コロナ禍でのサッカーと選手の絆について作陽高校・池田監督に聞いてみた

岡山県サッカー協会
チーム・協会

【岡山県サッカー協会】

池田浩子という人は、笑顔の人

岡山県の女子サッカーの中で、なでしこリーグを除くと歴代全国に一番近いチームが存在する。
岡山県作陽高校女子サッカー部だ。2011年から監督を務めているのが池田浩子さんだ。東京出身。岡山湯郷Belleでプレーし、引退後作陽高校で指導者として歩み続けている。
2021年2月、岡山県サッカー協会の事務局へ寄っていただいた際にひょんなことからメディア広報班の私、溝手は、池田監督との語合いの時間をいただいた。対談というのは池田監督に申し訳ないので「聞いてみた」ということで文字に起こした。
池田監督は、岡山県のサッカー界では「ごぴさん」と呼ばれている。この由来については謎が多く、もっか調査中である(情報を求めている)
ごぴさんはいつも笑顔で気さくに会話をしてくれる。会場でも礼儀やマナーの整った姿勢で、選手たちを見つめている。サッカーの場においては独特の厳しい空気感を持ち、それ以外では温かい笑みをこぼす。そんな池田監督にこのコロナ禍について前振りもなく聞いてみた。

――どんな感じで語り合いましょうか?(岡山FAメディア班・溝手)

池田監督(以下「池田」)「溝手さんと会話しながらの方が良いですね(笑)」

――ありがとうございます(笑)
2020年度はいざスタート!というタイミングで、このコロナ禍ということになりました。新型コロナウィルス感染症の世界的な流行で「サッカーをしていていい状況なのか?」と先の読めない状況が5、6月にあり、県高校総体が中止となりました。この時、総体にかけてきた選手たちにどんな言葉をかけましたか?」

池田 「総体を求めて作陽に来てくれている選手たちが多いので、総体が無くなったときに【それだけが全てではない】と伝えられたことは良かったですね。【大会だけが全てではない】ということに私自身が気づけましたし、逆に選手たちにそれをわかってもらえるチャンスだったのかな。それでも選手は辞めなかった。大会があるから頑張っていたのではなく、結局「何」のために頑張ってきていたのかというと【自分を成長させたい】から、【自分を変えたい】から、【ここに来ている】というのが、一番の考えるべきところになった。
 じゃあ、もう一回頑張っていこうという気持ちになっていった。もちろん次がどこになるのかわからない状態ではありましたが。今やるべきことを、今頑張るしかないから、そこに向けて頑張ろう、ということで再スタートをきった」

――それは、選手を集めて?もしくは選手から「どうなるんですか?」と聞かれて出した言葉ではなく?

池田 「あー、いや、そうではないですね。高校総体が無くなるということを知った時点で全員を集めて話をしましたね。みんなに共通理解というか、私も想いも、選手の想いも感じながら話ができた結果だと思います」

――なるほど。そしてそのあと、すぐに総体の代替え大会でしたね。

池田 「そうだったんで、自分たちより高校3年生のラストにゲームになるかもしれないチームのためにという気持ちで運営もさせてもらいました」

――そして、あるかどうかもわからない状況の県選手権を制覇し、2020年は男女で作陽が全国大会に出場することになった。無くなるかもしれないという大会ができるという時、選手たちはいつもの2,3倍以上の喜びだったのでは?

池田 「本当にそんな感じで【サッカーの試合ができる】ということと【相手と対戦ができる】ということですら喜びがありましたし、全国大会に出たい、試合をしたいという選手たちの気持ちが繋がった県選手権だったのかなと思いましたね。環境だけに左右されるんじゃなくて、自分たちが本当に大事にしていることを常に選手に伝えていくということが指導者として大切な部分が見えましたし、やはりリスペクトな心というか、大会を運営してくださっている方がいての大会が成り立つことを選手たちが見ていたのが良かった」

いつもとは違う全国大会への挑戦

――乗り越えてからの全国大会。全国大会前にも感染者が増え始めて、大会自体の開催がどうなるのかわからない状況になったけれど、気持ちは「大会が無くならない」スタンスで臨んだ?

池田 「んー、無くならないスタンスというか、あると信じてやっていた、という方が強いかなと思いますし、プレーする姿を見せるチャンスがあるならば!という気持ちはありましたけど、いつ無くなるかわからないという不安感はもちろん隣り合わせの状態で、今年一年間はやってきたので。
 毎日【勝つために!】というよりは【自分の成長のため】という方が一番大きかった。その時に何ができるかという準備をしておかなければいけないよね、というところで目標というよりはもう少し自分たちにフォーカスする、自分にフォーカスするということを重要視しながら1年間やってきたかな。
 逆に普段やっていたら見過ごしていた部分をもっと細かくできたりとか、なんとなく言葉で伝えてわかってもらっていたことをもっと図で見せたりとか絵で見せたりとかすることによって理解度を深めたりとか。結局選手に対して何ができるか、自分は何を変えられるかに対してやり続けたことが、もしかしたら選手のレベルは『練習ができていた通年』と遜色なかった。2カ月間、サッカーが(通年と)まったく同じにはできなかったけれど、結果、理解力だったりとか納得して動ける部分が強くなっていった。だから最後今年のチームを見た時に、何か足りないなと思うようなことは無くて、逆に何か面白いな、と(笑)
 何かやってくれるんじゃないかと思わせてくれたのが結果につながったんじゃないかと思います。そこがこの状況下でも一番良かった。できないことを探すよりもできるために準備をしておく、これが全てだったのかなと今思えば」

高校女子準優勝に触れる池田監督 【岡山県サッカー協会】

池田監督は楽しい。個性と個性を混ぜるのが

――毎年、個性のある年代を率いて大会に臨むじゃないですか?そして、毎年いろんな選手の特徴があって、『この年代はこうだよね』、『この年代はああだよね』ということを池田監督から聞くんですが、2020年の中でいうと特に通年なら伝わらなかったものが「これがもしかしたら練習最後かも」と毎回みんながお互い選手も監督もコーチもそういう気持ちを持っていたから、お互いが伝える以上ものが伝わったような、そういう集大成が全国選手権の準優勝に繋がったのかなと。

池田 「(何度も頷く)まさにその通りですね。最後かもと思いながらサッカーしてました」

――(全国大会決勝を)テレビで見ていたんですが、岡山県で見た県予選の時とは選手の気持ちがこもっていて全然違っていて、そして楽しそうプレーしてチャレンジしているように見えたんですね。やはり全国大会の強豪チームと1戦1戦試合をして、あの年代の選手たちは特に飛躍的に成長していく。それを一番近くで見ていて感じるものはありましたか?

池田 「1回戦目から最後までやらせてもらえて5試合したんでけど、本当に1戦1戦で選手は成長しましたし、吸収していくスピードはものすごく上がるので、全国大会に行きたいというよりも全国大会の場数を踏むことによって選手が大きく成長することができるんだなということを知ることができましたし、その「楽しそうに見えた」というところが、たぶんやっている私が一番楽しかったです(笑)」

((( 大笑い )))

池田 「だからこそ、そう見えたのかなと思います。今までの大会とは全然違って、サッカーができる喜び、これがすべてで。みんなでやってきたことがここで、試合でできる喜びというのが一番強かったので、1戦1戦楽しく成長しながら最後の決勝戦のピッチに立てたのかな、というところがあったので。できることをやっていく。まぁ、それでも勝てなかったというところが、やはり相手の方ができるレベルが高かったというよりもできることが多かった」

――なるほど、個数だったんですね。

池田 「はい。それを今度作陽が越えていくために日常に戻って、普段の質であったりとか言葉かけであったりとか、練習の内容であったりとか、そのへんを選手レベルで成長させなければいけないことと、指導者レベルでやっていかないといけないことを再確認させてもらえたので、あの子たちにとってはすごく良い結果で終わったんですけど、次の子たちにとってはすごくプレッシャーになることはあるけれども、見えて感じたことは絶対にあると思うので。そこに行かないと見えないものが絶対にあるからこそ、それを次の人生というかサッカーの人生の中でも活かしてもらえることが、私たちにとっても一番の喜びなんだと思います。結果だけではなくて、準優勝が輝かしいものではあるんですが、だけじゃないというところを本人たちにはと知って欲しいかな」

なめんなよ中国地方を、なめんなよ岡山県を(笑)

――特にピッチに立てる選手だけではなかったじゃないですか。どうしてもベンチにいたり、観客席で見ていた選手たちはいた。彼女たちにどう伝えたら「君たちも立てるよ」というのが新年度の課題というかスタートなのかな?

池田 「それは言葉だけではないのかな。あそこ(決勝のピッチ)にいないと見えないこと。1人1人感じたことは違うと思うので、それを次自分が試合に出るために何をしなければいけないのかというのは、選手が10人いれば十通りあると思うんです。選手の数だけ成長のレベルが違うと思いますし、それをどこまで求められるかどうかだし、私たちが求めさせることでこだわらせて伝えなきゃいけないことはたくさんあるのかな、と思っているんでそれに合わせた指導をそれぞれしていけれたら伸びしろが大きくなるのかなと思います」

――逆に言うとあの準優勝で終わるわけではなく、そこからつながるこの新シーズンの方が楽しみ?

池田 「ふふっ、そうですね。それで求めてしまう事か高くなることがあるんですが、常に選手たちが考えて何が必要なのかということを日頃の練習でどれだけチャレンジできるような準備をするかということが大切なので、グラウンドが無いとか環境が整っていないところで終わるじゃなくてその中で何ができるかというのが、逆に岡山県でやっていかないといけないことじゃないかなと思ってます。
 楽しませてもらっているので、作陽としてはこれからもいろんなことを恩返しできるようにチャレンジしていきたいと思いますけど、本当に県外から来てくれている選手が多いので、逆に来てくれた場所に負けたくないという気持ちが私の中で大きい。
 なめんなよ中国地方を、なめんなよ岡山県を(笑)そんな精神はすごく持っているのです。わざわざ関東から来ている選手たちに関東のチームに負けさせてしまうと心苦しい部分があるからこそ、この岡山県でやっているということを、結果としても、一人ひとりの成長としても、残していきたいなとこれからも思っていますので、よろしくお願いします(笑顔)」

――こちらこそありがとうございます。

ごぴさんと真面目な語り合い…なんかとても新鮮だった。
2021年も新型コロナウィルス感染症は予断を許さない状況ではあるが、少しでもサッカーのある日常を目指してJFAガイドライン等の対策を行いながら続けていきたい。女子サッカーの、池田監督の活躍を期待したい。



語り合いを終えて。ありがとうございました。 【岡山県サッカー協会】

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岡山県サッカー協会メディア広報班による中国地域の岡山県のニッチなサッカー、フットサル、ビーチサッカーをお伝えするチャンネルです。 岡山県サッカー協会の主催・主管事業を中心に登録チームの紹介やイベントをご紹介します。

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