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三笘が“夢の劇場”でCF顔負けの闘魂ゴール アウェー戦連発で復調を強烈にアピール

森昌利

今季ずっと狙っていた形で値千金のゴール

ペドロの得点が取り消され、嫌なムードが漂っていたが、三笘が自らのゴールでこれを払拭。敵と競り合いながら、懸命に伸ばした右足のアウトサイドで押し込んだ 【Photo by Simon Stacpoole/Offside/Offside via Getty Images】

 ところが前半23分、ビルドアップ中に起こった連係ミスが原因でPKを与えて、これをマンチェスター・U主将ブルーノ・フェルナンデスに決められ、三笘のアシストが95%の貢献だったと言っても過言ではない先制点は帳消しにされてしまった。

 さらに後半8分には、フリーキックからの流れからジョアン・ペドロが叩き込んだ2点目がVARの結果、シュート直前のスクランブルでブライトンDFヤン・ポール・ファン・ヘッケがマンチェスター・Uウイングバックのディオゴ・ダロトの足裏を蹴った反則により、取り消されてしまった。

 ロー氏の魂が古巣に力を貸しているのかと、そんな思いもよぎる展開だった。

 しかしペドロのゴールが取り消されたわずか7分後、残念な判定を払拭し、再び均衡を破ったのが三笘だった。

 後半15分、三笘のアシストで先制点を奪ったミンテが右サイドから素晴らしいクロスを放った。ファーサイドに向かって斜めに飛んでゴールとの距離を詰める危険なボール。その先に27歳日本代表MFが突っ込んだ。

 今度は、前半のアシストシーンで完全にちぎられたマズラウィが必死に食らいついてきた。2人がファーポストに向かってもつれるように突っ込んできた。この競り合いを制したのが、長く伸ばした三笘の右足だった。

 センターフォワード(CF)も真っ青の闘魂ゴールだった。

「まあ、クロスが9割くらいのゴールでしたけど。今シーズン、あそこに何度も入ってきてなかなか決められなかったんで。1つ形になって良かったと思いますし、ここんとこずっと言われていたんで。入り続けるのは大事かなと思います」

 確かに、狙い澄ましたミンテのクロスは素晴らしかった。しかしマズラウィとの競り合いを制した三笘の貢献度が1割ということはないだろう。

 右サイドからのクロスに反応して、左サイドから飛び込む動きは普段から三笘に求められていたようだ。三笘のスピードがあればその要求も当然だろう。今回の得点でこのフィニッシュパターンがチームの形として定着し、三笘のゴール増産につながれば喜ばしい。

スピードを活かして相手の攻撃を寸断し守備でも貢献

“夢の劇場”と呼ばれるオールドトラフォードでマンチェスター・Uに勝利。三笘は1得点・1アシストと大車輪の活躍だった 【Photo by Gareth Copley/Getty Images】

 三笘のゴールでブライトンが再び1点をリードする展開となったが、12月に入ってから前節のイプスウィッチの勝利まで、先行しながらも失点し続けたブライトンとしてはナーバスになっても不思議ではなかった。

 しかしこの後、ブライトンは規律を保ち、統制の取れた守備でマンチェスター・Uにチャンスを作らせなかった。

 そんな堅固な守備のなかで三笘も献身的に守った。アシストを記録した先制点のシーン、そして結果的に決勝点となった2点目のゴールで見せたスピードを活かし、ボールに鋭く体を寄せて、相手の攻撃を何度も寸断した。

 そして、両軍を通じてこの試合の4点目を奪ったのもブライトンだった。右サイドから入ったクロスをこぼしたGKオナナのミスにつけ込み、リュテールがボールを拾って左足で追加点。三笘が2023年8月19日のウルバーハンプトン戦以来となる1ゴール・1アシストを記録して、リュテールが3点目を奪ったブライトンがそのまま3-1で逃げ切り、見事なアウェー2連勝を飾った。

 三笘はオールドトラフォードでの勝利に対し、「こういうスタジアムで勝ちたいと全員が思っていた。特に守備でその思いが出た」と話したが、とりわけ後半、三笘を筆頭に全く運動量が落ちなかったブライトンが相手を圧倒して3-1の勝利を飾った結果に関しては、「今日のユナイテッドは全部の力を出し切れたという感じもしないので。そういった面で、まだまだ自分たちもやることが多いと思います」と冷静かつ謙虚に分析した。

 また自身が爆発しての2連勝については、「怪我人が戻ってきて、シーズンの最初のようなパフォーマンスができれば、どんな相手でも勝てると思う。今日のインテンシティだったり、勝ちたいというメンタルを出せれば、もっともっと上には行けると思います」と話して、アウェー2連戦で連続ゴールを奪い、あっという間に岡崎を抜き去った三笘は、後半戦への意欲を明確にした。

 はたして、ここから日本代表MFがどんな快進撃を見せるのか。残り16試合、三笘には現在「5」というゴール数を今季こそ二桁に乗せてほしいものである。

 しかしまあ、先々週のコラムで三笘の奮起を促す文章を記したが、こんなにも早く結果を出すなんて。疲労に打ち勝ち、チーム内ライバルとの競争にも勝ち、心身ともに充実さえすれば、三笘の底力は果てしない。27歳日本代表MFの可能性をまたあらたに、まざまざと見せつけられた気持ちになった。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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