【レビュー】天皇杯福島県代表決定戦・いわきFC対福島ユナイテッドFC

いわきFC
チーム・協会

【©︎IWAKI FC】

コロナ禍の影響で2年ぶりの開催となった、今年の天皇杯福島県代表決定戦が5月9日、福島市のとうほう・みんなのスタジアムで開催。いわきFCが福島ユナイテッドFCに2対0で勝利し、5年連続となる福島県代表の座をつかんだ。

JFLのいわきFCとJ3の福島ユナイテッドFC。福島県ナンバーワンの座をかけた両チームの対決は、2016年に始まった。1年目はユナイテッドが勝利するも、2017年以降はいわきFCが3連勝。

しかし今年、風向きが変わった。両チームは今年2月28日に、東日本大震災メモリアルマッチで激突。この試合で、福島ユナイテッドFCはこれまで異なる姿を見せた。開始早々から激しいプレッシャーをかけ続け、終了直前にFWオリグバッジョ・イスマイラ選手がゴール。福島ユナイテッドFCが5年ぶりの勝利を挙げた。ユナイテッドがこれまでのつなぐスタイルとは明らかに変貌した姿を見せたことにより、今年の天皇杯県代表決定戦の勝敗の行方は、かつてないほど見えにくくなっていた。

試合に当たり、気になるのは両チームのコンディション。それぞれがリーグ戦をこなしており、いわきFCは5月1日と5日にJFLのリーグ戦を行い、いずれも勝利。中3日で今回の試合に臨むことに。一方の福島ユナイテッドFCは、チームに新型コロナウィルス陽性者が出たことで4月下旬に活動を自粛し、25日のJ3第6節・いわてグルージャ盛岡戦が延期に。準備期間の短い中で活動を再開。5月2日のJ3第7節・AC長野パルセイロ戦を戦い、前半36分のイスマイラ選手のゴールで挙げた1点を守り切って勝利。今回の試合には、中6日で臨んでいる。

短い試合間隔による疲労の蓄積はあるものの、直近の2試合にいい勝ち方をして勢いのあるいわきFC。そして活動自粛期間を経ていい形で勝利を挙げ、中6日の調整期間を経た福島ユナイテッドFC。両チームのコンディションの違いが試合にどう影響するかも、注目された。

福島ユナイテッドFCのフォーメーションはFWの核・イスマイラ選手を3トップ中央に置く3-4-3。これに対しいわきFCはこれまでの4-1-3-2からシステムを変更。ユナイテッドと同じ3-4-3で臨んだ。

いわきにとって3-4-3は、昨年まで採用していたフォーメーションでもある。DF陣は今シーズン初先発となる黒宮渉と小田島怜、そしてJFL第6節からチャンスをつかみ、3試合連続でスターティングメンバーの一角に名を連ねる黒澤丈。昨年のシステムを知るCB3人で3バックを組んだ。

そしてGKは天皇杯の戦いを熟知し、今シーズンも安定したプレーを見せる坂田大樹。MF陣は中央に山下優人と宮本英治、サイドに日高大と嵯峨理久。FWは鈴木翔大、古川大悟に加え、岩渕弘人が1.5列目のトップ下に近い位置に入った。

この日は3-4-3のフォーメーションを採用しFWに鈴木、古川に加え、岩渕が1.5列目に入った 【©︎IWAKI FC】

試合は福島ダービーとは真逆の展開となる。いわきが開始早々から激しくプレッシャーをかけ、ユナイテッドは序盤、防戦一方となる。いわき守備陣はユナイテッドの1トップ、イスマイラ選手を徹底マーク。高さのあるDF黒宮が激しく身体をぶつけ、自由にプレーさせない。

ユナイテッド時崎悠監督は「いわき FC がシステムを3-4-3に変えてくることは想定内だった」と語る。しかし、いわきが序盤からフィジカルを前面に押し出してプレッシャーをかけ続けたことで、ユナイテッドは落ち着く時間のないまま前半に2点を失うことになる。

13分、MF日高が中央に切れ込み、FW岩渕へ。岩渕がディフェンダーを上手く交わし、スライディングで先制ゴールを決める。その後、ユナイテッドは幾度かFWイスマイラ選手やFW雪江悠人選手が抜け出してチャンスを作るも、決められない。そして34分、高い位置でボールを奪った日高が送ったパスを岩渕が受け、ディフェンダーをかわして今度は左足でゴール右隅に流しこんで2点目。リーグ戦ではここまで出場機会が少なかった岩渕の2ゴールで、いわきがリードを奪った。

後半開始早々、ユナイテッドはいわきを押し込む。63分にはアタッカー3人を同時投入して巻き返しを図るが、ゴールネットを揺らすことができず。いわきも立て続けに交代のカードを切り、56分に古川に代え平岡将豪、73分には嵯峨理久に代え金大生、鈴木翔大に代え4日前の高知ユナイテッドSC戦で決勝ゴールを挙げた吉澤柊、80分には岩渕に代え谷村海那と、パワーとスピードのあるフレッシュなアタッカー達を続々と投入。守ることなく3点目を奪いに行った。交代が功を奏する形で、いわきFCは後半も福島ユナイテッドFCを圧倒することに。試合は終始優勢のまま2対0でタイムアップ。いわきFCが5年連続で天皇杯福島県代表の座をつかんだ。

田村雄三監督談話

「まず、この状況の中で有観客で試合をできたことについて、関係者の皆様に感謝をお伝えしたいと思います。2月末のダービーで負けていて、あの試合でユナイテッドさんにチャレンジ精神やファイティングスピリットを学びました。そのため、今日は戦術どうこう以前に先日どうこうじゃなく「目の前の選手に負けない」「球際で相手より先にボールに触る」「セカンドボールを取る」「相手より走る」といったことを徹底してほしい、戦術はあくまでその上にあることだと言いました。ダービーの借りを返そうと、選手達は本当に謙虚に貪欲に戦ってくれたと思います。

その上で今回3バックで臨んだのは、ユナイテッドさんのストロングを消し、自分達の強みを出すためでした。3-4-3は昨年までやってきたフォーメーションですが、そこでストロングを出せるメンバーを選んだつもりです。

攻撃では、走力がありボールを収めることのできる鈴木翔大と古川大悟がユナイテッドさんの3バックを引っ張る。そして中央の1.5列目に逆三角形のような形で置いた岩渕弘人を空いたスペースに入れることが狙いでした。このフォーメーションは練習をぜんぜんしていなかったのですが、岩渕はこちらの意図をしっかり理解してやってくれた。その結果、点を取ることができました。彼の日ごろの努力の成果です。

MVP を選ぶとしたらDF黒宮渉です。今季初スタメンだったのですが、イスマイラ選手に臆することなく、最後まで集中力を切らさず頑張ってくれました。彼の貢献があったから得点につながりました。

今季初スタメンのDF黒宮は相手FWイスマイラを押さえ完封勝利に貢献 【©︎IWAKI FC】

福島県代表になれたことの誇りを胸に、天皇杯で一つでも多く勝てるよう、引き続き謙虚に貪欲にやっていきます。そして皆さんにいわき FCらしいサッカーを見せ、元気になってもらうために、一つ一つ戦っていくつもりです」

FW岩渕弘人談話

「1点目の瞬間はやっと決まった、やっと入ったという気持ちでした。あまり詳しくは覚えていないのですが、1点目は 日高選手からいいボールが入り、ディフェンダーは目の前に一人しかいなかったと思います。スライディングシュートでしたが、スライディングして打つといつも入るんですよ(笑)。2点目は左足のシュートでした。中島(俊一)コーチに『切り返してからのシュートがワンテンポ遅い』と言われていて、今年、それを改善するための練習をたくさんしてきました。その成果が出たと思います。

リーグ開幕からチームが無敗を続ける中、個人的には点を決められず出場時間も短い状況が続いていた。今までのサッカー人生の中で試合に出られない時期があまりないので、ちょっときつかった。早く点を取って気持ちを落ち着けたかったし、チームの力になりたいと思っていたので、やっと取れて本当によかったです。

この試合2ゴールの活躍でチームの勝利に貢献 【©︎IWAKI FC】

試合に出られない期間にはコーチといろいろな話をして、モチベーションを下げないことを意識し、毎日の練習で試合に出るために必要なことに、試行錯誤しながら取り組んできました。(渡邉)匠コーチがいつも話を聞いてくれて『決してプレーが悪いわけではない。腐らずやり続ければチャンスは絶対に来る。プロの世界ではダメな時もあるし、試合に出られない時もある。そういう中で試合に出られないから云々じゃなく、毎日の練習でレベルアップすることを考えろ。試合に出ることだけが目標じゃなく、常に練習で成長することが大事だ』と言ってくれていました。意識して練習に取り組んでよかったです。

今日のポジションにはほぼぶっつけ本番で臨みましたが、できる自信はありました。自分はFWの選手ですが、中盤やサイドもできるのはいいことだと思っています。JFLの高知ユナイテッドSC戦で途中から右サイドハーフで出ていましたし、トップ下もちょっと位置が低いだけで、あまり変わらない。いろいろなポジションができた方が選手としてレベルアップできるし、監督もそういう選手の方が使いやすいはず。求められるポジションで100%の力を出したいです。

今はチームの調子がよく、誰が出てもいい感じの試合ができている。毎試合ヒーローが変わるのは強いチームの証拠だと思います。天皇杯は上のカテゴリーと真剣勝負ができる大切な機会なので、一つでも多く勝ち進み、Jクラブと真剣勝負をしたいです」

天皇杯の熱き戦いにもご注目を。

天皇杯の次戦は、5月22日13時よりいわきグリーンフィールドで行われる。相手は同じJFLに所属する、宮城県代表のソニー仙台FC。2018年の天皇杯、そして昨年のリーグ戦で敗れている相手だけに、この試合は絶対に負けられない。

そして今週末のJFL第9節はアウェー。5月15日13時から、現在8位のFCマルヤス岡崎と対戦する。引き続き、熱き戦いにご注目いただきたい。

【©︎IWAKI FC】

なお福島ユナイテッドFC戦のハイライトを、いわきFCの公式YouTubeチャンネルにて配信している。

そして、田村雄三監督自ら試合の裏側を綴る『田村雄三ここだけの話 〜BEHIND THE SCENES』を始めとするいわきFCの最新コンテンツは、"魂の息吹く"noteをぜひチェックしてほしい。

また、いわきFCファンクラブ「LOVE IWAKI」も、会員を随時募集中。入会は無料。チケットやグッズの会員限定価格で購入や、メルマガによる情報配信など多くの特典があるので、ぜひご入会を。
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著者プロフィール

「いわき市を東北一の都市にする」ことをミッションに掲げ、東北社会人サッカーリーグ1部を戦う「いわきFC」の公式アカウントです。

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