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ピッチ上でも社会でも”世界基準”へ  アカデミー生が学ぶ環境問題

横浜F・マリノス

「ずっと土だと思っていたから、これがごみだなんて知らなかった」
人工芝のグラウンドを横目に、花壇や植え込みに混じる”緑の繊維”と“黒のつぶつぶ”。軍手をした手で拾い集めては、ごみ袋に入れながらアカデミー生たちが話している。

この”緑の繊維と“黒のつぶつぶ”の正体は、千切れた人工芝と芝の隙間に充填されたゴムチップ。これらはマイクロプラスチックとして最終的に川や海へと流出し、昨今深刻化している海洋ごみ問題の一因となっている。

横浜F・マリノスのアカデミーに所属する選手たちが、トレーニングで使う人工芝のグラウンド周辺にも、こうしたマイクロプラスチックがたくさん見つかった。このように、実際に目で見て、拾って捨てることで、身近に起こっている環境問題を知る。

知ることで、「これは海に流したくないな」と感じながらていねいにかき集めている姿こそ、SDGsの第一歩だ。

黒いつぶつぶの正体は? 黒いつぶつぶの正体は? ©F.M.S.C.

清掃活動を通した人間教育

2021年8月20日、一般社団法人F・マリノススポーツクラブが、F・マリノスユースの選手たちに向け、「F・マリノスユース向け勉強会および清掃活動」を実施した。

今回の取り組みは、「サステナブル ホームタウンRethinkパートナー」であるJT(日本たばこ産業株式会社)による地域課題解決プロジェクト『Rethink PROJECT』との共同企画。

JTとのパートナーシップにおいて「何ができるかを、様々な角度からディスカッションをした」中で、F・マリノススポーツクラブの武田裕迪氏は「観戦マナーの提案や地域の活性化に加えて、世界に通じるプロサッカー選手を育てていくという観点からも、アカデミー生への人間教育につながるものを模索していました」と言う。

そこで目に留まったのが、アカデミー生世代が得意とするSNSを活用するごみ拾いだ。
「JTは『ひろえば街が好きになる運動』等、清掃活動に注力をされていて、知見も豊富です。さらにSNSなどを通じたごみ拾い活動などをされている株式会社ピリカと協働されており、今回一緒に取り組んでいくことになりました」と、取り組みの経緯を語った。

ピリカは「SNSが爆発的に広がる中で、1本の投稿をするように、ごみを拾ってもらえないかと考えて考案したアプリ」を開発。横浜市なども積極的に活用しており、世界108カ国で利用されているごみ拾いSNSなどを展開していた。加えて今回のメインテーマのひとつにもなったマイクロプラスチック調査装置なども生み出し、科学技術の力でごみの自然界流出問題の根本解決に取り組んでいる企業だ。

「世界規模でごみ問題は大きなものです。ごみ拾いというとポイ捨てごみが浮かびますが、実は、それ以外にもごみの問題は深刻で、それが、川などに流れ出している人工芝であったりします。こうした“見えていないごみ対策”を考える中で、その大本になるものを変えられないかと模索をしてきました。その中で今回、人工芝を主に利用するサッカー選手やスポーツクラブと一緒に取り組める機会は大きなものです。教育目線としてもアカデミーの年代は知識が入りやすいですし、何より、サッカーを本業としている選手と一緒に、やりたかったことが実現するのはうれしいことですし、発信力もある世代の当事者に、ごみに対する新しい視点を持ってもらえる機会は大きい」と株式会社ピリカ代表取締役小嶌不二夫氏は言う。

この、新しい視点や当事者に感じてほしいという想いは、F・マリノスがアカデミー生に対して掲げている『ビジョン2030』に通じている。

「F・マリノススポーツクラブは、世界基準の選手を輩出していく『ビジョン2030』を理念に持っていますが、この世界基準の選手を育てていくにあたって大切なことは、オンザピッチだけではなく、オフザピッチにもあると考えています。ひとりの人としてもプロであることをサポートしていこうと考える中で、この活動は有意義なものになると感じています」(武田氏)

そこで今回は、コロナ禍にあって最大限の感染防止に配慮しながら、ユースに所属する13名が参加して、単純なごみ拾いではなく、選手たちの身近に起こっている環境問題を講義で取り上げながら、実際の現場を見て、体感するフィールドワークも内容に入れた。

そうすることで、今、自分の身の回りで起きていることの問題や課題に直面し、よく耳にするようになった『SDGs』という言葉の意味を理解できる。さらには、ピッチ内外での行動や発言が変わるきっかけになる。

実際の講義でも、自分たちにとって欠かせないサッカーグラウンドから流出するマイクロプラスチックによって引き起こされる深刻な海洋ごみの問題についての話題になると、選手たちの表情も一転。驚いた様子で聞き入っていた姿が印象的だった。

F・マリノスユースの選手たちは、「F・マリノスユース向け勉強会および清掃活動」の講義であらたな学びを得た F・マリノスユースの選手たちは、「F・マリノスユース向け勉強会および清掃活動」の講義であらたな学びを得た ©F.M.S.C.

株式会社ピリカ代表取締役小嶌不二夫氏の指導のもとフィールドワークに出かけた 株式会社ピリカ代表取締役小嶌不二夫氏の指導のもとフィールドワークに出かけた ©F.M.S.C.

「身近な問題」を目にしたフィールドワーク

海洋ごみ問題についてなどの講義を聞き終えた選手たちは、早速、ごみ袋を片手に活動拠点としている新横浜の街中へ向かう。ごみを見つけては、どんどん拾っていくが、花壇や樹木、道路との段差付近にごみが多いとわかると、周囲に気をつけるようにお互いに声を掛け合って、草や木をかき分けてごみを集め始めた。

「ロープって何ごみ?」
「さっきの講義でプラスチック片が入っているごみだって言っていたよ」
と、拾ったごみを確認しながら分別。講義で学んだことをすぐに実践し、30分ほどの道のりで約10キロ近いごみを収集した。

そして、清掃活動の最後は、普段利用することの多いサッカーグラウンドに到着。小嶌氏の掛け声で、グラウンドの周辺に目をやった。

拠点としている新横浜周辺でごみを集めはじめると… 拠点としている新横浜周辺でごみを集めはじめると… ©F.M.S.C.

普段は溝や排水溝などに溜まっているという一見、土に混じっている緑の繊維や黒のつぶつぶが、海洋ごみ問題の一因となっているマイクロプラスチック。

「これってごみなの?」
「こんなにあるなんて、まずいよね」
「今度みんなにも教えよう」
と選手たちから、言葉がこぼれる。

5分ほどで大量のマイクロプラスチックを集めたが、それにも驚いた様子で、早速、ごみ拾いSNS『ピリカ』で状況を投稿。するとすぐに反応があり「もう“いいね”がついた」と嬉しそうな笑顔を見せる。

自分の活動がSNSを通して、自分の言葉で世界に発信される。ネット上での交流も後押しし、終了時間のギリギリまでごみを拾う姿も見られるほどだった。

選手たちと一緒に清掃活動をしたJTの加藤達也氏は、「『Rethink PROJECT』の一環として取り組む、『ひろえば街が好きになる運動』やピリカとの協業は、拾うという体験を通じて捨てない気持ちを育てたいという願いのもと行っています。今後も地域の方々と手を取り合って、こうした取り組みを続けていきたいですね」と話す。

ごみ拾いSNS『ピリカ』で状況を投稿に対する反応に笑顔がこぼれた ごみ拾いSNS『ピリカ』で状況を投稿に対する反応に笑顔がこぼれた ©F.M.S.C.

「人工芝が海洋に与える影響などは、今回はじめて知ることでもありましたが、新しい何かを知ることで視野が広がります。様々な企業とのパートナーシップは、自分たちの知らない領域をシェアしてもらうことで問題意識や知見が広がるという側面もあるので、選手たちの視野が広がってくれたらうれしいですね。何より、将来彼らが世界で活躍し、日本サッカーを引っ張っていく世代になっていくときには、発言力も高くなります。そのときに、今日の活動が頭の片隅に残って、子どもたちや、次のプロサッカー選手を目指す育成世代の選手たちに語りかけてくれるようになったらいいなと思っています」と、武田氏も続けた。

今回はコロナ禍という世情もあり、限られたアカデミー生のみがフィールドワークを体験したが、プライマリー生も含めて、オンラインでの講義は実施する予定だ。

このように単なる清掃活動の一環としての取り組みではなく、自分自身の身近な問題への意識の変化や、知らないことを知るための人間教育を、F・マリノスは続けていく。


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クラブ名
横浜F・マリノス
クラブ説明文

日産自動車サッカー部として1972年に創部。横浜マリノスに改称し、1993年にオリジナルメンバーとしてJリーグ開幕を迎えました。1999年には横浜フリューゲルスと合併し、現在の横浜F・マリノスの名称となりました。マリノスとは、スペイン語で「船乗り」を意味し、世界を目指す姿とホームタウンである国際的港町、横浜のイメージをオーバーラップさせています。勝者のシンボルである月桂樹に囲まれたエンブレムの盾には、錨とカモメが表現されています。こちらでは、チーム、試合やイベントなどさまざまなニュースをお届けします。

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