「直球破壊王子」の直球への強さは本物? 渡邉諒の打撃内容にデータで迫る
【(C)PLM】
160km/hの直球すらも安打にする、渡邉選手のバッティングの破壊力
そんな渡邉選手が今シーズンに記録している、球種別の打率は次の通りだ。(以下、各種の数字は8月23日の試合終了時点)
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今回は、渡邉選手が直球に対して見せている打撃の内訳や、投球コースや対戦相手の左右によってどんな違いが生じるのかを、数字をもとに確認。「直球破壊王子」の打撃の内容や、渡邉選手が直球に強い理由、変化球に対する打撃といった要素について、より深く迫っていきたい。
ど真ん中の直球は、渡邉選手にとってはまさに“絶好球”
ど真ん中の投球にする安打の方向を見てみると、左方向への安打が5本、センター方向への安打が3本、右方向への安打が1本と、センターから左方向への打球が大半を占めていた。こうした点からも、甘い球に対しては思い切りよく引っ張って、力強い打球を飛ばそうという渡邉選手の打撃意識が見て取れる。
その一方で、アウトコース高めの直球に対しても5打数3安打の打率.600と好成績を残している。こちらは逆らわずにセンター前やライト前に弾き返していくケースが多くなっており、引っ張ることが難しい球に対しては無理のない打撃を心掛けていることがわかる。
また、インコースの真ん中に来る球に対しては7打数4安打の打率.571とこちらも優秀な数字を記録しているが、このコースに対しては右方向への安打が2本、左方向、センター前への安打がそれぞれ1本ずつと打ち分けている。アウトコース高めと異なり、内角の球は引っ張るのに適した球ではあるが、無理に引っ張ることなく、右方向に流すこともできる対応力の高さが示されていると言えよう。
渡邉選手が直球を打った際の打球方向と、そこから見える傾向は?
本塁打の方向としては、左方向が1本、左中間方向が1本、センター方向が1本と、中堅から左方向にそれぞれ本塁打を1本ずつ記録していた。今シーズン唯一記録された逆方向への本塁打はツーシームを打ってのものであり、先述の通り、これらの3本塁打はすべてど真ん中の直球を打って記録したもの。やはり、甘い球に対しては強く引っ張って左方向に打球を飛ばすという姿勢が、本塁打の方向からもうかがい知れるところだ。
直球と変化球で、打撃内容には大きな差異が
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変化球を打った際の打率.256という数字も決して悪いものではないが、長打率やOPSといった数字に示されている通り、打球の強さや塁打の期待値には大きな差異がある。やはり、「直球破壊王子」が強打を発揮できる可能性が最も高いシチュエーションは、直球を捉えたケースであると結論付けられそうだ。
続けて、投手の左右による差にも目を向けたい。一般的に右打者にとっては、左投手よりも右投手のほうが打つことが難しいとされがちである。その通説通り、渡邉投手は左投手の直球に対して22打数10安打の打率.454という素晴らしい数字を残しているが、右打者の直球に対する48打数14安打の打率.291という数字も、決して悪いものではない。直球であれば左右どちらの投手からも一定以上の打率を残せるところも、渡邉選手の特徴と言える。
直球だけじゃない! 得意とする変化球3つに対する、器用なバッティング
他の球種の中ではスライダーに対して打率.310と、フォークよりも更に優れた数字を記録している。こちらは9本の安打のうち7本がストライクゾーン低めに来たスライダーを打ってのものとなっており、先述したフォークと同様、低めの変化球に対する対応力の高さが見て取れる結果となっている。
それに加えて、シンカーやツーシームといった球種に対しては打率.381と、直球を上回る素晴らしい打率を記録している。比較的ストレートに近い球速から変化を見せるという特徴を持っているこの2球種は、変化球の中ではやや直球に近い要素を持っている。渡邉選手がこれらの2球種をよく打っているのも、先述した直球への強さが理由の一つとして考えられそうだ。
また、この2球種に関しても、フォークと同様に低めのボールゾーンに落ちる球をヒットにしているケースが2本存在した。直球の場合はど真ん中の甘い球をきっちりと安打にするケースが目立っていた渡邉選手だが、得意とする変化球に対しては低めの球を拾って安打にすることが多く、直球と変化球で打撃内容の違いが見て取れる点も興味深いところだ。
「直球破壊王子」の異名通りの活躍に加えて……
「直球破壊王子」の名前通りの豪快な狙い撃ちと、ボールコースの球をも安打にする打撃センスを兼ね備えた渡邉選手。まだ25歳という年齢もあり、今後は打撃成績のさらなる向上も期待できそうだ。強打の二塁手という希少価値の高い存在となれるだけの才能を秘めた俊英が、今後もストレートを“破壊”し続けてくれるかどうか。独特の打撃技術を持った期待の若手に、これからも注目していく価値は大いにありそうだ。
文・望月遼太
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