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【浦和実】「胸の中の剣」を掲げる主将のもと団結 自主性を養い、初の甲子園(埼玉県)

毎日新聞

「不思議」な変則左腕が柱

エースの石戸颯汰投手 【宮間俊樹撮影】

 ロースコアの勝負はお手のものだ。秋の公式戦10試合の平均得点は4.2ながら、エースの変則左腕・石戸投手を中心に粘り強く守り勝つ野球で強豪を次々と撃破。創部50年の節目に春夏通じ初めての甲子園切符をつかんだ。

 石戸投手は、右膝を顔付近まで高く上げて少し背中を丸め、頭の上から投げ下ろす独特なフォーム。速球は120キロ前後ながらスライダー、カーブ、チェンジアップなどを交えて打者のタイミングを外す。

 結果が出ず悩んでいた中学1年の冬、当時の指導者の助言も参考に試行錯誤を重ねた。「上半身と下半身がかみ合い、スムーズで投げやすい形に」と現在の投法の基盤を確立し、微修正を加えてきた。辻川監督は「球速は遅いが、不思議と打てない」と「魔球」の威力を語る。秋は8試合62回あまりを投げて防御率0.72、2完封を含む4完投と大車輪の活躍を見せた。

 伝統的に有力投手がつける背番号「20」で秋は5試合に登板した左腕・駒木根投手も控え、投手陣の粘りと堅い守りからリズムをつかむ。

 打線は派手さこそないものの、1試合3得点を奪って逃げ切る戦い方を「理想形」として掲げる。上位が出塁し、勝負強い三島陽之介選手、野本大智選手ら中軸で得点につなげる。選球眼のいい選手がそろう下位からも好機をうかがう。

「普段着野球」で挑む初の聖地

練習する浦和実の選手たち 【宮間俊樹撮影】

 強豪私立が多く並ぶ埼玉の壁を「普段着野球」で打ち破った。秋の埼玉大会の3回戦、聖望学園から3-1の勝利で手応えをつかみ、準々決勝は石戸投手が浦和学院を2安打完封した。辻川監督は「聖望学園戦が転機なら、浦和学院戦は奇跡。何も怖いものはなくなり、あとは普通に自分たちの守りの野球に集中するだけだった」。埼玉大会で初優勝、24年ぶり出場の関東大会も頂点に立った横浜を準決勝で2-3と追いつめた。

 グラウンドは近くに住宅があるため、フリー打撃など実戦練習が行えずケージの中でバットを振る。寮はなく選手は全員通学。練習時間も短く制限は多いが、それでも聖地での挑戦権をつかんだ。「コツコツ努力すれば普通の学校も甲子園に立てる。いい手本になれば」と辻川監督。万感の思いをプレーでの勢いにつなげる。

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