課題が見えた中でも、大接戦のアウェイ・ヴィクトリーナ姫路戦を総力戦で制す!【NECレッドロケッツ】

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【NECレッドロケッツ】

 開幕3連勝同士の対戦となった10月31日の東レアローズ戦で、レッドロケッツはストレートで敗れた。今季から加入したネリマンがレッドロケッツでの初スタメンを飾り、14得点をマークするなど奮闘したが、チーム全体としてここぞという場面の決定力を欠いたことが敗因だった。

前日の東レ戦から「しっかり切り替えて戦おう」と選手に声をかけた金子監督 【NECレッドロケッツ】

 金子監督の「しっかり切り替えて戦おう」という言葉とともに臨んだ翌11月1日のヴィクトリーナ姫路戦も、楽な戦いにはならなかった。

姫路にとってはこの週末が今季初のホームゲーム。初日の31日に惜敗したこともあり、ホームでの連敗は何としても避けたかったに違いない。会場のヴィクトリーナ・ウインク体育館のスタンドは姫路のチームカラーであるピンク一色に染まり、先週のホームゲームでサポーターの存在の大きさを感じたレッドロケッツにとっては、なおさら〝アウェイ感〟を抱かせる状況だった。島村も試合後、「ホームの姫路さんへの応援がすごくて、アウェイの雰囲気を感じました」と振り返っている。

開幕戦から好調を維持する島村 【NECレッドロケッツ】

「最後まで自分たちが粘って試合運びをできた」島村春世

 そんな中で始まったゲームは、塚田がサーブで揺さぶり、山田の2本の速攻と古賀のスパイクで3点を先取。上々の立ち上がりに見えたが、すぐに立て直してきた相手にペースを握られ、逆に追いかける展開を強いられる。ネリマンのバックアタックや曽我のスパイクで幾度も追いついたにもかかわらず、逆転には至らないまま、13-14からの5連続失点でさらに苦しい状況に追い込まれた。

ただ、選手たちは諦めず、島村が「最後まで自分たちが粘って試合運びをできた」と言うように、ネリマンがサービスエースを決めれば、古賀が難しい二段トスを打ち切って、徐々に点差を詰めていく。20-23からは曽我の2本のブロックが炸裂。デュースに入ってからは、ネリマンに代わって投入された古谷がすぐにスパイクを決めた。最後は必死につないだボールを相手がミスし、レッドロケッツが29-27で接戦となった第1セットを制した。

接戦となった第1セットを制したレッドロケッツ 【NECレッドロケッツ】

 苦しいセットをものにし、俄然勢いづいたレッドロケッツは、古谷の2本のサービスエースなどで、16-9と大きく相手を引き離す。本来ならばここから一気に逃げ切りたかったが、ホームの後押しを受けて戦う姫路が息を吹き返し、デュースの末に25-27。金子監督が「連続ブレイクも取れていましたが、 逆に連続で取られる場面もあった。お互いに淡白なバレーをしていた印象です」と語ったのは、とくにこの1、2セット目あたりのことだったはずだ。

古谷の2本のサービスエースで、一時は7点差まで大きく引き離した 【NECレッドロケッツ】

 第3セットはスタートから入った山内や柳田の活躍もあって、25-22で奪ったレッドロケッツが再びセットカウントで一歩リードした。しかし、リベロ小島が相手のツーアタックを素早い反応で拾い、柳田が決めて14-8と大量リードしたことを思えば、20点以降の終盤に追いつかれたことは反省の余地があるだろう。

この日も素早い反応でチームのピンチを救った小島 【NECレッドロケッツ】

「必死に這いつくばってでも上げる」気合十分の好レシーブでチームを救った野嶋

 それでも、ルーキーの野嶋がVリーグデビューを果たしたのは、チームにとってポジティブな出来事だった。23-22というしびれる場面でリリーフサーバーとして巡ってきたチャンスに「むちゃくちゃ緊張しました」と笑顔で明かした野嶋だが、「チームが押されている状況で、一発流れを変えてやろうという気持ちで入りました。 相手はホームで歓声が多く、イケイケの勢いでしたが、それに負けないように自分の勢いを出そうと思っていました」と闘志を秘めていた。サーブの直後には 「必死に這いつくばってでも上げる」という気合十分の好レシーブも披露し、チームに貴重な1点をもたらした。

一発で流れを変えた野嶋 【NECレッドロケッツ】

 終盤まで競り合う展開となったのは、第4セットも同じだった。1-5とされた序盤には島村のブロックや古賀のバックアタックでしのぎ、21-23とされた終盤は古谷の強打と島村のブロードでしのいだ。上野は短い時間ながら3点をマークしている。苦しい状況から粘りを見せた点は評価できるものの、できることなら常に先行してゲームを進めたかった。マッチポイントでは野嶋が再びリリーフサーバーとして起用され、またしても決死のレシーブが相手のミスを誘発。28-26でこのセットをもぎ取ったレッドロケッツが勝利をつかんだ。

 金子監督は「野嶋の活躍が非常に大きかった」と話す。「彼女は日頃からチームを支えるムードメーカーでもあり、そういう選手が仕事をしてくれて今日もチームに明るいムードを作ってくれた。たった1回のピンチサーバーかもしれませんが、その仕事をしっかりやってくれた彼女には感謝しています」

ムードメーカーの活躍が勝利に導いた 【NECレッドロケッツ】

古賀紗理那「こういう試合をしていると、先に行ったときに勝てない。」

 セットカウントこそ3-1だが、4セット中3セットがデュースにもつれ込み、すべてのセットが試合時間30分を超える大接戦だった。ちょっとしたきっかけで敗れていたとしても何らおかしくなかった。古賀は試合後、「勝って良かった」と言いながらも、その表情には満足感はなかった。むしろ危機感を募らせていたと言った方が近いかもしれない。「今日は対相手というよりも自チームの問題で、ブロックディフェンスではめられなかったり、オフェンスまでつなげなかったりという課題がたくさん出ました。こういう試合をしていると、先に行ったときに勝てない。チーム全員で反省してしっかり修正し、来週の試合に臨んでいきたいと思います」

難しいスパイクやブロックでも得点を重ね、チーム最多の22得点で勝利に貢献した古賀 【NECレッドロケッツ】

 金子監督も「最後はうちが勝ち切ったというより、 姫路さんのミスに助けられたという感じです。今後、もっとクオリティの高いバレーをしていけるようにしっかり強化していきたい」と、さらなるレベルアップの必要性に言及した。
 
 勝敗に関わらず、見つけた課題を次の試合までに改善し、克服する。それを継続し続けることで、レッドロケッツは理想のチームに近づいていく。

チームの6連続得点の中心に古谷ちなみ

男子並の跳躍力を持ち、滞空時間の長いスパイクを放つ古谷 【NECレッドロケッツ】

■Hot Topics 古谷ちなみ

 この日のヴィクトリーナ姫路戦では、第1セット終盤にネリマンに代わって入り、最初のプレーでいきなりスパイクを決めた。スタートから入った第2セットでは、10-9からチームが6連続得点で走った中盤、2本のサービスエースを含む3点を挙げている。「勢いに乗せられるのが自分の良さ」という持ち味を存分に発揮した。
 
 金子監督は古谷について、「男子並の跳躍力を持っているので、滞空時間を生かしたスパイクに期待している」という。そして古谷自身もまた、「二段トスやバックアタックが好きです。身長はそれほどありませんが、ジャンプして高い所からエンドラインに打ち込むのは意識してやっています」と話す。なかでもバックアタックは「決めたら自分も盛り上がるし、 周りも盛り上がる。チャンスがあればどんどん入っていきたい」と考えており、先週のKUROBEアクアフェアリーズ戦は7本で3得点。今回の姫路戦でも4本で2得点と、出場した試合ではいずれもチーム最多となるバックアタックを放った。

 バックアタックの機会を増やすには、バックに回ったときの守備も求められる。だからこそ古谷は、今季に向けての鍛錬期に自分を磨いてきた。
「ディグ練習やサーブレシーブなど、今までちょっと苦手だったディフェンスを強化しました。それと、フルセットになったときにバテないように、いつでも自分の力を出し切れるような体力作りを頑張ってきました」

 とはいえ、この日は打ち込んだスパイクを相手にシャットアウトされる場面も少なくなかった。古谷自身が「決め切るところで決め切れていなかったのが課題」と語ったように、今後はここぞという場面で決められる決定力の向上が求められる。

 サイドアタッカー陣のチーム内競争は激しい。それでも古谷に期待したいのは、高く舞うようにジャンプし、ダイナミックに放たれるスパイクに魅了されるからだ。「いつでもコートに入る準備はできています」という古谷は、武器とするバックアタックで、自身とチームを盛り上げる。


(取材・文:小野哲史)

古谷自らの武器と語る《豪快なバックアタック》こうして『#ネット際』スローハイライトで見ると、改めて圧巻の高さに圧倒される。
(動画はホームとどろきでのKUROBEアクアフェアリーズ戦の古谷ちなみ全得点。)
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著者プロフィール

V.LEAGUE DIVISION1 WOMEN(V1女子) に加盟する女子バレーボールチーム。日本リーグで優勝1回、Vリーグでは優勝7回、天皇杯・皇后杯1回、黒鷲旗でも2回の優勝実績がある。2021年、これまでの歴史を継承しながら、更なる進化を遂げるためチームのリブランディングを実施し、ホームタウンを神奈川県川崎エリア、東京エリアとした。チームのエンブレムであるロケット胴体部の三層のラインは、ロケットに搭乗しているチーム、サポーター、コミュニティを表現。チームに関わるすべての皆さまに愛され、必要とされる欠かせない存在になることを目指す。

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