【フットサル日本代表/WEB取材】開幕まで1カ月半。W杯優勝を見据えるブルーノ監督が考案する3つのサイクルと本大会までのプランとは。

SAL
チーム・協会

【高橋学】

ワールドカップ本大会の開幕まで、あと1カ月半。Fリーグは中断期間に入り、日本代表は現在、千葉県・高円宮記念JFA夢フィールドで行われているトレーニングキャンプを含め、国内合宿、スペイン・ポルトガル遠征を経て、一気に“W杯モード”へと入っていく。

日本がW杯で強豪国を打ち破り、上位へ進出するために、ブルーノ・ガルシア監督は果たしてどんなプランを考えているのか。

現在行われている国内でのトレーニングキャンプ、欧州遠征で控える7つの親善試合についてブルーノ監督は説明。さらに、本戦を戦う“16名”のメンバー構成と選出の理由などを明かした。決勝戦進出、そしてW杯優勝を見据えるブルーノ監督が世界一までに思い描いている道のりを明かした。

世界各国のチームと戦い、万全の計画を

コンニチハ。

プランニングという意味で現状をお伝えしますと、1つ目のサイクルに入っています。我々は「蓄積期」と呼んでいますが、蓄積とは、フィジカル的に負荷をかけて回復を待つためという側面もありますが、戦術面の情報やチームビルディングのあらゆる局面への対応などの蓄積です。W杯につなげるためのベースづくりの一環です。この期間を2つのパートに分けています。今は国内パートの真っ最中で、その目的は「均質化」です。

国内の選手は、シーズン中に中断して集まっていますから、インシーズンのコンディションです。一方で海外から帰国中の逸見勝利ラファエルと清水和也は、オフシーズンからの立ち上げから入っていますし、他にもケガからの回復途上にある選手もいるので、次のフェーズに向け、さまざまな面でコンディションを整え、均質にしていくことをテーマに取り組んでいるところです。

その国内パートが一度、30日に中断し、8月2日に再開していきますが、最終的に7日までは蓄積期となります。そこからヨーロッパに移動して新しいフェーズに入るというプランニングの構成です。そこからは「移行期」です。蓄積したものを本番に向けて移行していく。W杯で使えるように洗練していくという位置付けです。そのために、8月8日から31日までをヨーロッパで過ごします。スペインのガリシア州、ポルトガル、最後は(スペインのアンダルシア州の)ハエンという南の街で、計画的なトレーニングマッチを、さまざまな代表チームと戦う計画を練っています。対戦相手も、本番のグループステージで対戦する相手の特性や大陸などを考え、さまざまな相手とあたるように組んでいます。最後の洗練、磨き上げをして本番に向かっていきます。

8月31日までスペインで過ごす間に、6試合を予定しています。最終的に、本番が行われるリトアニアには9月2日に入り、そこからのプランは「実現期」というフェーズに入ります。ここでも最後、本大会のグループステージに先立って、最後のトレーニングマッチの予定を組んでいます。9月2日に入ってから14日の初戦を迎えるまでは、リトアニアという土地への適応や、グループとしても個としても最適な状態で迎えられることを考えています。

というわけで、ヨーロッパに飛んでからは合計7試合を計画していますが、それはW杯のファイナルを戦うまでと同じ試合数になります。しかも事前に組む試合は、アルゼンチンという現王者、スペインというW杯優勝経験者、ヨーロッパ王者のポルトガルとの試合も組まれています。それ以外に、中南米代表チームや北中米代表チーム、そしてアジアのチームと、いろいろな特性やスタイルを持ったチームとの対戦を織り交ぜて、万全の計画をしています。

──グループステージでも対戦するスペインと直前の親善試合で対戦するメリット、デメリットは?

4カ国対抗親善大会の出場の打診があったのはずいぶん前でした。組み合わせ抽選の前の段階から、試合機会をもつことが大事だということもあり、参加表明していました。組み分けが出た後も、これを維持しました。本番のグループステージでの対戦は相手へのリスペクトもありますし、向こうもこちらへのリスペクトもありますが、我々は常にポジティブにこの状況を捉えています。こういった代表の試合だけではなく、リーグ戦でも、プレーオフでまた戦う、大会でも上位ステージで同じ相手と複数回対戦するのは珍しいことではありません。事前に戦えることをポジティブに捉え、グループリーグの対戦につなげたいと思います。

ブルーノ・ジャパン、W杯までの3つのサイクル 【高橋学】

ブルーノ・ジャパンの中軸・仁部屋が外れた理由とは

──登録メンバーが14名ではなく16名になるという報道がありますが、現時点で伝えていただける状況はありますか?また、その決定次第で合宿プランや最終メンバー選考にも大きな影響があるのではないでしょうか。

現在、私たちが聞いている状況として、16名になると聞いています。他のスポーツでもそうですが、コロナ禍の影響を受けた特別措置として、16名に広げ、そのうち3人はGKであることのようです。ただし、試合における登録は14名となり、2名は試合会場にいたとしてもベンチ入りできないというフローだと聞いています。これは、現実的な状況に対して、FIFAが賢明な判断をしてくれたと考えています。

実は、この変更に際しては、私たちが事前に考えていたプランが結果的にやりやすくなったといえますし、特に変更を強いられるものではありません。国内フェーズはもともと、17名でキャンプを行い、ヨーロッパには16名で行き、その後、9月2日には最終的な14名で向かう計画でしたが、最後のところで、そのままリトアニアに(16名が)全員行けるので、私たちにとっては都合のいい変更だったと思っています。

14名が16名に変わることに加え、ラージリストと呼ばれる、ケガなどによる差し替えができる登録リストも、従来の25名から26名になると聞いています。つまり、10名がバックアップメンバーに入ることになります。

──監督の選考をリスペクトした上でうかがいます。これまでブルーノ・ジャパンで重要な立ち位置にいた仁部屋和弘選手の名前がありません。今回の選出に際して、彼が外れている理由はなんでしょうか?

選手選考は複雑で難しいものでした。仁部屋の名前が出ましたが、実際にはそれ以外にも、最終的に今回の17名のリストに入らなかったメンバーが、ラージリストにはいます。森岡薫や内村俊太などもそうですし、拮抗した競争をしてきたなかでの決断です。この状況を分析すると、大会時期が2020から2021に延期になった影響として、ある選手には好影響となり、ある選手には少し時期がマイナスに働いた選手もいたと思います。

評価は代表での活動だけではなく当然クラブと両方を見てきています。代表としては、ヨーロッパに遠征してから、18カ月ぶりの試合となります。その時点で最適なメンバーになると思われる選手を、延期になった期間でも見据えながら、改めて判断して選んできています。もちろん、何度もお伝えしますが、非常に複雑で難しい判断となるほど、能力の高い選手の集まりなので、拮抗したなかで最終的に決断するのは監督の使命なのでやりましたが、そうした背景のなか、苦しみながらも最善・最適なメンバーを選んだつもりです。

──これまで19名くらいを招集してきたなか、今回17名を呼んでいることで、競争というより、選手はある程度は最終メンバーに入っているという認識のもとで過度なプレッシャーを感じることなくトレーニングに取り組めている印象があります。そのあたりの選手心理も、17名にした理由の一つでしょうか? 

これまで国内キャンプで19名を招集してきたのはおっしゃる通り(競争を狙ってのもの)です。加えて、海外遠征では16名を基準にやってきたこともあり、19名から17名になりました。落ち着いて、比較的競争のストレスよりも、最後のフィルターをかけながら、洗練に重きをおいているため、そのようにしています。そのことは選手にも、6月の最後のキャンプのときに、最後に17名に絞ると宣言して、理解してもらい臨んできました。そのような計画性をもって、招集人数を変化させてきました。

──また、17名へ寄せている信頼を、改めて教えていただけますでしょうか。

17名への「信頼」ですが、自分のもつ「信頼の定義」を少しお話しします。私にとって「この選手はゴールを奪える」、「ゴールを決める可能性が高い」、「守備をさせればボールを奪う可能性がある」から信頼が高い、できないから信頼がないという構図で見ていません。最終的に選ばれる16名が、どういったレベルで参加しているかお互いにわかってほしいかというと、各人が7試合の“戦(いくさ)”に対して、自分の命を削ってでも、お互いのため、共通の目的のために身を捧げることができるかどうか。そんな犠牲心をもちながら、調子の良い選手が悪い選手を助け、カバーし合う。調子が悪いから苦い顔をするのではなく、みんながいくさを戦い切るという前提のもと、いくさなので、自分の感覚というより、チーム全体のために自分を捧げることができる、そういうメンバーになってほしいという基準をつくってきました。自分にとってこの17名は、共に戦う、信頼ができるメンバーだと確信しています。そのメンバーだけではなく、ラージリストの26名や、最高レベルの技術をもった多くの選手が関わってきましたが、そのなかでも、このいくさを戦うのに最適なメンバーの集まり、それがこの17名への信頼です。

【SAL編集部】

W杯の主役にふさわしい戦いをする

──W杯前の6試合の連戦ではフィジカル的に疲労が残ったり、久しぶりの試合ということで開幕前に燃え尽きてしまわないかという不安もありそうですが、そのあたりはどうでしょうか? 

先程もお話ししましたが、18カ月試合をしない期間を経てW杯に向かいます。これは望んだ状況ではないですが、現実的にそうなっているので、埋め合わせをしないといけない。その方法として、今回は6試合、リトアニアでの試合を含めて7試合あります。このプランニングは過去、複数の重要な大会でやっている裏付けがあり、自信があります。短い活動であれば状況は異なりますが、今回は活動期間を得られたので、もちろんマネジメントしながら、メリットを生かす。十分に有効性のあるプランニングになると確信しています。

──ピヴォが多いですし、残り1枠はピヴォで争っている印象。この4選手がもたらしてくれているものは? 

4名とは、星翔太、清水和也、平田・ネト・アントニオ・マサノリ、毛利元亮のことを指していると思いますが、私としてはそれ以外にも、森村孝志、八木聖人もそのメンバーに入れたいと思っています。翔太もそうですが、ピヴォだけではなくアラもできる特性があり、ゲームの状況やシステムの方法などに応じて柔軟にアクション、機能を変えられるメンバーです。ピヴォと言っても、どっしりと前でターゲットになる、動的にターゲットとして現れるタイプなど、それぞれの特性があります。GKに次いで固有性の高いポジションだと思っていますし、重宝し、大事に考えています。そのため、いろんなタイプの選手がいてほしいと思っています。

──監督は前回大会でベトナム代表を率いてベスト16を達成したことが大きな挑戦でした。2大会連続で挑むW杯はどのような意味をもっているのでしょうか? 

自分としては、主役にふさわしい戦いをし、行けるところまで、なるべく遠く、深くまで大会を進めること。その準備が今のお話ししてきたテーマです。最後まで行くと7試合で、3試合は必ず戦うものとして計画されています。そのあとは1戦ずつ、毎回勝ちきって進むという取り組み。それに相応しい準備をする。その結果、私たちをW杯で主役たらしめる大会になると、考えています。

──スペインの全国フットサル指導者協会が主催する2020-2021シーズン最優秀海外指導監督賞の受賞おめでとうございます。この受賞によって新たに芽生えた気持ちはありますか?

祝福ありがとうございます。この監督賞は、同じ団体から、スペインのクラブチームにいた頃にも受賞したことがあり、2回目になります。この賞は、一般的な方々からではなく、同僚の指導者の仲間が評価し、投票するものなので、その分、自分にとってはうれしい性質の賞だと考えています。特に今回は、海外にいながら、スペインを離れて何年も経っているにもかかわらず見てもらえたので格別です。とはいえ、監督としてコレクティブな仕事が必須ですし、今回であれば、仕事を実現してくれているスタッフ、こうして離れた場所でも一緒に過ごしてくれている家族、友達など、みなさんの支えがあって仕事ができています。自分としてはそういう捉え方をしている賞を、みなさんとの協働が認められたことを非常に喜んでいるという状況です。

──W杯に向かう代表チームにも良い影響がありますか?

ポジティブな影響が直接的にあるかわからないですし、チームはそれがあろうがなかろうが非常に高いモチベーションでこれまでも準備をしています。私としてはそこに喜びが加わり、そういうふうに見られているチームなんだという見られ方があるかもしれないですが、その意味では、特別な影響があるとは思っていません。
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