【マッチプレビュー】2021年天皇杯福島県代表決定戦 いわきFC対福島ユナイテッドFC
【©︎IWAKI FC】
福島ユナイテッドFCは、福島市・会津若松市を中心とする福島県全県をホームタウンとし、現在J3で戦うサッカークラブである。
沿革を簡単に説明しよう。
2006年2月、福島県リーグの福島夢集団ユンカースが東北社会人リーグ2部のFCペラーダ福島(1977年創設)の運営を譲り受け、ペラーダ福島として東北社会人2部南リーグに参戦。そして2008年に「浜通り・中通り・会津を一つにする」という意味が込め、チーム名を現在の福島ユナイテッドFCに改称。東北社会人リーグ1部に昇格した。
2011年3月、東日本大震災によりチームは大きな痛手を負った。多くの選手が退団し、福島県内で試合ができない状況。だがそれでもチームは困難を乗り切り、東北社会人リーグ1部で初優勝。2012年には東北社会人リーグ1部を連覇し、第36回全国地域サッカーリーグ決勝大会で準優勝し、JFL昇格を果たした。
2013年のJFLでは18チーム中14位。同年9月にJリーグ準加盟クラブの承認を受け、翌2014年よりJ3へと戦いの場を移している。
クラブ名に込められた使命感、そして震災に見舞われるも、東北社会人リーグからJリーグへと上り詰めたたくましいストーリー。福島ユナイテッドFCは10年以上にわたって県のサッカーを牽引し、天皇杯福島県代表の座を長年、守り抜いてきた。
そこに突如姿を現した、筋骨隆々の男達。
「いわき市を東北一の都市に」というビジョンを掲げ、アンダーアーマーの倉庫の敷地内にグラウンドを整備。「日本のフィジカルスタンダードを変える」と謳い、身体を鍛え上げ、90分間止まらない、倒れない「魂の息吹くフットボール」と銘打つ、パワーと走力を全面に押し出したハイテンポなプレースタイルを標榜する、型破りなサッカークラブ。築いてきたすべてを奪い取らんとする「侵略者」。
ユナイテッド側から見れば、いわきFCのイメージはそのようなものに違いない。
■「決して負けてはいけない相手」
両チームは天皇杯福島県代表決定戦で激突。試合はいわきFCが積極的に攻めるも、福島が前半に先制。しかし試合終盤、DF高野次郎がゴールを挙げて同点に追いつき、延長戦に突入。激しい展開の中、決勝ゴールを挙げて2対1で競り勝ったのは、ユナイテッドだった。
敗れはしたものの、いわきFCはこの試合で得たものは「Jリーグクラブ、恐れるに足らず」という好感触。チームはそれを、その後の躍進へとつなげていく。
初の対戦は延長戦の末、福島ユナイテッドが制した 【©︎IWAKI FC】
いわきFCは前半に、FW吉田のゴールで先制。後半はさらに圧倒する。平岡のゴールで2対0として勝利し、ユナイテッドのV10を阻止。初めて天皇杯本戦へと駒を進めた。さらに快進撃は続き、天皇杯本戦2回戦でコンサドーレ札幌を撃破。3回戦で清水エスパルスに善戦し、チームの名を全国へ轟かせた。
2年目の対戦は2対0でいわきFCが勝利 【©︎IWAKI FC】
2018年にはFW小野瀬恵亮(現・つくばFC)、MF熊川翔(現・Y.S.C.C.横浜)が前半にゴールを挙げ、2対1で勝利。2019年は2月のJヴィレッジ再開記念マッチに5対0で完勝。天皇杯福島県代表決定戦では、FW赤星魁麻(現・高知ユナイテッドSC)の2得点に絡む活躍で2対1。天皇杯では、いわきFCが3年連続で勝利することになった。
2018年、2019年もいわきFCが勝利し、現在3連覇中 【©︎IWAKI FC】
しかし2021年、ついにその風向きが変わる。
福島ユナイテッドFCは、2021年より就任した時崎悠監督のもと、プレースタイルの変革に着手。それまでのつないでつなぎ倒すプレースタイルからの脱却を目指した。
時崎監督は福島市出身。湘南ベルマーレや水戸ホーリーホックでプレーし、引退後、2012年から福島ユナイテッドFCの監督を務めた後、2014年から2019年まで湘南ベルマーレのコーチを務めた。いわきFCの田村雄三監督とは、湘南ベルマーレで選手そして指導者として日々をともにした間柄である。
2021年2月28日、Jヴィレッジスタジアムで行われた「東日本大震災メモリアルマッチ 福島ダービー」。2年ぶりのマッチアップに、ユナイテッドの選手達は開始早々から激しいプレッシャーをかける。いわきFCは勢いの前になかなかチャンスを作れず、試合は0対0で終盤に。そして迎えた後半アディショナルタイム、FWオリグバッジョ・イスマイラ選手がゴール。福島ユナイテッドFCが久しぶりの勝利を挙げた。
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■「HUMBLE&HUNGRY.ー成長を、挑戦を貫くー。このテーマを体現したい」田村雄三監督。
プレッシャーを回避するには、ボランチとCBがいかにしっかりとボールを運べるかがポイントに。CBが勇気を持って運ぶ、剥がす、ボランチの選手がしっかり前を向く。そこをしっかりできれば、あわてるゲームにはならないはず。
まさに今年の「HUMBLE&HUNGRY.ー成長を、挑戦を貫くー」というテーマを体現できるかどうかが問われるでしょう。リーグ戦が重なって連戦であること、コンディションなどは関係ない。福島県の代表になりたい気持ちが強いチームが勝つと思います。
【©︎IWAKI FC】
2トップは未定ですが、誰が出てもおかしくないと思っています。リーグ戦で後半から出ている平岡将豪、先週見事なゴールを見せた古川大悟、吉澤柊も含めて、ユナイテッドさんの3バックの裏に抜けるプレーを期待したいです。
左サイドハーフは山口大輝。右サイドハーフは金大生、バスケス・バイロンに加えて、先日のリーグ戦でもともとFWの岩渕弘人がいい動きを見せてくれました。皆モチベーションは高いです。ギリギリまで見て、コンディションのいい選手を選んでいきたいです」
■「侮れない相手であるのは間違いない」村上佑太アナリスト
メモリアルマッチの時は、どんどんボールを取りに来ました。J3第1節の藤枝MYFC戦も同じ印象でしたが、それ以降の試合には、メモリアルマッチほどの迫力は感じられません。ボール保持率も、6試合で平均44%ぐらいと相手に譲っています。
第3節・鹿児島ユナイテッドFC戦の1失点目が象徴的でした。相手のゴールキックを奪いに行くため、全員がアグレッシブに取りに行ったところをロングボール一発でディフェンスラインの背後に蹴られ、失点しました。このような形で取られると、選手の中にはこれを続けていいのか、という気持ちが生まれるはずです。それでも第7節のAC長野パルセイロ戦では、イスマイラのゴール後に11人で守り切って勝ちました。そういった部分で、侮れない相手であるのは間違いありません。
メモリアルマッチの反省から考えると、ボランチとセンターバックが怖がらずボールを持ち出せるか。それができれば、その後さまざまなポイントにボールをつける選択肢が増えるでしょう。
イスマイラ選手のようなFWはJFLにはいません。警戒すべきはやはり、イスマイラ選手。彼をどう抑え込むかが、ウチのペースで試合を進められるかどうかの鍵になる。その上で3-4-3のウイングバックの裏など、ウチが得意としているイエローゾーン、レッドゾーンへのランニングと、そこに2列目、3列目が関わることで、おのずと点は取れる。早い段階でゴールできれば、自分達のペースで試合を進められると思います」
■悔しさがチームを変えた。
対する福島ユナイテッドFCは現在、J3で2勝2分け2敗の8位。上位進出への可能性は、まだまだ十分残されている。
果たして天皇杯福島県代表となるのはいわきFCか、それとも福島ユナイテッドFCか。
ぜひ会場にて観戦ルール順守の上、気持ちのこもった拍手で、いわきFCの選手達の熱き戦いを後押しいただきたい。
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