「水戸が取り組む人材育成プロジェクト『MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)』とは何か? 西村卓朗GMに説明してもらいました」

水戸ホーリーホック
チーム・協会

【©MITOHOLLYHOCK】

水戸ホーリーホックでは、プロサッカークラブとして初めての試みとなるプロ選手を対象とした「社会に貢献する人材育成」「人間的成長のサポート」「プロアスリートの価値向上」
を目的とするプロジェクト「Make Value Project」を実施しています。

多様性と交流を基盤に、様々な業種の講師を招聘し、異業種の方々の価値観や使命感に触れることで、プロアスリートとしての存在意義や社会的な存在価値を選手たちに問い続けます。

その一環として、キャリアコーチと選手が継続的に面談をして「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の策定をする取り組みが昨年から行われています。

ミッション・・・社会の中での自分の役割
ビジョン・・・ミッションを実現した理想の未来像
バリュー・・・日々のこだわり、行動指針

原体験を振り返り、自らのサッカー選手であるうえのスタンスや価値観、使命感を見つめなおすことでピッチ内外でのパフォーマンス、言動、行動の質の向上につなげていこうという取り組みです。

どのような意図を持って、この取り組みを導入し、継続しているのか。
西村卓朗GMに説明していただきました。

【©MITOHOLLYHOCK】

自分のあるべき姿の実現こそが目的
Q.まず、MVVとはどういった取り組みでしょうか?
「取り入れたきっかけはいろいろあります。一つはJリーグの新人研修冒頭で村井チェアマンが『あなたたちは個人事業主です。1人の経営者です。経営者としてのミッション、ビジョン、バリューは何ですか?』と問いかけるんです。それを数年間、聞かせていただく機会があったのですが、問いかけるだけでなく、そこに向き合うシステムを作ろうと思ったんです。自分もサッカー選手として、選手の時間はすごく尊い時間でしたし、大事な時間でした。その中でサッカーをすることが目的化してしまっていましたし、そのことにあまり疑問を感じていませんでした。あまりこの言葉は使いたくないのですが、あくまでサッカーは手段であって、自分のあるべき姿の実現こそ目的なんじゃないかと思うんです。なので、そこに向かうためにも、内面に問いかけることは大切だと考えて、取り組んでいます」

Q.何のためにサッカーをするのかということを考えさせるのですね。
そうです。その問いかけに対して、大半の選手が『試合に勝つため』『試合に出るため』『代表になるため』『海外でプレーするため』と答えます。では、『何のために勝つのか』『何のために日本代表になるのか』『何のために海外でプレーするのか』というところまで答えられる選手は多くありません。何を実現させたいのか、何を表現したいのかということを追求させていきたいということが僕の中にあります。そして、それが日本サッカー界の課題であり、好きなことを仕事にした人の課題なのかなと思っています」


面談は自分と向き合う時間
Q.どの程度の頻度で面談は行われているのでしょうか?
「シーズンがはじまってから5月ぐらいまでの間にキャリアコーチと約1時間の面談を3回ぐらい行っています。1人称で完結しない、社会他者に貢献する目的としてのMISSION、未来のありたい姿としてのVISION、行動指針としてのVISIONについて、面談を通して言語化して定めようとしています」

Q.MVVを設定して、選手たちの変化を感じますか?
「言語化することは、威力があると思っています。軸が強くなった選手が増えました」

Q.MVVは年々変わるものですか?
「変わる選手も変わらない選手もいます」

Q.選手たちは積極的に取り組んでいますか?
「1on1面談自体はそんなに苦になっていないと思います。自分の中の価値観や大事にしていることは何だろうと考えて、すぐに出てこない選手もいると思います。でも、そうやって考える時間自体は決して無駄ではない。自分といい意味で向き合う時間になっていると思うので、苦にはなっていないと思います」

Q.MVPやMVVといった取り組みを行いながら、内面からも選手たちを育成することによって、他のクラブとの差別化を図ろうという狙いもあるのでは?
「他のクラブとの差別化や水戸のブランディングといった観点で行っているところもあります。一方、外向きにやっていることではなく、せっかく、水戸ホーリーホックに来てくれた選手に対して、自分自身もしっかり向き合いたいと思っていますし、選手自身も向き合うクラブにしたいと思っています」


目的に向かうために時間を費やしてもらいたい
Q.今後のビジョンは?
「MVVを定めたところから、いかにアップデートされていくか。大事なのは発信する場を作ることだと思っています。水戸では社会貢献活動の一環としてMake Future Projectも立ち上げ、積極的に地域貢献活動を行っています。その取り組みとして、学校で子どもたちの前で話したり、オンラインで講演をしたり、他業界の方々とパネルディスカッションをするなど、アウトプットすることによって、より精度や思いが強くなってくると考えています」

Q.アウトプットまでがワンセット?
「うまくなるとか、勝つことが目的化しがちなんです。では、今日のトレーニングを何のためにやるのかということを心にとめながらグラウンドに向かってほしいと思うんです。毎年MVVで定めた言葉を記したプレートを選手たちに渡しています。それをロッカーなどよく見る場所に飾ってもらうようにしています。それはなぜかというと、毎日何のためにサッカーをするのかを確認してからグラウンドに向かってほしいからなんです。ただ、グラウンドの中では無心でプレーしてもらいたい。でも、グラウンドに向かう時には『自分は何のためにサッカーをするのか』ということを思い返してもらいたい。サッカーに関われる時間は思っているより短い。自分の目的に一直線で向かっていくために時間を費やしてもらいたい。なので、俯瞰したところで目的を確かめた上でサッカーと向き合ってほしいと思っています」

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著者プロフィール

Jリーグ所属の水戸ホーリーホックの公式アカウントです。 1994年にサッカークラブFC水戸として発足。1997年にプリマハムFC土浦と合併し、チーム名を水戸ホーリーホックと改称。2000年にJリーグ入会を果たした。ホーリーホックとは、英語で「葵」を意味。徳川御三家の一つである水戸藩の家紋(葵)から引用したもので、誰からも愛され親しまれ、そして強固な意志を持ったチームになることを目標にしている。

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