安定感抜群のロッテ佐々木千隼 試合の中盤を支配し勝利に導く
【安定感抜群の佐々木千隼投手】
珍しい光景だった。6月13日の読売ジャイアンツ戦。1点リードの八回二死三塁。マウンド上の佐々木千隼投手は打者若林を見逃し三振に切って取り、ピンチをしのぐと激しくグラブを叩き、咆哮した。普段は淡々として喜怒哀楽を表に出さない若者が激しく吠えた。
プロ入り5年目。佐々木千隼投手が一軍マウンドで存在感を見せている。セットアッパーとしてここまで4勝。チームの躍進に大きく貢献をしている。ストレートにスライダー、シンカー。ストライク先行の安定感ある投球とキレのあるストレートと自慢のスライダーでここまでチームの窮地を何度となく救ってきている。この日も負ければ同一カード3連敗で5位転落の危機に直面している中、ピンチをしのぎ、勝利を呼び寄せた。
「まだまだな部分はありますが、充実しています。狙いすぎなくなったこともいい方向に来ている。ボール、ボール、ボールとなると流れが悪くなる。いいところに投げると考えずにポンポン投げることを意識している」。佐々木千は自身の今年の投球をそのように口にする。
マスクをかぶることが多い柿沼友哉捕手は背番号「11」のスライダーが好結果を呼んでいる要因の一つであると分析し、その伝家の宝刀を「奥行きのある変化球」と独特の表現で説明する。
「スライダーが普通とは違っていて、奥行きがあります。スラーブといえば、いいのでしょうかね。カーブに近い感覚の球。バッターはタイミングが合わせにくいと思いますよ」と柿沼。
この奥行きのあるスライダーを武器に打者を攻めていく。ただ、そこにはもちろんピッチングの軸としてストレートがある。
「受けていても今年はストレートに例年以上に強さがあります。スピードガンよりもはるかに速く感じます」(柿沼)
サイド気味に投じられるキレのあるストレートと奥行きのあるスライダー。さらにシンカーなどを交えると投球は何重もの深みを増す。今年も佐々木千の凄みだ。
2016年ドラフトにて5球団競合の末、鳴り物入りで1位入団した佐々木千。一年目こそ先発で4勝を挙げたものの、翌18年は右ひじを手術して一軍登板ナシ。19年は2勝で20年は春季キャンプで右肩を痛め大きく出遅れ、わずか5試合の登板で未勝利に終わった。勝負の5年目。先発ではなくセットアッパーとして再出発した。
セットアッパーとしての可能性を見出した吉井理人投手コーチは「ドラフト1位の実力ですよ」と前置きをしながら語る。「本来は体が強い子。去年、一年間しっかりと体を作って今年は春のキャンプから中盤に投げる形を試していた」と振り返る。当初は外国人のホセ・フローレス投手とのポジション争い。2月18日に沖縄本島で行われたイーグルスとの練習試合(金武)では2回を無失点に抑えると、その後も練習試合、オープン戦を通じて結果を出し、アピール。競争を勝ち抜き、一軍の切符を手に入れた。
「彼が自力で勝ち取ったポジション。連習試合、オープン戦を通じて投球内容を見ていて中盤をロングで任せられるいいピッチャーが見つかったぞと思ったね」と吉井コーチ。そして「なかなかああいうスライダーはない。120キロ台でギューンと曲がる。横のカーブに近いね」と柿沼と同じようにスライダーを評価した。
マウンドに送り出す井口資仁監督も強い信頼感を口にする。
「肩、ひじに不安がないということもあって今年はしっかりと腕が振れている。だからストレートは走っているし変化球もキレがある。自信をもって投げ込めている。ずっと先発をして、こうやって中盤で投げるようになって投球の幅を広がっている。元々、スライダーはよかったけど、ストレートが走っているから、打者は絞りにくい。ストレートを起点にしてスライダーが威力を発揮している。ここまで負けているパターンで彼が投げて流れを変えるという投球をしてくれた。彼の投球によって逆転できるチームになっているのは大きい」と大絶賛をする。
マリーンズでは07年ドラフトで1位入団をした唐川侑己投手が18年からセットアッパーに転身し存在感を増した。佐々木千も同じように環境を変える事によって力を発揮できるようになった。可能性が広がった。
5球団競合のドラフト1位。大きな期待をかけられてプロ入りをしたが、その後の道のりは紆余曲折だった。1年目の春季キャンプでは連日、マスコミの注目の的となった。当時の事を佐々木千は「ドラフト1位だから、もっと頑張らないといけない。これでは駄目だと、自分で自分をただ苦しめていた。結局、どんどんマイナスになっていた。メディアも沢山いて、気負っていた。今思うとなんであんなに追い込んで悩んでいたのかなあと思う。もっと気楽にやればよかった」と振り返る。気負った投球に襲い掛かる怪我。苦しい日々だった。それでも怪我をしたことで学べたこともある。肩のトレーニング方法やケアをしっかり見つめ直し、肩の状態は徐々に回復。今は万全の状態にある。
「痛めた事で学んだ。色々な人と出会い、話を聞き、自分の身体を見つめて知る事が出来たと思う」(佐々木千)
試合前には入念にストレッチやケアを行い、試合後も夜、寝る前まで入念に繰り返す。今までにはないほどしっかりと手入れを行い備えることで肩のコンディションは見違えるほど良くなった。
安定感抜群のピッチング。テンポいい投球で試合の中盤を支配する。ビハインドの場面で逆転が生まれるのは決まって佐々木千が投げた後であることは決して偶然ではなく必然。その投球がチームに勢いと活気をもたらしている。過去4年間、苦しみ悩み抜いた分、今の飛躍がある。背番号「11」はキレのあるストレートと独特の横に曲がるスライダーを武器にマリーンズを勝利に導いている。交流戦最終戦。チームが崖っぷちのピンチの場面で見せた咆哮。気迫を前面に押し出す頼もしい右腕がチームの中盤を担っている。リーグ戦再開後のキーマンとなることは間違いない。
文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
プロ入り5年目。佐々木千隼投手が一軍マウンドで存在感を見せている。セットアッパーとしてここまで4勝。チームの躍進に大きく貢献をしている。ストレートにスライダー、シンカー。ストライク先行の安定感ある投球とキレのあるストレートと自慢のスライダーでここまでチームの窮地を何度となく救ってきている。この日も負ければ同一カード3連敗で5位転落の危機に直面している中、ピンチをしのぎ、勝利を呼び寄せた。
「まだまだな部分はありますが、充実しています。狙いすぎなくなったこともいい方向に来ている。ボール、ボール、ボールとなると流れが悪くなる。いいところに投げると考えずにポンポン投げることを意識している」。佐々木千は自身の今年の投球をそのように口にする。
マスクをかぶることが多い柿沼友哉捕手は背番号「11」のスライダーが好結果を呼んでいる要因の一つであると分析し、その伝家の宝刀を「奥行きのある変化球」と独特の表現で説明する。
「スライダーが普通とは違っていて、奥行きがあります。スラーブといえば、いいのでしょうかね。カーブに近い感覚の球。バッターはタイミングが合わせにくいと思いますよ」と柿沼。
この奥行きのあるスライダーを武器に打者を攻めていく。ただ、そこにはもちろんピッチングの軸としてストレートがある。
「受けていても今年はストレートに例年以上に強さがあります。スピードガンよりもはるかに速く感じます」(柿沼)
サイド気味に投じられるキレのあるストレートと奥行きのあるスライダー。さらにシンカーなどを交えると投球は何重もの深みを増す。今年も佐々木千の凄みだ。
2016年ドラフトにて5球団競合の末、鳴り物入りで1位入団した佐々木千。一年目こそ先発で4勝を挙げたものの、翌18年は右ひじを手術して一軍登板ナシ。19年は2勝で20年は春季キャンプで右肩を痛め大きく出遅れ、わずか5試合の登板で未勝利に終わった。勝負の5年目。先発ではなくセットアッパーとして再出発した。
セットアッパーとしての可能性を見出した吉井理人投手コーチは「ドラフト1位の実力ですよ」と前置きをしながら語る。「本来は体が強い子。去年、一年間しっかりと体を作って今年は春のキャンプから中盤に投げる形を試していた」と振り返る。当初は外国人のホセ・フローレス投手とのポジション争い。2月18日に沖縄本島で行われたイーグルスとの練習試合(金武)では2回を無失点に抑えると、その後も練習試合、オープン戦を通じて結果を出し、アピール。競争を勝ち抜き、一軍の切符を手に入れた。
「彼が自力で勝ち取ったポジション。連習試合、オープン戦を通じて投球内容を見ていて中盤をロングで任せられるいいピッチャーが見つかったぞと思ったね」と吉井コーチ。そして「なかなかああいうスライダーはない。120キロ台でギューンと曲がる。横のカーブに近いね」と柿沼と同じようにスライダーを評価した。
マウンドに送り出す井口資仁監督も強い信頼感を口にする。
「肩、ひじに不安がないということもあって今年はしっかりと腕が振れている。だからストレートは走っているし変化球もキレがある。自信をもって投げ込めている。ずっと先発をして、こうやって中盤で投げるようになって投球の幅を広がっている。元々、スライダーはよかったけど、ストレートが走っているから、打者は絞りにくい。ストレートを起点にしてスライダーが威力を発揮している。ここまで負けているパターンで彼が投げて流れを変えるという投球をしてくれた。彼の投球によって逆転できるチームになっているのは大きい」と大絶賛をする。
マリーンズでは07年ドラフトで1位入団をした唐川侑己投手が18年からセットアッパーに転身し存在感を増した。佐々木千も同じように環境を変える事によって力を発揮できるようになった。可能性が広がった。
5球団競合のドラフト1位。大きな期待をかけられてプロ入りをしたが、その後の道のりは紆余曲折だった。1年目の春季キャンプでは連日、マスコミの注目の的となった。当時の事を佐々木千は「ドラフト1位だから、もっと頑張らないといけない。これでは駄目だと、自分で自分をただ苦しめていた。結局、どんどんマイナスになっていた。メディアも沢山いて、気負っていた。今思うとなんであんなに追い込んで悩んでいたのかなあと思う。もっと気楽にやればよかった」と振り返る。気負った投球に襲い掛かる怪我。苦しい日々だった。それでも怪我をしたことで学べたこともある。肩のトレーニング方法やケアをしっかり見つめ直し、肩の状態は徐々に回復。今は万全の状態にある。
「痛めた事で学んだ。色々な人と出会い、話を聞き、自分の身体を見つめて知る事が出来たと思う」(佐々木千)
試合前には入念にストレッチやケアを行い、試合後も夜、寝る前まで入念に繰り返す。今までにはないほどしっかりと手入れを行い備えることで肩のコンディションは見違えるほど良くなった。
安定感抜群のピッチング。テンポいい投球で試合の中盤を支配する。ビハインドの場面で逆転が生まれるのは決まって佐々木千が投げた後であることは決して偶然ではなく必然。その投球がチームに勢いと活気をもたらしている。過去4年間、苦しみ悩み抜いた分、今の飛躍がある。背番号「11」はキレのあるストレートと独特の横に曲がるスライダーを武器にマリーンズを勝利に導いている。交流戦最終戦。チームが崖っぷちのピンチの場面で見せた咆哮。気迫を前面に押し出す頼もしい右腕がチームの中盤を担っている。リーグ戦再開後のキーマンとなることは間違いない。
文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原 紀章
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