「マイナビ仙台レディースの逆襲。新たな仲間を加えて、3月再開のWEリーグへ」

マイナビ仙台レディース
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2024-25前期レビュー

【©mynavisendai】

「2024-25 SOMPO WEリーグ」再開の時が近づいてきている。後期の日程が発表され、マイナビ仙台レディースは3月2日に第12節サンフレッチェ広島レジーナとセイホクパーク石巻で対戦する。前期はリーグ戦11試合を戦い、2勝1分8敗で10位。WEリーグカップではグループステージ敗退と思うような結果が得られなかったマイナビ仙台レディース。前期の戦いを振り返る。

エースと攻撃の軸の離脱。重なった予想外のアクシデント

マイナビ仙台レディース4季目のWEリーグ。2024-25シーズンは三菱重工浦和レッズレディースからDF長船加奈選手とDF佐々木繭選手、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースからGK清水栞選手と経験豊かな選手たちを迎えた。
しかし、昨季7ゴールを上げたFW廣澤真穂選手が開幕を控えた練習試合で左膝のじん帯損傷のけがを負った。シーズン初戦のクラシエカップ新潟戦では、今季副キャプテンに就任し、攻撃の中心としても期待されたMF太田萌咲選手が左膝前十字靭帯損傷の大けがを負い、長期離脱を余儀なくされた。守備のユーティリティープレーヤーDF西野朱音選手も左膝のじん帯損傷で戦列を離れ、コンディション不良の選手たちも出るなど、厳しいシーズンスタートとなった。

たくましいベテラン選手の存在とユースの躍動

メンバーが十分に揃わない中でも、チームは懸命に勝利を目指した。そこで頼もしさを見せたのがベテラン選手たちだった。MF中島依美選手は前期のリーグ戦、カップ戦全試合出場し、約10年ぶりの仙台復帰となった長船加奈選手も守備のリーダーとしてDF國武愛美選手と息の合ったコンビネーションを見せた。GK齋藤彩佳選手は試合中に相手選手と交錯するアクシデントも乗り越え、強くゴールマウスに立ち続けた。
若い力も躍動した。ユースから多くの選手たちがトップの練習に参加し、試合でもプロ顔負けの活躍を示した。U-17日本代表コンビのFW津田愛乃音選手とMF菊地花奈選手は早速、アシストやゴールで存在感を示した。ホーム開幕戦で先発に抜擢され、アシストもマークした菊地選手は「チームを勝たせられる選手になりたい」と強い決意を持って試合に挑んだ。一方、津田選手は第2節S広島R戦で「WEリーグ最年少ゴール記録」を更新。直後に塗り替えられはしたが、未来の大器は大きな存在感を示した。トップ昇格が内定していたMF佐藤にいな選手も持ち前の高い認知能力を発揮し、先発3試合を含む5試合に出場。MF岩田琳香選手は第4節大宮アルディージャVENTUS戦でWEリーグデビューを果たした。それぞれが練習から強い個性を放ち、トップの戦いに食い込んでいった。

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安定を見せ始めた守備。「シュート0本」の試合。課題と向き合う日々にもブレない姿勢

第1節千葉L戦では先制するも3失点で逆転され、第2節S広島R戦では序盤の失点が響き、最終的に4点を失った。左サイドバック不足のため、本来の4バックから3バックを選択する試合もあった。先シーズンから課題となっていた失点の多さ。守備の安定は急務だった。クラシエカップN相模原戦で最少失点に留めて以降、大崩れはなくなった。その一方で、大胆な攻撃は鳴りを潜めた。第3節INAC神戸レオネッサ戦ではシュート1本。第4節大宮V戦では、90分を通してシュート0本と、攻撃陣は沈黙した。「力不足はあると思いますが、誰かのせいにするという考えは全くなく、自分たちに矢印を向け、何をしなければいけないか、選手が本当に一生懸命やってくれている。不足している部分を工夫してやれるようにしていくこと。時間はかかっても、個の部分は成長させなければいけない」と須永監督。喉から手が出るほど、欲しい目の前の結果。もどかしさを抱えながらも、後ろからボールを運び、前進すること。そしてゴール前をどう脅かしていくか、段階を踏んで取り組んでいった。
トレーニングの中ではパススピードにもこだわり続ける。「本来は主導権を取りたいと考えてやってきた。その中でパススピードは生命線。パスの練習の時間をしっかりとること。強いパスをしっかり受けられるということは毎日時間をかけてやっている。その成果はすぐには出ないかもしれない。でもそれが将来生命線となって、ゲームをコントロールできる局面が生まれた時に『きっとあれがあったから』と思えることはぶらさずに意識づけていきたい」(須永監督)

全員がゴールに向かう姿勢を示したシーズン初勝利。2勝目は狙い通りの形から2得点。

待ちに待ったその日はやってきた。第7節EL埼玉戦、ホームゲームだった。先に失点するも、この日のマイナビ仙台は崩れなかった。FW大西若菜選手のゴールで追いつくと、1-1で迎えた後半アディッショナルタイム。DF佐々木里緒選手のクロスから、交代でピッチに入ったMF佐々木美和選手が決めた。
「みんながゴールに迫っていて、惜しいシーンもたくさんあった。90分間戦ってくれた選手たちが、そこまでつないでくれた。ゴールを自分が決めるんだという強い気持ちで試合に入り、それが結果に結びついて良かった」と雨に濡れながら佐々木選手はチームメートやサポーターと喜びを噛みしめた。「失点してもそこで崩れず、自分たちの積み上げてきたきたことを続けてくれた。そして最後には交代で出た佐々木美和選手がゴールを取ったということ。ホームで苦しい中、勝利できたことが良かった」と須永監督も選手を称えた。

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シーズン2勝目、第10節N相模原戦は2024年最後のホームゲームだった。「この試合を最後にユアスタは改修に入る。今日来てくれる人たちへ、プロ選手として何ができるか。お金を払って試合を見に来てくれる人のために何ができるかということを話した。勝利で恩返しをすること。サポーターの皆さんを笑顔にすることが大事だと伝えた」(須永監督)攻撃から守備への切り替えに重きを置いたこの試合では、相手陣で攻撃を完結させる意識が選手たちに浸透していた。狙い通りのクロスから2得点。終盤に1点を失ったものの、守備は最後まで崩れなかった。
1ゴール1アシストと2得点に絡んだMF石坂咲樹選手は「常に得点に絡んで結果を残すということは意識している。まだまだ足りないことの方が多い中で、最終的には結果で勝利に貢献できたので、プラスに捉えている。試合に出ているからには点を取ること以外でも、自分のプレーを出していかなければいけない」と喜びの中にも表情を引き締めた。

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皇后杯で涙の復活。チームの上昇を後期の戦いにつなげたい

長くリハビリと向き合ってきたMF茨木美都葉選手が鮮やかな復活を遂げた。右膝前十字靭帯損傷の大けがから約1年半。その日は来た。皇后杯5回戦、セレッソ大阪ヤンマーレディース戦でベンチ入りを果たすと、茨木選手に出番が巡ってきたのは0-0で迎えた延長戦だった。「チャンスがあったら足を振っていこう」と考えてピッチに入った茨木選手にボールが入った延長前半13分、迷わず振った右足の先にゴールネットが揺れて、仲間からの祝福を受けた。「リハビリをがんばっている選手に『こういう結末が待っているかもしれない』と伝えたい」(茨城選手)復帰初戦での決勝ゴールという活躍は、仲間たちへ大きな活力を与えた。「選手たちは崩れずにやり続けて、交代選手で加速することができた」と須永監督も手応えを得た一戦だった。
続く準々決勝の新潟L戦は序盤に2失点を喫した。セットプレーから長船選手が1点を返すが反撃はそこまで。準決勝進出とはならなかったが、2024年の終盤は、けが人が復活し、徐々にメンバーが揃ってきた。後期の巻き返しへ、上昇の兆しを感じさせる戦いを見せた。

(取材:マイナビ仙台レディースオフィシャルライター・村林いづみ)

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著者プロフィール

東日本大震災により休部した東京電力女子サッカー部マリーゼが移管し、2012年ベガルタ仙台レディースが発足。2017年に株式会社マイナビとタイトルパートナー契約を締結しマイナビベガルタ仙台レディースとなりました。 2020年10月にWEリーグへの参入が正式決定。2021年2月より「マイナビ仙台レディース」とクラブ名を改め、活動をスタート。選手達の熱いプレーが多くの方に届くような盛り上がりをともに作っていきます。仙台、東北から日本全国、全世界に向けて、感動や勇気を与え、WEリーグ優勝を目指し活動しています。

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