平野佳寿が4年ぶりに古巣復帰。指標にみるその長所と、期待される3つの金字塔

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日米でリリーフとして実績を積み上げてきた平野佳寿

 2月6日、平野佳寿投手のオリックスへの復帰が発表された。2018年からメジャーリーグに活躍の場を移しており、4年ぶりの古巣復帰となる。日米でリリーバーとして活躍を見せたベテランがどんな投球を見せてくれるかは、新シーズンにおける興味深いトピックだ。

 今回は、そんな平野投手のこれまでの足跡を振り返るとともに、セイバーメトリクスの観点からその投球の長所を分析。加えて、平野投手が近い将来に達成する可能性のある、3つの金字塔についても紹介する。

 まずはNPBで記録した年度別成績を見ていきたい。

先発、中継ぎ、抑えの全てにおいて一定以上の活躍

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  2005年の大学生・社会人ドラフト希望枠でオリックスに入団した平野投手は、プロ1年目からローテーションの一角に定着。10度の完投、4度の完封を記録して、タフさと能力の高さを見せつけ、即戦力としての期待に大きく応えた。続く2007年も先発陣の一角として活躍し、若くして投手陣の軸の一人となりつつあった。

 しかし、2008年にはチームが2位に躍進したものの、平野投手は故障の影響で一軍での登板を果たせず。翌2009年に満を持して戦列に復帰したものの、防御率4.72と本来の投球は見せられなかった。そんな中で、2010年にリリーフに転向したことが大きな転機に。同年は防御率1.67と抜群の投球を見せ、セットアッパーの座に定着した。

 続く2011年にはNPBでのキャリア最多となる72試合に登板し、2年連続で1点台の防御率を記録。49ホールドポイントを記録し、『最優秀中継ぎ』タイトルも手にした。2012年途中からはクローザーの大役を任され、2013年には防御率1.87で30セーブ、2014年にはリーグ史上初の40セーブを記録して『最多セーブ』を獲得と、抑えとしても活躍を見せた。

 その後もオリックスの守護神として活躍を続け、2017年には史上13人目となる通算150セーブの大台に到達。先発、中継ぎ、抑えの全てにおいて奮闘し、10年以上にわたってオリックスの投手陣を支え続けた。

 同様にMLBにおける年度別成績も見ていこう。

伝家の宝刀スプリットは世界最高峰の舞台でも威力を発揮

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 2018年にダイヤモンドバックスでメジャーデビューを果たすと、切れ味鋭いスプリットを武器に、MLBの強打者たちを相手に真っ向勝負。1年目からセットアッパーの座をつかんで75試合に登板、32ホールド防御率2.44とフル回転の活躍を見せ、世界最高峰の舞台でもその実力が通用することを証明した。

 続く2019年にはやや成績を落としたものの、そのタフさは変わらず65試合に登板。宝刀スプリットの切れは健在で、引き続きリリーフ陣の一角として奮闘した。マリナーズに移籍した2020年もシーズン途中から抑えを務めるなど活躍したが、最後の2試合で5失点を喫し、防御率はそれまでの2.45から5.85まで跳ねあがる結果に。それでも、3年間にわたってMLBの舞台でリリーバーとして存在感を示し続けたのは間違いない。

奪三振が多く四球は少ないという理想的なバランス

 ここからは、平野投手が日米で記録してきた数字を、セイバーメトリクスで用いられる下記の3項目から分析していきたい。

・9イニングで記録できる奪三振数の平均を示す「奪三振率」
・9イニングで与える四球数の平均を示す「与四球率」
・奪三振を四球で割って求める、投手の制球を示す「K/BB」

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 奪三振率は9以上、すなわちイニング数を上回る奪三振数を記録すれば素晴らしい水準にあるとされる。そして、平野投手はリリーフに転向して以来、この分野で抜群の成績を残している。2010年から2015年まで6年連続で投球回を超える三振を奪い、そのうち4シーズンで2桁の奪三振率を記録。この数字は、まさに圧巻と呼べるものだ。

 また、三振を奪う能力に長けているだけでなく、制球力に優れている点も平野投手の特徴だ。2011年以降はシーズンを通して与えた四球が多くても17個に抑えられており、とりわけ2012年は70試合に登板し、与えた四球がわずか5個という驚異的な数字を記録している。

 三振が奪え、制球力も高いという特性は、この2つの要素がいずれも影響する「K/BB」の優秀さにもつながってくる。一般的にK/BBは3.50を上回れば優秀とされる中で、平野投手は2012年に16.00という圧倒的なK/BBを記録している。また、2010年から2016年の7シーズンのうち6度にわたって3.50を超え、2011年から4年連続で5点台以上の数字を残した。安定した投球を見せていた理由の一端が、これらの数字からもうかがえよう。

 続けて、MLBにおける平野投手の各種指標についても見ていこう。

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 3シーズン全てで奪三振率は8を超え、2019年には10.36と素晴らしい数字を記録。通算の数字も131.2回で131奪三振と、イニング数とほぼ同じ数字に。日本での最後の2年間はやや下降気味だった奪三振率が、再び向上したのは明るい材料だ。その一方で、与四球率は日本時代に比べて悪化しており、日本のマウンドで持ち前の制球力が戻るかどうかもカギとなってきそうだ。

中継ぎとしても、抑えとしても、節目の記録が間近に迫る

 ここからは、平野投手が到達する可能性を持つ節目の記録について紹介したい。まずは、元阪神の藤川球児氏と、今季からチームメイトになる増井浩俊投手の2名しか達成者のいない、「通算150ホールド&150セーブ」だ。既にNPB通算150セーブはクリアしており、NPB通算150ホールドにも残り11と迫っている。起用法次第にもなるが、近い将来の記録達成は十分に射程圏内と言えるだろう。

 そして、平野投手はMLBでも48ホールドを記録しており、日米通算のホールド数は187。日米通算200ホールドの快挙にも残り13に迫っているだけでなく、日米通算であれば、そのホールド数は宮西尚生投手(通算358ホールド)、山口鉄也氏(通算273ホールド)、浅尾拓也氏(通算200ホールド)に次ぐ、日本人史上4番目の多さとなっている。

 もちろんクローザーとして起用された場合は、多くのホールド数を積み上げるのは難しくなる。その一方で、平野投手が2020年までに記録した日米通算のセーブ数は164。日米通算200セーブの大台までは、あと36となっている。1シーズンでの到達はややハードルが高いが、2014年に40セーブを挙げている平野投手にとって、決して達成不可能な数字ではないだろう。

ブルペンのやり繰りに苦しんだオリックスの救世主となるか

 2020年のオリックスは、2019年まで3年連続で50試合以上に登板してきた近藤大亮投手の故障もあり、シーズンを通して勝ちパターンの継投構築に苦しんだ。救援陣のコマ不足が目立ったチームにとっても、経験・実績共に豊富な平野投手の復帰が、非常に大きな「補強」となる可能性は高い。

 メジャーリーグの舞台で確かな存在感を残し、4年ぶりにオリックスのユニフォームに袖を通す平野投手。威力十分の快速球と、切れ味抜群のスプリットを武器に奪三振の山を築くピッチングが再び見られれば、先述したようなさまざまな金字塔への到達も、そう遠い未来の話ではなくなるだろう。

文・望月遼太
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