ロッテ安田 4番への道 則本との対戦で見せた成長 

千葉ロッテマリーンズ
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【4番として確実に成長した姿を見せている安田】

 本拠地ZOZOマリンスタジアムで行われた7月31日の千葉ロッテマリーンズ対楽天ゴールデンイーグルス戦。5対4でマリーンズが勝利した試合のお立ち台には今季初勝利の石川歩投手と捕手の田村達弘捕手が呼ばれた。ただこの試合もう一人、忘れてはいけないキーマンがいた。4番の安田尚憲内野手だ。3打数3安打1四球で全打席出塁。打点こそなかったが、イーグルスのエース則本昂大を攻略したのは間違いなくこの若武者だった。

 指揮官にとっても、若き4番にとっても忘れられないゲームがある。あれは安田ルーキーイヤーの2018年10月6日。仙台でのイーグルス戦だった。相手先発は則本。困難な闘いになることは承知の上で井口資仁監督は5番サードで安田の名前をスタメン表に書き込んだ。そして若者を呼び寄せた。

 「きょう3打席で60打席に到達する。来年以降に新人王の資格を残すため、3打席で交代とする。そして今年は登録を抹消する。だから最後に日本を代表するピッチャーのボールを経験して来い。臆することはない。トップクラスのボールがどんなものか。通用するのかどうか。足りないのはなにかを感じてくれ」

 そんな指揮官のメッセージを安田は今も鮮明に覚えている。この試合、安田は3三振した。いずれも空振り三振。ストレートとフォークだけの組み立てだったが手も足も出なかった。「ほとんどストレート。それでも全然当たらなかった。プロのトップクラスのストレートはこんなに凄いのかと肌で感じた」と安田は振り返る。ベンチで見守った井口監督も「最後は向こうのバッテリーも憐れんでくれたのか見え見えのストレートを投げてくれていた。それでもインコースのストレートに空振り三振。ハッキリと覚えている」。力の差にもはや笑うしかなかった。しかしそれがその時の現実だった。そして新人王の資格を残すため3打席終わった段階で予定通りの交代。17試合に出場して60打席、8安打、1本塁打、7打点。打率・151が一年目に残した成績。この年は再度、一軍に上がる事はなく翌19年もフォーム固めを徹底し井口監督は二軍で4番として試合に出し続ける教育方針を貫いた。一軍の打線が湿りがちの時、安田の状態がいいという報告を受けた事もあった。ただ、あえて我慢を貫いた。中途半端に一軍に上げるつもりは毛頭なかった。それは3年目の2020年に大きな飛躍を期するため。2年目はひたすら一年目に味わった屈辱、トップレベルとの差を二軍で埋める日々に当てさせた。

 そして迎えた安田3年目の今年。開幕から一軍入りをするとスタメン出場をする機会も増えた。当初は結果を出すのに苦しんだが、徐々にアジャストしていった。そして7月21日のライオンズ戦(メットライフD)で4番に座ると堂々とした立ち振る舞いを見せ続けた。これには井口監督も「チャンスに強い。なによりもストライクとボールを見極められている。4番も慣れてきたのか、どっしりとしている。元々、アマチュア時代に4番しか打っていないだろうから、4番が一番落ち着くのかもしれないね」と目を細める。

 迎えた7月31日のイーグル戦。4番安田はあの日以来、イーグルスのエース・則本と相まみえることとなった。1打席目ストレートを中前打、2打席目カットボールを右翼線へ二塁打、3打席目カーブを右越え安打。プロ初の猛打賞を記録した。2年前に子供のように遊ばれた若者はチームの4番として堂々と対峙し全打席に出塁。エースを粉砕しチームの勝利を呼び込む立役者の一人となった。その姿を指揮官はベンチから見つめた。思い描いている理想の姿はもっともっと上にある。だから、笑顔は少しだけにとどめた。

 「毎日が必死です。新人王の資格を監督が気にしてくれて残してくれたのは本当にありがたいこと。そして今年はそのラストチャンス。そのためにも一日一打席を大切にしっかりとやっていく」と安田は語気を強める。井口監督も「ここから当然、調子の波はあるだろう。その波をどれだけ小さく抑えられるか。そしてピッチャーも2巡目の対戦を迎える。そこでどのように対処するか。4番としてのプレッシャーもあるだろうが、乗り越えて欲しい」と誰よりも高い期待をしているからこその熱いエールを送る。

 戦いの舞台は8月4日から安田の地元大阪に移った。1年目にプロ初ヒットを打った場所でもある。8月4日の第1戦はバファローズ先発のエース山本由伸攻略の突破口を切り開いた。初回にフォークを打ち返し中前適時打。先制点を叩き出した。若き4番が打つとチームは勢いづく。結局、この試合、難攻不落と言われた山本から早々に5得点でマウンドから引きずり下ろした。「夏は好きですよ。熱く燃え上がります」と安田。さあ夏本番。背番号「5」の熱い夏が始まった。

文 千葉ロッテマリーンズ広報室 梶原紀章
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