【フットサル】異例の“空白期間”を乗り越えて──。日本のエース・仁部屋和弘がタイ戦で見せたスーパーな二面性。

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【軍記ひろし】

1年前は“フットサル選手”ですらなかった

しっかりとリベンジを果たした。武田テバオーシャンアリーナでの第2戦、日本代表は3-1でタイ代表に勝利した。先発出場した10番、仁部屋和弘はピッチに立っている間、攻守に100%でプレーし続けた。ただ、それは本人いわく「最低限の結果」だったという。

「ある程度の仕事はできたとは思いますが、僕の仕事はゴール。今日はチャンスがたくさんあったのに決め切れなかった。こういうところで決められないと、W杯で勝ち上がるのは難しくなる」

どこまでも高みを目指して、自分にプレッシャーをかける。ただ、こんな仁部屋をまた見ることができるとは正直思っていなかった。およそ1年前、彼は“フットサル選手”ですらなかったのだから。

2018年5月、バサジィ大分から衝撃的なリリースが発表された。それは、仁部屋が家庭の事情により、フットサル活動を一時休止するというものだった。活動再開の時期については「未定」。

多くの人が待ち望んだ復帰が発表されたのは約4カ月後。活動休止中は、フットサルはおろか、体もほとんど動かしていなかった。数日間、一歩も外に出ないこともあったという。

「最初は素人かなと思った」(大分・伊藤雅範監督)。それでも、「重要な選手ということはわかっている」と我慢して試合に起用し続けた。そして迎えた2019-20シーズン、仁部屋は完全にトップフォームを取り戻した。得点ランクで日本人トップの14ゴールを挙げて、大分の躍進を支えている。

完全復活を遂げたバサジィ大分の仁部屋和弘 【軍記ひろし】

Fリーグ復帰から数カ月で日本代表候補合宿に召集。しばらくピッチから離れていても、ブルーノ・ガルシア監督の仁部屋への信頼は変わっていなかった。2月のタイ遠征の2試合、そして、今回の2試合でも1stセットの一員としてプレーしている。

第1戦では「貴重な機会ということで、勝つのはもちろん、内容も楽しんでもらえるようにというのを意識しすぎて、うまく出せなかった」。迎えた第2戦、日本の10番は別人のようなパフォーマンスを見せた。攻撃では持ち前のドリブルから再三のチャンスを作り出し、守備ではボールにしつこく食らいつき何度もボールを奪った。

「まずは試合に勝つ、戦う、そこを感じてもらえたと思います」

ファンタジスタであり、ハードワーカー。ドリブルの名手であり、ディフェンスの達人。ひょうひょうとしているけど、誰よりも負けず嫌い。二面性を持ち合わせる日本のエースが、ブルーノ・ジャパンを引っ張っていくのは間違いない。
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