ラグビー界の"あびこ工房戦隊"を知ってるか?鬼監督・吉廣広征に迫る。【前編】

NECグリーンロケッツ東葛
チーム・協会

【NECグリーンロケッツ】

「このグッズいいね!」ただその一言が聞きたくて…NECグリーンロケッツのグッズページの一文だ。

どことなく哀愁漂うメッセージもさることながら、実はこの発信元は選手達であり『あびこ工房戦隊』なる名称もついている。

新シーズンに向けて、ラグビーの更なる人気拡大に向けて。

9月中旬…千葉県我孫子市を練習拠点とするグリーンロケッツから、今季も続々と選手達が工夫を凝らした企画が世に放たれた。

そこで今回は『グッズに関するすべての権限を持つ鬼監督』と称される吉廣広征選手のグラウンド外でのタクトの振り方に迫ってみた。

『選手自身で企画しグッズの完成まで持っていく。』

グラウンド外ではグッズの鬼監督としてすべての権限を持つ吉廣広征選手。 【NECグリーンロケッツ】

ーーあびこ工房戦隊とはなんですか?

グリーンロケッツではグッズを選手自身で企画作成しています。
チームには委員会制度があり、全選手いずれかの委員会に属し、グランド外でもチームの価値向上に努めるという取り組みをしていますね。

風紀、美化、練習環境、チームソーシャル、メディア、ファンクラブと6つの委員会がある中で、ファンクラブ委員会がファンに喜んでもらえる施策を考える委員会となっていて、その中の一つの項目としてグッズ制作があります。選手自身で企画しグッズの完成まで持っていくという意を込めて「あびこ工房戦隊」と名付けられました。

ーー役割はどう分けられているのですか?

ファンクラブ委員会は7名が所属していて、冬商品担当(釜池)、女性ターゲット担当(山崎)、NEWERA担当(山田)、販促カメラマン(松村)、トップス担当(廣澤)、ゴルフグッズ担当(宮島)といった形で役割分担しています。

私は『総監督』という立場で制作業者さんとの間に入ったり、値段の調整を行ったりします。それぞれ練習の合間や休みの日に打ち合わせを重ねたりデザインを決めたりするので他委員会に比べて忙しい委員会になりますが全員自らの立候補で参加してもらっています。

戦隊立上げ当初の会議の様子(2016年11月) 【NECグリーンロケッツ】

身につけさせるのではなく、身につけたくなるものを

ーーあびこ工房戦隊の立ち上げキッカケは?

実は当初は内向きの理由でしたね。

選手自身が練習以外でもチームの名前が入ったもので、身につけるものを作りたかった…これが発端で、普段でもチームの名前を背負うことで自然と帰属意識や看板を背負っている認識を高めてほしかったというのが一番の理由です。

そのためには「身につけさせるのではなくて、身につけたくなるものを作ることが大事」ということで選手自ら考案しグッズを作成しました。
すでにオンラインショップの販売チャネルはあったのでそこから「ファンの皆さんもどうですか?一緒のものを身に付けませんか?」というのが当初の流れになります。

当時の作戦会議時の資料 【NECグリーンロケッツ】

ーー当初から変わった点はありますか?

去年からはより外向きにシフトしました。

ご存じの通り2019年はラグビーワールドカップがあって、2015年のようにラグビー人気を一過性のもので終わらせないためにも、早めに「それぞれのトップリーグチームが自分たちからいろいろと仕掛けていかないといけない」という強い想いから、グッズもより外向きにしていき、チームを知ってもらえるきっかけにしようと動き出しました。

残念ながらワールドカップには2大会連続でグリーンロケッツから選出がありませんでしたが、代表選手がいないからといって何もしないとどんどん差が広がるという危機感がありました。ワールドカップ期間中はラグビーの人気が高まっていく喜びと、代表選手がいないことでどんどん置いて行かれるのではないかという危機感の混ざった感情が常にありましたね。

ワールドカップの盛り上がりをうまくトップリーグにシフトするには代表選手がいるのが一番スムーズだと思います。でも代表選手がいないチームはそれ以外の方法でファンにどんどんアピールしなければいけない。グッズだけでなくSNSで積極的に発信していこうと思ったのもこういった背景があったからです。

チームを知ってもらうこと、チームの雰囲気や色を知って身近に感じてもらうこと

SNSで毎朝の人気企画"グリロケホイホイ" ーNECグリーンロケッツは動画の撮影・編集も選手自らが行う。 【NECグリーンロケッツ】

ワールドカップ以降のラグビー人気は、『推し選手が好きな人』と『ラグビー自体を好きになった人』に分かれている気がしていて、グリーンロケッツはラグビーを好きになった方々にアプローチしていき、チームを知ってもらうこと、チームの雰囲気や色を知って身近に感じてもらうこと、チームの中で推し選手を作ってもらうことにつながればと思っていて、SNSの毎朝の投稿で選手個人にフォーカスを当てているのはそういう背景があります。

少し脱線しましたが…当初は内向きのチームの価値を高める活動としていて、現在は外向きにチームの価値を高める一手になればと思って活動しています。

手掛けたのは16商品。コロナ禍でもグッズならファンにも喜んでもらえる

ーーあびこ工房戦隊の活動(戦闘?)状況を教えてください!

現在までに16商品を作ってきました。

今回販売開始するのはマスク、マスクケース、バスケシャツ、エコバック、NEWERACAPになります。
冬物や女性向け商品も企画は進んでいますがコロナの影響で観客動員がどうなるのか不透明なので温めているところです。

《※9/10時点で発売開始》


「体が冷えることを防ぐことができる上にグラウンドで選手たちと共に戦っている気持ちに…」山崎選手考案 【NECグリーンロケッツ】

ーーゴルフマーカー・コラボTシャツ・応援手袋・芝生シートクッション・NEWERAコラボキャップ/コラボニット帽などなど…最新策は「あなたの唇守ります」と意気込んだリップクリームも(笑) これまでの戦績は?

おかげさまで上記すべての商品が追加販売、または完売という結果になりました。
追加販売用に発注したところ…コロナで試合が無くなってしまったので在庫はしっかりあります!(笑)

芝生シートクッションとNEWERAのニット帽は冬の観戦にはぴったりなのでぜひチェックしてほしいです!!

ーー「ファンの方に喜んでいただけるような」とあるが、今までに喜んでもらえたものは?

どの商品も買っていただいた方々には喜んでいただけていると信じていますが、グッズを身につけることでいつもより応援が楽しくなったり気持ちが高まってくれたらうれしいです。会場だけでなくテレビやスマホで観戦するときも同様の光景を見ることが出来ればうれしいですね。

【完売】【追加販売】好調の"あびこ工房戦隊"でも難しかったもの

ーー逆にあびこ工房戦隊として難しかった闘いは?

これは完全に廣澤選手考案のInstagramTシャツ一択ですね!(笑)

2019年の春までは非公認のInstagramページということでチームでは管理せず選手主導のページを開設していましたが、チームが公式ページを開設するということで今までの非公認Instagramページの閉鎖&公式Instagramページ開設を記念してTシャツを制作しました。

廣澤選手のグッズ制作活動に多大な影響を与えた一枚。お手頃価格×シンプルで売れそうだが…(笑) 【NECグリーンロケッツ】

公式Instagramページに飛べるQRコードを胸にデザインされたシンプルなTシャツですが「QRコードを載せたTシャツ!?こんな斬新なデザインなら多分取材とか来るぐらいすごい話題になると思う!」

と意気込んで販売しました。結果…ファンの方々だけでなく、選手からもほとんど購入されずに廣澤選手のその後のグッズ制作活動に大いに影響を与えました(笑)

ファンの声がグッズ化を後押し

ーー鬼監督が特に印象に残っているものは?

やはりリップですかね(笑)

私個人のTwitterで廣澤選手と我々の唇の厚さについてやり取りしているところに、ファンの人の反応が多かったので勢いで作ってしまいました。冬物で女性向けの商品を作りたかったというのもありましたが、他の選手のプレゼンに厳しい割には勢いが勝ってしまった感はありました。これで大量に売れ残っていたらグッズ総監督辞任でした。

あなたの唇守りますーファンの方々の熱量と勢いで制作が決まったリップ。 【NECグリーンロケッツ】

ーーということは売れたんですね?

300個作成して残りあと30個程度なのでシーズン直前からの販売にしてはまあまあかなという感じです!(笑)

廣澤選手の唇と脱退を守る鬼監督・吉廣選手。 【NECグリーンロケッツ】

『グッズへの関心からチームにたどり着くというアプローチも出来れば最高』

【グリーンロケッツ×NEWERA】コラボキャップとニット帽が大ヒット。戦隊員の作戦がハマった様子 【NECグリーンロケッツ】

ーー価格、デザイン、コンセプトのプレゼン…鬼監督の通過率は10%以下といわれているようですね?

全然鬼ではないですよ!(笑)ただ、たしかに通過率は低いかもしれません。

我々はチーム活動の一つとしてグッズ販売を行っているので今は営利に走ってはいけないというのが大前提にあります。営利を目的にしていないと一見楽なように聞こえますが、他の利益で補ったりすることができないので売れ残ったらそのままチームが買い取らないといけなくなります。

つまり売れ残れば残るほど直接チームに迷惑がかかるということになります。チームの価値を高めようという活動のはずがチームのマイナスになりかねないので本当に売れるかどうかは皆でしっかり議論します。

選手や選手の友人、家族に聞いて『欲しい!』という声が出れば売れるのではないか?という期待も高まるので、そういった意見も参考にしています。

NEWERAの代表的なNYマークのキャップもたくさんの人が被っていますが皆が皆ニューヨークヤンキースのファンなのかと言ったらそうではないと思います。メジャーリーグに関心のない人さえ購入者の中にいるかもしれません。

グッズ自体が面白かったりかっこいいもの・魅力あるものを作って売り切ることをしっかり目指すことで、ファンの人に喜んでもらうのはもちろん、グッズへの関心からチームにたどり着くというアプローチも出来れば最高だなと考えています。



【後編は9月18日公開予定】
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著者プロフィール

NTTジャパンラグビーリーグワンに加盟するラグビーフットボールチーム。 日本選手権優勝3回、マイクロソフトカップ優勝1回の実績がある。2021年にリブランディングを行い、千葉県東葛エリアをホストタウン(千葉県我孫子市、柏市、松戸市、流山市、野田市、鎌ケ谷市、白井市、印西市)とし、チーム名を「NECグリーンロケッツ東葛」に改称。柏の葉公園総合競技場で開催されるリーグワンの試合をホストゲームと位置付けて運営している。「WIN THE RACE」をスローガンとし、日本一を目指す。

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