした前半は、ほぼ完璧と言える内容だったが、後半に失速し逆転負け。ベレーザの大きさ、自分たちとの差を知ることになったが「やっていることは間違いではない」と頂点のかけらを手にする敗戦だった。

それから約半年後。2019年9月に、味の素フィールド西が丘で再びベレーザと対戦した。菅澤優衣香、柴田華絵という主力を欠きながらも、ピッチに立つ全員が躍動。3-2で勝利をつかんだ。女子サッカー史上に残る白熱の好ゲームの末に、リーグ戦における約4年ぶりの勝ち星。言葉にならないおもいが溢れて、選手たちの目から涙がこぼれた。

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シーズン終盤には優勝争いにも絡み「私たちはやれる」という強い気持ちの芽生えとともに、どこか遠かったタイトルは、ぐっと近くになった。同時に、絶対女王として君臨していたベレーザも、もう遠い存在ではなく、自分たちのサッカーで倒さないといけない相手になっていた。リーグ戦の優勝ラインでは、1、2敗しか許されないため、同じ相手に2度は負けられないのだ。

そんなふうに2019年の躍進が翌2020シーズンにつながった。コロナ禍に揺れたが、大きな自信を手に、開幕から堂々とした戦いぶり。特に第3節のホームゲームでベレーザに1-0で競り勝つと、チームは波に乗って首位を走り、優勝にたどり着いた。

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わずか2年足らずの間に大きな変革を遂げているレッズレディース。リーグ戦でのベレーザとの勝敗は2勝2敗で、文字通り互角の戦いを繰り広げている。

そして2021シーズン。追っていた背中に並び、女子サッカーの頂点に立つために、見えたもの。

そのひとつは、チーム一丸。
「ベレーザは個でも戦える力がある。そこに対向していくには、組織と個を伸ばしていくことが大事」

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レッズレディースは、チームワークも結束力も強く、お互いがお互いを尊重し、補って成り立つスタイルだ。その上で、本来の主戦場とは異なる場所でのプレーを求められる選手も多い。加えて試合中にポジションが変わることも多々あるが「ポジションはあってないようなものであり、自分がそのポジションを経験することで、相手の気持ちがわかる」と森総監督。どんなふうにボールがほしいのか、どんなパスを出して、どこに動いたらいいか。選手たちのコミュニケーションもどんどん増え、お互いの良さを理解し、引き出し合えるチームになっている。

そして、それはピッチに立つ11人が織りなすものではなく、毎日、全員で行うトレーニングで培われていくものだ。それがレッズレディースのチーム一丸で、そこにファン・サポーターの大きな後押しがあることで、より揺るぎないレッズレディースの輪が広がっていく。

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「思いやりがないと、ダメだよね」
レッズレディースが紡ぐサッカーの真髄は、そうした個々のつながりやおもいの連鎖にある。

さらに、もうひとつ。
「レッズレディースに入りたいと思う選手を増やしたい。それには、トップチームが魅力あるサッカーをしていかないと」

森栄次は、2021シーズンから総監督となりアカデミー選手を含めたレッズレディース全体を見ることになった。今夏の東京五輪に出場したなでしこジャパンの池田咲紀子、塩越柚歩、南萌華を始め、チームにはアカデミー出身選手が大半を占める。だからこそ、クラブとして「見ていてもプレーをしても楽しいレッズレディースの攻撃的なサッカー」を一貫して作り上げることで、さらなる強さと魅力を持ったチームに変貌させていくのだ。

左から、池田咲紀子、塩越柚歩、南萌華 【©URAWA REDS】

アカデミーからの育成という点においてもまた、ベレーザの影が見え隠れする。ベレーザの強さの秘密の中にはメニーナというアカデミー組織は切り離せない。育成年代から一貫した教えの中で、女王のスタイルが作られていくからこそ、トップチームがより輝いていく。森総監督自身が、それを知っているから、アカデミー年代の育成にも力を入れようと歩みを進めているのだ。

「選手が楽しそうにやってくれるよね」
森総監督は、アカデミーの選手たちにも、トップの選手たちと同じ言葉を投げかけた。

今、真の日本一を目指すレッズレディースは、進化の途中にある。

楠瀬直木監督 【©URAWA REDS】

今シーズンから森総監督の相棒として指揮を振るう楠瀬直木監督は、レッズレディースのサッカーを「共鳴して奏でるもの」だと表現した。ピッチの中では強く美しく。守備にリスクをかけながらも複数でボールを奪っては攻撃に転じ、ゴールを目指す。果敢に攻めるスタイルを基盤に、流れるようなパスワークを、チーム一丸となって体現していく。それが、変化の中にあっても揺るがないレッズレディースのサッカーなのだ。
そして、いよいよ、今日9月12日、ベレーザとの真っ向勝負が待つ開幕戦。

“初代女王”へ挑戦は、“絶対女王”を倒すことで始まっていく。
だからこそ……「楽しみだよね」。

森総監督の言う“楽しみ”の形は、年々少しずつ変化しながら、迎えた3シーズン目。記念すべき女子プロサッカーリーグの幕開けに、どんな楽しみが待っているのだろう。

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著者プロフィール

1950年に中日本重工サッカー部として創部。1964年に三菱重工業サッカー部、1990年に三菱自動車工業サッカー部と名称を変え、1991年にJリーグ正会員に。浦和レッドダイヤモンズの名前で、1993年に開幕したJリーグに参戦した。チーム名はダイヤモンドが持つ最高の輝き、固い結束力をイメージし、クラブカラーのレッドと組み合わせたもの。2001年5月にホームタウンが「さいたま市」となったが、それまでの「浦和市」の名称をそのまま使用している。エンブレムには県花のサクラソウ、県サッカー発祥の象徴である鳳翔閣、菱形があしらわれている。

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