いわきＦＣはこの２月、「Ｊリーグ百年構想クラブ」の認定を受けました。Ｊリーグ百年構想クラブとは、ＪＦＬ（日本フットボールリーグ）以下を対象に、将来のＪリーグ参入を目指す存在としてＪリーグが認定したクラブのこと。認定取得はＪＦＬからＪ３に昇格する前提条件の一つで、いわばＪリーグ入りの予備審査のようなものです。いわき市の清水敏男市長、いわき商工会議所の小野栄重会頭、いわき市議会の菅波健議長、福島県サッカー協会の小池征会長など皆様のご尽力もあり、今回の認定はスムーズに進みました。この場をお借りして、あらためて御礼申し上げます。
　
　いわきＦＣは４年前に、福島県２部リーグから戦いをスタート。毎年カテゴリーを上げ、今年はＪＦＬの舞台にたどり着き、いよいよＪリーグが見えてきました。ただし常々言っていますが、私たちのビジョンは「スポーツによる社会価値の創造」ですから、Ｊリーグ参入はあくまで一つの手段。ビジョンを達成するためのプロセスに過ぎないということを、あらためてお伝えしておきます。

　同時に今回、いわきＦＣはホームタウンをいわき市に双葉郡８町村を加えた９市町村まで拡張することを発表しました。その背景にある思いを説明します。

　私たちは東日本大震災からの復興に寄与するため、いわき市で４年間活動してきました。その間に双葉郡の復興は少しずつ進み、広野町と楢葉町にまたがるＪヴィレッジが全面再開されました。この３月にはＪＲ常磐線が全線再開通し、一部地域で避難指示がさらに解除されます。そして、ＪＦＡアカデミー福島の活動再開も決定。今後、子ども達も少しずつ増えていきます。そんな流れの中で、いわきＦＣができることがたくさんあるのではないか、と考えたのです。

　では、双葉郡で何をしていくのか。まず、今年のＪＦＬのホームゲーム15試合のうち４試合を、Ｊヴィレッジスタジアムで開催する予定です。皆さんご存じの通り、昨年ＪＦＬ昇格を決めた縁起のいい場所で、今年も「魂の息吹くフットボール」をお見せします。

　他に考えているのが、健康増進事業です。現在、いわきＦＣフィールドやいわき市内各所で開催している小学生以下の子ども向けの運動教室「いわきスポーツアスレチックアカデミー（ＩＳＡＡ）」や、いわきＦＣパークで行っているシニア世代向けヘルスケア事業を町村に提案すれば、双葉郡の人たちの健康増進に貢献できると思います。

　ホームタウンを拡張することで、可能性は大きく広がります。いわきＦＣといわきＦＣパーク、Ｊヴィレッジ、ＪＦＡアカデミーといわきＦＣアカデミー、ふたば未来学園、そして新しい街づくりに取り組む若い人たちと優れた先端企業…スポーツと地域、教育、産業が手を取り合って、大きな輪を作っていく。いわきＦＣがその中心的存在になれたら、うれしく思います。

　ＪＦＬ開幕を控え、チームは順調に仕上がっています。今年の大きな特徴は攻撃力。新加入のＦＷ鈴木翔大、山口大輝、岩渕弘人、そして５年目の平岡将豪など、前線のタレントの充実ぶりはこれまでにないレベルです。またＤＦ陣は、昨年と比べて格段に安定しました。
　
　ストレングストレーニングや食事、メディカルなど、これまで取り組んできたチームビルディングの成果も確実に出てきており、力は十分にあると思います。初参戦となるＪＦＬの舞台ですが、ＦＷ鈴木翔大やＤＦ田中龍志郎、ＭＦ日高大、ＧＫ坂田大樹など、すでにプレー経験がある選手も多く、心配はありません。
　
　ＪＦＬの舞台で４位以内、かつホームゲームの平均入場者数が２０００人を超えれば、来シーズンのＪ３昇格が現実となります。ただし、目標はそこではありません。私たち目指すのは、魂の息吹くフットボールでいわき市、そして双葉郡の皆さんを熱狂させること。その結果、勝ち点が積み上がればいい。この考えは不変です。
　
　コロナウィルスの影響で、今年のＪＦＬは第１節と第２節の延期が決まりました。現時点の予定では、３月28日の第３節・昨年２位のソニー仙台ＦＣさんとのアウェイマッチが開幕戦となる予定です。相手に不足はありません。最高のスタートを切りたいと思います。

【大倉 智】
1969年、川崎市出身。東京・暁星高で全国高校選手権に出場、早稲田大で全日本大学選手権優勝。日立製作所（柏レイソル）、ジュビロ磐田、ブランメル仙台、米国ジャクソンビルでプレーし、1998年に現役引退。引退後はスペインのヨハン・クライフ国際大学でスポーツマーケティングを学び、セレッソ大阪でチーム統括ディレクター、湘南ベルマーレで社長を務めた。
2015年12月、株式会社いわきスポーツクラブ代表取締役に就任。