スポーツビジネス拡張のカギは? 「INNOVATION LEAGUE 2021」説明会開催レポート

SPORTS TECH TOKYO
チーム・協会

【SPORTS TECH TOKYO】

 8月11日(水)に、昨年度に続く開催となる「INNOVATION LEAGUE 2021」のプログラム説明会が行われた。「INNOVATION LEAGUE」はスポーツ庁が目指すスポーツオープンイノベーションプラットフォーム構築の推進を目的としたプログラムであり、昨年度よりスポーツ庁とSPORTS TECH TOKYOが共同で開催している。アクセラレーションとコンテストからなるプログラムで、昨年度のアクセラレーションではコラボレーションパートナーとして公益財団法人日本バレーボール協会と3x3.EXE PREMIERが参画。最終採択企業の5社との間で具体的な価値共創が複数実現するなど、盛況の内に幕を閉じた。

昨年度プログラム開催実績はこちら
https://innovation-league.sportstech.tokyo/achievements/

 プログラム説明会の冒頭、スポーツ庁室伏広治長官から説明会の参加者へ「オリンピック・パラリンピックの開催に際して関心が高まり、スポーツの持つ可能性を多くの人が感じている今このタイミングこそ、勢いを止めずにスポーツの未来を創り出していくことが重要」とのメッセージが伝えられ、スポーツ界と他産業との融合を促す本事業への強い期待が述べられた。また「INNOVATION LEAGUE」は競技や産業を越えて、幅広いネットワークを構築する機会としてあらゆるステークホルダーに開かれた場所であることを強調した。

プログラム説明会に登壇したスポーツ庁室伏広治長官 【INNOVATION LEAGUE】

 続く「INNOVATION LEAGUE プログラム・マネージャー挨拶」のパートでは、スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐 坂本弘美氏より、スポーツオープンイノベーションプラットフォームの構築において「INNOVATION LEAGUE」が果たす役割について説明がなされた。

SOIP(スポーツオープンイノベーションプラットフォーム)と市場の拡大 【INNOVATION LEAGUE】

 その後、SPORTS TECH TOKYO プログラムオーナー 中嶋文彦氏による「INNOVATION LEAGUE 2021」の概要説明並びに“開幕宣言”が行われた後、アクセラレーションとコンテストそれぞれのプログラム説明へと移った。

左)SPORTS TECH TOKYO 白石幸平氏、中央)SPORTS TECH TOKYO プログラムオーナー 中嶋文彦氏、右)スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐 坂本弘美氏 【INNOVATION LEAGUE】

 本年度の「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」では最終採択企業のテクノロジーやビジネスアイデアの実証を行うコラボレーションパートナーとして、公益社団法人日本フェンシング協会およびジャパンサイクルリーグの2団体が参画している。審査を通過した最終採択企業には、事業開発経験を豊富に持つ起業家など各業界のプロフェッショナルによるメンタリング機会が提供され、来年2月に実施予定の成果発表会「デモデイ」に向けて事業共創が進められる。

「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」の全体像 【INNOVATION LEAGUE】

 なお、「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」はスポーツビジネスを拡張させることやスポーツの価値高度化を目指し、コラボレーションパートナーが持つ課題やアセットと、最終採択企業のテクノロジーや事業アイデアなどを掛け合わせることで新たな事業やソリューションを創出する試みだ。

 昨年度コラボレーションパートナーとして参画した公益財団法人日本バレーボール協会は最終採択企業の1社、AMATELUS株式会社が提供する自由視点映像システム「SwipeVideo」を活用し、Vリーグの試合のトライアル撮影を実施した。

日本バレーボール協会とAMATELUSが実施した実証実験の様子 【INNOVATION LEAGUE】

 3x3.EXE PREMIERは実証実験のための大会を企画し、同じく最終採択企業の1社、SpoLive Interactive株式会社が提供する次世代のバーチャル観戦プラットフォーム「SpoLive」を通じた観戦体験の拡張と、ジャングルX株式会社が開発したファンエンゲージメントツールの導入が行われた。

3x3.EXE PREMIERとSpoLive、ジャングルXが実施した実証実験の様子 【INNOVATION LEAGUE】

 プログラム説明会では続き、本年度コラボレーションパートナーである日本フェンシング協会より理事の皆川賢太郎氏と、パートナーシップマーケティング担当の野口雄大氏が登壇。

 「これまでフェンシングはトップレベルの大会であっても競技会の側面が強く観客も入っていませんでしたが、2018年からフェンシングの見える化やプロモーションに注力し、魅力的な大会改革に取り組みました。結果として来場者数も年々伸ばすことができています。今回、本アクセラレーションに参画させていただくにあたり、フェンシングの深い魅力を起点にその面白さをより多くの人に伝達できるテクノロジーとの掛け算を期待したいです」と、INNOVATION LEAGUEへの意気込みを述べた。

日本フェンシング協会 理事 パートナーシップマーケティング担当 野口雄大氏 【INNOVATION LEAGUE】

 その後、同じく本年度コラボレーションパートナーのジャパンサイクルリーグ チェアマンの片山右京氏から競技団体発足の経緯と意義についての説明がなされた。

 ジャパンサイクルリーグ 理事長の犬伏真広氏は「様々な方からのご支援をいただきながら、2021年3月に新たな自転車・ロードレースのリーグを発足しました。先刻のオリンピックでは女子で初めて梶原選手がメダルを獲得しましたが、まだまだ発展途上の団体となります。ジャパンサイクルリーグは国内で自転車をよりメジャースポーツにすること、地域に根付いた活動を行い選手育て、海外でも活躍できる選手を輩出していくことが命題となります。また競技面ではなく、健康促進や環境保護の観点からも自転車がより人の役に立つ存在になれるよう尽力していきます」と語り、ロードレースの戦略性や奥深さ、選手のパフォーマンスを思わず語りたくなるテクノロジーを期待していると語った。

ジャパンサイクルリーグ 理事長 犬伏真広氏 【INNOVATION LEAGUE】

 「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」の説明の後は「INNOVATION LEAGUE コンテスト」の紹介が、担当のSPORTS TECH TOKYO薬師寺肇氏から行われた。アクセラレーションと同時開催されているコンテストはスポーツの価値やスポーツビジネスの可能性を拡大する新しい取り組み・優れた取り組みを讃えるものだ。スポーツがビジネスや社会課題、テクノロジーと多様につながっていく中で、シンボリックな先行事例を表彰し、広く世の中へ伝えていくことで次なる取り組みを誘発していく。社会に好循環を生み出すことが狙いだ。

「INNOVATION LEAGUE コンテスト」の開催の背景 【INNOVATION LEAGUE】

 昨年度は株式会社no new folk studio(現在は株式会社ORPHE(オルフェ)に社名変更)と株式会社アシックスが共同で開発したスマートシューズ「EVORIDE ORPHE」がイノベーションリーグ大賞に、コロナ禍におけるスポーツエンターテイメント3.0を提案している株式会社ookamiのスポーツライブエンターテイメントアプリ「Player!」がアクティベーション賞に選ばれるなど、人々の健康課題や社会課題、コロナ禍で生じた環境変化を的確に捉え、スポーツの可能性を拡張する取り組みが表彰された。

昨年度コンテスト全受賞者の声はこちら
https://innovation-league.sportstech.tokyo/

 プログラム説明会後半では、昨年度アクセラレーション最終採択社の方を迎えた座談会や、テーマごとのブレイクアウトルームに分かれたセッションが行われ、本年度プログラムへの応募を検討している参加者たちからの質問が相次いだ。

 なお、本年度開催中の「INNOVATION LEAGUE 2021」では、アクセラレーション、コンテスト共に、現在参加者の募集を行っている。締切はアクセラレーションが2021年9月12日(日)、コンテストが2021年12月10日(金)。ぜひ、公式ウェブサイトや説明会アーカイブで詳細を確認されたい。

「INNOVATION LEAGUE」公式ウェブサイト
https://innovation-league.sportstech.tokyo/

「INNOVATION LEAGUE 2021」プログラム説明会アーカイブ
https://www.youtube.com/watch?v=F5iNeHqatpc

 2020年、スポーツは様々な壁にぶつかり、その度に関係者の多大なる努力や創意工夫によって難局を乗り越えてきた。そして2021年、日本スポーツはコロナ禍で東京オリンピックを迎えたその先に何を見出すのだろうか。

 そのオリンピックで大活躍を見せた日本のフェンシング、自転車レースの新しい可能性を秘めて誕生したジャパンサイクルリーグ。今まさに勢いに乗る両団体とのコラボレーションからどんなイノベーションが生まれるのか、今から非常に楽しみである。
執筆協力:五勝出拳一
『アスリートと社会を紡ぐ』をミッションとしたNPO法人izm 代表理事。スポーツおよびアスリートの価値向上を目的に、コンテンツ・マーケティング支援および教育・キャリア支援の事業を展開している。2019年末に『アスリートのためのソーシャルメディア活用術』を出版。
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著者プロフィール

スポーツテックをテーマにした世界規模のアクセラレーション・プログラム。2019年に実施した第1回には世界33カ国からスタートアップ約300社が応募。スタートアップ以外にも国内企業、スポーツチーム・競技団体、スポーツビジネス関連組織、メディアなど約200の個人・団体が参画している。事業開発のためのオープンイノベーション・プラットフォームでもある。現在、スポーツ庁と共同で「INNOVATION LEAGUE」も開催している。

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