元プロバイクレーサーの奮闘 権藤俊光(後編)
【(C)BOATRACE】
我慢の時期を超えて
金髪が似合う! 【(C)BOATRACE】
優勝戦でフライングを切ってしまったのだ。権藤は3号艇3コースからのレースだったが、内の1コース、2コースの選手もフライング。お互いに意地を張り合ったというわけではなかろうが、無念の複数艇フライングの1艇となってしまったのだった。
その次節の平和島で、さらなる苦難が権藤を襲う。初戦となったレースで、またもやフライングを切ってしまったのである。節をまたいでの2走連続フライング。権藤は初優出したびわこから、内枠をもらうようになり、スロースタートからのレースもするようになっていた。びわこでは2コース差しで1着もあげており、無難にこなしているように見えていた。しかし、前節の優勝戦フライングを引きずっていた部分もあったのか、1コースからのレースでスリットオーバーをしてしまう。それなりに順調にきているように思われた権藤の出世ロードは、しばし遠回りを強いられることになってしまった。
デビュー4期目は、3期目のフライング2本分の斡旋停止期間(90日)の影響もあり、出走回数不足でB2級での出走。事故率の問題もあって、外コースからのレースを強いられ、勝率は3.47とデビュー期に近い数字まで落としてしまう。権藤にとっては、我慢の時期だった。
それでも、もろもろの足かせがとれたデビュー5期目には、勝率を4.92まで引き上げている。気づけば、2017年も春となっていた。ここから権藤の逆襲が始まった。
バトルトーナメントで勝利し安堵 【(C)BOATRACE】
それからの権藤はさらに成績を上げていく。8月江戸川では、10戦6勝の活躍。予選での転覆があって準優進出は逃しているが、難水面の江戸川を攻略したかのような走りは、確実に技量が向上していることをあらわしていた。
この期に権藤がマークした勝率は5.49。これはA2級のボーダーラインを超えるものだった。権藤はデビューから3年でA級への昇級を果たしたのだ。このとき権藤は30歳。三十路になって権藤は、トップへと駆け上がるための足掛かりを作ったのである。
それからの権藤は、さらに着々と成績を上向かせている。なにより大敗が少なく、しっかりと舟券に絡んで、ファンへの貢献度も大きい。デビュー7期目の今期は、2月下旬時点で約4カ月が経過しているが、権藤の勝率はこの時点で6.37。この数字をキープできれば、来期はA1級への昇級となる数字だ。まだデビュー初優勝は果たしていないが、これは時間の問題だろう。
今年に入って、1月にはBOATRACEバトルトーナメントにも参戦した。SGウイナーも大挙参戦し、A1級とA2級が24名ずつ集って、3日間の超短期決戦を戦う一戦だ。権藤は、残念ながらトーナメントで4着に敗退(3着までがセミファイナルに進出する)、2日目は復活戦に回ったが、その復活戦を見事に1着。このレースは6号艇にイン屋の看板を張る西島義則がおり、当然のように前付けに動いてきたが、1号艇だった権藤は冷静に西島を入れて2コースを選択。SG7Vの大先輩をきっちりと差し切るという、勝負にこだわるレースを見せている。復活戦で1着を獲れば、まさに敗者復活でファイナル(優勝戦)に進出するチャンスがある。そのルールをしっかりと把握したうえでの、1着をもぎ取る作戦が奏功したわけだ。このレースはほかに、SG9Vの池田浩二もいた。そんな強豪を相手に権藤は勝ち切ったのだ。全国的に注目されるレースであり、権藤は間違いなく、その名をファンにアピールすることになった。
権藤は現在31歳。ルーキーとしては、決して若くはない。だが、ここにきて頭角をあらわしてきた権藤は、さらに勢いを加速すべく、努力を積み重ねていくことだろう。大阪支部といえば、松井繁や田中信一郎、石野貴之ら強い先輩がゴマンといて、最も層が厚い支部である。そんな超強豪の薫陶を受けながら、実力を蓄えていくに違いない。三十路のファイターの今後の活躍に注目したい。
2018年3月15日更新 文:黒須田守(BOATBoy) 写真:池上一摩(BOATBoy)
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