【レビュー】天皇杯福島県代表決定戦・いわきFC対福島ユナイテッドFC
【©︎IWAKI FC】
JFLのいわきFCとJ3の福島ユナイテッドFC。福島県ナンバーワンの座をかけた両チームの対決は、2016年に始まった。1年目はユナイテッドが勝利するも、2017年以降はいわきFCが3連勝。
しかし今年、風向きが変わった。両チームは今年2月28日に、東日本大震災メモリアルマッチで激突。この試合で、福島ユナイテッドFCはこれまで異なる姿を見せた。開始早々から激しいプレッシャーをかけ続け、終了直前にFWオリグバッジョ・イスマイラ選手がゴール。福島ユナイテッドFCが5年ぶりの勝利を挙げた。ユナイテッドがこれまでのつなぐスタイルとは明らかに変貌した姿を見せたことにより、今年の天皇杯県代表決定戦の勝敗の行方は、かつてないほど見えにくくなっていた。
試合に当たり、気になるのは両チームのコンディション。それぞれがリーグ戦をこなしており、いわきFCは5月1日と5日にJFLのリーグ戦を行い、いずれも勝利。中3日で今回の試合に臨むことに。一方の福島ユナイテッドFCは、チームに新型コロナウィルス陽性者が出たことで4月下旬に活動を自粛し、25日のJ3第6節・いわてグルージャ盛岡戦が延期に。準備期間の短い中で活動を再開。5月2日のJ3第7節・AC長野パルセイロ戦を戦い、前半36分のイスマイラ選手のゴールで挙げた1点を守り切って勝利。今回の試合には、中6日で臨んでいる。
短い試合間隔による疲労の蓄積はあるものの、直近の2試合にいい勝ち方をして勢いのあるいわきFC。そして活動自粛期間を経ていい形で勝利を挙げ、中6日の調整期間を経た福島ユナイテッドFC。両チームのコンディションの違いが試合にどう影響するかも、注目された。
福島ユナイテッドFCのフォーメーションはFWの核・イスマイラ選手を3トップ中央に置く3-4-3。これに対しいわきFCはこれまでの4-1-3-2からシステムを変更。ユナイテッドと同じ3-4-3で臨んだ。
いわきにとって3-4-3は、昨年まで採用していたフォーメーションでもある。DF陣は今シーズン初先発となる黒宮渉と小田島怜、そしてJFL第6節からチャンスをつかみ、3試合連続でスターティングメンバーの一角に名を連ねる黒澤丈。昨年のシステムを知るCB3人で3バックを組んだ。
そしてGKは天皇杯の戦いを熟知し、今シーズンも安定したプレーを見せる坂田大樹。MF陣は中央に山下優人と宮本英治、サイドに日高大と嵯峨理久。FWは鈴木翔大、古川大悟に加え、岩渕弘人が1.5列目のトップ下に近い位置に入った。
この日は3-4-3のフォーメーションを採用しFWに鈴木、古川に加え、岩渕が1.5列目に入った 【©︎IWAKI FC】
ユナイテッド時崎悠監督は「いわき FC がシステムを3-4-3に変えてくることは想定内だった」と語る。しかし、いわきが序盤からフィジカルを前面に押し出してプレッシャーをかけ続けたことで、ユナイテッドは落ち着く時間のないまま前半に2点を失うことになる。
13分、MF日高が中央に切れ込み、FW岩渕へ。岩渕がディフェンダーを上手く交わし、スライディングで先制ゴールを決める。その後、ユナイテッドは幾度かFWイスマイラ選手やFW雪江悠人選手が抜け出してチャンスを作るも、決められない。そして34分、高い位置でボールを奪った日高が送ったパスを岩渕が受け、ディフェンダーをかわして今度は左足でゴール右隅に流しこんで2点目。リーグ戦ではここまで出場機会が少なかった岩渕の2ゴールで、いわきがリードを奪った。
後半開始早々、ユナイテッドはいわきを押し込む。63分にはアタッカー3人を同時投入して巻き返しを図るが、ゴールネットを揺らすことができず。いわきも立て続けに交代のカードを切り、56分に古川に代え平岡将豪、73分には嵯峨理久に代え金大生、鈴木翔大に代え4日前の高知ユナイテッドSC戦で決勝ゴールを挙げた吉澤柊、80分には岩渕に代え谷村海那と、パワーとスピードのあるフレッシュなアタッカー達を続々と投入。守ることなく3点目を奪いに行った。交代が功を奏する形で、いわきFCは後半も福島ユナイテッドFCを圧倒することに。試合は終始優勢のまま2対0でタイムアップ。いわきFCが5年連続で天皇杯福島県代表の座をつかんだ。
田村雄三監督談話
その上で今回3バックで臨んだのは、ユナイテッドさんのストロングを消し、自分達の強みを出すためでした。3-4-3は昨年までやってきたフォーメーションですが、そこでストロングを出せるメンバーを選んだつもりです。
攻撃では、走力がありボールを収めることのできる鈴木翔大と古川大悟がユナイテッドさんの3バックを引っ張る。そして中央の1.5列目に逆三角形のような形で置いた岩渕弘人を空いたスペースに入れることが狙いでした。このフォーメーションは練習をぜんぜんしていなかったのですが、岩渕はこちらの意図をしっかり理解してやってくれた。その結果、点を取ることができました。彼の日ごろの努力の成果です。
MVP を選ぶとしたらDF黒宮渉です。今季初スタメンだったのですが、イスマイラ選手に臆することなく、最後まで集中力を切らさず頑張ってくれました。彼の貢献があったから得点につながりました。
今季初スタメンのDF黒宮は相手FWイスマイラを押さえ完封勝利に貢献 【©︎IWAKI FC】
FW岩渕弘人談話
リーグ開幕からチームが無敗を続ける中、個人的には点を決められず出場時間も短い状況が続いていた。今までのサッカー人生の中で試合に出られない時期があまりないので、ちょっときつかった。早く点を取って気持ちを落ち着けたかったし、チームの力になりたいと思っていたので、やっと取れて本当によかったです。
この試合2ゴールの活躍でチームの勝利に貢献 【©︎IWAKI FC】
今日のポジションにはほぼぶっつけ本番で臨みましたが、できる自信はありました。自分はFWの選手ですが、中盤やサイドもできるのはいいことだと思っています。JFLの高知ユナイテッドSC戦で途中から右サイドハーフで出ていましたし、トップ下もちょっと位置が低いだけで、あまり変わらない。いろいろなポジションができた方が選手としてレベルアップできるし、監督もそういう選手の方が使いやすいはず。求められるポジションで100%の力を出したいです。
今はチームの調子がよく、誰が出てもいい感じの試合ができている。毎試合ヒーローが変わるのは強いチームの証拠だと思います。天皇杯は上のカテゴリーと真剣勝負ができる大切な機会なので、一つでも多く勝ち進み、Jクラブと真剣勝負をしたいです」
天皇杯の熱き戦いにもご注目を。
そして今週末のJFL第9節はアウェー。5月15日13時から、現在8位のFCマルヤス岡崎と対戦する。引き続き、熱き戦いにご注目いただきたい。
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